ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第13話 訓練教官

 就寝時間を過ぎそろそろ夜中と言われる時間、どうにも眠れなくて自室の窓から外を眺めつつ、今日の狙撃の訓練を考えていた。

 

収束(ディバイン)系はまだ見せない方が良かったんじゃないのかな……坂本さんよ……リネットさん、潰れんぞ……」

 

 漏れる溜め息がひとつ、どうにも考えが纏められない……

 

「駄目だ、風に当たって来よう」

 

 格納庫脇辺りから出れば良いかと考えつつ廊下を曲ると、外に通じる扉をリネットさんが出て行くところだった。少し足を速めて扉をくぐるとリネットさんはそのまま滑走路の先端に歩いて行く。

 

 声を掛けるべきかと思案もしたが、もう一人人がいたのでもしかして待ち合わせかと相手を確認する為に目を凝らした。

 

「……芳佳?」

 

 口の中だけで呟き視線を彷徨わせながらここ数日を考える、仲はまだそれほど良くは無いよな、会話は最低限だし、芳佳は仲良くしたいって物凄く矢印を出して居るが、リネットさんは躱し続けている。

 

 たまたま居合わせた。が、正解か……リネットさんは引っ込み思案ってのもあるが明らかにプレッシャーに押しつぶされて居るよな、今の状況は……

 

「絶対に不味いって……」

 

「何が、不味いのかしら」

 

 気配も感じさせず、いきなり後ろから声を掛けられた俺は、言葉を呑みこみながら慌てて振り向く。

 

「ヴィルケ司令……」

 

 呟いた俺に中佐は、目をパチクリとさせてから口を手で隠して小さく笑う。

 

「皆と同じでミーナ中佐で良いわ、ヴィルケ中佐と呼んだら駄目よ」

 

 普通はヴィルケ中佐では? と思ったが、最後の圧がとんでも無く強かったので俺は大きく首を縦に振った。

 

「それで、何が不味いのかしら、話して貰える?」

 

 俺は滑走路の先端に居る、芳佳とリネットさんを指してからミーナ中佐に向き直した。

 

「芳佳は多分夕涼み、と言うには少し時間が遅いか、それよりも問題はリネットさんですね。中佐も気が付かれているんでしょう、彼女がプレッシャーに押し潰されて居るのを」

 

 ミーナ中佐は少し表情を失くし俺を数秒見つめると、小さく息を吐く。

 

「リーネさんはこのブリタニアが故郷なの、ヨーロッパ大陸がネウロイの手に落ちているのは分かっているわね、「欧州最後の砦」故郷でもあるブリタニアを守る。リーネさんは実戦ではそのプレッシャーに負けてしまっているの」

 

「それで坂本さんはわざわざ俺の魔法をリネットさんに見せたんですか? 彼女同様に後方からの支援攻撃が出来る人間が居るって知って貰う為に、でも、そのせいでリネットさんは委縮してしまった、自分は役立たずだ、要らない人間だって思い悩んでいるんですよ」

 

 ミーナ中佐は、まるで俺の言うことを分かって居た様な雰囲気を醸し出すと、口元に薄っすらと笑みを浮かべ頷いた。

 

「えぇ、そうよ、だから貴方にリーネさんの射撃を見て欲しいの、アレだけの射撃を見せたのだから人に教える事も出来るでしょう?」

 

「ミーナ中佐、見ていたんですか?」

 

「たまたま、と、言えれば良かったのでしょうけれど、バルクホルンが訓練を見て来るって言っていたから少し気になったのよ」

 

 ミーナ中佐は微笑んでは居るけれど、正直言って怖い。坂本さんとは別の方向での迫力を感じる。

 

「では、北条少尉。リネット・ビショップ軍曹の射撃教官に任命します」

 

「……拝命いたします」

 

「少尉、語尾を上げて疑問形にしない様に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リネットさん、ちょっと良いかな」

 

 後ろから掛けられた男性の声に私は心臓を握りつぶされた様な恐怖を感じた、恐る恐る振り返るとそこに立って居たのは初の男性魔法使い……

 

「北条少尉……」

 

 思わず一歩下がりたかったけど、背中は直ぐに流し台ににぶつかってしまい私は逃げ場をなくした。

 

「な、何のご用でしょう……」

 

 私を見つめていた少尉の視線がゆっくりと下に下がる、何かを見透かされている様で私は恐怖の余り自分の体を抱きしめて息を呑んだ。

 

「足元のその大きなトマト缶、捨てるんなら貰えないかな」

 

「え、え?」

 

 驚いて足を動かすと洗い終わっている缶に足が当たり、金属特有の音を立てながら少尉の元に転がって行く。

 

「で、貰って大丈夫かな?」

 

 持ち上げて重さを確認しながら訊ねられ、私は首を何度も縦に振る。

 

「ありがとう、貰って行くね」

 

「あ、あの少尉」

 

 指先で缶を引っ掛けて歩いて行く少尉を、思わず呼び止めてしまった。

 

「何かな?」

 

「何に使われるんですか……」

 

 何で私は訊ねてしまったのだろう……

 

「朝の自主練習、魔法のね」

 

