【忍殺実況】ヤモト・コキ育成計画.mp0【完結】   作:いらえ丸

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いつも誤字脱字クッソ多くて申し訳ナス! そして誤字報告兄貴ありがとナス!

今回は実況パートは短めで、お話が進むお話とも言えるし、そうでないとも言える。ストーリーがどう進むかは投稿者が決める事にするよ(8)


#13「ヤモト・コキ育成計画.mp13」

 現代日本の中心・ネオサイタマ。サイバネティクスが普遍化し、電子ネットワークが世を覆う夢堕ちし退廃の魔都。降りしきる重金属酸性雨の届かぬ大規模地下秘密兵器研究施設の一室にて、幾人ものオムラ・エンジニアが血走った眼で狂的高速タイプに励んでいた。餓死寸前の肉食獣めいて働く彼らの胸には自チームが持つテックへの誇りと、異常なほど強い執着。

 

 薄暗い室内にはいくつもの自社製大型UNIXが乱立し、旧時代の星々を思わせる奥ゆかしい七色インジケーターランプが点滅していた。古文書めいたグリーンの文字列が、情熱に燃えるエンジニア達の眼鏡を照らし横切っていく。チームメイト各々がそれぞれの貢献をし、一丸となって事を成していた。「チーフ確認を」「チーフ修正しました」「チーフおチャ淹れました」常時総動員研究室の最奥、一段も二段も高い位置のハイテックチャブに、高級スーツ姿の初老男性が座している。「ゴクロウ。確認しよう」チーフエンジニア、マト・ノキアミ。チームの柱である。

 

 ノキアミは手渡されたチャを啜り、「イヤーッ!」手元の書類に高効率工業機械めいて自社製ハンコ捺印! ワザマエ! その目には自社愛!「確認した。君たちは15分休憩の後、作業に戻りたまえ」「「「ヨロコンデー!」」」ノキアミの言葉に従い、自社愛に満ちたエンジニアは自動ドアをくぐって談話室へ向かった。ノキアミは眼鏡の位置を直し、自身も自社製UNIXに向かった。その時だ。

 

「ヒュー、良い上司良い上司……」背後に声、振り返ること無くノキアミは物理タイプを開始した。「実際素晴らしいと思いますよ、ええ。私が宮仕えだった頃に貴方が上司だったらなーと、本気で……」「部下が怯える。それと、私のタイプの邪魔もしないでくれたまえ、ラバーズ=サン」言葉を遮り、ノキアミはタイプを中断した。振り返り、後方の傭兵へ視線を合わせる。

 

「ますます良い上司」ラバーズと呼ばれた羽根付き帽子のニンジャは腕組み姿勢でくつくつと肩を揺らして笑った。この傭兵は雇い主の誰に対しても一切態度を変えない。ノキアミ相手だと、せいぜい口調が他よりやや丁寧風になっているくらいか、それもシツレイ一歩手前の。「けど私語はニューロンを活性化させるんです、ご存じでしょう? 少しくらい良いではありませんか、私とのおしゃべりも」「あなた方とのコミュニケートは定命者の毒なのだ」ノキアミは目を細め、ニンジャの無遠慮な視線に耐えた。「わかって頂きたい」

 

 ラバーズとは本社に報告していない忍びやかな雇用関係にある。実際このニンジャの機嫌を損ねる訳にはいかないが、大事な部下の手前ノキアミは努めて強い口調で答えるのであった。それを見て、ラバーズはなおも口角を上げた。愉しんでいるのだ。

 

「これはつれないお言葉」ラバーズは大げさに肩をすくめて見せた。「他者との関わりより、あんなオモチャのがお好みで?」ラバーズが目で指し示したのは、研究室の奥、防弾ガラスの向こうに鎮座する鋼鉄の兵器だ。ノキアミは無言でエンジニア達の夢の結晶を見つめた。「ですが、あれ……コンペで負けたんでしょう? 今更なにを……」「性能では勝っている!」ダン! ノキアミは自社チャブに拳を叩きつけ激昂した。周囲のエンジニアのタイプが停止し、研究室に鋭い静寂が降りた。ラバーズは嬉しそうに目を細めた。

 

