ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第12話 縮まらない距離

「お二人は部屋の位置は覚えていますか」

 

 感情を押し殺した様な声色でリネットさんが訊ねて来た。

 

「うん、大体は」

 

「俺もそんな感じかな」

 

 小さく頷いたリネットさんは扉の前で止まる。

 

「ここが私の部屋です」

 

「え、私の部屋の隣だ」

 

「そ、そうなんですか」

 

 芳佳が声を弾ませると、リネットさんの口元が少しだけ綻んだ。

 

「因みに俺は真上の部屋、五月蠅かったら教えてね」

 

「はい……分かりました」

 

 リネットさんは芳佳は見るが俺を見ようとしない、嫌われる事は……行き成り少尉待遇じゃ嫌って当然か。

 

 芳佳が自分の部屋を開け俺達を招き入れると、リーネさんは部屋を見て少し驚いた。

 

「空っぽですね」

 

「うん、荷物まだ何も無いから」

 

 部屋の中は備え付けのベットと机だけで、さまに殺風景だった。

 

「ま、俺の部屋と変わらないな……芳佳、朝はちゃんと起きろよ、中佐からは同伴者二名以上、もしくは中佐か少佐の許可が無いとこの階には入るなって言われてるから」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 この世の終わり見たいな表情をする芳佳、驚いた表情のリネットさん。

 

「あ、あのお二人は……あの、その、こ、こ、恋……人、何でしょうか……」

 

「え? 違う違う、俺は芳佳の家の居候だよ、俺って記憶喪失でさ、当てが無いから診療所手伝う代わりに住ませて貰って居たんだ、ついでに芳佳の勉強も見てたけど」

 

「記憶喪失……ですか……その、すみません……」

 

 申し訳なさそうに下を向いたリネットさんに、出来るだけ明るき声で話しかける。

 

「気にしないで、思い出さない方が良いかもしれないし、特に不便も感じてないって……芳佳?」

 

 沈黙を守っていた芳佳に目を向けると、酸欠の金魚の様に何度も口を開けたり閉じたりしていた、思わず頭を引っ叩くと芳佳が正気に戻る。

 

「痛い!」

 

「正気になったか? 芳佳は俺に恋愛感情を持った事は無いだろう? 俺だって芳佳は何処まで行っても妹だよ、しかも手が掛かる」

 

「輝さん、何か酷い!」

 

 芳佳が口を尖らせて抗議の声を上げるが、俺は大げさに肩を竦ませて見せる。

 

「朝一人で起きられる様に成ってから文句は言いなさい、赤城で貰った目覚ましは芳佳に上げるから頑張れ」

 

「そんなあぁ」

 

 俺達のやり取りを見てリネットさんがクスリと笑った。

 

 その後案内されたのは食堂、俺は廊下の隅で待っていたがウィッチ用大浴場、男性用浴場、射撃練習場な色々と案内して貰っている時に取材を受けているウィッチが居た。

 

 そのウィッチは自己紹介の後、ミーナ中佐、バルクホルン大尉と共に早々に退出した人だった、誇らしげな表情で撮影と取材を受けている女性、壁際のバルクホルン大尉と目が合うと一瞬口元に笑みを浮かべるが直ぐに無表情に戻る。

 

「あの人は?」

 

 小声で芳佳が訊ねると、リネットさんは一度目を伏せた。

 

「ハルトマン中尉ですね、この間撃墜数が200機になったんですよ」

 

「「200機?!」」

 

 少し大きな声を出してしまい、俺は手で自分と芳佳の口を塞ぐ、お互い目で合図し合いゆっくりとを手を放して二人同時に大きく息を吐くと、それを見ていたリネットさんの口元が綻ぶ。

 

「隣に居るバルクホルン大尉だって250機ですよ、ミーナ隊長も160機を超えていますし、三人が居なかったら此処もとっくにネウロイに制圧されていたと思います」

 

 そう説明するリネットさんの表情は冴えない。

 

「本当に凄いんです。ウィッチーズは……」

 

 羨望よりも絶望、この言葉がこれほどしっくりと来るとは……

 

「私なんて何も出来ない足手纏いですから…………行きましょう」

 

 和み出していた空気など無くなり事務的に案内をするリネットさん、俺はその姿を見て彼女の周りに薄霞が立ちこめている様に感じてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼食後、俺と芳佳、そしてリネットさんの三人で特訓となったのだが、これがまたきつい、何がきついって何時終わるかが分からないからだ。気が遠くなるころにやっと軽い休憩となった。

 

「北条」

 

「……はい」

 

 返事をした俺を見て一瞬口元を緩ませる鬼教官(坂本さん)

 

「お前の訓練強度はもう二段階引き上げる」

 

「……ぇ」

 

 何かの聞き間違いだ、俺はそう思おうとした。

 

