【忍殺実況】ヤモト・コキ育成計画.mp0【完結】   作:いらえ丸

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誤字報告兄貴ありがとナス!
前話ではケジメレベルのタイプミスをやらかしてしまい大変お恥ずかしい限りです。
そんな誤字脱字の多い投稿者ですが、今後も本作を読んでってくれると嬉しいです。

あと、感想受付設定がログインユーザーのみになっていたのを非ログインユーザーからも受け取れるように修正しました。気づいてませんでした。ついでに前作もそのようにしました。
感想はモチベに直結するので、気が向きましたら何か書いてやって下さい。投稿者が喜びます。


#7「ヤモト・コキ育成計画.mp7」

 ヤモト・コキは体育館の壁を背に、十数人のジョック学生に包囲されていた。彼らの肩幅は一様に広く、胸板は分厚い。如何にもな肉体派だ。「で、どれくらいやっていいの? アキナ=サン?」ケマリ部主将の問いに、アキナと呼ばれた厚化粧の少女は歯をむき出し、鼻を鳴らした。「その顔がイカ・ジャーキーになるくらい!」

 

 酷薄な指令を聞き下卑た笑みを浮かべる男子学生達を前にして、ヤモトは曇天の空を見るでもなく眺めていた。遠くでバイオスズメが飛んでいる。「そういうトコよ! カワイイ顔していつも見下す!」アキナが吠える。好色そうなヤブサメ部員が拳を鳴らして迫ってきた。ここにきて、ようやくヤモトは彼らに視線を向けた。眼前に拳。掴んで、捻って、折った。「アイエエエエエ!?」ヤブサメ部員は痛みに泣き叫んだ。

 

 これで泣くのか。ヤモトはどうにも不思議な気持ちになった。まだ左手が残ってる、そっちで殴ってくればいいのに。ヤモトのニューロンはあの日の殺戮をリピート再生していた。無慈悲で、一方的で、圧倒的なニンジャのイクサを……。「カラテ!?」「聞いてない!」「マジックでしょ!」

 

 掴みかかってきた、指を折って蹴った。「アバーッ!」飛んで蹴ってきた、蹴り返した。「アバーッ!」後ろに回っていた、カカトで玉を壊した。「アバーッ!」ヤモトは淡々と暴力を行使し、粛々と雑事をこなした。男子生徒があらかた倒れた後、ヤモトの意識は現実に戻っていた。血だまりに沈むジョック塊の外、ケマリ部主将とチアマイコ部のアキナが抱き合って震えていた。

 

「えっと……」ヤモトは言葉に悩んだ。どう言えばシツレイにならず、穏便に事を済ませられるか。悩んでいるうち、結局二度と喋れないようにすればいいんじゃないかと思った。つまり、殺せば何とかなるのではと。「ス、スッゾオラーッ!」その時だ。ケマリ部主将が恐怖を振り払うように構えた。ボクシングだ。脅威にはならなさそう。

 

「シュシューッ!」ジグザグ機動で接近するケマリ部の主将の顔を、その時ヤモトは初めてはっきりと視認した。恐怖に引きつったモータルの顔を。(((アタイ、怖がられてるんだ)))ヤモトはその顔を見た事がある。そう、あの時のイクサを見ていたアサリの顔だ。あの時の、弱者がニンジャを見る顔だ。

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」けん制のジャブを掴み取り、地面に転がす。上手く制御できた。我知らず、ヤモトはワザが成功した喜びに打ち震えていた。「ア、アイエエエエ!?」アキナは失禁逃走! 何か伝えようとしていた気がしたが、どうでもよくなった。また何かあったら殴ればいい。ヤモトは倒れる男子学生を足蹴にその場を離れた。

 

「ヤモト=サン!」ぼーっと歩くヤモトに一人の女子高生が駆け寄ってくる。「ヤモト=サン! 大丈夫!? さっき、運動部の人たちに連れてかれたって!」アサリだ。彼女の息は荒く、瞳が濡れている。ヤモトはハッとなって答えた。「な、何にもなかったよ、ちょっと、お話しただけだから」嘘を吐いた。ヤモトは自身の中に渦巻く暴力性に気が付き、アサリにそれを見せぬよう努めて明るく振る舞った。

 

(((あの子はニンジャで、多分アタイもニンジャなんだ。でも、アサリ=サンはニンジャじゃない……)))ヤモトはアサリの小さな肩を抱いて思った。あまりに脆い。もし彼女がさっきの学生たちに囲まれでもしたら、どんな目に遭うか。(((今からでも殺しておいた方が……)))ヤモトはぶんぶん首を振ってサツバツ思考を追い払った。(((アタイの考えじゃない!)))