「我らのヒャッキは最強だ! モーターシリーズなど、忖度と臆病風の産物に過ぎぬ! ヒャッキは社内政治に敗れたのだ! ロボ・ニンジャなどに決して劣ってなどいない!」ノキアミの熱い意志力が室内に伝播していき、エンジニア達の心に憧憬の火が灯る。「我らのヒャッキは! 明日の平和を、無辜の子供たちを守るのだ!」ノキアミが叫ぶ。「「「ウオーッ!」」」エンジニアも叫ぶ。あっという間に研究室はヒャッキを賛美する声に包まれた。「「「ヒャッキ! ヒャッキ!」」」

 

「故に、安心安全重点で実戦テストが必要だ!」ノキアミは先導者めいて続けた。その目には奥底にある無自覚な狂気。「実験場はオオヌギ・クラスターヤード! 無垢な子供達の笑顔の為、ネオサイタマのゴミを大掃除だ!」「「「ヒャッキ! ヒャッキ! オームラー!」」」エンジニアも熱狂的に応えた。その目には狂気。「ヒャッキ・ショウ量産の暁には、ロボ・ニンジャ開発チームに鉛玉をプレゼントだ! 給与アップだ! 出世確実!」「「「ウオーッ!」」」

 

 ラバーズは退廃ナイトクラブめいて熱狂するエンジニア達を眺め、小さく鼻を鳴らした。なんと純粋な男たちだろうか。きっと彼らは今現在、人生の絶頂期なのだろう。実に幸せそうである。「なんと、愛らしい……」ラバーズはマントを翻して部屋を出た。「オオヌギのゴミ掃除だ! 社会貢献!」「「「ゴミ掃除! 社会貢献!」」」

 

 ラバーズは鼻歌を口ずさみながらダンスめいて地下を往く。通り過ぎるエンジニアに気さくなアイサツを投げ、悩み事を抱えていた美女エンジニアを抱擁し、慰めにアクセサリーを贈呈した。ファックリストに新たな名前が刻まれた瞬間である。

 

 オムラ本社とは遠く離れた秘密の地下研究室を抜け、ラバーズは懐にある愛の結晶を確かめた。それはジツにより生み出されたものだ。それはスリケンだ。それはアクセサリーだ。そしてそれは、ラバーズの心意気だ。その手には、虹色に煌めく羽飾りがあった。

 

 やがて、七色の羽根がグンバイめいて振り下ろされる。件の地、オオヌギ・クラスターヤードへと。「掃除されるのは、さてはてどちらなのやら……」ラバーズの呟きは、金属混じりの雨音にかき消された。

 

 

 

ーーーーーーーーーー読み込み中なーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヌンヌンヌンヌンな実況プレイはーじまーるよー。

 

 前回はミッションから帰ったら何故かヤモト=サンに拘束されて一緒に傭兵しようねって約束したところまででしたね。

 あれから何日か勃ちました。ミッションには一度も行ってないです。ずっと自宅で筋トレしてました。プロテインにできる事はまだあります。

 

 それで、なんですがね……。

 

 ところで、ヤモトのこの成長グラフを見てくれ、こいつをどう思う?(グラフ開示)

 すごく……大きいです(ウナギ・ライジング)

 

 はい、見ての通り何か知らんけど例の幼女拘束事件の翌日からヤモっさんの成長率がすんごい事になっています。私、リザルト見た時なんかのバグかと思いましたもん。

 語弊を恐れずに言うと、今のヤモト=サンはマスター下位くらいの強さになってます。マ? ボーツカイ以上トゥールビヨン以下な感じです。いくら才能の塊ったって程があるのでは?

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」

 

 それにほれ、見てみぃあの気迫。最初の内はえっちらほっちら担いどったバーベルも負荷最大で激しく上下に動けるようになってます。ダイジョブ? 脚パンパンになってない?

 

「Wasshoi! Wasshoi! イヤーッ!」

 

 ……キャラ変わってない?

