「おはようございまーす!」
狭い事務所の壁に元気な声がこだまする。
俺はやれやれとため息をつきながら振り返った。
「プロデューサー! 今日も元気ないですねっ! 目が死んでますよ?」
「うっせぇ」
俺は外回りで疲れてるんだよ。
この、暑苦しいぐらいの元気を振りまく少女は堀裕子。
俺の担当アイドルだ。
といっても、ここは零細事務所。
所属アイドルなんてこいつぐらいのもんだ。
あとは色物の芸人ばっかりだったりする。
ま、といっても……。
「お仕事ないから暇ですねー。スプーン曲げの練習でもしておきましょうか」
そんなことを言いながら、すちゃっと銀色のスプーンを取り出す裕子。
俺はため息をついた。
アイドルとしてスカウトしたはずなのに、超能力にお熱ときている。
自称サイキッカーで、特技はスプーン曲げ。
芸人じゃないけど、ほとんど色物だ。
顔は……顔は可愛いのになぁ。
「スプーン曲げはもう完璧なんだろ?」
小動物をいなすように、頭にポンと触れた。
俺の身長は175センチ。
一方裕子は156センチだから、ちょうどいい位置につむじがあるんだよな。
「はうっ」
何やら変な声を出す裕子。
顔を赤らめてわたわたすると、スプーンをスカートのポケットに入れた。
そんなところに入れて持ち歩いてるのかよ。
「ま、まぁ、プロデューサーがそう言うならスプーン曲げはやめておきます」
素直なのはいいことだ。
「では今日はどんな超能力に挑戦しますか!?」
俺はずっこけそうになった。
なんでお前はそう、超能力にこだわるんだ!
「超能力は必要ないから」
「え~」
子犬みたいにまとわりついてくる裕子をぺいっと引き剥がす。
「そもそも俺、超常現象とか信じてないんだよ」
ネクタイを緩めながらそう言うと、裕子が不満そうに唇を尖らせる。
「そんな性格だから毎日がつまんないんですよー」
「知るか。ちょっとデスク作業するから。邪魔しないでくれよ」
「……はーい」
詰まらなさそうに返事をする裕子を尻目に、デスクに座った。
型落ちのノートパソコンを開き、オーディションをチェック。
う~ん……いいのがないなぁ。
いや、ちょっと待てよ。
このラジオのなんていいかもしれないな、裕子は明るくてはきはきしているし。
とかなんとか俺は頭を回転させているってのに。
「うむむむっ! むーん!」
すぐ隣で裕子が変な声を上げているから、まったく集中できない。
「静かにしろっ」
ごちんっ。
痛くない程度に頭を叩いた。
「な、何するんですか!」
裕子が涙目で講義してくる。
「仕事するって言っただろうが」
「き、聞いてましたよ」
「だったら何で邪魔をする」
「邪魔なんてしてません」
「じゃぁ何をやってたっていうんだ」
「パワーを送っていたんです! プロデューサーがお仕事がんばれるように!」
胸を張ってドヤ顔だ。
あ、アホかこいつは。
いや、アホなのはわかってはいるんだが。
やれやれとため息をついていると、ぐいっと顔を近づけてパソコンを覗き込んできた。
さらさらの髪が俺の目の前で揺れる。
「あ、これなんてどうですか?」
画面を指差す。
「どれだ?」
「ほら、これ。ホラー番組のアシスタント募集!」
「ふむ?」
「悪霊が出るって噂のある山奥の墓地に行く番組みたいですよ。私のサイキックパワーで悪霊を全部退治しちゃいます! エスパーユッコ伝説の幕開けですね!」
「いや、そういう番組じゃないから」
体よく怖がってくれる女の子を募集しているのであって、エクソシストを募集しているわけじゃない。
そもそもお前のサイキックパワーって何なんだ。
悪霊倒せるのか?
