【忍殺実況】ヤモト・コキ育成計画.mp0【完結】   作:いらえ丸

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誤字報告兄貴ありがとナス! シリアスな場面の誤字ほんと恥ずかしいですけど、誤字報告兄貴のおかげで私は元気です。感謝!

あと、途中で「何でここで!?」ってなるシーンがあるかもですが、一応意図あっての事なのでごあんしんください。


#18「ヤモト・コキ育成計画.mp18(終)」

 アヤメ・ユズリハは幸せな少女である。

 

 アヤメの身体は弱い。生まれつきの難治性疾患を抱えたその身体は、体調次第でごく短い階段の昇降さえ困難な程である。アヤメ自身は覚えていないが、幼少期には生死の境を彷徨った事が何度もあった。アヤメにとって、生と死の境界線はあまりにも近かった。

 

 脆く、虚弱な身体に思う事がないではないアヤメだったが、決して自身の生まれを卑下する事はなかった。アヤメには心優しい両親がいたからだ。ユズリハ夫妻は一人娘のアヤメを深く愛し、親身になって育てた。アヤメは生まれながらに不自由な身の上だったが、生まれながらにして存在そのものを肯定されていた。

 

 敏いアヤメはそんな両親の愛を一心に受けた事で、マッポーの世では珍しい健やかな心根を持つに至った。その心根の豊かさは疲弊と退廃が沈殿するネオサイタマ中央病院において、医師や看護師にとっての癒しとなっていた。アヤメの笑顔は、人を和ませる力があったのだ。

 

 父の言葉を覚えている。「僕らにとって、アヤメが活きてるって事が何よりも嬉しい事なんだ」父は年甲斐もなくカトゥーンヒーローに憧れる純粋な目をした男性だった。それでいて力強く、聡明で、ハイカラだった。サムライ探偵サイゴは、アヤメにとってもバイブルだ。

 

 母の言葉を覚えている。「誰かを恨んだり、妬んだりしても、決してやっつけてしまおうだなんて思っちゃダメよ。例えどんな理由があっても、他人様の自由を奪う事は良くない事なのよ」母は長く美しい髪を流す、心に一筋通った女性だった。父と比べて小さな背丈だったが、二人の並び立つ姿はいつも対等だった。身体が良くなったら、アヤメも母のように髪を伸ばしてみたいと思っていた。

 

 アヤメ・ユズリハは幸せな少女である。

 

 しかし、弱肉強食のサツバツ・メソッドが蔓延るネオサイタマにおいて、力なき者の幸福というものは、あまりにも脆く、儚い。その日、その夜、その瞬間まで、アヤメ・ユズリハは間違いなく幸せな少女だった。

 

 その日はアヤメの誕生日だった。かねてより医師と相談し、入念な体調管理の下、ユズリハ一家は初めて三人家族で外食した。病院食の薄味に慣れたアヤメにとって、熟練の職人技で握られたスシの味はあまりにも鮮烈な美味であった。アヤメ・ユズリハはその日、生まれて初めてお腹いっぱいになった。

 

 夕食後、三人は手を繋いで歩いた。大人二人の歩幅ではなかったが、家族の歩く道は同じだった。家族皆、幸福と安らぎの中にあった。父がおどけ、母が笑み、アヤメは見た。遠くでこちらを眺め見る、羽飾り付きの帽子を被った、暴威の化身――ニンジャの眼を。

 

 アヤメ・ユズリハは幸せな少女だった。父の言葉を覚えている。母の言葉を覚えている。アヤメは綺麗な心の持ち主だったが、強い心を育んできた訳ではない。アヤメは一人になり、汚らわしい雨に打たれ、一歩踏み出して宙を舞った。そして、ニンジャになったのだ。

 

(((はーい、よーいスタート)))

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

「イヤーッ!」初手はレイズのアペ・スリケンだ。迫りくる超高熱の炎をラバーズは左腕のサークル・ガードで打ち消した。「イヤーッ!」そこに突貫するのはヤモト。桜色を纏った低空ジャンプパンチ! これをラバーズは右腕のサークル・ガードで受け流した。一合で分かる。このラバーズというニンジャは遥か格上のカラテ強者であり、今のレイズでは勝ち目がないという事実が。だが、それが何だと言うのか。

 

「イヤーッ!」姿勢を崩されたヤモトはあえて倒れこむように片手着地し、バネ仕掛けめいて距離を取る。明確な隙である、しかしラバーズは追わず備え、来た。「イヤーッ!」スリ・アシ接近したレイズのコッポ掌打! この日の為に練り上げられたコッポ・ドーのワザマエは片手間で捌けるほど柔ではない!

