INFINITE XROSS FUTURE   作:ゲオザーグ

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やべぇ本編が全然進まん・・・


覇獣の要塞

 かつて九州南部一帯を支配していた豪族、島津家。今でこそ傘下だった幕末の志士、西郷隆盛や大久保利通に知名度や人気に負けれども、いまだ地元におけるその影響力は大きく、中でもその一端を担う『島津産業機構』では、工業部門がISに早々着手したことで、大きく力を付けた。

 その敷地内にある、無名ながらそれなりに大きな山の一角。『鎮西覇獣庭園(ちんぜいはじゅうていえん)』と名付けられ、巨大なコンクリート壁に囲われたここは、1歩入れば幾つもの大きな池や、武骨なコンクリート製の建物が並んでいる。

 その通路を早朝から自社製の量産型IS――全身装甲(フルアーマー)の『足軽』を改修した、全身赤塗りに黒縁の武者鎧を思わせる専用機、『鬼島津』を纏い、持ち手を紐で括った複数の台車を両手に引くのは、一族の娘にして、テスト操縦者(パイロット)を務める島津義豊。この巨大施設は彼女が所有、管理しており、現在ではこうして稼働訓練をついでにこなしている。

 

「ふむ、今朝は冷え込むと聞いて水温を少し上げておいたが、相変わらずな様子を見るに、正解だったようだな。今飯を寄越すから、もう少しだけ待ってろ」

 

 彼女が覗き込んだ池の中から見上げていたのは、十数体ほどの鰐。どれも彼女の身長を優に超える体躯で、万が一生身で落ちてしまえば、1分もせぬうちに容易く僅かな肉片を残して腹の中に片付けられてしまうだろう。にも関わらず全く恐れる様子もなく、台車に積まれていたプラスチック製の大型バットを1つ片手に取ると、そのまま池の中へと飛び降りる。

 バットに並んでいたのは、羽を毟り取られた、頭と足のない丸鶏。空いた手でそれを適当に掴み、寄ってきた鰐に差し出したり、遠くの鰐に向けて投げたりするうち空になると、蜻蛉(トンボ)の翅を思わせる2対4基のウイングスラスターを噴かさず、脚力だけの跳躍で飛び越えて戻る。

 

「やはりIS(コイツ)があると世話が楽に済むな。小遣い代わりの給料もたんまりもらえるから、施設の拡充も大助かりだ」

 

 鰐に限らず彼女がここで飼育する生物達は、人の手足どころか命を容易く奪える爪や牙、果ては毒を持ち、特殊な許可がないと飼育することができない。故にかつて自身が魅了されるきっかけとなった施設では、池の上から鰐達に肉を放り込んでいた。だからこそそれから身を守り、たとえ巨大な鰐相手でも安全に触れ合えると共に、所属操縦者(パイロット)としての訓練にもなるISの装着は、非常に利便性を実感している。

 

 「さぁて、次は大蛇舎だな。どいつも食うのが遅いし、やっと食いついても呑み込むかどうか判断が見分け付かんから、時間かかるんだよな……」

 

 いっそカメラでも取り付けようか、などと漏らしながら向かった建物の1つに踏み入ると、そこに並ぶのは、上下2段の2メートル四方の空間。裏手に当たる通路から1部屋ずつのぞき込むと、胴回りが自身よりも太そうな蛇達に、次々バットに積まれた豚を放り込んでは、食らい付くのを確認する。そして反応が悪い個体に対してはしばらく眼前で振って興味を引こうとしたり、代わりにネズミ(ラット)を差し出したりと手や品を変え、それでも食い付かねば諦めて回収する。

 その後も毒蛇や大蜥蜴、亀にヤモリと様々な爬虫類から、カエルに魚に猛禽類と、種類を問わない生体達に、ネズミから虫、更には叔母が管理する農業部門から廃棄予定だったのを格安で引き取った人参、小松菜、南瓜(カボチャ)等の野菜と、様々な食料を与え終えると、台車やバットを拡張領域(バス・スロット)に収納して装着も解除し、日光を浴びながら乱雑に切り刻まれた野菜を貪る巨大な亀の甲羅を枕に、軽く仮眠をとるのが、彼女の日課となっている。

 

「コイツ等ともしばらくお別れか……退屈になるだろうな……」

 

 キャリア稼ぎのためと、本社からの指定でIS学園への入学が決められた義豊だが、彼女自身はISを小遣い稼ぎがてら爬虫類達を世話する際の補助器具程度にしか認識しておらず、わざわざここを空けてまで学びに行こうと考えるほど興味も熱意もない。

 むしろ野良猫や犬を始めとしたモラルのない野外投棄を始めとした昨今の愛玩生体(ペット)事情の酷さから、そうした捕獲生体に対するある種の保護区としての整備に忙しくなるところに余計な茶々をぶち込まれ、非常に不機嫌だった。

 一応言っておくと、IS事業に熱を入れるのは、自身もそれで利を得ていることを考えれば、十分納得している。しかしいくら経営者親族の箔はあれど、何人もいる操縦者(パイロット)からわざわざ熱意の低い自身を選んだのか。さらに言えば用意された専用機だって、動きやすいよう調整さえしてもらえれば量産機で十分と思っており、むしろ整備にかかる分をこっちに回してほしかった。

 

「叔母御殿等は受け入れてくれたが、世の連中は耳障りに騒ぎ立ててくるからな、真に優秀たれば、男も女もないというに……」

 

 ついでに言えば、操縦者(パイロット)として活動しているからこそ、モンド・グロッソ代表のような1部の関係者の活躍を鼻にかけ、塵芥同然の無縁な連中がさも自分のことのように振舞う様は不快でしかなく、学校でも街中でも、そうした輩は見かけ次第殴りつけてでも黙らせ、それを不当と「同じ女」など喚こうものなら、自身の役職を明かすより先に彼等の画像を見せ、気味悪がる様を「どこが同じだ」と嘲笑うのが憂さ晴らしとなっていた。

 

「まぁ今更ごねても詮無きことか。現地はとった訳だし、せいぜい連れて行く奴を選んでおくとしよう」

 

 戦闘など生体に関与しない訓練の場合、彼女のモチベーションは極めて低い分、逆にさっさと終らそうとばかりに短時間で一気に集中力が上がる。一方持続訓練などで長時間拘束されると時間一杯棒立ちのままなど雑に済ませ、終わると同時にここへと急行する。そのため「本来愛玩生体(ペット)禁止の学園では訓練どころか授業参加も危うく、自主退学して戻ろうとする」と彼女の趣味嗜好に理解がある両親や叔母が入学を取り決めた親族を脅したため、当然ながら制限はあれど、何体か連れ込むことが可能となった。

 まさに懸念通りの真似をするつもりだった彼女としては、それを最大級の妥協として入学を受け入れていたため、持ち込む水槽(ケージ)等の器具や食料の準備と共に、連れて行くメンツを選ぶべく、施設を後にする。




()でもって猫の日と全く関係ない(チョロっと話題には出たけど)爬虫類メイン
ぶっちゃけ個人的には印旛沼のカミツキガメより沖縄の野良ネコ問題の方が重傷だと思う
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