ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第5話 赤城にて

 出港した日の夕方、外通路の一角で俺と芳佳ちゃんは沈みゆく夕日を眺めていた。

 

 芳佳ちゃんの表情は冴えない、来てしまった事を後悔しているのか、事実を知ってしまうのを怖がっているのかは分からないが、芳佳ちゃんは俺の服の裾を掴んで放そうとはしなかった。

 

「二人ともどうだ、赤城の乗り心地は」

 

 後から掛けられた声に俺と芳佳ちゃんは同時に振り向き、芳佳ちゃんは慌てて裾を掴んでいた手を放す。

 

「少佐……」

 

「はい、凄い快適です」

 

 無理して笑う芳佳ちゃんの笑顔が痛々しい。

 

「そうか、だが快適なのは船の上だけだぞ、お前達も知っている筈だ、今、ブリタリアがどうなっているか、大陸を制圧したネウロイと戦う最前線……そこに行く理由、本当に父上の事を確認するだけか」

 

 鋭い眼光で問い掛ける坂本少佐に俺は息を呑んだ。

 

「ブリタニアには困っている人が沢山居るんですよね」

 

「……あぁ、大勢居る」

 

 伺う様な言い方に、俺は会話を止めようと一歩前に出ようとしたが、坂本少佐に睨まれ動くのを諦めた。

 

「私、守りたいんです。傷ついた人、病気の人、沢山の人の為に私の力を役立てたいんです! お父さんと約束したんです! 坂本さん、何かする事は有りませんか? 掃除でも洗濯でも何でもします」

 

「よぉし! その意気だ、取りあえず私に言われたと厨房に行ってこい!」

 

「はい! 分かりました」

 

 坂本少佐に肩を叩かれ一瞬揺らいだ芳佳ちゃんは声を弾ませると走り出した、俺も手伝いに行くかと坂本少佐に会釈をして行こうとしたら肩を軽く叩かれた。

 

「北条、貴様には少し話が有る」

 

 足を止めた芳佳ちゃんが不安そうに見て来るが、出来るだけ笑顔で頷いて見せると、芳佳ちゃんも頷いてから走って行くのを見送る。

 

「少佐、お話って?」

 

「あぁ、前に貴様が言っていた呪いだ、なるほどな言い得て妙だった、だがな、私には呪いではなく祝福に思えたぞ」

 

「祝福って……芳佳は父親との約束に囚われているんですよ! 6歳の時の父親との約束が唯一の繋がりだと勘違いしているんです、軍の死亡通知を受け取ったあの日、機密だからと何時、何処で亡くなったかも知らされなかった! 芳佳は心の何処かで期待しているんだ! 父親との約束を果たして居れば何時かは再会出来るかも知れないって! 芳佳は、芳佳はどこかで現実を受け止めないといけないだ!」

 

 坂本少佐が真剣な眼差しで俺の両肩に手を置くと少し力を入れてくる。

 

「だからこそ赤城に居る、だからこそお前が付いているのだろう? 宮藤の心を守ってやれ」

 

 その言い方に俺の全身の血が沸騰しそうになった。

 

「まさか! 少佐、博士のッ」

 

 坂本少佐から発せられた圧に俺は言葉を続ける事が出来なかった、坂本少佐は一瞬もの悲しそうな目をすると小さく首を横に振ると艦内に戻って行く。

 

 感情が抑えられなかった俺は手近な壁を力一杯に殴り付けた。

 

「少佐! 貴女って人は! そう言う事かよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 次の日から芳佳ちゃんと俺の赤城での手伝い生活が始まった。

 

 軍機に触れる事も多いのでやれる事なんて本当に炊事洗濯なのだが、流石に2千人近くの乗艦だとその量も半端ない、最初は部外者が……見たいな雰囲気もあったが芳佳ちゃんの頑張りのお陰で直ぐに生活班とは打ち解けた。

 

 そんな俺だが今は甲板の上を全力疾走している、もちろん坂本少佐の叱咤激励付きでだ。

 

 手伝いの合間に運動をしていたのだが、坂本少佐に見つかり、ならば戦闘班と一緒にやれと放り込まれた。最初は民間人ってのと坂本少佐が連れて来たウィッチ候補のおまけって感じで相手にされなかったのだが、坂本少佐に特別訓練をされる様に有ったら手の平が返った。

 

 疑問に思って土方さんにそれとなく聞いたら、坂本少佐はブリタリアに在る501の基地から扶桑に戻る時に赤城に乗艦しており、戦闘班は道すがら特別訓練を全員受けていると話をしてくれた。

 

 そのおかげで結束も固いし士気も高い、そんな連中の中に放り込まれたド素人が同じ訓練を行ったので認めてくれたのだろうと、要するに仲間認定されたんですよ、と土方さんは笑っていた。