 

 ヤモトはまた曇天の空を眺め、心を落ち着けた。無作為に暴力を振るえば、先週のアフロ男子と同じ事になる。やっと手に入れた平穏とトモダチだ。手放してなるものか。「痛っ!」「あっ! ゴメンナサイ!」ヤモトは慌ててアサリの肩を掴む手を離した。「ううん、ちょっとビックリしただけ」アサリは目元の粒を拭って笑んだ。ヤモトはそんな彼女の涙を見て、恐怖した。あまりにも、脆い。

 

 続くアサリの話を、ヤモトは空っぽの心で聞き流していた。恐らく上手に返せていたと思う。オリガミ部、過去、あの夏の日……。ヤモトは自身の手のひらを見た、そこに汚れは一つとしてなかった。拳を見た、血が付いていた。ヤモトは、慌ててソレを拭った。トモダチに気づかれぬように。

 

 

 

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 アスファルト×タイヤな実況プレイはーじまーるよー。

 

 前回はヤモト=サンに一世一代のド告白をぶちかましたらお断りされたところまででしたね。伝説の木はどこ……ここ……?

 それで、裏では来るべきイクサに備え経験値を貯えたりトレーニングしたり……あー、バイクも手に入れたので輸送ビズとかそういう平和なお仕事も多くこなしていました。ここしばらくヤクザは殺してないなー。ま、いつも通り過ごしていました。今現在はモーテルのベッドでザゼン中な。

 

 ちょっとまだ瞑想終わりそうもないので、ザゼンしてるうちに間近に迫ったイクサイベントについてお話しましょうか。

 

 原作既読兄貴はお察しでしょうが、ラスガル冒頭後の次のヤモト=サン遭遇タイミングは例のシーンから約二週間と少し経ったくらい、ヤモト=サンが友達とカラオケに行ってソニブ兄貴に襲われるところです。

 自分の知ってる範囲、つまりウィキにある限りではそのタイミングかそれ以降でないとヤモト=サン関連のイベントは存在しません。現状たぶんソニブ戦が一番ハヤイと思います。

 余談ですが、ソニブ戦は時間経過でニンジャスレイヤー=サンが乱入してきてヤモト=サンを逃がしやがるので、それまでに終わらせないといけません。時間制限があるという事。更なる余談ですがレイズちゃんはそれほど邪悪じゃないのでフジキドとかち合っても八割ダイジョブです。二割はナラクな。 

 

 はいザゼン終了。特に理由はないけどシャワーでも浴びてもらいましょうか。シャーッと流れる音をお楽しみ下さい。

 

 んー、ちょっと目当てのイベントがまだ起きませんね?

 いくらなんでもサウンドオンリーの画面が続くのは気が引けるので……。

 皆様の為にぃ~。

 ソニックブーム=サンについて、詳しくお話します。

 

 ソニックブーム=サンは第一部に登場するソウカイ・ニンジャで、ソウカイヤにおける精鋭シックスゲイツの一翼を担ってたり担ってなかったりする猛者ニンジャです。某伝説の極道めいたイケボの彼はPVPでも普通に強キャラで、その扱いやすさから初心者から熟練者まで幅広い層に愛されているニンジャです。愛されヤクザな。

 画面右下にある画像の通り昭和ヤクザめいたコワイ容貌とは裏腹に、作中ヤモトのジツを見破るため手下のクローンヤクザ部隊をけしかけ一度見に徹するなど意外とクレバーなところがある戦上手です、誓って殺しはやってません!(大嘘)

 宿しているのはカゼ・ニンジャに連なるグレーター級のニンジャソウルで、「ソニックカラテ」という真空波を飛ばすワザを駆使しヤモトとフジキドを苦しめました。なんだかんだ言ってニンジャスレイヤーに何回も攻撃通してるあたり結構強いニンジャだったんですよね。

 彼が体得しているソニックカラテというのはガッツリ遠距離まで届く真空波を通常攻撃でドバーッと飛ばしまくってくるというなかなか厄介なカラテです。しかもソレはスリケンやクナイと違って対応する対策スキルが存在しない固有ワザなので、避けたり凌いだりはプレイヤーのワザマエに依存します。

 おまけにソニブ=サンは近接カラテもこなしますし、ニンジャ耐久力も並み以上に有しています。PCのビルドによっては六門系で最も危険なニンジャになるかもしれませんね。

 そんな彼ですが、原作ではナラクペディアによる「ちっちゃいダメージは無視して近接重点」という丁寧なごり押しでフジキドに力負けし、最期はヤモトの大技でトドメでした。辞世の句は「サヨンナラ!」でしたね。「ン」なのナンデ?

