ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第6話 無力な二人

 坂本少佐の叫びの直後に、ネウロイの方角に護衛の駆逐艦が砲撃を開始するが、直ぐに反撃の赤い光線が照射され駆逐艦が小さな爆発を起こす。

 

「宮藤、北条、お前達は非戦闘員だ、医務室に避難していろ」

 

「芳佳ちゃん! しっかりしろ! 此処にいたら少佐達の邪魔になる、悔しいが俺達に戦う力は無いんだ」

 

 芳佳ちゃんの手を取り何とか医務室に辿り着いた俺達は、轟音と艦体を揺らす振動と戦っていた。

 

「輝さん、私、私……」

 

 並んでベットに座っていた芳佳ちゃんの声も体も震えている、恐怖と不安からか芳佳ちゃんが俺の手を握ってきた、俺は握られた手の上に更に手を添える。

 

 ガチャリと扉が開く音が聞こえ、坂本少佐が室内を確認し俺と目が合った。

 

「芳佳ちゃん、坂本少佐だ」

 

 坂本少佐は芳佳ちゃんの顔色を確認すると小さく溜め息を吐く。

 

「何だその顔は、情けないぞ、それでも扶桑の撫子か」

 

「でも、如何しても震えが止まらないんです……」

 

「仕方ないな。顔を上げてこっちを向け……動くな……」

 

 芳佳ちゃんの前に片膝を付いた坂本少佐は芳佳ちゃんの頬を撫でる、何となく見てはいけない様な気がして俺は壁を見つめる事にした。

 

「はぅっ」

 

「インカムだ、それさえ有れば離れていても私と通話が出来る、ただし、使うのは本当に困った時だけだぞ、いいな」

 

 ホッとした様な期待外れだったような複雑な想いを噛み締めながら二人の方を振り向くと、坂本少佐も丁度俺に顔を向けてくる。

 

「北条、お前の分のインカムだ」

 

 神妙な顔でインカムを受け取ると、坂本少佐が少し悪い笑顔を向けて来た。

 

「なんだ、お前も私に付けて欲しかったのか?」

 

「大丈夫です、まだそこまで手は震えてません、またの機会にお願いします」

 

 室内の空気が穏やかになりそうになった瞬間、船体が大きく震え金属の軋む音が響く。

 

「さぁ、私はもう行かないと」

 

「坂本さん、戦うんですか……あれと」

 

 小さく呟いた坂本少佐の言葉に、芳佳ちゃんは震えた声で聞き返す。

 

「そりゃそうだ、それが私の使命だからな」

 

「私、私は……」

 

「お前達は此処にいろ、決して外に出るんじゃないぞ」

 

「でも……」

 

「私の事を心配しているのか? 大丈夫だ、安心して見ていろ」

 

 芳佳ちゃんの大きく頷くと、部屋から出て行こうとする坂本少佐。

 

「少佐」

 

 俺は堪らず声を掛けてしまった。

 

「何だ」

 

 坂本少佐の表情はこれから戦闘に行くとは思えないほどに、穏やかな表情をしている。

 

「……ご武運を」

 

「あぁ、任せておけ」

 

 

 

 

 

 

 

 幾分か落ち着いた芳佳ちゃんと外を見つめる、海面に着弾する光線、起きる爆発、波に煽られる駆逐艦達、何も出来ない無力さが悔しく服の上からレイジングハートを握りしめた。

 

「行こう、輝さん」

 

 芳佳ちゃんは小さく呟くと救急袋に包帯や消毒液など必要そうな物を詰め込み出した、後で坂本少佐に滅茶苦茶怒られるなと思いながらも俺も救急袋に包帯などを詰め込んだ。

 

 甲板に向かう最中に、ネウロイの攻撃に晒されている坂本少佐を芳佳ちゃんが見つけ小さく悲鳴を上げた。

 

「坂本さん、大丈夫ですか?! 坂本さん!」

 

「そこで何をしている貴様らは、部屋から出るなと言った筈だ、戻れ!」

 

「坂本さん、無事だったんですね良かった……」

 

「宮藤! 北条! 戻れと言ったのが聞こえなかったのか! そこはお前たちの居場所じゃない、邪魔になるだけだ」

 

 機関砲の音にまぎれ坂本少佐の怒鳴り声が聞こえる。

 

「私も、私に出来る事をしたいんです」

 

「戦う事は出来なくても、消火を手伝う事は出来ます! 俺達にも出来る事をやらせて下さい」

 

「今はお前達に出来る事などない! 素人が混ざっても邪魔になるだけだ! 早く部屋に戻れ」

 

 その後はどんなに呼びかけても坂本少佐は答えてはくれなかった、俺と芳佳ちゃんは取りあえず医療品を運ぶ為に甲板に向かう、空が行き成り眩しくなり目を細めながら見上げる。

 

 上空を飛んでいたネウロイの片翼が坂本少佐によって切り裂かれていく、光る破片を撒き散らしながら砕け行く翼を甲板の兵士と共に歓声を上げて喜ぶ、が、ネウロイは直ぐに再生を始めてしまう。 

 

 俺達の上げた歓声が聞こえたのだろうか、再生の終わったネウロイは細い光線を幾重にも艦隊に向かって撒き散らす、咄嗟に回り込んだ坂本少佐がシールドで防いだが、防ぎ切れなかった一発が赤城の船体をかすめ小さい爆発が起こった。

 

「八番機銃遊爆! 消化班急げ!」

 

「怪我人だ! 衛生兵ッー!」

 

 慌ただしく聞こえてくる指示に俺と芳佳ちゃんは顔を見合わせ、救急袋を肩にしっかりと掛け直すと現場に走り出した。

 

 腹部を抑えうめき声を上げている兵士を前に芳佳ちゃんの瞳の色は強さを増す。

 

「しっかりして下さい! 私が助けますから」

 

 力強く宣言すると魔法を発動させる芳佳ちゃん、俺はその隣で必要になるであろう医療品の用意を始める。

 

「何をしている! 止めろ!」

 

 魔法を使っている芳佳ちゃんの肩を強く掴んで来た兵士の声色は強い。

 

「私、治癒魔法が使えるんです……」

 

 戸惑いがちに答えた芳佳ちゃん、俺も助け船を出すべく口を開こうとしたが兵士が口を開くのが早かった。

 

「アンタ、ウィッチか、だがコレだったら俺が治療した方がマシだ、余計な事をするな」

 

「お願いです、俺達にも何か手伝わせて下さい」

 

 堪らずに声を上げたが、兵士は俺達を一瞥すると表情は更に厳しくなる。

 

「無茶を言うな、ここはお前達の様な子供や素人が居る場所じゃない、部屋で大人しくしていろ」

 

「嫌です! そんなの嫌なんです!」

 

「……だったら、包帯が足りない、有るだけかき集めて持って来てくれ」

 

「「はい!」」

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