 

 ラバーズはこまやかな手さばきでレイズの連続コッポ掌打を凌ぐ。「イヤーッ!」ここでラバーズが攻勢に出た。コッポ・インパクトに合わせ身体ごと前に! これぞ暗黒武道技・ボディチェック!「ヌゥーッ!」咄嗟に耐衝撃姿勢を取るも吹き飛ばされ、ネコめいてバランスを取り背後の壁を蹴って再度突進!「イヤーッ!」「イヤーッ!」レイズのトビゲリとラバーズのカラテ・ストレートが激突!

 

 反動で飛び上がるレイズ。追って見上げるラバーズの視界に、サクラ色のカラテ粒子が過る。ニンジャ第六感に従い側転回避! KABOOOM! 見れば先ほどまでラバーズがいた場所に桜色カラテ爆発! 歴戦ニンジャは瞬時にそのインシデントに思い至った。ヤモトによるカラテ・ミサイルである。

 

 獣めいて構えるラバーズを挟みこむように、レイズとヤモトが各々異なる色の双眸を輝かせた。「「せーのッ!」」少女の声が重なり、両者のジツが解き放たれた。四方の棚から桜軍隊が舞い上がり、焔砲兵が必殺を狙う!「「イヤーッ!」」桜火圧殺フォーメーション! 第六感! 首を捻る、火が掠めた! 腕を払う、桜が散った! ラバーズは古代舞踏めいた動きでジツの圧殺連携を避け続ける! おお、なんたる死と隣り合わせめいたワザマエによるカラテとジツの拮抗とサクラとカトンによる相生の連携か! BOOOMBOOOMBOOOM! KABOOOOOOOM!「「イヤーッ!」」

 

「イヤーッ!」ヒュパウン! 間断なくアペ・スリケンを投擲していたレイズが一瞬の隙を見抜いてカトン鞭攻撃!「ンアーッ!」異常な反射神経で身をかわすラバーズだったが、レイズの精妙な鞭捌きを読み切れず装束一部焼却!「イヤーッ!」ヤモトの倉庫保管オリガミ・ミサイルが追撃!「ンアーッ!」腹部直撃!「「イヤーッ!」」「イヤーッ!」更なる追撃を見据え大きくバックフリップするラバーズ。追いすがるオリガミ・ミサイルが倉庫の床に田植えめいて突き刺さる!

 

「ハァーッ! ハァーッ!」ヤモトは苦しげに息を吐いた。その顎には一筋の汗。「スゥーッ! コォーッ!」レイズは冷徹に呼吸を整えた。その瞳には氷の中で燃え続ける憎悪の炎だけがあった。見ればラバーズを包囲旋回していたオリガミ・ミサイルは大きくその数を減じている。ヤモトの血中カラテ的アウト・オブ・アモーである。

 

「綺麗な連携だったが、もう終わりなのかい? 寂しいなぁ、もっと私を痛めつけておくれよ」バサリ、歌劇役者めいてマントを払うラバーズ。その身には小さな傷こそあれどカラテに支障はないように見える。対する少女ニンジャ二人は疲弊して次なる攻勢に出られない。「ンー、だったら、私から攻めてしまおうかな」言うが早いかラバーズは暴風となってヤモトに突貫。「イヤーッ!」息を呑むヤモト。「イヤーッ!」そこにレイズのインターラプト! 槌めいて振り下ろされたチョップをクロスガード!

 

「イヤーッ!」ラバーズは辛うじて防御するレイズをグイグイと押し込んでいく。ニンジャ筋力の差は歴然だ。「イヤーッ!」側面からヤモトのケリ・キック!「イヤーッ!」ラバーズはブリッジ回避。突然拮抗を失ったレイズが前のめりに倒れこむ。「イヤーッ!」「ンアーッ!」瞬間、コートを掴まれたレイズが投げ飛ばされる。ラバーズのトモエ投げだ。「イヤーッ!」ヤモトのフォーリャセッカ!「イヤーッ!」ラバーズは連続後転で回避。

 

「イヤーッ!」後転の勢いそのままケマリ・ボールめいて垂直跳躍したラバーズ。追いすがるヤモトの視界に、雨霰と鋭利な矢羽根が降り注ぐ。「イヤーッ!」刹那の逡巡、ヤモトは跳躍した。迫る矢羽根をドウグ社製ブレーサーで弾き、時に掴み取っては投げ返す。「イヤーッ!」「イヤーッ!」エリアル・カラテが交錯!