「お前達にひとつ教えておいてやる。私のモットーは出来ない奴は出来るまでやらせる。出来る奴は出来なくなるまでやらせる。だ、休憩は終わりだ! 走れぇ!」

 

「「「ハイッ!」」」

 

 俺はその日、生まれて初めて吐くまで走らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 滑走路の先端、リネットさんが伏せ撃ちの体勢で一キロ先の的を狙っている。

 

 爆発音を伴って弾丸が飛んで行く、坂本さんが魔眼を使い的を見ているのだが、その表情は冴えない。

 

「ふむ、右にずれたな、もっと風を読め」

 

「はい」

 

 次弾を装填するリネットさん、一拍後、放たれた弾丸が的を貫いた。

 

「良し、命中した」

 

「リネットさん凄い! 的なんて全然見えないよ」

 

 芳佳が無邪気に喜ぶが、リネットさんの表情は暗い。

 

「次、北条やってみろ」

 

「了解」

 

 俺が一歩前に進むと、リネットさんが慌てて場所を退く。

 

「す、すみません」

 

 少し怯えたような表情、一緒に訓練をする様になったら彼女は特に俺に対して常に顔色を伺う様に成ってしまった、心の中で小さく溜め息を吐くと俺はリネットさんが開けれくれた場所に立った。

 

「レイジングハート、カノンモード」

 

『イエス、マスター、モードチェンジ』

 

 やや長めの杖に変わったレイジングハートをしっかりと構え眉間に力を入れて的をイメージする、視界がドンドンと切り変わり、手が届くんじゃないかと勘違いさせるほどに的が鮮明になる。

 

『シュートバレット』

 

 ターゲットが合った瞬間に躊躇わずにトリガーを引く、放たれた魔力弾が瞬間的に的のど真ん中を貫く。

 

「命中、良くやった」

 

 坂本さんの言葉にリネットさんが怯えた様に息を呑んだのが分かる、この状況は良くないなと思い坂本さんに相談しようかと思案していたら、後ろから拍手が聞こえてきた。

 

「中々面白い魔法だな、少尉」

 

 少し感心した、と言った感じの表情でバルクホルン大尉が腕を組んでいる。

 

「何だバルクホルン、見ていたのか」

 

「良い精度だな、少佐」

 

「あぁ、これなら北条は早目に出せるかもしれん」

 

 にこやかに話す二人を見て、俺はどうやってリネットさんの事を話せばいいのかを考え込んでいた。

 

「そう言えば北条、今の攻撃は先日の戦闘で見せたのと違うな」

 

 バルクホルン大尉の言葉に俺は少し返答に躊躇する、赤城での戦いの直後にバルクホルン大尉達の救援が到着したのだが、戦闘終了後のゴタゴタで碌に会話も無く基地に帰投して行ったのだ。

 

「ふむ……味方がどのような攻撃をするか見ておくのも勉強だろう……北条、撃って見せろ」

 

「坂本さん!? いや、でも」

 

 戦力の確認は大切だと思うし、機会があったら見せようとも思っていた、でも、リネットさんの怯えた様な表情を見てしまうと果たして見せても良いのか? 

 

「どうした、早くしろ」

 

「……分かりました、最低でも的の上半分は消滅すると思います、本当に良いんですね」

 

 坂本さんが一言「構わん」と言うと、リネットさんの怯えが酷くなる、芳佳は大丈夫かと顔色を伺えば期待に瞳を輝かせていた。

 

「ディバインバスター、スタンバイ」

 

『イエス、マスター』

 

 レイジングハートから三枚の魔力翼が展開されると同時に足元に魔法陣が現れた、湧きでる様にレイジングハート自身にも四本の円環魔法陣が浮かび上がる。

 

「ほぉ……」

 

 バルクホルン大尉が息を吐く様な声を出し、隣に居るリネットさんの怯えが大きくなる、目だけで坂本さんを見ると頷いたので的に集中する。

 

 落ち着かせる為に浅く深呼吸を一度、二度、三度、四度目の深呼吸を深く吸い込んだ瞬間息を止めトリガーを引いた、放たれた赤紫の光の帯が抵抗など感じさせずに的の八割を消失させ遥か彼方で着水し巨大な水柱を立てた。

 

「命中確認」

 

 宣言と同時にレイジングハートの排熱が行われ余剰魔力を辺りに撒き散らす、カノンモードのまま一振りすると同時にデバイスモードの切り替える。

 

「見事」

 

 坂本さんの言葉で張りつめていた空気が緩む、バルクホルン大尉は軽く頷くと踵を返して行ってしまう。

 

「輝さん……凄い……」

 

 芳佳の驚嘆の声が小さく聞こえ、リネットさんは俺を化け物でも見る様な目で見つめていた。

501のメンバー(数名)になのは系のデバイスを持たせるか?

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