ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶   作:水無月 双葉(失語症)

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第7話 私にできること、俺にできること

「すいません、お待たせしました」

 

 俺と芳佳ちゃんは医務室に有った包帯をありったけ掻き集めて衛生兵に渡す。

 

「すまない、助かった、ここはもう良い。安全な所に居るんだ、いいな」

 

「でも……」

 

 芳佳ちゃんが必死に食い下がるが、衛生兵はそんな芳佳ちゃんの頭を優しく撫ぜる。

 

「もう、十分だ、良くやってくれた。後は、自分の身を守る事だけを考えなさい」

 

「行こう、芳佳ちゃん」

 

「輝さん……」

 

 俺達の為に気を使ってくれた衛生兵、もうこれ以上は迷惑を掛けられない。

 

「すみません、ご迷惑をおかけしました」

 

 留まろうとする芳佳ちゃんを何とか立たせると、俺は医務室への通路を歩く。

 

「私達に出来る事なんて、何も無いのかな……」

 

 後から掛けられた芳佳ちゃんの言葉に、そんな事は無い! そう叫びたいがそう叫ぶ事が出来る理由が……俺には見付けられなかった。

 

「俺達は無力だな……」

 

 視界が歪む、涙が落ちてしまいそうだ、何の為に俺はこんな所に居るんだ。

 

「輝さん、私……」

 

 言葉を詰まらせる芳佳ちゃん、俺は振り返ると芳佳ちゃんに声を掛けようとしたが、激しい衝撃が俺達を襲う。

 

 気が付いたら俺達は折り重なるように横たわっており、俺の上で意識を失っている芳佳ちゃんを見て肩を揺すりながら叫ぶ。

 

「芳佳ちゃん! 芳佳ちゃん! 目を開けて芳佳ちゃん! 芳佳ー!」

 

「お父さん……」

 

 うっすらと目を開け、小さく呟いた芳佳を見て俺は何粒かの涙を落とし、嬉しさのあまり芳佳の小さな体を抱きしめた。

 

「良かった、良かった芳佳、目が覚めたんだね」

 

「輝さん? ……私……夢を見たんです」

 

 芳佳は小さく呟くと、拳が震えるほどの力で俺の服を握って来る。

 

「夢?」

 

「はい、お父さんの夢、お父さんは夢で私に言っていたんです、私の力でみんなを守る立派な人になりなさいって、だから私……輝さん、力を貸して下さい」

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良いんだね。芳佳?」

 

「はい、みんなを守る為に、私に出来る事をするんです」

 

 俺の確認に芳佳はきっぱりと言い切った、その覚悟の強さに俺はもう反対するのを止めた。

 

「分かった、良く聞いてくれ芳佳、離陸に関しては発進ユニットが補助をしてくれるから消費魔力は少ない、芳佳は空に飛び上がる事だけを考えろ」

 

「うん、分かった」

 

「エレベーターを作動させたら俺も直ぐに飛び乗る、最悪発進ユニットの電源が死んでいたら俺が手動で発進の補助をする」

 

 手伝いをしている時に発進ユニットの説明を受けていて良かった、芳佳を助ける事が出来る……

 

「輝さん、ありがとうございます」

 

「その言葉は無事に戻って来てからもう一度言ってくれ、エレベータを起動させる!」

 

 エレベーターが死んでいない事を信じで上昇ボタンを押す、室内に発進ベルが鳴り響き、ガコンとエレベータが上昇を始め俺は大急ぎで飛び乗った。

 

「私にできること、約束を守る為……みんなを守る為に……」

 

 芳佳が小さく呟く。皆を守る為に、私に出来る事、か……俺は……一体何をしているんだ……芳佳が戦おうとしているのに何も出来ないじゃないか……

 

 発進ユニットの補助を受け魔導エンジンに火が入る、力強い音を立てながら芳佳の全身に魔力が回るのが見て取れる。

 

「宮藤芳佳、行きます!」

 

 発進ユニットのロックが外れると同時に走り出した芳佳、魔力の残照を残し飛行甲板を付き進む。

 

 上空のネウロイが赤城に対して光を放つ、艦橋の上半分を消滅させたそのエネルギーの爆発は甲板の芳佳を襲う、爆風に煽られ芳佳の小さな体がぶれるが何とか体制を整えた。

 

 甲板から身を躍らせた芳佳、風を受けながらもゆっくりと海面に向かって行く。

 