 

 実際、本作でもナラクの言う通りやればダメージはもらうけど普通に倒せるニンジャではありますが、レイズちゃんでは無理です(無慈悲)

 理由は簡単で、前述の戦法はあくまで非凡なニンジャ耐久力を有するニンジャスレイヤー=サンだからできたごり押しであって、実際貧弱なレイズちゃんでは同じ事はできないんです。紙忍者は速攻あるのみなので打ち合いは勘弁な。スキヤキ! フジヤマ!

 なので何も対策せずにこのままソニブに挑むと、一部のリアルニンジャめいたプレイヤーでもない限りリンゴめいて摺り潰されてしまいます。

 

 じゃけん対策しましょうね~。

 

 無いものは外から持ってこればいいんですよ。イクサが近いので本格的に準備すべくお買い物です。さっき確認したところお目当てのイベントNPCが出現してたので急ぎましょう。だから、モーテルで待機する必要があったんですね。シャワー出てお着換えして外出てGOだ!

 各種ショップで素材を買い、イベント武器屋=サンに組み立ててもらってついでに強化もしてもらいます。詳細は後述するかもしれないししないかもしれない。

 

 帰り道、ついでに闇エンジニアに頼んでクロイヌ先輩をカスタムしてもらいましょう。おっちゃん! 後ろらへんのごちゃごちゃした所とか色々いい感じにやってくれ!

 新機能な! アーマー強化な! 問題ない、金はある! スピードが落ちる? 気にするな!(大魔王)

 おっ、ユニーク・バイクを見せてくれたお礼にちょっと割引してもらえましたね。やっぱ好きなんすね~。

 

 武器とバイクを仕上げたら本命イベント地点に移動しておきます。

 向かう場所は原作ヤモト対ソニブ終盤のアノ屋台街です。カラオケ前でスタンバってるとアサリ=サンとかモータルを巻き込んじゃうかもなので、ソニブとやり合うなら屋台街一択です。原作でフジキドがソバ食べてた所ですね。

 ちなみに、本作では主人公が関わるとあのシーンは再現されない仕様になっております。代わりにフジキド登場シーンは特撮ヒーローめいたカッコいいものに変化しています。嬉しいような悲しいような。

 屋台街に着いたら諸々の準備をして、待機です。

 じゃ、イベントが始まるまで時間経過させますので、倍速かけまーす。

 まぁすぐ等速にするんですけどね。

 

 てなわけでソニブイベント開始です。カラオケシーン終了後、しばらくしたらこの屋台エリアに向かってくるので待ち伏せします。

 ついでにクロイヌくんの新機能もしれっと起動して……。

 

 っと、来ましたね。

 

「イヤーッ!」「ンアーッ!」

 

 ヤモト=サンが吹っ飛んできました。ひどいよー(賢聖並感)

 わっ! アイツ女の子の顔をグーで殴るなんて! みんなお退き! お客様とて許せぬ!(YBB)

 

 殺しましょう。

 

 

 

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 崩れた屋台に倒れるヤモトの髪をソニックブームは掴み上げた。「これがカラテの差だ。テメェみてぇなガキ一人、どんだけ足掻いてもこのザマよ」「くっ……」目元に涙を浮かべたヤモトを見て、サディストの金糸ニンジャは嬉し気に嘲笑した。「頼みのオリガミもねぇ、共犯者=サンも来ねぇ、何にもねぇ親殺しのクズが」

 

(((警戒するだけ無駄だったぜ)))ソニックブームは胸中の緊張感を緩め、愉しみの時間を満喫する事にした。掴んだ髪を引っ張り、傷だらけの女子高生を無理やり立ち上がらせる。「サイキックひとつで調子に乗ったクソガキが、スーサイドは理解できなかったがお前はどうなんだ? 社会勉強できたか? エー?」

