スノードロップ   作:何かと影響されやすい作者

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メディアリテラシーを胸に

一行の手紙と色とりどりの花束。送り主は『貴方方の思い人』。明らかに怪しいプレゼントへの対応はなにか?単純にゴミ箱に捨てられるだけだ。ぐしゃぐしゃに丸められた手紙と、束ねられたままゴミ箱に突っ込まれた花。そんな非道な行いをしたというのに、英雄と彼のハーレムは気にすることもなく、日常生活を満喫する。

 

こういった贈り物というなの嫌がらせは、実のところこれが初めてではなかった。結果的に唯一の男性IS操縦者という隔絶した地位と政府からの手厚い保護、美少女に囲まれたハーレムなど、英雄はよくも悪くも目立ちすぎたのだ。それこそ2人目の男性操縦者などとテレビで放送さえされたのだから。そして目立ちすぎるということは、逆を言えば誰からの目にも留まりやすいともいえた。

 

女尊男卑の世界において、半ば男性は女性の召し使いだ。それこそ見ず知らずの女性の買い物に金を払わされる男性はいるし、機嫌を損ねた見ず知らずの女性によって警察に連れていかれる男性はいる。結果として、女性に対して恐怖する一方、煮えたぎる汚泥のような憎しみを抱く男性がいてもおかしくはない。

そんな中、IS操縦者という立場の英雄は、美少女に囲まれての幸せなハーレム生活だ。これで憎まれないわけがない。

 

自分達は日夜女性に怯えてくらしているのに、なぜお前だけが守られているんだ!なんでお前だけが幸せなんだよ!結局は単なる八つ当たりだが、仮に虐げられている立場からすれば英雄は、男なのにちやほやされてる存在なのだ。同じ男なのに、自分たちとは真逆の扱い。ただただ黙って虐げられる男たちからすれば、英雄は勝手ながらも体のいい、恨みを向けるにはちょうどいい存在だった。

 

一方で、ISに乗れるからこそ栄華を楽しんでいる女性からすれば、英雄の存在は面白くないのは当然だ。それこそ、男性が操縦者になれるようになれば、今の地位が引っくり返るかもしれないのだから。故に彼がいなくなればいいと、極端な思考に走る女性たちも少なくない。それこそ自分たちの権利を守るために、本当に亡き者にしようとした女もいた。

また英雄のハーレムに対しては、元IS学生や同級生からの逆恨みも多い。たまたま英雄と同じクラスだった、英雄と関係を結んだ結果が、英雄のハーレムという玉の輿。政府からも援助され、卒業してからも幸せな生活。自分達とは違うハッピーライフを見せつけられれば、心に黒い感情が過るのは仕方がないかもしれない。

 

まあしかし、そんな八つ当たりの嫌がらせをした奴の末路はどうなるかなんてのは語るに及ばないだろう。何回も見せしめとして、ストーカー等といった者たちが逮捕された。

直ぐ様こういったことに対応出来るのは、英雄が世界で唯一無二の存在として扱われるのもだが、優秀な存在がいるのも大きいだろう。なにせ英雄のハーレムには、暗部組織をたばねる当主がいるのだから。ようは英雄を敵に回すことは暗部組織と敵対すること。犯罪者に対する報復は当然なのだ。

 

今回もまたその手の人間だろうと彼らは思った。いつも通り、勘違い野郎が逮捕され、いつも通りの平和な日常が訪れる。そんなことを勝手に思い込んでいた。

 

だが、それを嗤うように同じものが配達された。同じ文の手紙と同じ花束。それが玄関前に置かれていた。流石にこれはおかしいとなり、すぐさまハーレムの一人が動き出す。暗部組織の当主様は、この送り主を調べあげようとした。それが英雄を守るための義務としてか、私情まみれの点数稼ぎかは置いといて。

 

しかし、犯人は特定できなかった。花屋も、郵便局や宅配業者などを調べても分からなかった。このご時世、調べればすぐに身元は割れるはずだというのに。そういったことを含めて、相手の送り主に対する危険性が注視されるようになった。

 


 

ある日、とある映像がネットに公開された。そこは誰もが映像を投稿できるサイトで、多くの人たちが様々な映像を見ていた。青年たちが狭い部屋で何やら実験をしていたり、女性が化粧を実践したり、演奏者たちが流行りの曲を演奏したり、テレビで有名な人が他愛のない話をするなど、様々な内容が投稿されていた。そんな中、唐突に投稿された映像。投稿者名はワンサマー。タイトルは『過去の過ち』なるものだった。

 

映像の内容は、どこかの建物の中で少女たちが話をしているだけの光景。その時点で明らかにおかしいと気付く者もいただろう。そんな思いを他所に映像は流れた。

 

『本当に清々したわ。あんな奴に惚れてたなんて、私どうかしてたみたい」

 