「だめですか?」
「だめだ。ぜんぜんお前に合ってない。これはもっとこう、か弱い女の子がやるもんだ」
「え~」
「なんだよ」
「私だってか弱い女の子ですよっ」
「どこがだ」
俺は鼻で笑ってやった。
「ちょっと裕子、力こぶ作ってみろ」
「こうですか? むんっ!」
「……俺より力ありそうだぞ」
「な、ないですよ!」
「あるだろうが。カチコチだ」
指先で力こぶをつついてやる。
おー、本当に結構硬い。
「ふぎゃっ!」
変な声を出して裕子が後ずさった。
「な、なな何をするですか、プロデューサーっ!」
「何って、確かめただけだろ、力こぶ」
「うぅぅぅ」
なぜか顔を真っ赤にして裕子が言った。
「しょ、しょうがないじゃないですか。サイキックスプーン曲げには筋力が要るんです」
筋力って、おい。
「……お前。今、自分で力技だって証言したよな?」
「ち、違いますよぉっ! 超能力を使うには筋力が必要なんです! そ、そう! 私の超能力は、筋力を消費して発動するんです! MPみたいなものなんです」
「へぇ」
俺はにやりと笑った。
「そんじゃ使ってみろよ?」
「へ?」
「今ここで超能力使ってみろよ。そしたらその筋肉減るんだろ?」
「あ、いや、その」
「嘘だったのか?」
「うぅぅぅ……さ、サイキック瞬間移動っ!」
あ。
逃げてった。
ばたんっと扉が閉まって、騒がしいやつが出て行った。
と思ったら。
「……た、ただいまです」
5分ぐらいで帰ってきた。
うちの事務所は狭いから、ドアを出たらビルの廊下だからな。
特に行くところもないから突き当りの自販機まで行って戻ってきたんだろう。
手には缶ジュースが二つ。
「はい。これ、あげます」
まだちょっとすねたような表情をしつつ、片方を俺にくれた。
「何気に気が利くよなぁ、お前」
「ま、まぁ……」
照れたように鼻をかく裕子。
ひんやりとした缶が心地よい。
さっきまで外回りしていたからな。
7月とはいえ暑かったんだ。
「おっ、これって」
ひんやりとした缶に目やると、俺の好きな紅茶だった。
子供のころから売ってる定番商品。
最近はいろんなほかの銘柄も出ていて、かなりシェアは減ってるみたいだけど。
これを選ぶなんて、いい趣味してるじゃねーか。
「ど、どうしたんですか?」
裕子がなにやら俺をじっと見ていた。
「ん、あぁ。これ好きなんだよ。よくわかったな」
その一言に裕子が微笑んだ。
「エスパーですから。プロデューサーの心の中ぐらいお見通しです」
* * *
今年の夏はことさらに暑い。
事務所の窓を全開にしていても、すぐに汗をかいてしまう。
だというのに、だ。
「あ~、ワレワレハウチュウジンダ」
裕子のやつが、唯一の扇風機を独り占めしてやがる。
しかも、声を変えて遊ぶために。
「こらっ!」
俺はキーボードを打つ手を止めて叫んだ。
「なんですか、プロデューサー。暑いのに怒鳴ったらもっと暑くなりますよ」
ソファに正座して、扇風機をつかんだまま、口をとがらせてこっちを見る。
「暑いと思ってるなら扇風機をこっちに向けろ」
「やですよ。いまサイキックの練習中なんです」
「どこがだ!」
「ほら、コエガカワルサイキックデスヨ」
扇風機に向かって声を投げる。
相変わらずサイキックでもなんでもねぇ。
「うりゃっ!」
「ひゃんっ」
扇風機を取り上げてやったら、そのまましがみついてやがる。
「お、お慈悲を! これがないとサイキックパワーが失われてしまうんです」
「そんなわけがあるか」
そのままずりずりと引きずられる裕子。
すその短いTシャツがはだけて、おへそがちらりと見えた。
「うっ」
その形のよさに、思わず目をそらす。
その隙に。
「もらったぁ!」
「あっ」
裕子に扇風機を奪い返されてしまった。
「ハッハッハァ! この扇風機は私のものですよ!」
「く、くそっ」
「と、言いたいところですが……」
「ん?」
壁に立てかけてあったパイプいすをひとつ取ってきて、俺のデスクのそばに。
ちょこんとそこに座って、扇風機をかけ始めた。
「ここなら、二人一緒に涼めますね」
「……ま、まぁ、そこならいいけど」
とはいえ。
仕事をしてる間中、真横に座られてじっと見られていると、どうにも集中できない。
というかそもそもだな。
なんでこいつは毎日事務所に来るんだ。
ここはあくまで事務所だから、何か通達事項でもなけりゃ俺がいるだけ。
別に毎日やってくる必要はまったくない。
ここで遊んでる暇があれば仕事して来い……と言いたいところだが、その仕事がないからなぁ。
はぁ。
言ってて自分でむなしくなってきた。
「なぁ、裕子?」
「なんですか?」
「お前さ、その……いや、なんでもない」
「??」
言ってはならない言葉を言いかけて、やめた。
『……この事務所でよかったのか?』
そんな卑怯な問いかけ、できるはずがない。
俺は首を振って、裕子をチラ見する。
白くてきめ細かい肌、くりっとしたつぶらな瞳、すっと通った鼻梁、さらさらの栗色の髪。
絵に描いたような美少女だ。
それでいて、ちっとも気取っている感じがなくて、健康的でフレンドリー。
いつもサイキックとかおかしなことばっかり言っているけど、本来的には、こんな小さな事務所に埋もれている人材ではない。
というか、他の事務所から引き抜きの声が何度もかかっているということも、俺は知っている。
そしてそのたびに、裕子がきっちりと断っていることも。
俺が引き抜きを阻止するまでもなく、裕子は全部断ってしまうのだ。
よくわからない。
確かに、この子をスカウトしたのは俺だ。
ちょうど一年前。
去年の夏のことだ。
通りで見かけた瞬間、「この子だ」と思った。
あの瞬間のことは、今でもよく覚えている。
緩やかな坂の道で出会ったあの時、頭に電撃が走ったような気がした。
俺は、外回りの最中だった。
真夏の暑い日だった。
これからこの坂を上るのか、とため息をついた瞬間のことだ。
サイダー水のペットボトルが転がり落ちてきた。
「わっ、とと」
タイミングよく、それをキャッチ。
ひんやりとした感触が心地よかった。
見上げると、女の子がいた。
天使みたいに可愛い女の子。
俺は息をのんだ。
彼女が落としてしまったペットボトルを渡す。
手が触れそうになった瞬間、運命のようなものを感じた。
『この子を、アイドルにしたい』
そんな思いが沸き上がった。
俺は、ほとんど無意識に、名刺を差し出していた。
女の子が、驚いたような表情で名刺を受け取る。
じっと俺を見つめてきた。
吸い込まれそうな美しい瞳。
あ、怪しまれただろうか?