 

 それと、寂しい事に現在のヤモト=サンの一部能力値は既にレイズを上回っちゃってるんですよね。主に筋力とか筋力とか筋力とか。この前、並んで筋トレしてたらヤモさんのが明らかマッチョな動きしてましたからね。どんどん迫ってくるよー!(師匠超え)

 

 ま、まぁ? イクサは筋力とか耐久力とか、そんな分かりやすい数値だけで決まるもんじゃないし? 器用さはこっちのが上だし?

 ほら、見ろよ見ろよ。木人拳のスピードはレイズのが上だからね。モーション値? 知らない子ですねぇ!

 それにこちとら実戦的なジツ持ってるし? 焚火だって簡単にできちゃうし~!? へいYMT、焼き芋作ろうぜ!

 

「レイズ=サン、ドージョーの中でキャンプファイヤーはダメだよ」

 

 アッハイ(火消し)

 

 まぁジツならヤモト=サンもサクラ・エンハンスメント持ってますもんね。あんま自慢にならないよね。

 ですが、レイズはそれだけの女じゃないんですよ。

 ほれ見てみぃ、足だってこんなに速い! 自慢じゃないが俺は100メートルを5秒フラットで走れるんだ(コ並感)

 

「レイズ=サン、走るならルームランナー使った方が良いと思うよ」

 

 アッハイ(急停止)

 

 まぁヤモト=サンも比較的足の速いニンジャではありますからね。これも圧倒的なアドバンテージとは言えんでしょうな。

 ですが、レイズはカトンが使えたり足が速かったりするだけのニンジャじゃないんでね。

 

 ほれ見てみぃ、この洗練されたチャのワザマエ。圧倒的なニンジャ器用さがあれば、こんな風にガンガン抹茶点てれちゃうのだ! オラオラオラオラオラオラオラオラ!

 

「レイズ=サン、そんなに沢山の抹茶なにに使うの? ダイジョブ? もう冷蔵庫ギュウギュウだよ?」

 

 アッハイ(一気飲み) 

 

 エート? エート? あとは……。

 

 ぐぬぬ……。

 

 こ、このメスガキ……。

 最近、メンターへの敬意が足りてないんじゃあなイカ?

 こうなったら、“分からせる”必要があるんじゃあなイカ!?

 大人を舐めてはいけないんじゃあなイカ!?

 

 おうYMT! 模擬戦やるぞ!

 

「え、今日はやらないんじゃなかったっけ?」

 

 うるせェ! やろう!(ドン!)

 

 ステージはどっかのビル屋上。ジツあり武器あり何でもありのマジイクサだ。準備はいいか! 

 

「うん?」

 

 暗転してカウントダウン開始ィ! 環境確認、どっかの屋上、オブジェクトが散乱してる。OK!

 磯野! 手動でデュエル開始の宣言をしろォ!

 

 デュエル開始ィ!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 先手必勝。スリ・アシで接近してどんどん削ります。打ち合いになったら不利なので、正面からの攻防は攻めと回避を重点して行います。

 超至近距離はコッポの間合い。変に欲張らず一発軽いの当てたらスッと引いて次の手を打ちましょう。

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 相手に攻めっ気が出てきたらQBして逃げます。一定距離になったらカトン・スリケン投げつつ鞭を振ります。はははっ、怖かろう!

 

「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 あれ? なんか効いてなくない?

 鞭は拳でガードされてて、スリケンはサクラパンチで相殺されてますね。なにその超反応。はーずっこ! プレイヤーがそうそうでけへん動きすんのやめーや。

 んー、引き撃ち戦法あんま効いてなさそうな。よし、次いこ次。ほれ、デッカーガン!

 

「イヤーッ!」BLAMBLAMBLAM!「イヤーッ!」

 

 ひぎぃ!? 銃弾つまみ取ってきよった! 最近の女子高生こっわ!

 申し訳ないが唐突なフジキドムーヴはNG。どうやら銃の効き目も薄そうなので、カラテしかねぇなァ!?

 やっぱ、最後に頼りになるんはカラテなんやなって。よし、じゃあぶち込んでやるぜ!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 序盤で何度かクリ入れてるし、もうちょい当てたらスタン入ると思うんやけどね。まぁーだ時間かかりそうですかねー?

 

 ん? ヤモト=サン逃げましたね。接近戦は貴女も望むところでは……?

