INFINITE XROSS FUTURE   作:ゲオザーグ

25 / 25
ちょくちょく見てるISSSが更新されるのに影響されて久々更新です
他のも更新頻度上げとかんとなぁ・・・


代表者の矜持

 早々に試合が終わり、一夏の様子を見に控室を覗いた千冬は、タオルで顔を隠したままベンチで横になっていた彼の姿に慌てて駆け寄ったが、穏やかな寝息を立てているのに気づき、安堵する。

 

「大分無理こそしたようだが、何とかシャワーから出て、椅子に腰かけるくらいの気力は残っていたか……」

 

 シャワー室の扉が開いたままなことや、床に残る水滴から、彼が出てから直行して、そのままここで寝ていたことを察し、短時間でもせめて少し寝やすいようにと頭を持ち上げ、自身の膝に乗せ撫でてやる千冬。戦績こそ第1戦以降早々に棄権と振るわなかったが、その原因は厚かましくもかつて()の愛機()の劣化コピーを振りかざして出しゃばり、試合の段取りを妨害し続けた政府のせいだし、そもそもこんな事態になったのも、情勢を考慮せず、セシリアを無視して(いたずら)に彼を持ち上げたクラスメイト達や、それを制御できなかった自身のせいと思い返すうちに怒りがふつふつと込み上がり、無意識のうちに歯を食いしばる。

 

「ん……千冬姉……?」

 

「すまんな、起こしてしまったか。時間はまだ余裕があるから、もうしばらく寝ててもいいぞ」

 

 そうしているうちに目を覚ました一夏が反応し、起き上がろうとするのを押し留め、撫で続ける千冬。そうしているうち、『グレート・ホワイト』の待機形態たる、上下にサメの牙を思わせる白い三角形が複数横に並んだ黒い眼帯の下、彼の眼球のない左目を見て、束のことを思い出す。

 きっかけは箒が襲撃されてから間もなく、コーチに名乗り出た美雲とのスケジュール調整をしようとしていた所、酷く慌てた様子のクロエから入った連絡だった。曰く食事の準備ができ、研究室(ラボ)代わりにしている蔵へ呼びに向かったところ、中で腕が千切れ飛んだ左肩から血を流して倒れている束を見つけ、慌てて止血や介抱をしていたらしい。幸い妹と違い早いうちに意識を取り戻したが、入院などが難しい身の上とあって、ある程度医療関係は自前で用意してるといえ、相変わらず馬鹿をやったと思えば、改めて知られたことと防げなかったことに自身の不甲斐無さ胸を痛めずにはいれず、既に義手で日常生活は問題ないと空元気で話しながら、気を紛らわせる程度でも鎮痛剤代わりに煙草が手放せなくなり、――元々1日1本吸うかどうか程度だったのが、2、3本と常人からすれば十分少量で制御できている部類のままではあるものの――吸う量が増えたと手にしながら苦笑気味にこぼす姿に、己が至らなさを痛感する。

 

『あの、すいません先輩。そろそろ次の試合が始まりますので……』

 

「あぁ、了解した。すまん一夏、また行ってくる。試合の合間はその都度戻ってくるし、全部終われば迎えに来るから、ゆっくり休んでおけ」

 

 そう諭し頭を持ち上げさせた一夏に、代わりと新たに取り出したタオルを枕代わりに差し出すと、千冬はゆっくり立ち上がり、また少し撫でてやってから部屋を去る。

 

 

 

 

 

 

「いやぁなかなか惜しかったな!まぁオルコット嬢に関しては、流石代表候補の面目躍如ってところか」

 

 一悠(一夏)抜きで続行された代表決定戦は、結果から言うと全勝したセシリアが制覇した。続く義豊は彼女への黒星と一夏の棄権こそあったが、それでもさすがに弾程楽勝ではなかったものの、神楽と翔摩に対しても、普段ペットの世話用くらいにしか考えず使用していたとは思えない戦いぶりを見せて勝利し、飼育に関する予算をふんだくるには十分な戦果を確保できたようで、本社にその報告と約束分の振込確認を終えると、早くも施設拡張やそこに迎え入れる生体に意識を向け、発言とは裏腹に全く悔しむ様子無く、むしろ嬉々とセシリアを称賛する。

 

「嫌味は感じられませんから素直に受け取りますが、随分と軽薄な称賛ですわね。元々便乗がてら機体や社の宣伝が主目的でしたからで?」

 

「それもあるが、何分面倒事も多そうだしな。これ以上アイツ等との時間を削られてたまるかってんだ。その点アンタは、むしろそうした面倒事をやって評も上がりゃあ万々歳だろうしな。体よく任されてくれ」

 

 良くも悪くも包み隠さず意図を述べる彼女に呆れた様子のセシリアだったが、意識を切り替え、終了に伴い同じピットに集結していた千冬達に向き直る。

 

「この度は皆様にお手数おかけしました。先生方も私の不手際にお付き合いいただき、感謝しますわ」

 

「巻き込まれた形になったコイツ等はともかく、私に関しては気に病むことはない。むしろ教師としては当然だからな。とりあえず今日の戦果と決定は、明日の朝礼で改めて発表しよう。これなら誰もお前のクラス代表就任にケチはつけまい……万が一難癖ぶつける奴がいれば、私が黙らせる」

 

 組んだ腕の片方を持ち上げ、その親指を彼等に向けてから、「自分のことは気にするな」と宥めつつも、それでもなおこの結果に不満を漏らすなら、参戦に名乗り出なかった以上黙って受け入れさせようとする千冬の意図を、放たれる圧で察したセシリアは、軽く苦笑しながらも、ついでと事後報告する。

 

「それと速美さんに対しては、先程謝罪に訪れましたが、後日改めて謝罪の品などを用意したく……」

 

「待て、お前いつの間に速美の元に行った……?」

 

 途端纏う空気を換えた千冬に、思わず戸惑い口がうまく回らなくなるも、下手なことは言えないと悟り、手短に伝える。

 

「え、えっと、次の試合、島津さんと五反田さんが戦っている間に訪れまして、お声がけしても反応はありませんでしたが、鍵が開いてましたので、様子を窺った際に……」

 

「そうか……まぁ詳しくは後で聞くが、別に代表就任を取り消したりはしないから、そこは安心しろ。それじゃあ山田先生、彼等を部屋に送り届けてください。私は速美を迎えがてら、鍵の点検などの後始末をしてきますので」

 

「あ、はい、わかりました。それじゃあ皆さん、今からお部屋に戻りますよ~。着いたらゆっくり休んでくださいね~」

 

 ひとまず落ち着いた千冬に安堵した矢先、真耶に任され部屋へ送り返されそうなところにセシリアが待ったをかける。

 

「あ、あの!再度速美さんに謝りたいのと、クラス代表としてお手伝いしたいので私も同伴させていただきたいのですが、よろしいでしょうか……?」

 

「……まぁ同伴する分には構わんが、特に手伝ってもらうようなこともないし、途中から私情込みになるぞ?」

 

 まさかの申し出に、思わず面食らう様に瞬きする千冬は、しばらく無言で佇んでいたが、軽く溜息を吐いてから、別行動の意図を話す。

 

「こちらこそ構いませんが、一体何をされるんですか?」

 

「なぁに、汚い連中の後始末だ」




()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。