俺は普段スカウトマンをやっているわけじゃないから、こういうのには慣れていない。
でも、このタイミングを絶対に逃したくなかった。
今日このまま分かれてしまうと、二度と会うことはないだろう。
しどろもどろに、自分が芸能事務所で働いていることを説明する。
そして、勇気を出して言った。
「そ、そのっ、アイドルに興味ないかな?」
坂の向こうには、海。
夏の大気が、それを微かに燻らせていた。
そんな特別な空気の中で、俺を見つめる裕子は、幻のように美しかった。
それがまさか、
「むむむむーんっ! や、やっぱりステンレスのスプーンは、ま、曲がりませんねぇ」
こんなアホなやつだったとはなぁ……って何をしてやがる。
「返せっ!」
「あぁ、私のスプーンが!」
「俺のだ。いつの間に持ち出したんだよっ」
冷蔵庫のアイスを食うために置いといたやつだ。
今日の仕事終わったら食おうと思ってハーゲンダッツ買っといたんだよな。
ってか、まさか。
立ち上がり、事務所の端においてある小型の冷蔵庫を開けると。
「アイスが、ない」
「え、えへへ……」
裕子が下手な口笛を吹く。
こ、こいつ、食いやがったな?
「おい」
「な、なんですか?」
「お前、食っただろ」
「な、何をです?」
「アイスだよ! それも、俺のスプーンで!」
「わきゃーっ!」
両手を挙げて怒ると、一目散に部屋のすみに逃げ出しやがる。
「た、た、食べてませんよ」
「じゃあアイスはどこへ行った」
「えっと、それはぁ……しゅ、瞬間移動しました」
「ほぉ。どこへ?」
「わ、私のおなかの中へ……」
「食ったんじゃねーか!」
「違いますよぉ、さ、サイキックです!」
「なんでもサイキックでごまかすんじゃねぇ!」
そんなこんなで今日も裕子と遊んでいるうちに、日が暮れてしまった……。
* * *
「はぁ。今日もだめか」
また、オーディションは不合格。
俺は事務所に届いた通知を見てため息をついた。
書類までは通るんだよなぁ。
見た目、美少女だからさ。
でもいざオーディション現場に行くとだなぁ。
『私はエスパーユッコ! わが伝説、しかと見届けるが良い!!!!』
そんなことを叫んで高笑い、だもんなぁ。
こんなやつ誰が使ってくれるっていうんだ。
芸人じゃないんだから。
と、よく見ると、封筒がもう一枚あった。
小さいから気がつかなかったぜ。
ま、こんなぺらっぺらな封筒だ。
どうせ不合格だろう。
と思って、びりびり開いてみると……。
「ご、合格、だと!?」
信じられない一文字がでかでかと書いてあった。
『堀裕子さま 貴方は当オーディションに合格致しました』
「つきましては、記載の日時に、○○ビル4階に……」
紙を持つ手が震えた。
やった。
合格だ。
それも、結構大きな仕事。
清涼飲料水のCMだ。
俺の頭の中に、初めて出会った日のサイダー水のペットボトルが浮かんだ。
想像の中のサイダー水が爽快にはじけていく。
「お、おい、裕子」
「はい?」
今日もスプーン曲げに熱中している裕子が振り向いた。
「なんですか、プロデューサ?」
てってってと無防備に近づいてくる。
「あ! それって通知書ですか? なんですか? まさか私の時代が来ちゃいましたか? 伝説の幕開けですか?」
「あながち、間違ってはいないな」
「へ?」
キョトンとした表情。
「合格した。清涼飲料水のCMだってよ」
「あ、え、えと……合格? 誰がですか?」
「お前だよ」
「私?」
キョトンとして自分を指さす。
おいおい、大丈夫かよ。
「ウソ。本当に合格したんですか?」
「これ。見てみろ」
通知書を手渡してやった。
「は、はへっ」
何とも言い難い声をあげて、裕子が紙を手にする。
何度も読み返してから。