 

 ヤモトのスカーフが落ち、瞳のサクラも色彩を失くしつつある。「これがシンジケートだ、わかったか?」「うっ……!」ソニックブームはヤモトの首を締めあげた。「いい顔するぜ。お前、オイランになれば相応の暮らしが出来たのかもな」顔を近づけ嘲笑うソニックブーム。彼は悪罵や暴力に性的興奮を覚える性質なのだ。

 

「親殺しのクズがユウジョウ? 笑わせる」ソニックブームはヤモトの頬を打った。「死にかけても大事なオトモダチは助けに来ねぇみたいだが?」ソニックブームはヤモトの頬を打った。「所詮その程度ってこった。お前には、トモダチを守る力も、助けられるだけの価値もねぇ」ソニックブームはヤモトの頬を打った。「滅多やたらに暴力を振り回すだけのクソガキなんだよお前は」

 

 戦意を失ったヤモトを屋台の残骸に投げ捨て、ソニックブームは愉悦の絶頂を迎えんとゆったりとした足取りで接近。周囲に人影はない。尋常ならざるニンジャのイクサを前に、屋台街にいた客や店主は皆逃げ去っていったのだ。

 

 そう、ここにサディストの娯楽を邪魔する者はいない。最高の獲物。最良のシチュエーション。ソニックブームの強く特殊な感情が昂る。マッポは来ない、来るはずもない。聞こえるのは遠くで鳴り響くサイレンと、雑多な喧噪と……。

 

 ジュー……! ジューッ……!

 

「あん?」ソニックブームは踏み出しかけた足を引っ込め、耳を澄ませた。近くの屋台から、油の弾ける音と肉の焦げる香り。ジューッ……ジューッ……! これは、クシヤキ屋の匂いだ。この状況下で、逃げなかった者がいるのだ。

 

「ザッケンナコラーッ!」せっかくの愉しみを邪魔された事で堪忍袋が暖まったソニックブームは、屋台の主に凶悪なヤクザスラングを放った。いかな図太いメンタルの持ち主とて、指向性を持ったニンジャの恫喝には失禁逃走を選ぶであろう。だが、この屋台の主はそのようなメンタリティの持ち主ではなかった。

 

 ビニール張りの屋台から、小さな人影が姿を現した。それは遠近感を考慮してなお矮躯の店主であった。すると、小さなクシヤキ職人はおもむろにクシヤキ・ハットを投げ捨て、ほんの一瞬だけ注意を逸らした、次の瞬間……!

 

「ドーモ、はじめまして、ソニックブーム=サン、レイズです」純白の髪がなびく。漆黒のトンビ・コートがはためき、アイサツ終了のタイミングで首に真紅のマフラーが超自然生成された。その手には焼き立ての串盛りセット! この者、ヤクザ狩りの傭兵ニンジャ・レイズ也!

 

「テメェ、まさか……!」ソニックブームは瞠目した。最近、傭兵として売り出し中のヤクザ狩り傭兵。カトン使いの狂人。ソウカイヤの王からは捨ておくよう言い付かっているが、遭遇次第スカウトするよう命じられている。「ドーモ、レイズ=サン、ソニックブームです。テメェどうして俺の名を」「調べた」

 

 レイズは懐から一枚のメモ用紙を取り出した。「ソニックブーム。ソニックカラテの使い手。金糸のニンジャ装束……悪趣味な」そして、その手の紙片を瞬時に燃やし灰に変えた。「……元ヤクザバウンサー」レイズの双眸に抑えきれぬ憤怒の炎が燃え盛る。「なので、死んでもらう」感情と表情と口調が一致していない、あまりにも冷たい声色でレイズは殺害宣言した。

 

 やはり狂人、スカウトどころではない。ソニックブームは熟練の状況判断でカラテを構えた。「言うねぇ。だが俺様もお前の事は知ってるぜ」言葉の応酬の合間に、ポケット内のIRC端末を操作する。「ただの雑魚狩り専門のカトン・ガールだってなぁ!」ネズミヤロウ遭遇、スカウト不可、イクサに移行。送信……できない!?「イヤーッ!」「グワーッ!」瞬く間に接近したレイズのトビゲリがソニックブームの大腿に直撃! 端末破砕!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」ソニックブームの反撃ショートアッパーをレイズは身を捻って回避。「イヤーッ!」「グワーッ!」捻った勢いを乗せたメイアルーアジコンパッソがソニックブームの横腹に直撃!「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」自傷覚悟のソニックカラテで互いの間合いをリセット! 両者反発磁石めいて後退し、タタミ七畳の距離を空ける!