 

「思い切りが良い。だがコレはどうかな?」すれ違う寸前、ラバーズは不可思議な空中制動で以てヤモトの腕を掴み、羽交い絞めにした。バン! と音を立てて更に上昇!「イヤーッ!」藻掻くヤモトだったが、今度は天井を蹴って高速回転急降下! 暗黒武道技・アラバマオトシだ! このままではヤモトの頭は床にたたきつけられ無残な事になってしまう!

 

 回転する視界、接近する床、迫りくる死。その時、ヤモトの視界の隅に白と火の線が迸る!「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」落下するヤモトにレイズの水平インターラプト・キックが突き刺さる! レイズの加減とヤモトの鍛えられた腹筋がダメージを最小限に抑える! 互いをひしと抱え込み着地するヤモトとレイズに対し、悠然とウケミを取るラバーズはなおも余裕げにマントを揺らし、唇を半月にして笑んだ。見つけたのだ、彼女らの弱点、最も自分好みの終幕を。

 

「イヤーッ!」レイズが駆ける!「イヤーッ!」ヤモトが駆ける!「イヤーッ!」ラバーズが矢羽根を飛ばして迎撃する!「「イヤーッ!」」二人は虹色矢羽根弾幕の隙間を縫い、弾き、突破した!「イヤーッ!」ヤモトが掌握した矢羽根を桜色に変えて投げ放つ! 第六感に従い側転回避するラバーズ。「イヤーッ!」BLAM! 重金属弾! 強矢羽根相殺!「「イヤーッ!」」地を這うように迫るレイズと低空跳躍で迫るヤモトが上下方向から同時にカラテを見舞う!

 

「「イヤーッ!」」掌と拳を蹴り相殺!「「イヤーッ!」」「イヤーッ!」サクラとカトンを矢羽根相殺!「「イヤーッ!」」「イヤーッ!」上下反転しカポエイラと足払いを低空制動回避! カラテが、ジツが、連携が! あらゆる手札を晒す二人に対し、ラバーズは的確なアンサーで応じ続ける! なんたる極まったカラテ技巧!

 

 ヤモトの胸中に焦燥感が過る。このままでは、負ける。連鎖するようにネガティブな思考が湧き出てきて、少女の未成熟なニューロンを侵食していく。集中が乱れ、カラテが鈍り、レイズとの連携に綻びが生じた。ラバーズが嗤う、なんと幼く美しい。

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」強かケリ・キックを受けて跳ね飛ばされるレイズ!「イ、イヤーッ!」ヤモトは慌ててポン・パンチを放った!「イヤーッ!」「ンアーッ!」だが、読まれていた。大振りの攻撃は大きな隙を生じさせる。絡めとるように受け止められ、ヤモト・コキはいとも容易く関節を極められ、流れるように拘束。「イヤーッ!」もがくヤモトだが、ジュー・ジツの差は歴然。再度、ヤモトのニューロンにネガティブな思考が過った。

 

 ラバーズは薄く笑み、マント内側から黄色の矢羽根を取り出した。「イヤーッ!」もがくヤモト。「イヤーッ!」接近するレイズ。グイと引っ張って、ラバーズはヤモトの細い首筋に黄色矢羽根を突き刺した。「ンアーッ!」ヤモトの体内に即効性の麻痺毒が侵入。「イヤーッ!」レイズのインターラプト! ラバーズはヤモトをあっさりと解放し、大きくバックステップを踏んだ。

 

「ンアーッ麻痺毒!」解放されたヤモトは立ち上がろうと足に力を込めたが、動かない。不思議と意識はハッキリしているが、身体だけが自由ではなかった。「イヤーッ!」身動きの取れないヤモトを確認したレイズは黄色矢羽根をカトン焼却しラバーズ目掛け突貫!「「イヤーッ!」」激突!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」緩んだガードを縫うようにラバーズのランス・キックがレイズの腹部に突き刺さる! 蹴り飛ばされ、ごろごろと転がるレイズはうつ伏せで痙攣するヤモトのちょうど眼前で是正し立ち上がった。「レ、レイズ=サン……!」背後から声。レイズは荒い息を吐いてコッポ・ドーを構えた。「いいぞ! 本気で来い! 君の執念はそんなものか!?」視線の先、ラバーズはスター役者めいて両手を広げた。