『まったくだ。あんな軟弱者に惚れていたな本当にどうかしていた』

 

『それにしてもいい気味でしたわね。あの男が英雄様に叩きのめされる姿、本当に滑稽すぎて笑いが止まりませんでしたわ』

 

『あんな奴が教官の身内など、やはりあの男は存在自体が間違いだったのだ』

 

『僕を助けるなんて言っておいて、結局は何も考えられなかっただけだしね。信じた僕が馬鹿だったよ』

 

誰かを批判するような会話内容。それがずっと流され続け、『どうしたんだ皆?』と、少年の声が聞こえた途端、バチリと途絶えた。

ただただ誰かがしゃべっているだけの光景。しかもモザイク処理がかかっているため、音声のみという謎の映像。いったいなんだこれ?という感想しかない謎の映像。しばらくすると、また別の映像が投稿された。

 

 

今度はどこか広い競技場な場所で、空中には黒と白の何かが飛び回っていた。黒い何かから赤いものが何十も放たれ、一方的に白いものを打ち抜いていく。

 

『飛び道具ばかりで卑怯だぞ!正々堂々戦え!』

 

『戦いに卑怯なんてあるわけないだろ。それともお前はお行儀良い戦いしかしたことないのか?ああそうだよな、お前は織斑千冬の弟だからな。みんなお情けでお前を勝たしてくれたんだろうな』

 

『千冬姉は関係ないだろ!俺は、俺の力で……!』

 

『お前みたいな無自覚なのが一番質が悪いんだよ!』

 

互いが互いをけなし合う。そんな光景がずっと続いたが、最後は白い方が地面に墜ちていき、そこでまたぶつりと映像が切れた。

 

 

 

次の映像は誰かの登校中らしく、ずっと足元が映し出される。しばらくして門をくぐり、どこかの学校だろうか、下駄箱が置かれた場所が映し出される。そしてどこかの下駄箱を開けた途端、落ちてくる紙屑。みれば、下駄箱に中にはぎっしりと誰かの飲みかけのペットボトルや紙コップなどのゴミがつめこまれていた。

そのまま上履きを取り出せば、罵詈雑言が書かれた上履き。そんなものを見ながら、ただただ誰かは無言のまま廊下を歩いていく映像。

 

 

そういった、どういう意図があるのかわからない映像がずっと投稿され続けた。

 

 

『一体どうしたんだよ箒!?』

 

『もうお前にはうんざりだ。今後一切私に関わるな』

 

『な、何言ってるんだよ…?急に何を言い出すんだよ!?』

 

『もうあんたなんかどうでもいいって言ってんのよ!さっさと私たちの目の前から消えてくれる?』

 

『あなたみたいな男がいるから、英雄様が困っておいでですの。本当に恥知らずの男ですわね』

 

『な、なぁシャル?事情を説明『その名前で僕を呼ぶな!』…シャル…?』

 

『お前みたいなやつを信じた僕が馬鹿だったよ!ほんと、口先だけの偽善者で役立たずなんだよね!』

 

『ち、千冬ねぇ?千冬ねぇもなんで黙っ…『貴様が教官の名前を口にするなぁ!』

 

何かが酷く当たった音と共に、映像が横倒しになる。

 

『本当に迷惑なんですよね織斑君は。織斑君のせいで私たち迷惑してるんです』

 

『ほんと、何がみんなを守るよ。あんたみたいな屑に守られたくもないわ!』

 

『正義の味方ごっこをおしつけないでくれないかな』

 

聞こえてくる数々の声。誰もがみな、誰かに責め立てる。

 

『一夏』

 

『千冬ねぇは違うよな?俺は間違ってないよな……?』

 

『もうお前を弟とは思わん。いい加減、おまえに振り回されるのも疲れたんだよ』

 

『…え?』

 

『少しは反省してくれると期待していたんだがな』

 

『待ってよ。待ってくれよ千冬姉!』

 

去っていく人たちを映し出した後、声が聞こえる。

 

『なんで、なんでこうなるんだよ…。なんで俺を認めてくれないんだよ…』

 

ただ少年の悲痛な呟きだけが流れ、ぶつりと途切れた。

 

最後の映像は……いや詳細な説明は止めておこう。ただ単に少年一人と複数の少女らが体を重ねているだけの映像だ。嬌声を発し、誰かを罰し、学校である部室などで行われている狂乱の宴でしかないのだから。

 

これらの動画はすぐに消去され、サイトからは見れなくなった。投稿規約を無視したという理由だったが、映像を見た人たちからしたら()()()()()()()()など理解できるだろう。だからこそ余計に勘繰られる。もはや真実などはどーでもいい。嘘かホントかなんてのは些事でしかない。不満という燻ぶった火種に火薬が放り込まれたのだ。それがどんな結果になるなんて、子供でも分かるんだから。

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