Return to ZERO   作:ジェラール_

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大変長らくお待たせいたしました。相変わらず話が進んでない。

灯織視点はこの話でいったんおしまいです。女の子の視点書くのって難しいですね……

それでは少しの間お付き合いください。


☆風野灯織は物思う②

「新しい社員の方……ですか?」

 

 プロデューサーは頷く。

 

「手が足りないなら増やせばいい。ストレイライトも灯織もだいぶ名前が売れてきて、経営にも余裕ができてきたからな。いい加減複数のバイト掛け持ちしてるやつに事務作業任せっきりなのもまずかろうってな。いい機会だから社員を募集してるんだよ」

 

「バイト……?」

 

 この会社にアルバイトのひとなんていたっけ、と首をひねっていると、プロデューサーは思いもよらなかった名前を口にした。

 

「七草のことだよ」

 

「え、あの人バイトだったんですか」

 

 何だ知らなかったのか、というプロデューサーの声に私は頷く。今日一番の衝撃だった。日々の事務作業から私たちの各種トレーニングまで見てくれるアルバイトなんて聞いたことがない。いつも眠そうにしているのはいくつものバイトを掛け持ちしていて睡眠時間が足りないからだと聞き、私は今まで彼女のことをねぼすけさんだと思っていたことを反省する。

 

「社員募集、なんて言うのは簡単だ。けどこれがなかなか難しくてな。アイドル業界は今や戦国時代まっ只中だろ。生半可な腕じゃ到底務まらない。スカウトしてきました、あるいは選考通しましたけど鳴かず飛ばずで終わらせてしまいました、じゃあ話にならない。俺たち283プロが求める人材は、お前たちも含めて今後増えていくであろうアイドルをきちんとプロデュース出来て、なおかつ美城の武内先輩か、765シアターの佐久間くらいには仕事がデキる奴ってわけだ」

 

 それは何とも、要求するスペックが高すぎるのではないだろうか。タケウチ先輩とサクマなる人物のことは分からないが、片や百人を優に超えるアイドルが所属する大手事務所に、片やトップアイドルが多数所属する最高峰の事務所に勤めているわけであって、それはもう並大抵の能力ではないのだろう。私たちのプロデューサーがわざわざ名前を挙げるくらいなのだから。彼らに匹敵する能力を持つ人材など、そうそう見つかるものではないだろう。いたとしても、芸能界のみならず他業界の会社だって放っておかないはずだ。就職難が騒がれる昨今、とっくに他企業に身を寄せていてもおかしくない。

 

「無理難題ですね……」

 

「だろ? だから全然見つかんなくてな。俺もちょっと焦ってるわけだ。……ただでさえ、俺には三年近いブランクがある。もちろんそれを言い訳にするようなことはしないが、二足の草鞋を履きながらじゃあ、どっちもベストなパフォーマンスを発揮できなくなる可能性は十分にある。さっきも言ったが、何事も中途半端が一番良くない。それに何より、お前たちは今が一番勢いがある時期だ。俺の個人的な問題で足を引っ張りたくはない。だけど――」

 

 プロデューサーはやや困ったような笑顔を浮かべた。問題はそこで振り出しに戻ってしまう。何よりもまず人手が足りない。283プロを支えるための人手が。元プロデューサーだという天井社長がプロデュース業務を引き継ぐとしても、社長職との兼任という形をとらざるを得ない以上、事業の拡大や新規アイドルの雇用は難しくなる。父がぼやいていたが会社とは難しいものらしく、好調な時に事業を拡大すればいいというものでもないが、少なくとも「我々にはこういうビジョンがあり、そこに向けて動いている」ということを顧客に対して示さなければならないらしい。283プロのような芸能事務所ならば既存の所属タレントの各方面への出演拡大や新規タレントの雇用などがそれにあたるだろうか。だがそれをしようにも、283プロにはプロデューサー以外に社員がいない。出演に当たっての書類整備や精査はまだしも、各種打ち合わせや企画会議にはづきさん(アルバイト)を参加させるわけにもいかないだろうから、必然的にそういった業務はプロデューサーが行うことになる。それらがどの程度の頻度で行われているのかは、私にはわからない。わからないが、私を含めたアイドル四人のここ最近のラジオやバラエティへの出演増加を考えれば想像に難くない。きっと相当無理をしているはずだ。