 

 ボウ、とレイズの身体各部が火を吹いた。「スゥーッ! コォーッ!」呼気の度、吹き上がる火勢が強まっていき、やがてレイズは炎を纏うに至った。セルフタキギ・ジツである。「それでいい、それでいいんだ! ALAS! なんと猛々しくも儚く美しい! そう、本気でぶつかって来い、さもなくば!」ラバーズは羽根付き帽子の位置を直した。「君の目の前で、その娘を殺してしまうぞ!」そしてレイズは火の化身と成った。

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

「ハァーッ! ハァーッ!」非常灯が照らす廊下をマト・ノキアミは必死になって走っていた。カチグミのたしなみとしてカラテ段位こそ高いが、寄る年波には勝てずすぐに息が切れてしまった。だが、ノキアミは立ち止まる事はできない。「どこ行った!?」「ツカマエンゾ!」「逃がしたらケジメだ!」追手の声が近い。ノキアミは痛む足に鞭打って走った。そう、絶対に捕まってはならないのだ。

 

 ノキアミは思い出す。つい先ほど、管制室に殴りこんできた機動隊から文字通り命がけで逃がしてくれた部下の顔を。凶弾から身を挺して守ってくれた同志たちの顔を。「ハァーッ! ハァーッ!」ノキアミは走る。走って、逃げ切って、再起せねばならない。彼らの命を無駄にせぬ為に。

 

 やがて、ノキアミは非常用の隠し通路前に到着した。気が付けば追手の怒号は遠い、上手く逃げられたようだと安堵の息を吐いた。「ハァーッ! ハァーッ! フゥー、よし」息を整え、ノキアミが隠し通路のギミックを解除した、その時である!

 

 グイ! と何者かの手がノキアミの襟首をつかみ上げ、尋常ではない膂力で以て引っ張られる。「グワーッ!」そしてそのまま隠し通路内の壁にたたきつけられ、流れるように扉が閉まった。「よう、待ってたぜ、ノキアミ=サン」眼前に声。喧騒を遮断された隠し通路内に男の低声が反響する。

 

「き、君は何者かね!?」言い終えると同タイミングで、眉間に冷たい感覚。「おっとテメェは答える側だ。命が惜しけりゃ俺の質問に答えろ、いいな?」言葉が詰まり、反射で頷くノキアミ。暴力とは無縁の生活をしていたノキアミとて、眼前で静かな暴力衝動を抑える者がいればその感情の熱量を推し量る事はできる。

 

「まず一つ。カネモチ・インフェルノ事件、もちろん知ってるな? アレ、裏で糸引いてたのは、テメェだな? おっと嘘を言うなよ? デッカーは皆、訓練を受けてるんだぜ」言葉の濁流に押し流されまいと思考を続けるノキアミは、生存重点で事実を話す事にした。いつ目の前のイカレデッカーが暴れるか分かったものではない。一度冷静にさせねば。「は、半分事実だ。最初は暗殺の予定だったが、計画を持ち掛けられた。そ、ソッチの上のハラダキ=サンと、ウチの上のイシマキ=サンだ。マッポとオムラの内部政治が、ちょうど私の目的と噛み合ったんだ」

 

「そうかよ……」呟く男の銃口は下りない。男は低声でさらに問うた。「標的はユズリハ・タノシイトイズCEO、カリスマ持ちのやり手が生きてるのは嫌だった。そうだな?」「ああ」男の声は低い。「目的は開発中のオモチャに使われる予定だった動作プログラム」「ああ」男の声は低い。「事件後、ユズリハ・タノシイトイズはテメェんトコに買収され、元いた中枢の社員はみーんな事故か病気で死んじまった。お前の仕業か」「ああ」男の声は低い。「そういやァ両親が亡くなったCEOの娘に見合い話を持ってきたのはテメェん家だったな。カネ目当てか」「ああ」男の低声が震える。「だが娘は自殺しちまった訳だ、残念だったな」「ああ」

 