両手を振り上げた。
「やったぁぁぁーーー!!」
元気いっぱいにジャンプして、俺の両手を握ってきた。
小さな掌の柔らかさと熱が伝わってくる。
ちょっと急に何するんだよ。
「や、やりましたよ、プロデューサー!!!」
ぐぐぐいっと顔を近づけてくる。
ってかこいつ、まつげ長いな。
「あ、あ、ありがとうございます!!」
目に涙を浮かべて頭を下げた。
「え、あ、いや。お礼なんて別に。お前自身の素材がよかったからだし……」
つい照れて、俺は目を背ける。
「違いますよ!」
裕子が俺の手を握ったまま言った。
「プロデューサーが、毎日暑い中、お仕事探しに走り回ってくれたからです!」
「お。おぅ……」
そりゃ、頑張ったのは事実だけどな。
こうして直接言われるとちょっと恥ずかしい。
っていうかこいつ、こういう時にちゃんとお礼が言える子なんだな。
「それにしてもプロデューサー」
「な、なんだ?」
祝勝に礼を言っていたのもつかの間、いたずらそうな表情に変わって裕子が言った。
「私のこと、〝素材がいい〟って言いましたよね?」
「うぐっ」
「それって、それって、可愛いって思ってるってことですよね? ね? いつもは『お前みたいな変なヤツ、アイドルに向いてない』とか言ってる癖に! 本当は可愛いって思ってたんですか?」
「う、うるせぇ」
覗き込んでくる裕子の瞳が宝石みたいに美しくて、俺は正視できなかった。
「ねーねーね、どうなんですか、プロデューサー」
それでもうるさくまとわりついてくる裕子に、俺は言った。
「か、可愛いってのは事実だろっ。で、でなきゃスカウトなんかしない。俺が普段言ってるのは、お前のキャラが変だって話だ」
「~~~~~!!!」
俺の言葉に、裕子が嬉しそうに足をじたばたさせる。
「こ、このっ、このぉっ」
顔を赤らめて唐突にわき腹をつついてきやがった。
や、やめろっ!
* * *
そんなわけで、撮影当日。
俺たちは、都内某所のスタジオにいた。
設備の整った、そこそこ有名なスタジオだ。
「す、すげーな」
普段の仕事では見ることがないような本格的な撮影器具。
俺は思わずお上りさんの用意きょろきょろしてしまう。
「プロデューサー!」
「うひっ」
急に背中をつつかれて振り向くと、パーカーを着込んだ裕子が舌を出していた。
あれ。
着替えてきたのか。
「どうです、これ! 今日の衣装なんですよ」
そう言って、くるりと回る。
へぇ。
いいじゃんか。
夏らしいカラフルなボーダーのパーカーに、ビーチサンダル。
活発的な裕子にぴったりと似合っている。
にしても……。
「もしかして、その下って水着?」
大き目のパーカーでお尻まですっぽりと隠れているが、すらりとした生足が伸びている。
「……プロデューサーのエッチ」
ジト目でにらんで裕子が言った。
「短パンを着てるんです」
パーカーの裾をあげると、ダメージ加工のジーンズ生地の短パンが。
「そ、そうか」
俺はちょっとホッとして言った。
水着撮影の許可が出していないからな。
勝手に水着が用意されていたなら大問題だ。
「ね、プロデューサー」
「ん?」
内緒話をするように、裕子が耳打ちした。
「実はこれ、上だけ水着なんですよ」
「え?」
「撮影中、水に濡れるからって言われて。結構過激なデザインなんです。……撮影する前に、プロデューサーに先に見てほしいなって思いまして」
そう言って、パーカーのジッパーを下す裕子。
白い素肌……肩甲骨のあたりがあらわになる。
「ちょ、ちょっと待て! 俺はただ単に、水着なら注意しなきゃと思っただけで」
「う・そ、ですよ」
よく見ると、オープンショルダーのTシャツを着ているだけだった。
か、からかったのか?
