ストライクウィッチーズ 空戦魔導士の追憶 作:水無月 双葉(失語症)
ネウロイがキラキラと輝く破片となって大空を舞っている、まるで花吹雪の様で俺は不覚にも美しいと感じて見惚れてしまう。
花吹雪の中に居る芳佳と坂本少佐、二人の元に向かっていると芳佳の様子が少し可笑しい事に気が付く、大空にたゆたうのその姿は儚げにも見えて俺は慌てて芳佳に近づいた。
「芳佳……」
俺の呼び掛けに気だるそうに視線を向けて来た芳佳は小さく息を吐く。
「やったの……かな……」
「あぁ、芳佳が少佐を守り抜いたから、最後まで諦めない姿を見せてくれたから、勝てたよ」
俺の言葉を聞いた芳佳は、口元を緩ませ眠る様に意識を手放す、俺は大切な妹を壊さない様に抱き寄せた。
「大した奴らだ、何の訓練も無しに此処までやるとはな」
坂本少佐が俺の肩に手を置き、穏やかな声色で言葉を紡ぐ。
「少佐が居てくれたから、芳佳が俺の心を後押ししてくれたから……」
「そうか」
少佐の方に振り向くと、自然と目が合った。
「少佐、俺、今気が付きました。少佐の言った意味が……呪いではなく祝福だと言われた事が、いつもはぽわっとしていて頼りなくって、気に掛けていないと駄目だと思っていたのに、芳佳はこんなにも強かった、もしかすると俺は兄貴を気取って居ただけなのかもしれません」
「何を言っているんだお前は、お前の事もある程度は調べてあった、お前は居候なんかじゃなくて宮藤の立派な兄だよ、こいつはまだまだ危うい、まぁ、お前もだが、お前らは二人で一人前だ」
「坂本少佐……」
「これからも宮藤を助けてやれ」
「はい、必ず」
小さく身動ぎ芳佳が目を覚ます。
「あ、あれ……?」
「気が付いたか?」
俺の言葉を聞いた芳佳は何度も瞬きをすると、俺と坂本少佐を交互に見渡す。
「坂本さん、輝さん……」
「良くやってくれたよ、お前達が居なかったら私もどうなっていたか」
頬を少し染め、照れくさそうに笑う芳佳。
「私、無我夢中で……ちゃんと出来たんでしょうか」
「何言っているんだ、初めてであそこまでやれたんだ、十二分すぎる程に出来ていたよ、ほら、二人とも見てみろ」
坂本少佐が海面に視線を向ける、俺と芳佳もそれを追う様に視線を動かすと赤城の甲板や沈んでしまった駆逐艦の救命ボートに乗っている兵士達が大きな歓声を上げていた。
歓声が俺の心を打ち、どうしようもない程の温かい気持ちが溢れてくる、俺の服を強く掴む感触がし視線を動かすと、目を潤ませていた芳佳と目が合った、芳佳は俺の胸に顔を埋めると、小さな嗚咽を漏らす。
「芳佳……」
「私、私……」
俺達の前に基礎と壁の一部を残しただけの建物が佇んでいる。
「ここが、この手紙に会った場所……」
芳佳が小さく呟いた。
「あぁ、五年前まで宮藤博士が此処でストライカーの開発をしていたんだ……あの事故の日まで」
坂本少佐がまるで懺悔をするかの様に言葉を落とし、沈黙が辺りを包み込んだ。
「坂本さんは、知っていたんですか」
「すまん」
芳佳の問いに坂本少佐は悔いた様に謝った。
「芳佳、聞いてくれ。坂本少佐は」
「北条!」
俺を止めようと声を上げる坂本少佐、俺は少佐の圧を受けながらも一歩芳佳に近づく。
「坂本少佐は、芳佳を此処に連れて来る為に乗艦を許してくれたんだ。本当ならあの日、赤城の前で建物が既に無い事や、お父さんが亡くなった事を言えば済むだけなのに、芳佳の心が整理を付けられる様に、その為だけに俺達を此処まで連れて来てくれたんだ……」
「ありがとうございます、坂本さん、私の我がままを聞いてくれて此処まで連れて来てくれて、感謝しています」
「……二人共、少し歩かないか、如何しても連れて行きたい所がある」