「エート? つまり、テメェは技術欲しさにCEO夫妻を殺したと。ついでに口封じでユズリハ社員も殺したと。オマケにカネ目当てで娘も狙ったと。そういう話か? ン?」男の声が一段高くなった。まるで宴席で笑い話を聞いたかのように。「ああ、そうだ。よくわかったな。優秀なデッカーなんだな、君は」ノキアミの思考が高速回転する。どうやらこのデッカーもどきは事件の真相を知れて満足している様子だ。上機嫌な今こそ希望の道が繋がる。「どうだね、私と取引しないか? この隠し通路の事を……」「ザッケンナコラー!」「グワーッ!」

 

 突如として激昂した男の拳がノキアミの右頬に直撃! ノキアミは勢いよく通路の床に叩きつけられた。「な、なにをするのかね!」反射で憤慨するノキアミの胸倉をつかみ上げ、デッカー風の男――ソメイ・シモムラは顔を近づけて怒鳴った。「人の命を何だと思ってんだテメェは!」「グワーッ!」再度拳が直撃!「技術の進歩!? ビズの拡大!? 何だってそうテメェらクズのカチグミは人命を軽く見れる!」「グワーッ!」掴み上げ、再度パンチ!

 

「生きたかっただけなんだよ! 一人じゃ生きてけねェんだよあの子は!」「グワーッ!」「五体満足で! 健康で! なに不自由なく生活できて! そのくせ必死に生きてる奴の足まで引っ張る!」「グワーッ!」「何でもっと共感できねぇ!? 何でもっと富もうとする!? テメェらみてぇな賢いバカは! 犠牲になったモンの事を一切まったく気にも留めねェ!」「グワーッ!」

 

「テメェの満足の為だけに! 人の命を踏みにじるんじゃあ、ねェーッ!」「アバーッ!」シモムラの全力カラテストレートがノキアミの顔面に直撃し、ノキアミは白目をむいて気絶した。「ハァーッ! ハァーッ!」暗く狭い通路内にシモムラの荒い呼吸音が響く。

 

 やがてシモムラはセイシンテキを整え小さく息を吐いた。激しい怒りの後、胸中に過ったのは虚しさだった。シモムラは胸ポケットの写真に手を当て、呟いた。「……そう。どんな理由があっても、誰かを殺すなんて事は、やっちゃいけない事なんだよな……アヤメちゃん」

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

 炎を纏うレイズは、まさに半神の名に相応しい存在となっていた。矢羽根が翔んで煤が舞い、火蛇が全てを呑み込んだ。人の居ない研究室の奥底、神話的暴力の衝突はもはやヤモトの踏み込める領域ではなくなっていた。

 

 火の線を引いて駆けるレイズ。手に手に高速回転する高熱スリケンを生み出し、投擲! 対するは白鳥めいて低空を跳ねるラバーズ。マントの奥から虹色矢羽根弾幕を生み出し、射出! BOOOOOM! 着弾! 相殺!「「イヤーッ!」」掌打と拳が激突!

 

 重い、ラバーズは切り札を切ったレイズのカラテ段位に驚嘆した。凡そ外見で推し量れる年齢から逸脱した素晴らしいカラテである。迫る殺人肘をブロックし、ラバーズも次なる手を打つ事を決意し、素早くバックフリップした。

 

「イヤーッ!」ラバーズのマント内側から紫色の矢羽根が射出される。スリ・アシ接近するレイズだったが、脳裏に響く警鐘に従い無理やり全身を使って回避した。過ぎ去る紫矢羽根はやがて壁面に突き刺さり、音を立てて壁を溶かした。酸の矢羽根だ。レイズの脳裏に新たな情報が書き加えられる。奴の放つ特殊色矢羽根に被弾すれば実際アブナイ。

 

「イヤーッ!」溜め動作の後、ラバーズは再度新たな矢羽根を射出した。遠距離戦はなお不味い、レイズは矢羽根の色を認識しつつ雷めいたジクザグ移動で接近! ムラサキ2つにアオ3つ、縫って……避ける!「イヤーッ!」勢いそのまま低空ジャンプパンチ!「イヤーッ!」ラバーズはブリッジ回避でこれを避ける!

 

「イヤーッ!」惑う事なくカポエイラ追撃!「イヤーッ!」メイアルーアジコンパッソで迎撃! ウェイト差ではじき返されたレイズは空中でデッカーガン発砲! BLAMBLAMBLAM! ムラサキ矢羽根撃墜!「イヤーッ!」矢羽根を貫通した重金属弾チョップ切断。レイズは獣めいて着地し、なおも距離を詰める!

