スノードロップ   作:何かと影響されやすい作者

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白騎士

白騎士。その存在はあらゆる意味でこの世界では有名だった。それこそ、いい意味でも悪い意味でも。篠ノ之束が最初に作り上げた初代機(IS)にして、世界と戦える力を備えた兵器。この世界にISを認めさせた存在にして、女尊男卑へと世界を変えた元凶の一角だった。その姿がまるで白い鎧を着た騎士のように見えたことから、白騎士と言われている。

 

白騎士事件。それがすべての始まりの出来事だ。正体不明の存在によるハッキングで、突如アメリカの軍施設から日本へ向けて発射された2000以上のミサイル。あわや日本が大惨事になるとパニックになる最中、突然現れた白騎士がすべてのミサイルを破壊する。続けて正体不明機(白騎士)を撃墜、捕獲しようとしたアメリカ軍の戦闘機や艦隊相手に徹底抗戦。それもたった一人で軍隊と互角以上に立ち回った。奇跡的に死傷者を出さずに圧倒的な力を示し、実質アメリカの軍隊に勝利した白騎士は、その後どこかへと飛び去り、その後は行方知らずだ。

 

ミサイルを撃墜し、軍隊とも戦える戦闘能力と誰もが信じるに足る確かな事実。そしてこれがIS1騎による事実により、世界はISの優秀さを評価し、ISを受け入れて今に至る。なお、それが全て篠ノ之束のシナリオによるマッチポンプであり、白騎士の搭乗者が織斑千冬(世界最強)であったことは、英雄を含めて指で数えるほどしか知らない。

 

「白騎士だと…?」

 

目の前に置かれた白騎士の絵に英雄が呟いた。ありえない。そんなことがあるはずがない。それこそ白騎士は千冬さん曰く、束によって解体され、その後コアがどこに行ったかなど知らないという。それこそ篠ノ之束がどこかに隠していたのかもしれない。だが、コア自体で動けるはずもないし、そもそも白騎士自体が織斑千冬でようやく動かせるほどの高スペックでありじゃじゃ馬なのだ。並の人間ならば動かせることすら難しい。ならば目の前に存在する白騎士もどきは一体なんだというのだ?

 

「これは……白騎士に似てるね?」

 

「ええ、断定はできないけどね」

 

シャルロット・デュノアの言葉に、更識楯無が答える。

 

「ですが、白騎士は千冬先生が言うには、篠ノ之博士によって解体されたのでは?」

 

「確かに、姉さんが解体してコアを取り出したと言っていたが…。しかし、千冬さんが嘘を吐いていたにしてもな…」

 

「そもそも教官が私たちに嘘を吐くはずがないだろう」

 

「そうよ。千冬さんが嘘を吐くにしても、そんなことをする意味が分からないわ」

 

その場にいた全員が、織斑千冬の虚言を否定する。だからこそ余計に、目の前に存在している白騎士もどきが不気味に見えた。

 

「ならこの絵の白騎士は何でしょう?もしかして、白騎士を模したコスプレ…ってことは?」

 

「それこそ意味が分からないわ。なんでわざわざ、白騎士に似た格好でうろつくのよ。ハロウィンなら兎も角、この時期だと逆に不審者を宣伝することになるわ。現にこうして、見られていたわけだし」

 

あーだこーだと意見を出すも、結局はたいして意見がまとまることはなかった。そもそも目撃者の証言しかなく、明確な証拠も何もなく、実際に自分たちが見たわけでもないのだから無理な話だ。

 

「コスプレだろうと何だろうと、この白騎士もどきが千冬先生を殺した犯人の手掛かりってことでしょ。なら、すぐにでもこいつを捕まえなきゃ」

 

「鈴の言う通りだ。私たちをこんな状況に追い込んだ『ワンサマー』なる不届き者がまだ見つからない中、白騎士もどきに構う時間もない」

 

「今も『ワンサマー』の手掛かりを探しているし、『偽白騎士』も私の部下や警察の力を借りるつもりだからね。見てなさい、私たちにケンカを売ったこと、絶対に後悔させてやるんだから」

 

未だ混乱する状況の中で一筋の光が見えたことに、英雄や彼女たちは一致団結するのだった。

 

 

「ちょっといいかしら?」

 

それぞれの部屋へと帰っていく中で、英雄は楯無に呼び止められた。

 

「これから行くところがあるけど、付いてきてくれないかしら」

 

「今すぐにか?」

 

「ええ、この『偽白騎士』について、知ってるかもしれないから」

 

「分かった。少し待っててくれ」

 