 って、アッー!? アイツ、スシ食って回復しちょる!

 ふざけやがってぇ!(シュワちゃんインストール)

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 イクサ中にアイテム使うとか常識ねぇのかよ!?(スモークグレネード投擲)

 これは模擬戦だぞ! 正々堂々戦え!(トラップ設置)

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 ハハッ! 煙からの鞭は流石に避けれまい! 反撃もカトンダッシュで余裕の回避!

 見よ! これが真のフーリンカザンだ!

 

「イヤーッ!」BOOOMBOOOMBOOOM!「イヤーッ!」

 

 あ、やべぇQB使い過ぎて血中カラテの残量が……。新しい技覚えるとセオリー無視して使いたくなっちゃいますよねー。

 

「イィヤァーッ!」

 

 おっと、まだこっちにはスリ・アシがあるんだぜ。そうそう大振りな攻撃は当たらな――。

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!?」

 

 ファッ!?(驚愕)

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

「エッ……」蹴り足を上げた姿勢のまま、イクサ中にあってヤモトは驚愕により硬直した。右足に感覚が残っている。ポン・パンチ姿勢をフェイントにしたケリ・キックは、パンチ回避軌道にいたレイズの身体を強か蹴り飛ばす事となった。ヤモト自身、直撃するとは思っていなかったのである。

 

 ヤモトの鍛え上げられたニンジャ脚力から放たれたキックにより。矮躯のレイズは手品めいて吹っ飛んで自動販売機に「大」の字になって叩きつけられた。攻撃を食らった当の少女の顔には、珍しく驚きの感情がくっきり表れていた。双方ともに、予想外な展開である。

 

 広告看板めいた自販機の「大」の字姿勢が崩れ、四つん這いになるレイズ。慌ててカラテ警戒するヤモトだったが、追撃する思考には至らない。模擬イクサは続いているにも関わらず、ニンジャとしてはまだ甘い。「スゥーッ! コォーッ!」やがて顔を上げたメンターは、本気になった。

 

「イヤーッ!」BOOOOM! セルフタキギ・ジツ! レイズの痩身に炎が宿り、そのカラテ位階を引き上げる! 構えるヤモト。踏み込むレイズ。コンクリートが爆ぜ、突貫したのはレイズだ。「イヤーッ!」ヤモトのニンジャアドレナリンが過剰分泌され、時間間隔が拡大する。サマーソルトキックを、合わせる!

 

 軸足を後ろに、膝を折り曲げ、筋を絞って機を伺う。1、2、3……時間間隔が戻る、今!「イヤーッ!」「ンアーッ!」瞬間、カトンとカラテとインパクトが同時に炸裂した! コンクリートに叩きつけられたヤモト。蹴り足を引くレイズ。インシデントは三つ、レイズは連続カトン爆破で急加速し、ヤモトはサマーソルトキックを放ち、すれ違う瞬間に放ったレイズの浴びせ蹴りがヤモトを地に叩き落したのだ!

 

 おお、何たるニンジャ動体視力でも追いきれないレベルの超高速イクサムーヴか! カトン線を引き四つ脚でブレーキするレイズに、仰向けに倒れるヤモト。イクサは終わらない、レイズはまたもカトン爆破で飛び上がり、天高くヤモトの視界中心で高速回転カカトオトシを振り上げた!「イヤーッ!」「イヤーッ!」慌ててワームムーブメント回避したヤモトだったが、その首筋には冷や汗。ゴッソリえぐられたコンクリートがそのカラテの威力を物語る。

 

 浮かび上がる石片。舞い上がる火の粉。紅い双眸がヤモトを捉えた。受ける! ジュー・ジツを構えるヤモト。BOOOM! 遅い、レイズは瞬く間にカトン接近し、ヤモトの手首をつかみ上げた。視界が回る、天地が揺らぐ。信じられぬほど美しい、教本通りのイポン・セオイがヤモトの意識を刈り取った。

 

 

 

ーーーーーーーーーー読み込み中なーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヴィ~クトリィ~!(完全勝利したリングUC)

 

 やっぱニンジャ同士のイクサの華はカラテなんやなって。慣れたやり方が一番よ。

 勝利のジンジャーエールは……ああ^~、うんめぇなぁ!