 

 ラバーズはマント内側にカラテを込めた。「イィヤァーッ!」バシュゥン! 七つの色付き矢羽根射出! レイズの視界が鈍化する。飛来する矢羽根はアカ、オレンジ、キ、キミドリ、ミドリ、アオ、ムラサキ! とどのつまり、全てを避けねばならぬのだ! レイズは、あえて、前へ!

 

 アカ矢羽根、肩を落とす。オレンジ矢羽根、左足を上げる。キ矢羽根、右腕を引く。キミドリ矢羽根、軸足をずらす。ミドリ矢羽根、素早く倒れこむ。アオ矢羽根、床を叩き宙へ。ムラサキ矢羽根、ジツで焼く。そして世界の速さが蘇る。「イヤーッ!」レイズの空中回転カカトオトシ! ラバーズはサークルガードでこれを受け流す!

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」渾身のカラテを受け流され、返す拳がレイズの横腹を打った!「イヤーッ!」「ンアーッ!」殴り飛ばされ、特殊矢羽根を警戒するレイズに痛烈なダッシュキック!「イヤーッ!」矢羽根射出! 反射的に全力回避するレイズだが、よく見ればそれは通常の虹色矢羽根!「ンアーッ!」大腿に痛み、キミドリ矢羽根が突き刺さっていた。「イヤーッ!」咄嗟にカトンで焼き落とすレイズだったが、即効性の毒が体内を侵す。グラリと意識が揺れ、片膝をついた。

 

「睡眠毒さ、愛用の。ニンジャだってすぐに眠たくなってしまうほど強力な。ふふふ……」構えを解き、悠然と両手を広げるラバーズは、薄い笑みを浮かべて歩み寄ってくる。「イヤーッ!」残り一本となった投擲ナイフを腕に突き刺し、気付けするレイズ。何たる復讐心!「アー、良い……本当に、何てカワイイんだ君は……」荒い息を吐きカラテを構えるレイズを見て、ラバーズは達しかけた。「でも、そろそろカーテンコールの時間だよ」ラバーズは黒い矢羽根を取り出し、下唇を舐めた。

 

 

 

ーーーーーーーーーー読み込み中なーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヌゥーッ!(ボタン連打)

 動け、動けってんだよこのポンコツが!

 

「イヤーッ!」

 

 この手に限る(解毒)

 

 さて、敵の体力を半分ほど削れましたが、ぶっちゃけもう体力がゼロ! ゼロ! ゼロ! ゼロ! なレイズちゃんはこのままでは勝ち目がありません。死んでしまいます(ミツバチ)

 先ほどはついムキになってタイマン張らせてもらいましたが、こうなりゃ手加減は抜きだ。ヤモト=サンを回復して今度こそ囲んで棒で叩きましょう。

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 体力半分になって使ってくるようになったっぽいこの黒い羽根は、まぁどうせ当たったらヤバいっぽいので全力で避けます。弾いてもいいんですけど、弾くと爆発! とかそんなん多いですからねこのゲーム。安パイはやっぱ回避です。

 

 したら距離を取ります。矢羽根弾幕が飛んできますが概ね既にイクサで把握してるので余裕です。今回は無理に突っ込む気がないので横移動で上手い事ひょいひょい避けましょう。

 

「スゥーッ! コォーッ!」

 

 はい、隙が出来たらイロリ呼吸で血中カラテを回復させます。これがあるからジツを使いまくってもなかなかガス欠が起きないんですね。

 

 血中カラテが回復したら良い感じに誘導してヤモト=サンの元に向かいます。おう! お久しぶり!

 今のヤモト=サンは麻痺毒でンアってるので流れ弾が当たらぬようメイン盾してあげましょうね。ナイトがいないLSに未来はにい。

 

「レイズ=サン……!」

 

 お待たせ、回復系ジツしか無かったけどいいかな?よし、じゃあぶち込んでやるぜ。ボッ!(イロリ・ジツ)

 

 これ、視聴者兄貴達はお忘れかもしれませんが、レイズちゃんはこのイロリ・ジツという範囲回復ジツを使う事ができるんですよね。ぶっちゃけ使い道限られるのでほとんど死に技な気もしますが。

 このイロリ・ジツですが、前にも言いましたが一言で言うとダクソの「ぬくもりの火」です。回復ジツと言っても所謂範囲リジェネ系ですね。回復には時間がかかります。なんか……あったかい……!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 おっとさせねぇよ?