「てへっ」
悪びれもせず、舌を出す裕子。
「水着は、プロデューサーの許可がない限り着たりしませんよ」
「この馬鹿っ」
こつん。
いつもよりちょっと強く、頭にげんこつしてやった。
「そろそろ集まってくださーい」
現場の撮影スタッフの声が響いた。
「行くぞ」
「はい」
俺たちは、スタジオの壁際に集合する。
髭面にサングラスのいかにもアーティストって雰囲気のおっさんが、CMのディレクターだ。
MVの仕事で評価が高い人で、スタイリッシュな映像に定評がある。
ただし、ちょっと強引なところもあるって噂だけど……。
そんな人が相手だから、俺も裕子も緊張して頭を下げた。
「はは、そんなに改まらなくていいよ」
気さくな人みたいだな。
「固い態度は取らずに柔軟に行こうぜ」
サムズアップしてそんなことを言う。
「で、さっそくなんだけどさ、裕子ちゃんだっけ」
「は、はいっ」
「経歴見させてもらったよ。面白いね、エスパーなんだって?」
「しょっ、しょうです!」
あ、噛みやがった。
「ふむふむ、なるほどねぇ」
CMの台本と裕子を見比べながら、何かを考えこむディレクター。
しばし目を閉じてから、言った。
「あのさ、ちょっと方向性、変更してもいいかな? なぁ、村沢君」
カメラマンの男を呼び、何かを耳打ちする。
村沢と呼ばれた痩せた男が言った。
「う~ん、無理ではないですね。こう、後からエフェクトかけて、炭酸水だけ、別撮りして……」
「オッケー、決まりだ! それで行こう」
なんだなんだ。
どうなってるんだ?
呆然とする俺と裕子を置き去りにして、話が進んでいく。
「実は昨日、経歴読んだ時からちょっと新しいインスピレーションが湧いてきてね」
ディレクターが楽しそうに笑いながら言った。
「今回のCM、強炭酸が売りの飲料だからさ。なんてーの、こう、裕子ちゃんの超能力でずばっ!っと水がはじける感じに変えたいんだよ」
それは、台本に載っていないことだった。
もともとの台本は王道のさわやかな内容。
夏の浜辺(もちろん合成背景だ)でごくごくと炭酸水を飲むだけ。
俺は恐る恐る裕子を見ると……。
「いいですね、それ!!」
キラキラと輝いていた。
あちゃー。
「イロモノ路線、決定だな……」
俺は小声でつぶやいた。
* * *
あれよあれと話がまとまり、撮影のためのステージが組まれていく。
舞台は夏のプール。
軽快な音楽に合わせて裕子がプールサイドを歩く。
彼女が指を一振りすれば、超能力で、プールサイドにたむろする人々が手に持っている炭酸水の蓋が開いていく。
勢いよく吹き出す炭酸水で、空に虹がかかる、というもの。
実際には蓋が開くはずがないので、吹き出す炭酸水も含めてすべてCGだ。
「こう、目線を合わせて、指を横に振る感じで」
ディレクターが、てきぱきと演技を指導していく。
裕子は真剣に、一つ一つのアドバイスにうなづいている。
少し、意外だった。
超能力に異常なまでのこだわりをもっている裕子のことだ。
こういうCGで作るやらせ的なものは、もしかして嫌がるかもと思っていた。
「違うんです! 私のサイキックパワーは本物なんです! 今証明して見せます!! むむむーん!!」
とか言うかと思っていたんだが……杞憂だった。
なんだ、こいつ、ちゃんとわかってるんじゃないか。
本当は超能力なんて、ないってこと。
「おーい、裕子ちゃんのPさん」
唐突にディレクターに名前を呼ばれた。
「な、なんでしょうか」
「内容が変わったからさ、エキストラが足りないんだ。プールサイドのモブとして、参加してくれないか?」
「お、俺がですか?」
「そう!」
断り切れず、急遽短パンの水着に着替えることに。
「こ、これでいいっすかね……」
ってか、微妙にサイズが合ってねぇな、この水着。
「ぷ、プロデューサー……」
俺を見て、裕子が笑いをこらえていた。
「お、お腹がちょーっとポッコリしちゃってますね。ぷ、くくく」
や、やかましいわっ!
「しょ、しょーがねーだろ。仕事が忙しくて運動不足なんだよ」
「わかってますよぉ」
そんなことを言いつつ、俺のお腹をツンって触ってきやがる。
「ひゃっ、けっこうお肌ぷにぷにですね。男の人の肌って固いのかと思ってました」
「や、やめれ!」
そんなことをしていると、ディレクターがパンっと手をたたいた。
「さ、そろそろ本番始めるよ」
俺と裕子は顔を赤らめて位置につくのだった。
カラフルなパーカーの前を開いて、ローライズデニムとオフショルダーのTシャツで健康的な夏感を演出する裕子。
軽やかにステップを踏んでスキップしながら、魔法でもかけるように指を振る。
その瞬間、プールサイドにたむろする俺たちが握りしめている炭酸水の蓋が開いて中身がしゅわっとはじけだす。
実際にははじけだしていないけど、中身が噴出したかのように驚かなくちゃいけない。
これがなかなか難しかった。
俺も含めて、急遽追加したエキストラは演技経験がない。
「驚いたように見える」ってどうすればいいんだ?
顔芸か?