 

 おうYMT~、おめぇも一杯やるか~?

 

「ありがと。うん……次はもっと上手くやれると思う」

 

 ん? ヤモっさんってこんな戦闘狂みたいな思考回路してたっけ?

 もっとこう、イクサとかカラテには割と消極的で、継続はするけどガンガンやる感じのメンタリティじゃなかった気がするんですけど……。

 ま、これでちょっとは師匠の偉大さを“分からせ”られた事でしょう。オレは上! きさまは下だ!

 

「コツ? なのかな。なんか今のでイクサの感覚が“分かった”気がするんだ」

 

 いやソッチじゃねぇよ。

 

 うーんこの。まぁいいですけどね。

 んーまぁともかく、今の模擬戦のリザルトを……ファッ!?

 何やこの経験値ィ!? 野良ニンジャ何体分の経験値だコレぇ?

 こ、こんだけありゃあこっから一気に強くなれちまえる! まさにシルバーカラス=サンの薫陶を受けた直後のように、クソ師匠のクソしごきを終えた後のように、一気に!

 

 や、ヤモト・コキ……恐ろしい子!(GRSNKMN)

 

 コイツぁ、そろそろ実戦出してもええかもしれへんね。んー、でも流石に最初はあんまり危険なの連れてきたくないな~。

 どうすっかな~俺もな~(優柔不断)

 

 ま、なるようになるでしょ(適当)

 

 はい、短いですけど今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

「レイズ=サン」

 

 はぁい?

 

「さっき掴んだイクサの感覚を馴染ませたいんだけど、付き合ってくれない?」

 

 ……キャラ変わってない?

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

 石に穴をあけるのは実際雨、というのは誰のコトワザだったか。遠くネオンの光も届かぬ高架下の濃い影は、シモムラのただでさえ重だるい心を更に重くしていた。

 

 対重金属LED傘の下から、シモムラは眼前の廃墟を眺め見た。長期間、重金属酸性雨と汚泥に晒された廃工場にはしかし、かつて人間が住んでいたアトモスフィアがあった。間違いなく、此処だ。シモムラは愛用のハンディライトを構え、覚悟を決めて歩みを進めた。

 

 デッカーの捜査能力はマッポ10人分と言われるが、熟練デッカーであるシモムラの捜査能力は並みのデッカー10人分はあるだろう。シモムラは胸中のざわめきを静め、開けっ放しの入り口に足を踏み入れた。暗闇の廃工場は夜よりもなお暗く淀んでいたが、シモムラのデッカー観察力はその闇を容易く暴く。暴きたくない真実までも。

 

「冗談きついぜ……」人気のない廃墟にシモムラの低い呻きが響く。シモムラの視線の先には、「カラテ」「殺意がある」「死んでも殺す」と禍々しい極太ミンチョ体でショドーされた掛け軸が飾られ、周囲には見るからに手製と思しき粗悪なカラテ・トレーニング器具。ハンディライトを回すと、ドラム缶で出来た簡易風呂や瓶やスシパックなど生活の質を伺わせる物の残滓。混沌と静謐が同居するこの廃墟は、まるで時間が停止しているかのようである。

 

 あの白い髪の少女は「レイズ」と名乗り、ネオサイタマ市警では「テリヤキ」と呼ばれ、一部マッポ界隈ではアンタッチャブルと化している闇の存在だ。だが、シモムラは彼女の本当の名前を知っている。「アヤメちゃん、君はマジでやる気なのか……?」いくら常人離れした力を得たとて、これまでずっと病院暮らしだった少女一人に何ができるというのか。その復讐の先には、確実に惨い破滅が待っている。

 

 衝動のままヤクザを殺し続ければ、やがてかの組織に行きつくだろう。ネオサイタマの真なる支配者。裏社会から日本を牛耳る半神結社。やがて、箍の外れた世間知らずにはクロスカタナの制裁が下される。死よりも辛い制裁が……。

 

