かつて九州南部一帯を支配していた豪族、島津家。今でこそ傘下だった幕末の志士、西郷隆盛や大久保利通に知名度や人気に負けれども、いまだ地元におけるその影響力は大きく、中でもその一端を担う『島津産業機構』では、工業部門がISに早々着手したことで、大きく力を付けた。
その敷地内にある、無名ながらそれなりに大きな山の一角。『
その通路を早朝から自社製の量産型IS――
「ふむ、今朝は冷え込むと聞いて水温を少し上げておいたが、相変わらずな様子を見るに、正解だったようだな。今飯を寄越すから、もう少しだけ待ってろ」
彼女が覗き込んだ池の中から見上げていたのは、十数体ほどの鰐。どれも彼女の身長を優に超える体躯で、万が一生身で落ちてしまえば、1分もせぬうちに容易く僅かな肉片を残して腹の中に片付けられてしまうだろう。にも関わらず全く恐れる様子もなく、台車に積まれていたプラスチック製の大型バットを1つ片手に取ると、そのまま池の中へと飛び降りる。
バットに並んでいたのは、羽を毟り取られた、頭と足のない丸鶏。空いた手でそれを適当に掴み、寄ってきた鰐に差し出したり、遠くの鰐に向けて投げたりするうち空になると、
「やはり
鰐に限らず彼女がここで飼育する生物達は、人の手足どころか命を容易く奪える爪や牙、果ては毒を持ち、特殊な許可がないと飼育することができない。故にかつて自身が魅了されるきっかけとなった施設では、池の上から鰐達に肉を放り込んでいた。だからこそそれから身を守り、たとえ巨大な鰐相手でも安全に触れ合えると共に、所属
「さぁて、次は大蛇舎だな。どいつも食うのが遅いし、やっと食いついても呑み込むかどうか判断が見分け付かんから、時間かかるんだよな……」
いっそカメラでも取り付けようか、などと漏らしながら向かった建物の1つに踏み入ると、そこに並ぶのは、上下2段の2メートル四方の空間。裏手に当たる通路から1部屋ずつのぞき込むと、胴回りが自身よりも太そうな蛇達に、次々バットに積まれた豚を放り込んでは、食らい付くのを確認する。そして反応が悪い個体に対してはしばらく眼前で振って興味を引こうとしたり、代わりに
その後も毒蛇や大蜥蜴、亀にヤモリと様々な爬虫類から、カエルに魚に猛禽類と、種類を問わない生体達に、ネズミから虫、更には叔母が管理する農業部門から廃棄予定だったのを格安で引き取った人参、小松菜、
「コイツ等ともしばらくお別れか……退屈になるだろうな……」
キャリア稼ぎのためと、本社からの指定でIS学園への入学が決められた義豊だが、彼女自身はISを小遣い稼ぎがてら爬虫類達を世話する際の補助器具程度にしか認識しておらず、わざわざここを空けてまで学びに行こうと考えるほど興味も熱意もない。
むしろ野良猫や犬を始めとしたモラルのない野外投棄を始めとした昨今の
一応言っておくと、IS事業に熱を入れるのは、自身もそれで利を得ていることを考えれば、十分納得している。しかしいくら経営者親族の箔はあれど、何人もいる
「叔母御殿等は受け入れてくれたが、世の連中は耳障りに騒ぎ立ててくるからな、真に優秀たれば、男も女もないというに……」
ついでに言えば、
「まぁ今更ごねても詮無きことか。現地はとった訳だし、せいぜい連れて行く奴を選んでおくとしよう」
戦闘など生体に関与しない訓練の場合、彼女のモチベーションは極めて低い分、逆にさっさと終らそうとばかりに短時間で一気に集中力が上がる。一方持続訓練などで長時間拘束されると時間一杯棒立ちのままなど雑に済ませ、終わると同時にここへと急行する。そのため「本来
まさに懸念通りの真似をするつもりだった彼女としては、それを最大級の妥協として入学を受け入れていたため、持ち込む
ぶっちゃけ個人的には印旛沼のカミツキガメより沖縄の野良ネコ問題の方が重傷だと思う