「ちょっとちょっと、なにをふざけてるんだい?」
精一杯驚いている表情を作ったつもりが、ディレク―多に怒られてしまった。
「あはははっ、プロデューサー! 変な顔!」
裕子のやつ腹を抱えて笑ってやがる。
くそ、お前だけリテイクなしだとは。
「顔で無理に見せるんじゃなくて、動作で表現して。驚いたって感じに腕を開いたりとか」
カメラマンのアドバイスに従って何度かやり直す俺たち。
がちん。
真後ろで不穏な音が鳴った。
振り向くと、大げさ動作で驚く演技をしたエキストラの一人の腕が、背景の書割に当たっていた。
急ごしらえで作った書割が揺れる。
大きく一度ぐらついた直後、まっすぐ俺のほうに倒れこんできた。
「プロデューサーっ!!!」
裕子の叫び声。
やばい、と思う暇もなかった。
俺は下敷きに…………って、あれ?
な、なっていないぞ。
「ゆ、裕子?」
よほど慌てて走りこんできたのだろう。
汗だくになった裕子が、体全体を使って必死に書割を押し返していた。
「うっ、くっ」
苦しそうな表情。
それでも何とか笑顔を作って言った。
「ぷ、プロデューサーは、私が、守ります」
「ば、馬鹿、一人で押し返せるかよ!」
俺も急いで、書割を押す。
近くにいたスタッフも加わった。
「む、むむむーん!!!」
裕子がいつもの掛け声をあげた。
膠着状態だった書割が、少しづつ押し戻されていき……。
どすんっ。
鈍い音を立てて、ようやく元の位置に戻ってくれた。
* * *
「いやー、危ないところでしたねー」
汗をぬぐいながら裕子が言った。
「マジで助けられたよ」
「えへへ、エスパーユッコのサイキックパワー発動でしたね! プロデューサーの窮地を見事救ったユッコ! しかし明日はさらなる強敵が!?」
アニメの次回予告かよ。
「どう見ても力技だっただろうが」
「バレましたか」
てへって感じに舌を出した。
そのしぐさが可愛くって、俺はちょっとドキッとした。
いかんいかん、子供相手に何考えてるんだ。
助けられてから、ちょっと意識してしまっている。
俺が呼吸を整えていると、ディレクターが手招きした。
俺がそちらへ行くと、名刺を一枚、手渡された。
「これは?」
「ドラマとかの監督してる中沢さんって人の名刺。君にあげるよ」
「え?」
「その人、今度やる映画のヒロイン探してるんだ。俺からも口添えするからさ、裕子ちゃんを引き合わせてあげたら?」
「い、いいんですか!?」
「あぁ。俺さ、今日一日、一緒に仕事して気に入ったよ、あの子のこと」
ディレクターがほほ笑んだ。
「いや、正直最初は、エスパーとか言ってる痛い子かと思ってたんだけどさ。ちゃんと受け答えできるし、わかっててキャラ作ってるだけじゃないか。書割が倒れそうになった時も、瞬時に助けに入ってたでしょ。そういう気が利く部分もすごい良いよ」
それから、こう言った。
「これから長い目で考えるんだったらさ。変にキャラクター作らなくてもいいじゃないか? 見た目は正統派美少女なんだし」
それは、まさに俺も思っていることだった。
* * *
その日の帰り道。
いつもよりもテンションが上がっている裕子は実に騒がしい。
「いやぁ、プロデューサー。見ていましたか、今日の私のナイスアシスト! 超能力で書割が倒れるってこと見事に察知しちゃいましたからねー!」
「ディレクターもきっと、私のサイキックパワーに惚れこんだんですね! 超能力で炭酸水がはじけ飛ぶなんて素晴らしいアイディアですよね!」
「これからは、オファーがどしどし来ちゃいますね! 手始めにラジオのレギュラーなんてどうですか? エスパーユッコのサイキックラジオなんてのはどうでしょう! 私が超能力で毎週リスナーさんのお手紙を透視するんです!」
そんなことを言いながら、俺の周りを子犬みたいにぐるぐると回る。
「あっ!」
急に立ち止まった裕子が、交差点の先を指さした。
「お洒落なカフェですよ、プロデューサー! ねーねー、ちょっと休憩してから帰りましょうよ。今日は初めての撮影頑張ったご褒美ということで。ね。……ふ、二人っきりでお茶しちゃうなんて、ちょっとデートっぽいですけど♪」
「なぁ、裕子」
「なんですか?」
俺は、意を決して言った。
「その、超能力とかエスパーっての、やめにしないか?」
「え?」
裕子が、キョトンとした顔で俺を見た。
「本当はさ、お前だって自分でわかってるんだろ? エスパーなんかじゃないってこと。っていうか、そういう特殊な力なんて、存在しないってこと」
「あ、あの、プロデューサー、何言って……」
「ま、まじめな話なんだ!」
俺は裕子の言葉をさえぎって言った。