 ヤモト=サン目掛けて飛んできた矢羽根は全部前に出て弾きます。ふぅ、今のは弾いてダイジョブな奴だったのね。

 

 とはいえ色々コワイので弾き用に近くに堕ちてたバールのような物を拾っておきましょう。これで勝つる! オラオラ来いよオラァ!(武器を拾って強気になるキッズ並みの威勢)

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 おうそんなんじゃ虫も殺せねぇ――。

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 オォン!(被ダメ)

 

 フジキドめいた飛び道具からの近接カラテコンボは流石に痛いですね、これは痛い。

 さっきちょこっと回復した分の体力がパーですよ。まるで幕之内一歩のパンチみたいだぁ(直喩)

 

 とはいえ近接カラテはこちらにとっても望む所=サンです、バールなんて捨てて殴りかかりましょう。イヤーッ!

 ホラホラホラホラ! どんどんイクぜー!?

 

 けっこう長い間殴り合い宇宙やってたので。このラバーズ=サンのカラテの癖はだいぶ見えてきましたね。

 多分、ベースのカラテはややスピード寄りのベーシックスタイルですね。そこにジュー・ジツとカポエラ、各種ドク・ジツと飛び道具の羽根。あと一回だけ使ってきた空中機動。そんな感じでしょうか。実際オールラウンダーな。アトモスフィア的に、まだ何か隠し持ってそうな感じもありますね。

 こういうタイプのニンジャは実際隙が無く正面から打倒せざるを得ない訳ですが、まぁ見ててくださいよ。

 現状のレイズちゃんのカラテでは自傷バフで拮抗できる程度ですが、もう少ししたらヤモト=サンが復帰すると思うので、そしたら今度こそフルボッコです。

 

 具体的な殺り方ですが、まず飛ばせない事、空中戦では勝てません。飛び道具はブレーサー持ちのヤモト=サンに封殺してもらって、近接はジツ併用で削ってく感じでいけばダイジョブでしょう。

 

 おう! てなわけでヤモト=サンはよ復帰してくれや!

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 オォン!(矢羽根被弾)

 

 えっ、近接でも羽根攻撃してくんの? そんなムーヴ、僕のデータにないぞ!?

 

 あっばばばばば! なんてこったい! う、動けねぇ! グワーッ麻痺毒! 麻痺毒グワーッ!

 

 オォォォッォォ! 俺は負けねぇぇぇぇぇ!(ボタン連打)

 しゃあゴルァクソボケェ! (復帰成功)

 じゃあ、これまでの仕返しをたっぷりとさせてもらおうじゃねぇか。

 

 あっ、おい待てぃ! ロックをヤモト=サンに向けるのはちょっとやめないか! まずいですよ!

 オォォォ! 間に合えェェ!

 

「ヤモト=サン! 逃げ――」

 

 オォン!(矢羽根被弾)

 ふぅ、弾きこそできませんでしたが文字通り身を挺してヤモト=サンを守れましたね。まるでルフィを庇うエースみたいだぁ(直喩)

 

 まぁさっき食らったのも色付き羽根なのでボタン連打で解毒すれば何とかなるなる。

 ……ならないんですけど(困惑)

 

 あっ! これ麻痺毒じゃねぇ! HP削る系の毒だ!

 しかもセルフタキギ・ジツが切れて反動で動けねぇ! どどっどどうすっぺどうすっぺ! こ無ゾ!?

 誰かー! 誰か助けてー! ママーッ!

 

「レイズ=サン! 嫌だ! 早く逃げて!」

 

 あぁ……ダメみたいですね(諦め)

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 オォン!(死亡)

 

 

 

◆ゲームオーバーな◆

 

 

 

 おお、投稿者よ、死んでしまうとは情けない。

 

 まぁちょっと準備不足かなって。仕方ないね(レ)

 

 ていうか現状で戦うには荷が勝ちすぎる相手ですよね、ラバーズ=サン。強すぎィ!

 彼女、たぶん生フジキドレベルのカラテでしたよ。実際強い。ショップに並んだらすぐ購入しましょう。

 

 なんでそんな余裕かって? そりゃ余裕ですよそりゃ(玄人の風格)

 私めは何だかんだいってガチ勢。一度見た技は効きません。次戦ったら勝ちます(慢心)

 いかんせんラバーズ戦は序盤の動きがまずかったですね。今度はもっと上手に立ち回ります。

 

 はい、てなわけでコンティニュー!

