とうさま、どうして僕を見てみんな手を合わせるんですか?
それはお前が特別な子供だからだよ。お前は父さんに遣わされた神からの贈り物なんだ。
父さんはね、困ってる人の心を助けたいんだよ。世の中には治らない病気だったり、家族を失ったりしてどうにもならないことで辛い思いをしてる人がたくさんいるんだ。その人たちを助けてあげるためにお前がいるんだよ。お前の白象の髪と虹色の瞳は神のご加護がある証拠だよ。
神のご加護?
そうだよ。お前の存在が神様がいる証拠なんだ。だから悲しんでる人がいたらその人の気持ちに寄り添って助けてあげなさい。誰しも神の加護を受けて安らかに暮らせるんだと教えてあげるんだ。
わかりました、とうさま。
ふふ、七つまでは神の子という。もしかしたら本当にお前には神の声が聞こえるかもしれないね。
神様……。
うん?
神様は「とうさまと庭で遊ぶとよい」と言っております!
わはははは、さすが蓮の子だ。本当に聞こえたか。よし庭に出よう。
ぼくには神様の存在は分からなかったけど、父上の喜ぶような言葉を神様が言ってるといってやるようにしていた。ぼくが適当に言ってる言葉をみんな神の言葉だと信じていくのが面白かった。ぼくはいろんな人の話を聞いてあげた。みんな苦しい、助けて欲しいと叫んでいた。その人たちにいつか救われますよ、といって慰めていく。いつかがいつかなんて分からなかった。
そのうちにぼくと仲良しのおじいさんが死んでしまった。ぼくにお菓子や凧をくれたりして実の孫のようにかわいがってくれた人だった。その人の死に顔は鬼のようにゆがんだひどい顔だった。きっと病に苦しんで死んでいったんだ。周りの人はこういった。
「あんなに苦しんで死ぬなんて祈りが足りなかったに違いない。安らかに死ぬためにもっと祈らなければ」
ぼくはおじいさんがきょうてんに書いてあるように
「朝起きた時と夜寝るとき祈ること」
「その日の出来事を神に報告して感謝すること」
「聖の気を取り入れるために蓮の実を食べること」
ということを毎日やってたことを知っている。だから、祈りが足りなかったことなんてないと思った。
父はこう言った。
「病に耐えてここまで生き抜けたことが神のご加護だよ」
ぼくはそれも違うと思った。おじいさんはただ病気で死んだだけだ。そこに神様は関わってないと思った。そんなとき、外来の書物を読んで、毛が真っ白で赤い目の虎の存在を知った。その虎は見世物になって、ずっと檻の中で暮らして人と生きたらしい。自分と同じだと思った。ぼくの髪も目も見て面白がられるくらいの存在でしかないのだ。神からのご加護なんてなかったのだ。
そして、ぼくは神を信じない教祖になった。人に優しくしなさいってとうさまに教えられたから、神様がいなくてもぼくはみんなを助けて慰めなければならない。
それがぼくの使命なんだ。