 

(((IRC対策といい随分用心深いが、なんて事ぁ無ぇ! コイツのカラテは上手いが軽い! あとはデータにあったカトンにさえ気を付ければ……!)))長期間暴力の現場に晒されたソニックブームの冷徹なヤクザロジックが冴え、「イィヤヤヤヤヤヤヤヤーッ!」高速連続ソニックカラテが要塞弾幕めいて放たれた! おお、ゴウランガ! なんたるバイオレンスとロジックの融合した合理的カラテか! これには例えニンジャであっても即ネギトロ即爆発四散! ジツもカラテも力任せに圧殺する超攻撃的イクサメソッド!

 

 対するレイズは迫りくる衝撃波カラテ弾幕を前に予習復習をかかさぬ勤勉学生めいたアトモスフィアで!「イヤーッ!」背中から漆黒の傘を取り出し、バサリと大きな音を立てて展開! ナムサン! ソニックブーム目掛け突進! 何たる極まった覚悟か!

 

 BOOMBOOMBOOMBOOM! 無数の衝撃波がレイズの黒傘に着弾! おお、しかし見よ! 盾として使用された傘の表面には破れた箇所も、汚れも、傷ひとつとして見当たらない!「何ィ!?」さしものソニックブームも瞠目し、弾幕が緩む! その隙を見逃すレイズではない!「イヤーッ!」「グワーッ!」勢いそのまま馬上ヤリめいて突き出された傘が元ヤクザバウンサーの腹部に突き刺さる!

 

 レイズが持っている漆黒のアンティーク風紳士傘は、優秀な闇バイオバンブー職人が手ずから作り上げた特注品である。その名も「アンタイ・カラテ・アンブレラ」。全フレームをバイオバンブーで構成し、通常重金属酸性雨を受ける傘の表面を秘伝の加工技術で強化した、これは耐刃耐衝撃性能を極限まで高めた近代的ニンジャウエポンなのだ! その頑丈さは推して知るべし!

 

「イヤーッ!」「ヌゥーッ!」続く傘攻撃を腕や足でガードし、ソニックブームはカラテで凌ぐ。こうまでソニックカラテが効かないのは驚いたが、ならばワン・インチ・ソニックカラテで圧倒する!「イヤーッ!」ソニックブームのショートアッパー!「イヤーッ!」展開アンブレラでガード!「イヤッ!イヤッ! イヤッ!」構わず左右の小刻みソニックカラテを打ち続ける!

 

 BOOMBOOMBOOMBOOM! 左右の拳から小刻みに放たれ続けるソニックカラテは、まさに殺意を持った嵐そのもの! 如何な堅固なニンジャウエポンとて、そう長く耐えきれるものではない!「スゥーッ! コォーッ!」アンブレラの影で小さな呼吸音が聞こえる!「イヤーッ!」ニンジャ観察力で見つけ出した脆弱部位に、渾身のストレートが差し込まれる! BOOOM! 衝撃波が突き抜け、直線状にバイオモグラの悪戯めいたクレーター! アンブレラとて無事ではない! だがどうにも、手応えがない!「イヤーッ!」 BLAM! 「グワーッ!」右膝被弾!

 

 ソニックブームが痛みを感じた次の瞬間には、彼の膝関節を構成するパーツが欠損していた。「イヤーッ!」眼前に傘!「グワーッ!」だがフェイントだ! ソニックブームの被弾膝にレイズのカトン・ローキックが叩き込まれる! 膝を折り姿勢が下がったソニックブーム! 頭部に来る! ソニックブームは熟練の暴力勘で頭部ガード!「イヤーッ!」「グワーッ!」眼前に迫った拳はまたもフェイント! レイズのカトン・ローキックが被弾膝に直撃!

 

「イヤーッ!」片膝では十分なカラテを込められぬ。ソニックブームは手打ちで近距離ソニックカラテを放つが、被弾膝側に抜けるように回避され、「イヤーッ!」「グワーッ!」すれ違い様、ソニックブームの顎が掴まれ失敗ブリッジめいて押し倒される! そうしてレイズは、流れるようにジツを使った!「イヤーッ!」「アバババババーッ!」顔面炎上! 暴れ藻掻く巨漢をレイズのジュー・ジツが抑え込む!

