動作確認も兼ねた実働訓練を終えた面々は、最初に呼び集められた管制室にて、ウィンディが用意したお茶やジュースなどの飲料を口にしていた。このうち一夏と千冬は、データ整理のため戻ったガルガロスから、「気が向いたら機体にエンブレムでも考えてみたらどうだ?アピールにもなるし、より愛着沸くだろうよ」と言われ、早速以前渡されたタブレットPCを触っている。
「ほぅ、なかなかカッコいいじゃないか。躍動感もあって、見栄えも優れている」
一夏が参考にと検索していたのは、機体名の元となったホホジロザメが水面に飛び出す姿――通称『エア・ジョーズ』。それらの画像を元に描き上げたのは、三日月形に大きく体を曲げ、大きく口を開けながら上半身を水面から突き出した姿。そのエンブレムデザインはホホジロザメの荒々しさと、力強さを見せつけるようでいて、一夏自身の周囲に対する「害成すものは容赦なく襲う」との警告にもなっている。
一方千冬のエンブレムは、水面から尻尾を出し、
「うわぁ…千冬さんのエンブレム、結構エグいですね……」
そこに声をかけたのは、2人に休憩を呼び掛けようと後方から近付いた弾。いくらサメ由来の機体名だからと言って、エンブレムに人が襲われる姿を使うとは思わなかったようで、コップを手にしたまま、顔を引きつらせている。千冬はそのリアクションが予想通りだったようで、軽く
「やっぱり、そう思うか?まあ、そう思わせることも狙ったが、このエンブレムは私なりの決別の意を示したものでもあるんだ」
「決別…ってことは、モンド・グロッソの部門優勝者が『
直後、弾に続いて寄ってきたシャルロットが混ざる。彼女が尋ねた様に、モンド・グロッソの出場選手は各競技で優勝すると『
「その通り。私はもう選手は引退したが、少し遠出すると、すれ違う相手から未だ『ブリュンヒルデ』と呼ばれてな。それ自体は構わんが、私にとってあの称号は、都合のいい操り人形として翻弄された印象しかないんだ。このエンブレムは、大切だったはずの
話し終えた由来を聞いて失望されたと思い、「惨めな話だろ?」と締めくくる千冬。しかし、弾は彼女が
「まあ、予想はしてましたよ。千冬さんがどれだけ後悔してたかは知ってますし。……流石に優勝トロフィーとか賞状とかをまとめて処分しようとした時は驚きましたけど」
「帰国直後から精神が荒んでいたって聞いたことはありましたけど、それが原因だったんですか。……本当に、彼が大事なんですね」
「あぁ、私にとって唯一の肉親で、最大の支えだ。守るためなら、それこそ国にだって牙を突き立ててやるさ……」