 

「今はちょうど就活ラッシュも終わる頃合いだからな。俺らみたいな弱小芸能事務所が求める能力を備えた人材は残っているかもしれないが、正直望み薄。俺の伝手はプロデュースされる側ばっかりだから使えない。社長は『私にいい考えがある』っつって出張行ってから全然帰ってこない。現状はあんまり芳しくないな……ま、そんなに気にすることはないよ。岡島さんも急がないでいいって言ってくれてたから大丈夫……なはずだしな。復帰はもうちょい待ってもらうことにするよ」

 

 この話はこれでおしまい、とプロデューサーは手をたたき、机に放っていた書類を手に取った。そういえば、仕事の打ち合わせをするために事務所に来たんだっけ。時計を見てみると、既に二時に差し掛かろうとしている。かなりの時間話し込んでいたようだ。

 

「心配かけたな。でも大丈夫だ、なんとかしてみせるさ。それよりほら、打ち合わせしよう。すっかり予定の時間過ぎちまったからな」

 

 その言葉に、私の思考もようやくアイドルとしてのものに戻っていく。当初の目的である「プロデューサーの悩みの原因を探る」ことには成功したのだ。とてもいちアイドルにどうこうできそうな問題ではなかったものの、疑問そのものは氷解した。ならば今私に出来る事は、アイドルとして彼の期待に応える事だろう。

 

「……わかりました、もともとそのために来たんですものね」

 

「うん、その通り。さあ、お仕事の時間だ。今回はラジオの依頼なんだけどな――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち合わせはつつがなく終わった。もう少し書類を片付けてから上がるよ、とのことでプロデューサーはまだ事務所にいる。うず高く積まれた書類はとても一日で何とかなりそうな量ではなかったが、退出する私と入れ替わるようにはづきさんが出社してきた。直前にプロデューサーが電話をしていたことを考えると、応援を要請していたのだろう。帰り際、オフィスから「お疲れさん、悪いけど手伝い頼むわ」「報酬はケーキがいいです」「わかった、わかったから……」という会話が聞こえてきた。相変わらずはづきさんにたかられているようだ。なんだか気の毒に思えてきた。

 

「……そういえば」

 

 はづきさんは普段、炭水化物や高カロリーのものをあまり口にしない。差し入れはもちろん、毎日の食事でも。

 

「なんでなんすか?」

 

 と首をかしげながら質問するあさひに「ハタチを超えるといろいろ気にしなきゃいけなくなるんですよ~」とにこにこ笑顔で諭していたのも記憶に新しい。そんな彼女だが、唯一プロデューサーからの差し入れは口にする。のみならず、今日のように自分からねだりに行くことすらある。どうしてだろうと考えていたが、そこまで難しい問題ではないことに気が付いた。

 

「はづきさんも、プロデューサーのファンなのかな」

 

 なんだか正解のような気がしてきた。また一つ疑問が解決したことを喜びながら、私は岐路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私のはづきさんに対するこの認識が盛大な勘違いであったことに気が付くのはもう少し先の話になるのだけれど、それをこの時の私が知る由はなかった。

 




短い(自省)

活動報告にも記載しましたが、ようやく身の回りが落ち着いてきたので今後は週間くらいで仕上げられると思います。積んでるガンプラが10個くらいあってなおかつ改造もしてるのでやや不安ですが。嘘です、ちゃんとやります。


次回は再び零斗視点。あのキャラも登場します。お楽しみに……
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