Cheers   作:冴月

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 ライブハウス、「CiRCLE」に着いた。

 初めて来るライブハウスという事で、ちょっと緊張気味の香澄だったが、「CiRCLIE」に入っていく人達の姿を見てほっとする事になる。

 

「なんだか、普通の人ばっかだね」

「……普通の人ってなによ?」

「んーと、良くライブハウスにいるような激しい感じの人達じゃないって言うか」

「かすみんセンパイ、それは激しい偏見っす」

 

 ライブハウスと言うものは、やっぱりロックで激しい人達が多いーー。というイメージがなかなか抜けていない香澄。以前、練習で使用したライブスタジオもそうだったのだが、なんだか清潔感があるといか想像と違うというか。

 それに合わせるようにライブに来る人たちも、優しそうな人達が多い。むしろ、私達のが変なんじゃないかと思うくらいだった。

 ともかく。香澄の妄想は、いい意味で裏切られていた。

 

「師匠、アソコに飲み物の売店があるぞ。物凄い種類ある! ……うおっ! なんやこのピンクの飲み物!」

 

 ーーりみりん、それはいちごのシェイクだよ。

 興奮している様子のりみ。運ばれていくピンク色の飲み物を指さし、騒いでいるのを見て心の中でツッコむ。香澄は、音を立てずにカウンターへと向かうりみを後目に、溜息をついた。

 

「最近は、ガールズバンド用のライブハウスっていうのも増えてるみたいだね」

 

 沙綾が、配っていたフライヤーを見せてくれた。なんでも、今日は「Roselia」というバンドがワンマンでライブをするらしい。

 

「高校生バンドなのに、プロレベルらしいわね。色んなところが狙ってるだとか何とか」

「自分、動画見たことあるっす! ギターの人とか、正確無比な演奏で凄すぎるっす!」

 

 たえと有咲が、フライヤーとスマホの記事を覗き込んで各々感想を言い合っている。そんなにも凄いバンドなんだぁ……と、香澄はフライヤーを見ながらぼんやり考えていた。

 黒いドレスのような衣装に身を包んだ、5人組のガールズバンド。蝶をモチーフにしたアクセサリーや、青い薔薇を装ったマイクが先ず目に入る。高校生というのだから、歳も近いのだろう。自分達と近い人達が、どんな演奏をするのか、楽しみで仕方なかった。

 りみが、買ったドリンク5人分を器用に持ってくる。それらを受け取りながら、ポピパはCiRCLEの中へと向かう。

 

 とりあえず受付しよう。とのことで、ボーダーシャツにジャケットをはおった女性の所へと赴く。

 

「こんにちは! ライブ見に来た人たちかな?」

 

 ''月島まりな''と書かれた名刺が見えている。隣には、ポニーテールの黒髪の人が、忙しそうに荷物を整理していた。

 

「はい。……えと、5人です」

「……! か、かすみんが……」

 

 ……?

 有咲ちゃんが、驚いてる……? どうしたんだろ。

 

「か、かすみんが……他人(ひと)と話してる!」

「ええっ!?」

 

 思わず大きな声が出てしまった。

 追い打ちをかけるようにして、りみが口を開く。

 

「師匠……。師匠の秘術である"ナ・ニモ"を、こうも断ち切ってしまうとは」

「かすみんセンパイ! 頼もしいっす!」

 

 ええ……。そんな尊敬の眼差しで見られても……。

 沢山の人に見られる中、香澄は戸惑ってしまう。

 

 ーー沙綾ちゃん、助けて!

 そんな眼差しを沙綾に向けるものの、本当に変わったなぁ……と言った感じで、暖かな笑顔による黙殺をされてしまった。

 

 たえとりみが騒ぎ立てる中、それに有咲が加わったということは、つまり収集がつかなくなるということ。

 周囲の視線が集まることにより、余計に緊張し始めた香澄は、たった今あったばかりのまりなに助けを求めた。

 

「あはは……。仲良いんだね、あなた達」

 

 なんと、聖母のような微笑みをしているではないか。香澄は、しばらくこの騒動は収まらないなと確信した。

 

「……続けても良いけど、ここ受付だからね。申し訳ないけど、受付は済ませてもらうよー」

 

 微笑みながらも、チケットを受け取り処理をするまりな。香澄は、処理が終わるまでの約2、3分。この羞恥に耐え、何とかステージへと向かうことに成功した。

 精神的にどっと疲れながらも、なんとか場所を確保する香澄達。目新しいものばかりで、当たりをキョロキョロと見回していると、りみが臨戦態勢に入る。

 

「む、どうやら敵陣地内のようだな。異国の装いをした者が複数人……」

「何言ってんのよ。"Roselia"のファンの人達でしょ……ってこら、手裏剣構えんな!」

 

 りみが、ゴスロリ衣装を着た集団に手裏剣型ピックを構えるものの、有咲に抑えられる。

 けど、異国の装いってのは同感出来なくもない香澄だった。

 

「凄い、こんなにファンがいるんだ……。黒い服人達、みんな"Roselia"に会いに来たのかな」

「多分そうっすね。"Roselia"のファンの人達は、ああいった格好をするって、どっかに書いてあったっす」

 

 たえの豆知識に、沙綾が声を上げた。

 

 ……そんな中、部屋の照明が突如として落とされる。

 思わずビクッと反応してしまったが、ステージを照らす紫のスポットライトでそれがライブ開始の合図だと気がついた。

 

「……いよいよだね」

「ええ。どんな演奏をしてくれるのか、楽しみね」

 

 "Roselia"の5人が登場してきた。

 

 黒髪ロングの大人しそうなキーボーディスト。

 紫髪ツインテールの元気そうなドラマー

 茶髪ハーフアップの派手そうなベーシスト

 ウェーブがかった水色髪のギタリスト。

 銀髪のボーカリスト。順番で登壇してくる。

 

 それぞれが自分の楽器構え、準備終えるとボーカリストは口を開く。

 

「……こんにちは、Roseliaです。まずは一曲ーー」

 

 ーーBLACK SHOUT。

 

 香澄達は、彼女らの音楽に取り込まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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