 

 ……できないのナンデ?

 

 あっ!(MUR)

 

 オートセーブ切ってた(遠坂家並みの凡ミス)

 

 エート、つまりその……まだ把握しきれていないのだが……。

 やってた途中のデータが? データが、保存できてなくて?

 読み込めないから、直前から続きが……? できない?

 その上、上書きセーブもしちゃってて……?

 

 すぅー……(前準備)

 

 ヌゥン!ヘッ!ヘッ! ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!

 ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!

 ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!

 フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!

 フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!(大迫真)

 

 ああああああああああああああああああ! もうやだぁあああああああああああああああああああ!

 

 あんまりだァあああああああああああああ! HYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!

 

 ……ふぅ、スッとしたぜ。

 俺は他の投稿者兄貴と違って、ちと荒っぽい性格でな~。

 収録時にミスってトチ狂いそうになると、泣きわめいてストレスを発散することにしているのだ。

 

 えー、てなわけで~。

 

 申し訳ないのですが白髪赤目イキりコートロリレイズちゃんの物語はここで終了デスネー。お疲れ様でしたー!(ヤケクソ)

 

 とはいえヤモト杯には出る予定ですので、別の動画シリーズとして次周を投稿しようと思います。

 次周はもっと上手い事やれるでしょう。まぁ初見なんてこんなもんです。何事もトラエラですよね。

 

 それじゃ、視聴者の皆さんサヨンナラ!

 次動画シリーズは概要んトコにリンクぶち込んどくのでぜひ見てってね! ご視聴、ありがとうございましたー!

 

 

 

◆ーーーーーーーーーー◆ーーーーーーーーーー◆

 

 

 

 レイズの胸元から、手袋に包まれた手刀が生えている。ヤモトは眼前で起きたインシデントを呆然と見る事しかできなかった。ゴポリとレイズの唇から血泡が漏れ、炎の消えた瞳をヤモトへ向けた。視線が合う。ヤモトは手を伸ばそうとした。だが、できなかった。身体が動かない。

 

 小さく、か細い声がヤモトの耳朶に届いた。今にも消えてしまいそうなほど弱々しい、まるで死の寸前の病人めいた声が。「ごめんなさい、ヤモト=サン……」レイズの双眸から、色が失せた。

 

 引き抜かれる手。崩れ落ちる矮躯。今になって持ち上がりかけた右手が、レイズの身体に触れた、その瞬間。「サヨナラ!」レイズはしめやかに爆発四散した。

 

 ぼう、とソウルの残滓が拡散し、倉庫のあちこちに引火し燃え上がる。火葬めいて巡る火が哄笑する鬼を照らす。鬼の角は羽飾りだった。ヤモトの意識が遠くなり、ソーマト・リコール現象を引き起こした。家族、トモダチ、ニンジャソウル……。「レイズ=サン……?」

 

「そ、んな、嘘……レイズ=サン? ああ……!」ヤモトは手のひらに残る温もりの火をかき抱いた。暖かな熱が少女の魂を慰める。涙がひと筋、流れ落ちた。「そんな! 嫌ぁ! 嫌だ! レイズ=サン!」ニンジャに涙は許されぬと、聞かされた事がある。だが、しかし、だというのなら。「アタイは……!」

 

 レイズは死んだ。ヤモトは泣いた。ラバーズは嗤っていた。炎纏う復讐鬼は、あまりにも呆気なく命を落とした。

 

 

 

■ーーーーーーーーーー■ーーーーーーーーーー■

 

 

 

「ヤモト・コキ育成計画」終わり。

 

 

 




 主人公は敗北した。

 観測者は去り、復讐の導きは消失した。

 死の境界線を超え、少女はまた独りになった。



 助けはない。
 慈悲もない。
 機械仕掛けの神もない。

 因果応報。
 諸行無常。
 月は黙して語らない。

 仇討ちは成らなかった。
 ネオサイタマではありふれた、
 か弱き少女の復讐劇は、ここでおしまい。



 だが、物語は続く。



 新たな復讐劇の幕開けではない。

 新たな英雄譚の始まりでもない。



 そう、ここから先は。



 ――友達の為の物語だ。






 次回、最終回。

「ビヨンド・ザ・ウォール」

 ユウジョウは見返りを求めない。
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