ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第3話 ウィッチへの招待

 変な視線を感じ周りを気にしていたら視線は山道の方からだった、山道を見上げると視線がぶつかった気がして目を細めると唐突に感じていた視線が無くなった。

 

 暫くは気にしていたが気のせいだと思ったので改めて赤城を眺めていたら、山道から刺す様な視線を感じ慌てて見上げたが、既にその強い視線は無くなっていた。

 

 絶対に何か居る。そう考え山道を睨んでいたのがいけなかった。嫌な急ブレーキ音とその後に続いた浮遊感、慌てて芳佳ちゃん達に視線を向けたら美千子ちゃんが荷台から放り出された瞬間だった、咄嗟に荷台を蹴り美千子ちゃんを抱え込んで地面を転がったが焼けつく様な鋭い痛みに襲われた。

 

 朦朧とする意識の中、芳佳ちゃんの悲痛な声が聞こえる、俺の全身を温かい物が包み込み痛みが少し揺らいでいく、何とか意識を保っていた俺は芳佳ちゃんの手を掴むと声を絞り出す。

 

「美千子ちゃんは無事か?」

 

「はい! 輝さんが庇ってくれたから怪我ひとつしてません! 今は自分のことだけ考えて下さい!」

 

「そうか……良かった……」

 

「喋っちゃ駄目! しっかりして下さい! 輝さん! 輝さん!」

 

 芳佳ちゃん必死な声を聞きながら俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「輝さん!」

 

「大丈夫よ」

 

 意識が覚醒すると同時に叫んだ私にお母さんが優しく声を掛けてくれた。

 

「お母さん!」

 

「傷も塞がったし、後も残らないでしょう」

 

 診療台に寝かされている輝さんには包帯が巻かれ眠っているのが見て取れた、胸が規則正しく上下する姿を見て私は安堵の息を吐く。

 

「良かった」

 

「相変わらず力の使い方が成っちゃいないね、気持ちばかり先に出て」

 

 お母さんと一緒に治癒魔法を掛けていたおばあちゃんが少し呆れた声を上げ、私は何も言い返せないで自分の手を見つめる。

 

「誰かの為に何かしたいってのは分かるけど、私達の力は使い方を覚えないと、自分の命を落とす事になるんだよ」

 

「だって、私だって、私だっておばあちゃんやお母さんの様にみんなを助けたいの」

 

 脳裏をよぎる六歳のあの日、お父さんとの大切な、大切な……

 

「約束したから」

 

 私は小さく呟いた。

 

「そう落ち込むな」

 

 優しい声色で慰められた私は小さく頷いたが、直ぐにおかしい事に気が付いた、視線を向けると私が寝かされていた布団のすぐ横に、軍服を着た女性がにこやかな表情で座っていた。

 

「え? うわぁ!」

 

「お前の才能はずば抜けている、使い方さえ学べば立派なウィッチに成れるはずだ!」

 

 驚いている私を気にも留めずに満足そうに頷きつつ、力強く握り拳を作って力説をした軍人さんに私は何となく嫌な予感がした。

 

「ウィッチって……貴女何方ですか?」

 

「あぁ、すまん、挨拶がまだだったな」

 

 私の直ぐ側に座っていた軍人さんは、姿勢を正すと小さく咳払いをする。

 

「私は連合軍、第501統合戦闘航空団、通称、ストライクウィッチーズ所属、坂本美緒少佐だ」

 

「こんにちは……」

 

 何と返答して良いのか分からなかった私は、取りあえず礼儀として挨拶を返した。

 

「輝と貴女を此処まで運んでくれた人よ」

 

「運んで……」

 

 お母さんが説明をしてくれて、何故、坂本少佐が此処に居るのかが理解は出来たが……

 

「私達は強大な魔力を秘めた将来有望なウィッチを探しているんだ、お前の力は見せて貰った、粗削りだが良い物を持っている」

 

「ありがとうございます」

 

 魔法に関しては余り褒められた事の無い私は正直嬉しかった。

 

「と、言う訳でその力を生かして一緒にネウロイと戦おう」

 

「何ですかその話は、偉く一方的ですね」

 