 

「イヤーッ!!」「アバーッ!」頸部炎上!「イヤーッ!!」「アバーッ!」胸部炎上!「イヤーッ!!」「アバーッ!」腹部炎上!「イヤーッ!!」「アバーッ!」股関節部炎上!「イヤーッ!!」「アバーッ!」左右大腿炎上!「イヤーッ!!」「アバーッ!」左右下腿炎上!

 

 おお、ナムアミダブツ! ナムアミダブツ! なんたる残酷なカトンであろうか! レイズはあえてジツの威力を抑え、身体全体に炎が行き渡るよう調節してジツを行使しているのだ! いくら横暴なソニックブームであってもここまでされる謂れは無い!「イヤーッ!」「アバババババーッ!」

 

「アバ、アババ……アバ……」やがて、レイズは火勢を弱め手を離すと、未だ原型を残したソニックブームは大の字になって倒れた。今となっては、ひと思いに殺してやるのが有情だろう。だが、この男の始末にレイズのカイシャクは相応しくない。レイズは瀕死のソニックブームから視線を外し、首を巡らせ後方を見た。

 

 時を同じくして、レイズの視線の方向から強烈なカラテ圧力が突風めいて押し寄せた。ヤモト・コキである。彼女の口元には一本のクシヤキ串が咥えられ、瞳にはサクラ色の光が宿り、強い意志によって己がニンジャソウルを制御していた。荘厳ささえ感じるその佇まいに、死にかけのソニックブームはなおも慄いた。「アバ……なんだテメェ、なんだそのジツはァ……!?」

 

 小さな桜色断片がヤモトの頭上に凝集していき、やがて形を成した。それはカーボンビニールシートによって折り上げられし、偉大なるサクラ・エンハンスメント・オリガミ・フェニックス! ゴウランガ! 爆誕した不死鳥は更に大きさを増していき、やがて成人男性8人分の直径翼を持つ巨大鳥と成った!「ヤ、ヤメロ……! ヤメテくれぇ……!」ソニックブームは動かぬ肉体を必死に蠢かせ、逃亡を試みる。

 

「ハイクを詠め」耳元にレイズの冷淡な声。ソニックブームは生まれて初めてハイクを詠んだ。「死にたくない/死んでたまるか/生きてやる……」くすりと、小さな笑声が聞えた。「じゃあね」遠ざかる足音。近づいてくる死。サクラ色のオリガミ・フェニックスが甲高く嘶いた。

 

「シ・ニンジャ!」ヤモト・コキの命により、サクラ・フェニックスが翔ぶ。桜の巨鳥は天高く昇り、それはソニックブームめがけて一直線に急降下! KABOOOOOOOOOOOOOM!「サヨンナラー!」ソニックブームは盛大に爆発四散した。その爆発は、元ヤクザバウンサーの断末魔にしてはあまりにも美しく、荘厳であった。

 

 

 

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 やはり、トレーニング後のシャワーは何にも勝る快感だ。綿密に計算されたカラテトレーニングを終え、マイティアームは上機嫌にシャワー室を出た。一通り身体の水分を拭うと、「健康第一」とショドーされた愛用バスローブを羽織ってリビングに入室。室内は暖かな色彩の間接照明で照らされ、光と闇がゼンめいて調和していた。

 

「おや、ホワイトファング=サン! オサキ!」「ドーモ……」リビング中央のソファーには矮躯の少年が座していた。その手には小型ゲーミングUNIX。彼の視線は操作中のプレイヤーキャラクターに定められていた。「ソリッドブラック=サン、死んだんだって」マイティアームとは目も合わせず、ホワイトファングは抑揚なく云った。ぴたりと、マイティアームの動きが止まった。

 

「ソリッドブラック=サンが? 何故?」激情を押し殺した問い。プロテイン袋を掴む手に力がこもる。「さあ? ボクの知った事ではないな」ホワイトファングは巧みなキーボード操作でエネミーを次々撃破。「この事をラバーズ=サンは知っているのかい?」「肯定。君がバーベル持ち上げてる間に、確認しに行くって出ていったよ」「なんてこった!」マイティアームは溢れる感情をプロテイン袋にぶつけた。結果、真っ白な粉末が四散!