 

 芳佳ちゃんと甲板清掃を競う様にしていると、スピーカーの電源が入った音が鳴り、俺と芳佳ちゃんは作業の手を止めてスピーカーを見上げる。

 

「あー、あー、宮藤、北条、甲板に居るのか? そこを動くな、見せておきたい物が有る」

 

 俺と芳佳ちゃんは顔を見合わせ首を傾げると同時に、甲板に在るエレベーターから機関銃と携えた坂本少佐がストライカーユニットを装備して競り上がって来た。

 

 坂本少佐が少し前傾姿勢になると、甲板一杯に青く輝く魔法陣が展開された、滑る様に進んで来た坂本少佐は俺達の前を横切ると同時にエンジンの轟音とは裏腹にフワリと空に舞い上がる。

 

 あっという間に点になった坂本少佐は雲を引きながら艦隊の間を速度を速めながら縫う様に飛行をする、俺達に対しするデモンストレーションも兼ねているのだろう、更には色々な飛行を見せてくれた。

 

「坂本さん!」

 

 俺と芳佳ちゃんは戻って来た坂本少佐に小走りで駆け寄ると、坂本少佐は柔らかい笑みを浮かべる。

 

「どうだ」

 

「「感動しました」」

 

 俺達の声がハモリ坂本少佐は小さく頷く。

 

「あんなに格好良く空を飛ぶなんて、まるで鳥みたいでした」

 

「凄かったです、あんなにも急制動急旋回が出来るんですね」

 

 俺達の感想が気に入ったのか坂本少佐は声を上げて笑う。

 

「鳥か! だが私達は鳥に在らず、青空を翔ける魔女ストライクウィッチーズ! そしてこれが私達の魔法の箒、ストライカーユニット……宮藤博士のお前の父上の成し遂げた仕事だ」

 

「これが、お父さんの」

 

 驚きの声を上げた芳佳ちゃんに坂本少佐は優しく頷いた。

 

「ストライカーユニットの開発によって私達はネウロイと互角に戦う力を得た、これが無かったら今頃世界はネウロイに征服されていたかもしれん、宮藤博士は私達にとっても、人類にとっても恩人なんだ」

 

 坂本少佐の言葉で芳佳ちゃんの表情が明るくなる。

 

「お父さん……」

 

「着けてみるか? お前の父上が開発した物だ遠慮することは無い」

 

 熱っぽい視線をストライカーユニットに向け愛おしそうに撫でる芳佳ちゃん。

 

「やっぱりやめておきます、お父さんの仕事は良く分かりました……でも、戦争は嫌です」

 

「ネウロイって何なんでしょう、いきなり現れて人類に対して攻撃を始めたって」

 

 二人の会話に割り込む様な形になってしまうが、良い機会なので坂本少佐の話を聞いてみたい。

 

「正直言ってしまって分からん、ただ言える事は、いきなり人類に戦いを仕掛けて来てその圧倒的は戦闘力で制圧地域を広げて行った。しかも、奴らは制圧地域に有害な瘴気を撒き散らしながら進軍を続けている」

 

「そんな……」

 

 息を呑む芳佳ちゃん。

 

「普通の人間ではその瘴気に耐えられん、そしてアイツ等は魔力を帯びた攻撃に弱い、近くで戦えるのは魔力を持った者だけだ、その為のストライカーユニットであり我々ウィッチだ」

 

 話しの重さに深い溜め息を吐く、緊張のあまり関節とかが固まってしまった様に感じる。

 

「ネウロイは人類に殲滅戦を仕掛けて来ていて、唯一の防衛策がウィッチによる攻撃なんですね、やっと分かりましたよ、航空兵の言ってた話し、我々の使命はネウロイの攻撃を一発でもウィッチから遠ざける事だ、ウィッチが世界を守る様に自分達が一瞬でもウィッチを守るんだって……」

 

 重苦しい空気が流れる、芳佳ちゃんはショックを受けたのだろう顔色が青白くなっている。

 

 ほとんど波も無くまるで湖の様に凪いでいる海を見つめ空に目を向ける、何処までも続く青い空、でも、この空の先に人類の仇敵達がひしめいている……

 

「冗談じゃないぜ……」

 

 居た堪れなくなり呟いた瞬間、光が雲の隙間から瞬いた。

 

「少佐、今一瞬空が瞬いた!」

 

「何だと!」

 

 坂本少佐が俺の指した方を右目の眼帯を避けて睨みつける、ギリッと奥歯を鳴らすと後を振り向き信じられない音量の声を張り上げた。

 

「敵襲──!」

501のメンバー(数名)になのは系のデバイスを持たせるか?

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