やはり俺様の青春ラブコメはまさにパーフェクトである。 作:morikuma
これは白い牢に閉じ込められながら、心は黒ずんでいく私の日々の記録である──。
なんちゃって……。
確かに私は時間の大半を病院に縛り付けられるような生活をしているが病院は牢獄でもなければ、私の心は黒ずんでいるということもない。
時々外出も許可されてるし、入院してきたおばちゃんやおばあさんとの会話は私の日々を色づくものにしてくれる。
というかたかだか病院の床に伏せているぐらいで悲劇気取りというのも私としては些か恥ずかしい。
それに入院してないと死んじゃうかもしれないのだからそれならばわたしは病室の床に伏せる生活を選ぶ。
それに
だから決して満足というわけではないがこれは仕方のないことなのだ。
これは失策──。
なんだか微妙に不幸自慢になってしまった。
私はこれを記すときできるだけ思ったことをそのままに書いているからあまり気にしないでほしい。
じゃあ話題を変えよう。
実はわたしはこの冒頭文を書くときに必死に悲哀や悲壮を漂わせる言葉を捻り出そうとしてみた。 だが、不幸自慢の月並みな言葉しか捻り出せないうえ僅か一文という体たらくである。
『なんちゃって』のくだりもこれではまるで効果を発揮しない。
多分──というか間違いなく私には詩的才能がないのだろう。
先人の詩人たちには病気がちなものが多いというのに私にはなぜその才能がないのだろうか。
病人というアドバンテージが付いていれば多少粗削りな詩でもぼろ儲けできたかもしれないというのに……。
ますます自身の沽券の低さが露になっていくようで恥ずかしい。
じゃあ今度はノンフィクションを謳った、フィクション満載の不幸な病気がちの少女の漫画でも描いてみるか。
イケメンだしとけば取り敢えず100万部は超えるだろう。
でも私、漫画描いたことないや。
まあ時間はたっぷりあるのだから今度描いてみよう──。
とまぁ、ここまでこの手記を記してきたが実はまだ本題に入っていない。
何故ならばこれは病気がちで不幸でイケメンに囲まれた美少女による『日々の記録』なのである。
私はまだ今日のことを全然記していない。
それに今日の私の筆は珍しく、これでも一応に、幾らかコメディタッチである。
そのせいで蛇足的な文章が異様に長い。
きっとこれは今日出会った妙に剽軽な男の所為だろう。
今日はその男と出会ったことについて記していこうと思う。
今日の昼頃、いつもの日課で病院の庭園に車椅子で散歩しようと出かけた時のことだ。
病院の出口あたりに赤髪や茶髪や緑髪、ギラギラしたシルバーアクセサリーや色付きのスカーフを首や腰あたりに装飾した派手な男が3人立っていた。
だが彼等はそんな派手な容姿とは裏腹に黒い学ランや白い制服のシャツを身に纏っている。
派手な装飾とは裏腹に畏まった制服のミスマッチ、俗世から離れたあの容姿は間違いない──不良という奴である。
生では初めて見た。彼等は確かに凡人を妙に畏怖させるような雰囲気を放っている。
その証拠に病院内の人間も彼等の半径、大股五歩分には入ろうとはせず、軽蔑の視線を彼らに途切れ途切れ、向けるだけだった。
だが私は散歩がしたい。
生憎、彼らに私の日課を阻まれる筋合いはないのだ。
病人には病人なりの健康保持というものがある。
彼等に私の生活リズムを崩されては堪ったものではない。
なので病院の自動ドア付近に立つ彼らに近付き、私は恐らく毅然とした態度で言った。『邪魔』──と一言。
すると真ん前に立っていた高身長で赤髪の男が露骨に顔をしかめる。
そして『あぁ?』と小さく悪態をついた。
更に赤髪の男は私に対して強張った顔つきで睨みをきかせる。
『なーに女の子に絡んでんだあー赤髪』
だがその瞬間に飄々とした、軽快な声が男の背からが響く。
『ぬぉっ!?』
そして赤髪の男が驚嘆の声を上げると同時に何かに引き寄せられるように後退していった。
それと入れ替わりにグワッ──と茶髪で黒いピアスつけた少年が目の前に現れる。
その目の前の茶髪の少年が赤髪の制服の襟首を乱暴に引き、後ろに後退させたのだ。
『てめぇ!いい加減襟首掴んで引くのやめろよ!人は首を絞められると窒息死するんだぞ!』
『はーい、相変わらずの何のひねりもない小学生並みの知識を提供してくれとありがとう赤髪くん』
『てめぇいい加減一人称赤髪じゃなく名前で呼べつってんだろうが!?』
『るっせぇーな、てめぇちょっとうぜぇ』
茶髪の男は赤髪の悪態に、見向きもせず気怠そうに返事を返す。
だが車椅子の私を見下ろすように視線を合わせると、その気怠そうな表情に突然満面の笑みを貼り付け笑いかけた。
その早変わりの表情に内心多少面食らってしまうが私は平静を保ち続ける。
そして彼の笑顔にも私は無表情で答えた。
『まるで氷のような厳しい視線...そこもグット...』
小さくふざけたことを呟くと、茶髪の少年が突然私の前で跪く。
そして私の右手を両手で包み込むように手をとり始めたではないか。
――は?
そんな突然の男の行動にさすがに驚嘆した私は無味乾燥だった表情を少し崩す。
『大変ご無礼を致しました美しいご婦人よ』
――???
突然の畏まった言葉に私はまたも動揺を隠せない。
『まーたはじまったよタラシ癖が』
すると不良集団の緑髪の童顔っぽい少年が呆れたように呟く。
そんなことにも動じず茶髪の少年は已然として柔和な態度で私に問い掛けた。
『君の名前は?』『年齢は?』『これから何をするの?』『趣味は?』『好きな男性のタイプは?』――等々。
少し強引な態度が気に障った私は『君、名前も名乗らずに失礼じゃない?』と彼を諭した。
すると茶髪の少年は『これは失礼』と妙に紳士的な言葉遣いに改めて、謝意を述べると、自身の名前を名乗る。
『俺の名前はサクラギコウタ!!今をときめく青春男子でーす!!なんちて☆』
そう、その少年の名前はサクラギコウタ──。