 

「ソリッドブラック=サンはとっても良い奴だったのに! 何でアイツが死ななきゃならなかったんだ」!」仲間想いのマイティアームは地団駄踏んで怒りを発散する。新雪めいたプロテイン層にいくつもの大きな足跡を形成。ホワイトファングは表情ひとつ変えずにキーボードをタイプ。「僕も連れてってくれれば!」

 

「行ってきたよ」涼やかな声。決して大きな音量ではなかったが、その透き通るようなウィスパーボイスはリビング全体に響き渡った。「ラバーズ=サン! オカエリ!」ホワイトファングはUNIXの電源を落とし、勢いよくオジギした。「ん、タダイマ」ホワイトファングの頭に温もり。ラバーズは少年に無償の愛を与えた。ホワイトファングの胸中に幸福感が染みわたる。「そんな事よりラバーズ=サン!」マイティアームの大声。

 

「なにかな?」温もりが離れる。ホワイトファングは内心で舌打ちした。「ソリッドブラック=サンの事です! 死んだと聞きました! 一体、誰にやられたんです!?」「ああ、彼は死んだ。下手人は不明だ」「なんてこった!」ラバーズが言うのなら、実際そうなのだろう。マイティアームは頭を抱え嘆いた。「だが……」ラバーズは柔らかな声色で続けた。

 

「彼は独断でビズを引き受け、単独でこれを遂行中、爆発四散した。これは明確なコンプライアンス違反だよ。例え生きていても、判明し次第セプクだった。ホウ・レン・ソウ。彼は大事な事を忘れたのさ」ラバーズは優雅にソファーへ身を沈めた。先読みしていたホワイトファングは従者めいてそっとチャを差し出した。「だとしてもです! 僕は彼の仇を討ちたい!」静かにチャを啜るラバーズに対し、筋骨隆々の肉体派ニンジャは自身の筋肉とカラテを誇示した。「この手で!」

 

「そう来ると思って、調べたんだよ」ラバーズは懐から一枚の写真を取り出し、テーブルに置いた。写真に写っているのはとある一人の青年。如何にもなカチグミ家庭出身で、爽やかなジョックのアトモスフィアがある。「依頼人はクグイ・ノキアミ=サン。寂しがりな男の子。純情で、カワイイ」ホワイトファングは聞き覚えのある名前に反応した。「ノキアミ?」「ああ、そのノキアミ=サンだよ。まさか、彼のご子息にインタビューする事になるとは、思わなかったけどね。結果、情報は実際ゼロだった。彼はその時の事をキレイに忘れてた、NRSだろうね。記録も取ってなかったようだし……」

 

「マチコです! ソリッドブラック=サンのオートバイにはカメラがついてた! マチコを見つければ犯人が分かる!」勢い込むマイティアームに、少年ニンジャの冷ややかな視線が突き刺さる。「ラバーズ=サンのお言葉を忘れたか。情報はゼロだったと、先ほど仰ったばかりだろう」「奪われたのか、壊されたのかは知らないけどね」ラバーズが続けた。「捜索は続けるが、いつまでも彼の尻ぬぐいに注力する事はできない。ある程度続けて成果がなかった場合には……」ラバーズの鋭利な瞳がマイティアームを見た。「申し訳ないけどね」

 

 そう言うと、ラバーズはユノミを置いて立ち上がる。「お出かけですか?」「ああ、またノキアミ=サンの所に。ご子息の事についても報告すべきだろうからね」ラバーズはハット・スタンドからお気に入りの帽子を取ると、それを目深に被った。「イッテラッシャイマセ!」「ああ、イッテキマス」言って、リビングを出た。リビングにはオジギ姿勢を継続するホワイトファングと、堅く拳を握りしめるマイティアームが残された。

 

 ニンジャ派遣会社キラボシ・マーセナリーズの長、ラバーズ。謎多き人物、昨今傭兵界隈で頭角を現してきた超新星。トレードマークは深紅のマントと、会うたびに変わる日替わり帽子。それと、いつも帽子に差してある虹色の羽根飾り。

 

 カネモチ・インフェルノ事件にて、最も多くの命を奪ったニンジャである。

 

 

 

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 夜。ベランダで二人のティーンエイジャーが抱き合っていた。その姿は無関係な一般人が見ても強固なユウジョウを感じ取らずにはいられないような、あまりに邪気の無い抱擁だった。

 