 坂本少佐の言葉に逸早く上げられた反論の声は私達の後からだった。まだ、少し青い顔をした輝さんが額に脂汗を浮かせつつ、今まで見せた事が無い様なきつい表情で立っている。

 

「芳佳ちゃんを軍隊に連れて行く気ですか? 芳佳ちゃんの夢はこの診療所を継ぐ事なんですよ、若い力を何でもかんでも戦場に引っ張らないで下さい」

 

 輝さんが怒気を含ませて坂本少佐に食って掛かるが、当の坂本少佐はどこ吹く風だ。

 

「まぁ、君の言わん事も分かる、診療所を継ごうと言い気持ちも素晴らしい、だが、その力をもっと必要としている人達が居るんだ、それに知っているのだろう、魔力は若い女性が持ち合わせている事を、つまり、有限だ」

 

 坂本少佐の言葉に輝さんは唇を噛み締めるが視線だけが逸らさないでいた、その姿が気に入ったのか坂本少佐は満足そうに頷くと私に視線を向けて来た。

 

「いや、まぁ、今日直ぐに了解して貰えるとは思って見なかったからな……しかし、お前は必ず私の元に来る事になる」

 

「な、何でそんな事分かるんですか!?」

 

「ん、勘だよ勘。だが、力の有る者はもっともその力を必要としている所に導かれる」

 

 

 

 

 

 

 

「では、港で待って居るぞ」

 

 帰り際、私は宮藤に向かってそれだけ言うと玄関を後にした。

 

「そこに居るのだろう、出て来たまえ」

 

 家と塀の細い隙間に声を掛けてやると、居候の男が何とも言えない表情で私の元に歩いて来る、一瞬気色ばんだ土方を手で制すると私も男の方に足を進めた。

 

「で、私に何用かな」

 

 見据えてやると男は動じずに視線を受け止めた後に大きく息を吐く。

 

「まずは助けて頂きありがとうございました、それとですが、ひとつお願いしたい事が有ります」

 

 なかなかどうして綺麗なお辞儀をするものだと関心もしたが、確認しないといけない事もある。

 

「お願いか……まぁ、そいつを聞く前に私の質問に先に答えて貰おう、ええぇと」

 

「あ、失礼しました、自己紹介がまだでした、自分は北条輝と言います」

 

「そうか、北条輝か、では北条、訊ねるが、貴様はあの事故の直前、私達の視線に気が付いていたな」

 

 北条は一瞬視線を彷徨わせかけたが、直ぐに私の目を見て来た。

 

「場所は何となくでしか分かりませんでしたが、誰かに見られている感触は有りました」

 

「そうか……では、お願いとやらを聞こう、ただし、叶えてやれるかは分からんぞ」

 

 一度大きく深呼吸をした北条は覚悟を決めた表情をしている。

 

「多分……芳佳ちゃんは少佐の思惑通りになると思います、遅かれ早かれ必ず自分から入隊を志願するでしょう」

 

 これは又意外な事を言い出したな……

 

「何故、そう言い切れる」

 

「彼女は、芳佳ちゃんは父親との約束を大切にして居ます、こう言えば聞こえは良いですが、俺は父親の呪いだと思っています」

 

「呪いだと?」

 

「はい、内容は話せませんが、芳佳はきっとその約束に殉ずるでしょう、だから、芳佳が少佐に付いて行くと言ったなら自分も付き添わせて下さい、お願いします」

 

 この真剣さは嘘は無いな……だが。

 

「しかし、何で付いて行こうとする、彼女はウィッチ、だが北条は唯の人だ、土台無理な話だぞ、分かっているのか?」

 

「芳佳が呪いに負けない様に、もし父親からの言霊に囚われる様なら俺は芳佳を救うと決めたんだ、それに……芳佳は俺を兄の様に慕ってくれている、そういった者が近くに居た方が精神の安定に繋がるはず、芳佳は素人なんですよ! 軍人じゃないんだ!」

 

 確かに一理あるか……少々素性が分からん奴だが宮藤に対する態度だけは信じても良いな……

 

「よぉし、分かった。宮藤が入隊する時は貴様も一緒に面倒を見てやる」

 

「ありがとうございます」

 

 頭を下げた北条の肩を軽く叩く。

 

「北条は感情が昂ると色々と素が出るんだな」

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