「今日の裕子の仕事ぶり、すごく評価されてた。将来有望だって、ディレクターも言ってたよ」
「だ、だったら、これからも超能力ネタで」
俺は首を振った。
「違うんだ。いつまでも、そういうネタでやっていたら、色がついちまう。せっかく、その、裕子は可愛いんだからさ。超能力とか、そういう設定にこだわらずに、普通に頑張ってほしいんだ」
「ぷ、プロデューサー……」
裕子が、青ざめた顔で、後ずさった。
「だ、だめですよ。私は、本気で信じているんです。超能力は、あ、あるんです」
「ないよ!」
俺は思わず叫んだ。
「ない! ないんだ! そんなのあるはずない。あるんだったら、あの時……」
そこまで言ってから、俺はうつむいた。
言うべきではないことを言いそうになった。
そのことを後悔し、途中で踏みとどまれたことに安堵もした。
「……とにかく、俺は。ないと思っている。好きじゃないんだ、超能力とか、奇跡とか、そういうの。ちょっとしたキャラクター付けに使う程度ならともかく、そればっかてのは、正直よくないと思う」
「そんな……」
裕子が、絶望的な表情でつぶやいた。
どうしてそんな、絶望的な表情をするのか。
俺にはわからなかった。
「……ありますよ。奇跡も、超能力も。絶対……あるんです」
悲痛な色を含んだ声音で、すがるようにつぶやく。
「プロデューサーにだけは、そんな言葉、い、言ってほしくなかった!」
裕子は走り出した。
彼女が、俺から離れていく直前。
涙がこぼれていたように見えた。
俺は立ち尽くした。
どうしてそんな、泣かなくてはならないほどに、奇跡を信じるんだお前は。
ぽつぽつと、雨が降り出した。
夏の天気は移ろいやすい。、すぐに大雨になった。
降水確率は10パーセントだったってのに。
俺は舌打ちした。
傘も持たずに走っていきやがって、あのバカ。
* * *
知らない街だったけど、裕子はすぐに見つかった。
走り出した交差点から少し先のバス停のベンチに、ずぶ濡れの姿で座っていた。
栗色の髪が水滴を滴らせていて、不謹慎な言い方だけど、美しいと俺は思ってしまった。
「おい、バカ裕子」
走って追いかけたせいで息が乱れている。
若いつもりでいても、日ごろの運動不足は否めない。
「……プロデューサー」
ずぶ濡れのまま、裕子が俺を見上げた。
「超能力が使えるんなら、この雨を止めてくれよ」
「それはできないですよ」
所在なさげに微笑む。
やっぱ、できないってわかってるんじゃねーか。
「……あのさ、ちょっとだけ、話を聞いてくれないか?」
そう言って俺は、裕子の隣に座った。
仕事用のバッグからハンドタオルを取り出し、渡してやる。
裕子は何も言わずに受け取った。
「さっき俺、超能力とか奇跡とか、嫌いだって言ったよな」
「……はい」
「一応さ、理由があるんだ」
それは、思い出したくもない思い出だ。
誰にも言わず、自分の心の中だけに閉じ込めておきたかった出来事。
「実はな、俺がすごく仲の良かった幼馴染の女の子がさ、超能力とか、オカルトとか、そういうのにはまっていたんだよ」
隣で、もぞもぞと衣擦れの音がした。
裕子が濡れた服を拭いているのだろう。
「といっても、根暗な感じじゃなくてさ。明るくて元気で。そう、ちょっとお前に似てるんだ」
ピタリと、手が止まったような気がした。
だが、またすぐに裕子はタオルで体を拭き始める。
まるで俺の話になど興味がないとでもいうように。
「でもその子はさ、俺が17歳の時に、トラックにひかれて死んでしまった。俺の目の前でな」
ずっと、言いたくなかった言葉をとうとう俺は言ってしまった。
「一緒に帰っていたんだよ。学校から。お葬式の時、俺思ったんだよ。超能力があるってんならさ、トラックぐらい止めてくれよって。ほら、よくあるだろアニメとか漫画で。超能力持ってるヒロインがさ、簡単にトラックとか吹っ飛ばしちゃうやつ。あんなん全部嘘じゃん。だって俺の大切な友達、死んじゃったんだぜ? 超能力あるって言ってたのに。だからないんだよ、そういうの」
言い方が投げやりになっていると自分で思った。
とても大人のしゃべり方じゃない。
でも、止められなかった。
俺はまるで、17歳の時みたいになっていた。
言いたくても言えなかったこと、心に抱えていたことを、やっと言えたような気がした。
心のどこかにあった、水流の栓が外れたような気がした。
バス停の屋根に激しく雨が降っていた。
その水音が、自分の心の濁流と似ているような気がした。