「狂人の振りをしたら実際狂人……か」かのヤクザには逆らってはならない。それは少しでもネオサイタマの裏を知っている者からすれば常識である。過去、裏社会挫折を経験したシモムラには、マッポーの世を渡る常識がある。常識があるからこそ生きていられるのだ。この、胸に燻り続けて消えてくれない……忌々しい復讐の念を抱えながらも。「俺も、狂っちまえばよかったのかな……」

 

 シモムラの色のない声は。遠く他人事の様な騒音にさえかき消された。その瞳に生気はなく、路地裏の浮浪者の方がまだ生命力に満ちているだろう。ふと、無意識にデッカーガンを探ったが、慣れた感触は返ってこなかった。あの時、レイズと名乗った当の少女に奪われたのだ。鳩尾に一発、人生で一番上手いカラテだった。

 

(((そういえば、何故アヤメちゃんは俺のデッカーガンを持ってったんだ?)))シモムラの錆びついたデッカー思考が回転する。現実逃避の思考だったが、時としてそれは現実を覆すキーとなる。この時、シモムラのニューロンは往年の野性的直感をも取り戻していた。(((エノスケは生きてる。目撃者を殺していない。ベイビー・サブミッションなはずだ。あれほどのカラテなら、たかが銃なんて……)))その時である。困惑と緊張に歪められた記憶が閃き、損傷甚大な当時の情景が明晰にフラッシュバックした。

 

 燃え盛るヤクザ。血濡れのコートに白の髪。振り返ったレイズの瞳は赤く、暗い怒りに満ちていた。その色彩は本来の少女のそれではなかった。だが、シモムラに振るわれるカラテの瞬間、その瞳の奥には、あの頃と同じ……隣人を慈しむ純真な温もりがあった。ニンジャらしからぬ、慈悲の心があった。

 

 そう、ニンジャとなり、復讐に燃えるとも、シモムラの姪は無慈悲なカラテモンスターに堕ちきってはいなかったのだ。彼女――レイズは、間違いなくユズリハ夫妻の一人娘、アヤメ・ユズリハの延長線上にある少女なのである。

 

「俺を、叔父を殺したくはなかったんだな」まったく、分かりやすい。そういえば、あの子は父親譲りのカトゥーン・フリークで、すぐに何かに影響を受ける子供だった。あの不釣り合いな黒いコートも、赤いマフラーも、思えば馴染み深いモノじゃないか。それこそ、アヤメにとってすれば尚の事、子供は、好きな親の真似をするものである。父が好きだったカトゥーン探偵めいたトンビ・コート。寒い冬、母がプレゼントした長いマフラー。叔父のデッカーガンがあれば……ピースが揃う。

 

(((覚悟を決める時らしい。義を見てせざるは勇なきなり。困っている人を助けないのは実際腰抜け……。病弱な姪が頑張ってんだ。叔父さんの俺がなにしょげてやがる。上手な世渡り? デッカーとしての今後? 知った事か、そんなもんブルシットだ。唯一の肉親がジゴクに向かって走ってンなら、一緒に走ってジゴク行きだ。あれでなかなか頑固な子だ、引き留めたって聞きやしない)))

 

 ネオサイタマ市警所属デッカー、ソメイ・シモムラはこの日、全てを捨てた。一度死んだと言ってもいい。胸元の身分証明バッジを放り捨て、次々と自身がデッカーであった事実を剥ぎ取っていく。残ったのは薄汚いコートを着ただけの、ただの中年男性だ。だが侮る事なかれ、ただの中年男性とて、姪のジゴクの道行きくらい務まるはずだ。

 

 たとえこの決意が、はた迷惑な思い違いであったとて、勘違いした中年オヤジのやらかしひとつ増えるだけ。その時はその時で潔く死んでやろう。なに、姪の為に死ぬのも何か謝罪でセプクするのも変わらない。こんなマッポーな世の中だって、死に方くらい選ばせてくれるもんだろう。あの日から曖昧だったシモムラの意思が、この時やっと定まった。

 

 シモムラは、タバコの箱を放り捨てた。




◆アペヒキャク・ジツ◆
 血中カラテを消費し、加速する。
 加速中はカラテ攻撃力が上昇する。

 風を切り、林を駆けて、火炎を纏い、山を抜く。
 このジツをマスターしたニンジャは、あらゆるフーリンカザンを制したという。
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