 少尉は振り返ると穏やかな表情を見せてくれた、でも、私は……目を合わせたくない……全てが違い過ぎるから……

 

「この前見せた魔法を使う上で、絶対にしないといけない練習」

 

 それだけ言うと、少尉は何かを言いたそうな目で私を数秒見つめると、出て行った。

 

 

 でも、しないといけない練習って……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し早めに目が覚めてしまった私は、二度寝をする気に成れずに少し散歩をしようと外に出た。

 

 海辺の岸壁では坂本少佐が朝練をしているので、きっと北条少尉も一緒に居ると思うので会いたくなかった私は反対側の森にする。

 

「んー、気持ち良い……」

 

 森の中で大きく伸びと深呼吸をする、森で浄化された綺麗な空気を胸一杯に取り込むと、嫌な気持ちが流れ出る様で心が軽くなる。

 

 ゆっくりと森の中を歩いていると、奥の方から金属を叩く様な不思議な音が聞こえ、私は興味が湧いて見に行ってみる事にした。

 

「フッ! ハッ! タァッ!」

 

 鋭い声が聞こえて来て、見つからない様に様子を伺うと、北条少尉がバリアジャケットとか言う服に身を包み、手にした杖を使い激しい素振りをしている。

 

「凄い……」

 

 余りに激しい動きに見惚れていたら、少尉が行き成り片手で頭を押さえると、苦しそうに片膝を付く。

 

「北条少尉!?」

 

 慌てて樹の影から飛び出した私は、少尉の側に駆け寄ると同時に私達の直ぐ隣に、形のかなり変わったトマトの缶が落ちて来た。

 

「キャッ!」

 

 驚いて小さな悲鳴を上げてしまった私に気が付いた少尉が小さく呟いた。

 

「……リネットさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまなかったね、驚かせてしまって」

 

 倒木に腰を下ろした北条少尉が、首元の汗を拭いながら穏やかな表情を見せた。少尉に促された私は、少尉と同じ倒木に距離を開けて座る。

 

「私こそすみませんでした、練習の邪魔をしてしまって」

 

「別に邪魔なんてしていないよ、俺のミスでこうなっただけだからね」

 

「頭痛はもう大丈夫なんですか」

 

「うん、負荷を掛け過ぎただけだからね」

 

 何となく顔色を伺うと、少尉は照れくさそうに頭を掻いた。

 

「負荷……ですか?」

 

「そう、負荷なんだ、見てて」

 

 少尉はそう呟くと立ち上がり、転がっている空き缶を指さした。

 

「…………はい」

 

 少尉の指の先に赤紫の光の玉が生まれると、吸い込まれる様に地面の空き缶に当たり弾き飛ばす、光の玉は直ぐ戻って来て空き缶をまた弾く、何度も続けて弾き空き缶は一定の高さで弾き続けられた。

 

「こうやって魔法の制御の練習をしているんだ、これはまだ一段階目」

 

 少尉は手に持った魔法の杖を武器の様に振り出す。

 

「レイジングハート、スフィアセット!」

 

『イエス、マスター』

 

 少尉に合図に少し離れた所に光の玉で出来た的が何個か浮かび上がる。

 

「シュートバレット!」

 

 右手で杖を振り続け、上空では缶が舞い、そんな中で少尉は左手を浮かび上がった光の的に翳すと、少尉の手に光の玉が幾つも生成された。

 

「シュート!」

 

 少尉に合図で光の玉が発射されて的を撃ち貫くと、空き缶も地面に落ちて来る。

 

「と、こんな感じの練習、さっきはこれにレイジングハートに頼んで疑似空間で戦闘訓練も入れたら頭痛に負けた」

 

 照れくさそうに笑う少尉。

 

「何でそこまでするんですか?」

 

 私の質問に少尉は腕を組んで考えだす。

 

「俺はさ、後発の魔法使いなんだ、だから人の何倍も努力をしないといけない。坂本さんが毎朝素振りをしているよね、アレだけの人が毎日鍛錬をしているんだ、なら、俺は坂本さんの十倍は最低でも努力をしないといけない」

 

「十倍……ですか……」

 

 組んでいた腕を外し、足元の缶を拾い上げると、少尉は上空に放り投げる。

 

「皆もそうだが、俺は皆以上に全てにおいて魔力を使用している、常に同時に使用する為には鍛錬は欠かせないんだ」

 

 そう言って手の平から魔力弾を打ち出して缶を更に上空に上げた。

 

「カノンモード!」

 

 少尉の掛け声で手の中の杖がこの前見た砲撃用に姿を変える。

 

「ショートバスター……」

 

 杖を掲げると、杖の周りに円環魔法陣が四本現れ、杖の先端に魔力光が集中した。

 

「シュート!」

 

 上空の缶を何事も無い様に消滅させた少尉が、私に振り返り見つめて来る、その目は私の心臓をわし掴んだ。

 

「リネット・ビショップ軍曹。ミーナ中佐より本日から君の射撃教官を仰せつかった。坂本少佐の基礎訓練の後は俺との訓練となる」

 

 少し申し訳なさそうな少尉の表情、私は一度深呼吸をして立ち上がる。

 

「よろしくお願いします」

 

「こちらこそだ」

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