「バカだろ? ほんとバカだよ。奇跡とかなんだとか、俺、あの日から信じてないんだよ。その子さ、結構可愛かったんだぜ、でもさ、轢かれて、顔とかもぐちゃぐちゃになって死んでさ、なんなんだよそれ、超能力で直せよ。っていうか、生き返れよ。なんなんだよそれ。俺は許せねぇよ、マジ許せねぇよ」
なんか、そういう言葉遣いをしたのが、本当に高校生の時以来で、俺はずっと大人のふりを続けていて、自分を抑えて演じていて、いまやっと子供に戻れたような気がした。
そう思ったら今度は不意に、血の気が引くように冷静さが戻ってきて。
俺はふっと、力が抜けてしまうような気がした。
この音の数分間で、17歳になって、それから16年たって、33歳、今の年齢に戻ってきた感じ。
というかだな。
俺は担当アイドルを相手に唐突に、何を語ってるんだ。
恥ずかしさやらなんやら、よくわからない気持ちがぐわっと押し寄せてくる。
「あ、いや、その、裕子。なんか、ごめん」
「いえ」
ぎゅむっと、タオルが押し付けられた。
な、なにするんだ。
裕子のヤツ、何を考えてるのか、そのままぐいぐいと俺の顔にタオルを押し付けてくる。
濡れたタオルはぐっしょりとしてるけど、裕子の香水の匂いだろうか?少し甘い香りがした。
「あの。プロデューサーさん」
「ん?」
「プロデューサーさんはその子のこと、好きだったんですか?」
な、なんなんだその質問は、と思いつつも、しょうがないから答える。
「ま、まぁ、その。おそらくは……いや、そうだな。きっと。好きだった」
「そうですか」
そのまましばらく、タオルを押し付けられていたのだが。
ふいに裕子が力を抜いた。
「あ、わっ」
タオルを落としそうになり、俺は慌てて受け取る。
「雨、やみましたね」
立ち上がり、伸びをする裕子につられて空を見上げると、雲の切れ間から青空が見えた。
「タオル。ありがとうございます」
「あ、うん……」
裕子の表情からは、さっきまでの悲痛な空気は消えていた。
と同時に、いつもの明るい笑顔が戻ってきた。
というか、なんだそのイタズラそうな顔は。
「プロデューサーにも、初恋の頃があったんですね~」
ちょっとからかうように言ってくる。
「ば、お前、そういうんじゃないって」
「え~? 好きだったって言ったじゃないですか」
「う、うぐっ」
軽快にステップを踏んで、バス停を出る裕子。
俺が後を追うように立ち上がると、追いついてみろとばかりに舌を出して走り出しやがった。
そんなおどけた仕草も含めてきっと、暗い話をしてしまった俺への気遣いなんだろう。
「まぁ、事情は分かりましたので、超能力にこだわるのは少しは我慢することにします」
「少しかよ」
「大きな譲歩ですよ」
走りながら会話する。
「私は私で、こだわるには理由があるんです」
「へぇ、どんな?」
「教えてあげません♪」
「おい、ずるいぞ!」
大きく手を振りながら、裕子が言った。
「プロデューサー、遅―い! 事務所のみんな待ってますよ!」
「しょ、しょうがないだろ。お、俺は30代なんだから」
「あはははー、おじさんですね」
「う、うるさいっ」
息が上がるほどに走るのは久しぶりだった。
裕子と一緒にいると、まるで少年時代に戻ったような気分になる。
暑い。
夏の大気の中、本気で走るもんだから、汗が噴き出してくる。
でも、なぜか心地良かった。
雨上がりの空気が澄んでいるからだろうか。
「ねぇ、プロデューサー!!」
急に立ち止まった裕子が、こちらを振り向いて言った。
「サイキックにこだわる理由は秘密ですけど、別のことを教えてあげましょうかー?」
少し距離があるから、語尾を伸ばすような大きな声。
まったく元気がいいやつだ。
俺も精いっぱいの大きな声で答えてやった。
「何を教えてくれるんだー?」
いたずらそうに裕子が笑った。
「私が、プロデューサーのこと、普段どう思ってるかです!」
「げ! や、やめてくれよ!!」
バーカ、とか言われたら耐えられないぞ、俺。
「えへへ、やめてあげませーん! それじゃ言いますよー! 一回しか言わないから、よく聞いていてくださーい!!」
深呼吸をして。
裕子が、大きく口を開けた。
「聞こえましたか? いま、テレパシーで送りました!」
ずっこけそうになった。
ただの口パクじゃねーか。
「届いてねーよ」
俺は苦笑した。
ま、こういうとき、ベタなドラマとかならよく「好き」って言ったりするんだよな。
っていうか、その、実際、口の動きがだな。
そんな風に見えもしたんだが。
……いやいや、何考えてるんだ、俺。
気のせいだろ。
子供相手に何考えてんだ。
「まったく、お前といると退屈しねーな」
そんな言葉をつぶやいて、裕子のほうに再び歩きだす。
妙に、頬が熱くなっていた。
堀裕子ちゃん視点に続くかもしれません。