「芳佳ぁ!」

 

「「飛べぇぇぇぇ!」」

 

 芳佳と俺の叫びが重なり、海面ギリギリでエンジンが爆発したような轟音を轟かせ芳佳の体を一気に大空へと浮かび上がらせた。

 

「飛べた! 飛べたっー!」

 

 インカムから聞こえる芳佳の喜びの声に俺は思わずガッツポーズを取った、喜んだのも束の間、ネウロイの光線が芳佳を狙う。

 

「芳佳っ!」

 

 俺の叫びと同時に展開される巨大なシールド、その余りの大きさに坂本少佐の感嘆の声も聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 甲板から二人の戦いをも守る、気が付いた時は他の飛行機は既に落とされており不利な状況になってしまっている。

 

 仲良くしてくれた飛行隊の面々も何人も死んでしまっているのだろう、俺はどうしてこんなにも無力なんだ……ネウロイと言う名の圧倒的な暴力、世界を守るのは天翔けるウィッチ。

 

「力が……力が欲しい……」

 

 空を睨んだまま知らぬ間に涙を流していた俺は、首から下げているレイジングハートを服の上から力一杯握り込む。

 

「なぁ、頼むよ、レイジングハート、俺に力を貸してくれよ、お願いだよ! レイジングハート! セットアップしてくれよ!」

 

 

 

 ──おじさんは、ううん、お兄さんはその子(レイジングハート)の使い方を知っている筈だよ──

 

 

 

 行き成り聞こえた微かな声に俺は周りを見渡すと、周りがゆっくりと動いていた。

 

「何が起こって……さっきの声、あの時のコンビニで会ったあの女の子か!」

 

 ──時間が無いの、もう私の力もほとんど届かないから、だからお願い──

 

 ──良く思い出して、お兄さんは全てを知っている筈、今は少し忘れているだけ──

 

 ──如何したらその子(レイジングハート)はお兄さんを主人と認めるか……思い出してお兄さん、そして……世界を──

 

「世界を? 世界をどうしろって!」

 

 気が付いた時はゆっくりと流れていた時間は戻り、兵士達の怒号が聞こえる。

 

 ……如何したら主人と認める……主人、マスター……

 

「そうか! そう言う事か! なら!」

 

 首に掛けたレイジングハートを台座から外して手の中に握り込み、大きく深呼吸をして心を落ち着ける。

 

「心を澄ませて……」

 

 分かる、レイジングハートの脈動が、魔力の奔流が、彼女はずっと俺に語りかけていた事が。

 

「管理権限、新規仕様者設定機能、フルオープン!」

 

 手の中のレイジングハートがヴゥンと小さく唸り俺の周りに赤紫の魔法陣が展開する。

 

「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て……」

 

 胸の奥が熱くなり魔法陣に俺の力が注がれて行く。

 

「風は空に、星は天に、輝く光はこの腕に、不屈の(こころ)はこの胸に! この手に魔法を! レイジングハート! セーット、アップ!」

 

『Nice to meet you,new master』

 

「ゴメン、出来れば日本語でお願い」

 

 魔力で出来た空間でレイジングハートと見合わせる。意味は直接頭の中で理解されるがどうにもこそばゆい。

 

『……始めましてマスター、ずっと待っていました』

 

 ずっと待っていました。この言葉の意味、重さを今更ながらに痛感し、レイジングハートの辛さが身に沁みる。

 

「うん、ごめん、レイジングハート。これからよろしくな」

 

『こちらこそ、マスターの魔法資質を確認しました。デバイス・防護服ともに、最適な形状を自動選択しますが、よろしいですか?』

 

「基本は任せるけど、スターズスタイルをベースに俺のイメージも入れて欲しい」

 

 自分が誰の力を借りているか、何の為に戦うかを忘れない様に、エース・オブ・エースのあの人の姿(高町なのは)を、あの杖(レイジングハート)の姿を、全力で戦う為に。

 

『オールライト、スタンバイ・レディ、バリアジャケット、セットアップ』

 

 胸の奥から力が引き出され全身を覆い靴す、魔力が結晶と成り白と青を基調とした戦闘服が構築された。

 

「行こう、レイジングハート! 俺達に出来る事をする為に!」

 

『イエス、マスター!』

501のメンバー(数名)になのは系のデバイスを持たせるか?

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