「今日はアイサツに来たんだ」ユウジョウの片割れ、ヤモトが口を開いた。その声色は震え、硬質だ。「アイサツ? お茶を入れるよ、入って」未だ歓喜の中にあるアサリは無意識にヤモトを引き留めようとする。「お茶はいい。辛くなる」ヤモトの声は冷たい。その時になって、アサリは別離を直感した。

 

「アタイ、このままじゃいられないみたい」ヤモトは目を伏せて続けた。「あの時も……アタイ一人だったら多分、もっと怖い目に遭わせてたと思う。カラオケの時も火事じゃなかった。アタイだけで何とかする気でいたけど……ダメだった」ヤモトは自身の頼りない拳を握りしめた。異能の力を手に入れたとて、トモダチひとり守ってやれない。それどころか、危険な思いをさせてしまう。

 

「それでも、アタイは……」ヤモトは精一杯の意思力でアサリと目を合わせた。アサリの純粋な瞳とヤモトの揺れる瞳が交錯する。「アタイ、頑張ってみる。頑張って、何とかできるようにする。必ず、アサリ=サンに何かあったら、必ず駆けつけられるように」

 

「ずっとサヨナラじゃないんだよね?」アサリは訊かずにはいられなかった。ヤモトは頷いた。「うん、きっと帰ってくる」そう言って、ヤモトはアサリの手を握った。モータルの手を、ニンジャの手で砕かぬよう優しく包み込んだ。アサリはとうとう涙を流し、無理やりに笑顔を作った。「ユウジョウ!」「うん、ユウジョウ!」ヤモトは名残惜しむように手を離し、ベランダから跳躍した。

 

 親友との離別を振り切るように、ティーンエイジャーは闇夜を駆ける。その目元に、もう涙の跡はない。ニンジャに涙は許されないのだから。「イヤーッ!」ヤモトはより高く跳んだ。

 

 やがて、ヤモトは人気の無い廃駐車場にやってきた。ここに待ち人がいるのだ。待ち人はモーターサイクルの座席でザゼン・トレーニング中だ。この年下の少女は、時間さえあればイクサに備えている。パチリと少女の目が開いて、赤い二つの瞳がヤモトの目を見た。

 

「ありがとう。待たせたかな」ヤモトは奥ゆかしくオジギした。まだ緊張を隠せないでいる。レイズと名乗ったこの少女についていくと決心してなお、その心には怖れがあった。あるいはそれは今後の事であったり、無慈悲なカラテ戦士である少女そのものへの恐怖なのかもしれなかった。

 

「問題ないです」レイズは抑揚なく答えた。視線でタンデムシートを示した。「なら、良かったけど」ヤモトはそれに従い、レイズの後ろにタンデムした。ヤモトの眼前やや下に、純白の髪で隠れた小さな背中があった。凡そ彼女の持つ無慈悲さとは縁遠く感じる、痩せた背中が。

 

 BOOOM! ドルルルルル! 獣の唸りのようなエンジン音が鳴り、大型二輪はのっそりと動き始めた。やがて大きな道路に出ると、一気にスピードを上げて走り出した。まるで鞭を入れられたバイオホースめいて。「今からどこへ行くの!?」エンジン音に負けぬようヤモトは大きな声で問うた。「家です」レイズは小さな声で答えた。不思議とヤモトの耳に届く澄んだ声だった。

 

「まずは基礎トレーニングです。ザゼンにチャドーにカワラワリ、ダンベルも。私も色々、やりました。本格的なカラテは、その後です」レイズは淡々と答えた。しかし、ヤモトにとってレイズのその言葉はこれまでで一番長い言葉だった。ヤモトは微笑し、努めて明るくなるよう言った。「大変そうだね」「実際大変」「うん、頑張るよ」

 

 二人の少女を乗せたバイクは走り続ける。通り過ぎるネオンを置き去りに、次なる闇と明日に向かって。ヤモトは思う。明日からはきっと、自分の想像だにしない世界が待っているのだと。例えそれが善きものであれ、悪しきものであれ。決意した自分に、立ち止まっている暇はないのだから。少女は、一歩を踏み出した。




◆忍◆ニンジャ名鑑#■■■ 【ソリッドブラック】 ◆殺◆
 キラボシ・マーセナリーズ所属のバイカーニンジャ。
 自身の駆るインテリジェント・モーターサイクルを溺愛しており、任務のない日はもっぱら整備とツーリングに興じている。
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