英雄はすぐに出かける準備をする。もともとがISの男性操縦者ということに加え、織斑一夏に対する行いの動画が配信された以降、英雄たちは良くも悪くも有名になり過ぎた。もはや彼らを知らない人は殆どいないだろうというほどに。その結果、必要最低限の外出という制限に加え、こうして外へ出るためには常に変装をすることが必要になってしまった。

 

「準備は良いかしら?」

 

「問題ない」

 

衣服の下に防弾防刃用として、そしてもしもの時のためのISスーツを着込み、待機状態のISを身に付け、二人は地下通路を通って隠れ家から少し離れた駐車場へ向かう。これらはいざという時のための避難路だった。こうした地下通路は今身を潜めている隠れ家からいくつかあり、時にマスコミや世間に解らないように外出をしている。備蓄があるにしても、大人数で過ごすには量が少ないゆえに、食料や日用品を買う必要があった。だが、こうした手間を惜しまないことで、今もなお自分たちは気付かれずに、危ういとはいえ安全でいられる。

 

「行くわよ」

 

「ああ」

 

駐車場の車は殆どが更識家が所有している。もちろん、所有者の名前は全て偽名で登録されているので、調べても簡単に更識家とつながる様には出来ていない。二人は停めてあったの車の一つに乗り込み、車を走らせた。この事態を知っているであろう存在がいる場所へと。

 

 


 

真乃英雄たちがいなくなった。そんなことはマスコミどころか社会自体がとっくに知っていた。そもそも電話にも出ず、四六時中記者やテレビ局が取り囲んでおいて、数日どころか数週間も家から出てこないとなれば、誰だって分かることだろう。さて、そうなればマスコミや社会はどうなるだろうか?当たり前のことだが探すに決まっている。

 

自殺した織斑一夏への虐め映像流出に加え、あろうことか実の姉である織斑千冬がIS学園内の虐めを事実として認め、その後に殺されたのだ。世間から注目された旬のネタを放置するなど、だれがするだろうか。その後、織斑千冬を殺した犯人であろうとされる『白騎士もどき』のニュースが更にその熱気を後押しした。ISの初代ブリュンヒルデが、世界を変えたISと思しき存在に殺された。まさに、これが各新聞や記事のトップにならないはずがない。

 

ニュースではその白騎士もどきについて、コスプレした頭のおかしい奴だったり、自殺した織斑一夏の関係者、いじめの真実を知っていた存在、元から織斑千冬に殺意を抱いていた者、愉快犯など、色々と語られるも、どれも信ぴょう性の無いもの出しかなかった。果てには、『白騎士様が罪人を罰したのだ!』などと言い出す輩まで出てしまう。

 

話を戻そう。そんな話題性を含めて、事実を知っているだろう英雄らがいなくなったのだ。弁解もせず、謝罪もせず、事実を認めず、真実さえ公表しないまま。そんな行動を世間がどう判断するかなど想像できてしまうだろう。さて、そんな()()()が消えてしまったとなれば、次の標的は()()()()になるのは至極当然ではないだろうか。もしかしたら彼らを匿っているのかもしれない。もしかしたら真実を知っているのかもしれない。そんな『かもしれない』想像が、暴走しないなんてことはない。

 

個人情報?プライバシー?そんなものはとっくになくなっている。そんなものは、犯罪者たちに適応されることなどあるはずがない。この情報社会において、情報ほど、流出しやすいものはないのだから。

 

真乃英雄やその内縁の妻である彼女たちの失踪により、彼らの身内、親せき、友人等は、真乃たちが受けたマスメディアや社会の攻撃全てを向けられることになった。リポーターや記者がマイクやテレビカメラを向けて追いかけまわし、職場や学校にも押し掛けられ、周りからの白い目に晒される羽目になってしまった。さらに不幸なのは、肝心の犯罪者たちとは連絡がつかないこと。

 

当たり前だが、電波で位置がバレるであろう携帯電話なんてものを、彼女たちが持っているはずがない。ゆえに、彼女たちと連絡が取れるはずがない。一方で、当の彼女たちからは、ニュースなどで報道される身内や知り合いを助けたい一方で、自分たちがいま身を出せばどうなるか、そんな恐れで動くことも出来ない。頼れる英雄は、楯無とともにどこかに行ったっきりだ。ゆえに、彼女たちは動けない。

 

その引き金は誰が引いたのかは解らない。だが、今にも破裂しそうな風船をそのまま見ているだけだったらどうなるか?逃げ場の無い重圧と暴力にさらされた結果がどうなるかなんてのは、彼女たちはすでに知っていたはずだった。

 

さて、ここで出来事が起きた。篠ノ之神社が燃えている。そのニュースを見た篠ノ之箒は、周りの静止を振り切って飛び出したのだった。

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