坂本少佐はそれだけ言うと、俺達の返事を待たずに歩き出す、俺と芳佳は顔を見合わせると頷き合い直ぐに坂本少佐の後を追う。
「私も、かつては博士と此処で過ごしていたんだ、その手紙もやはりそのころに出された物だったんだろう………………」
歩きながら坂本少佐は少しだけ当時の事を話てくれた。
「お父さん、何時も間が悪いんですよ。小学校の入学の日に出て行って、亡くなった知らせが届いたのは10歳の誕生日。今頃になって手紙が届いて、やっぱり生きているんじゃないかって思ったけど……親子なのに縁が無いのかな、私達……」
俺と坂本少佐は芳佳の独白をただ静かに聞いていた。
「此処だ」
ちょっとした岬に連れて来られた俺達、その先端に佇むひとつの墓標。
坂本少佐に促され、墓標の前に進んだ俺と芳佳、芳佳はしゃがみ込むと愛おしそうに墓標を撫でる。
「お父さん……」
小さく呟き墓標に刻まれた父親の名をなぞる芳佳、その指先が下の方に向かうと動きが止まる」
「その力を多くの人を守るために。博士が良く言っていた言葉だ、ストライカーユニットもそんな博士の想いから生まれたんだ」
言葉は短いが全てを籠めた坂本少佐、俺達は何も答えられない。
「お父さん、お父さん……ううぅぅ、うわあぁぁぁぁぁぁ」
嗚咽を漏らし声を上げて泣く芳佳。
俺は芳佳の肩を抱き引き寄せると、芳佳は俺に縋り付き更に大きな声で泣きだした、俺は芳佳の背中を撫でながら気が済むまで涙を流させた。
太陽が海に傾き出し、海も空も茜色に染まりだす。
「そろそろ行くか」
泣きやんだ芳佳が落ち着くまで待ってくれた坂本少佐が、確認するように聞いて来た。
「はい」
芳佳は小さく返事をして立ち上がる、目を赤く腫らし頬に涙の痕を付けながらも憑き物が落ちた表情をしている。
「あ、あの……」
俺が立ちあがると同時に、芳佳が申し訳なさそうに坂本少佐を呼びとめた。
「ん?」
足を止め振り返る坂本少佐、芳佳も坂本少佐の顔を見つめると覚悟を決めた様に大きく息を吸う。
「あ、あの、坂本さん、私をストライクウィッチーズに入れて下さい」
「なに……」
芳佳の唐突な言葉に、坂本少佐は一度大きく目を見開いた。
「此処に残って私の力を使いたいんです。もっと沢山の人を守る為に」
「……俺もお願いします。このまま黙って扶桑には帰りたくはありません、俺も、俺の出来る事をしたいんです」
芳佳は一度俺を見ると、父親の墓標に目を向ける。
「きっと、お父さんもそう願っていると思います」
墓標を見つめる芳佳の顔は晴れやかだ。
「そうか……いよぉし、分かった、後は私に任せろ。一人前になれる様にビシビシ鍛えてやるからな、覚悟してろよ」
「「はいっ!」」
俺達の返事を聞いた坂本少佐が豪快に笑う、笑い声を聞きながら俺は空へを目線を向けた。
この美しい海と空に向こうに居る人類の仇敵、ならば俺が、いや、俺達がお前達の天敵になってやる。
のちに坂本美緒は語る、将来、扶桑の切り札と呼ばれた一人の少女。そして唯一の男性魔法使いにてエース・オブ・エースと称えられた男の誕生に居合わせられたのは、自分の人生の中で一日も忘れる事の出来ない出来事だったと。
お読み頂きありがとうございました!
DVD1巻分、無事に完走出来ました。これもひとえに読んで下さった皆様が居たからです。
私の作品には珍しく非ログインでも感想をお書き頂けます、感想など頂けますと筆者は小躍りします。
感想は……と言う方は「ここすき」をご利用して頂けますとやはり筆者は小躍りします。
本当にお付き合い頂きありがとうございました。
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