やはり俺様の青春ラブコメはまさにパーフェクトである。 作:morikuma
2年F組
「おい、生徒手帳を落としたぞ」──サバサバとしているが芯のある美しい声が俺の背を射ぬいた。
振り返ってみると、そこには巨乳でナイスバディ──気丈で精悍な顔立ちの女性が立っていた。
そして彼女は俺のハートまでもまさに今、射ぬいた!!
俺は先生が背を向け、去ると同時に静かに、COOLに呟やく。
「惚れたぜ……」
だが先生のことを調べると出るわ出るわ残念な経歴。
なので俺のハートは燃え尽きました。
今思うとただサバサバした声で、それほど感慨深いものでもなかったかもしれません。
顔もまぁまぁ良いけどプラジーボ効果だったのかそれほど今は心にくるものもありません。
まぁおっぱいは大きかったです。
なので俺のことは諦めてください。
俺はおっぱい大好きだけど、やっぱ女は性格っすよね(笑)
「なんだこれは…」
夕陽の美しい光が窓から射し込む教室。
生徒用の机に俺と相対するように座っている国語教師である
ちなみに彼女は俺が去年入学してから16人目の彼女候補──であった。
でも残念ながら三十路の時点でOUT
更にベビースモーカーとかマジないわー
そんな彼女の声は確かに静かではあるが、何か鬼気迫る者が感じられる。
皆まで言うな先生…俺は分かっていますよ。
「そんなに俺にフラれたのが堪えたんすね…!!」
「違う!!なんで私が勝手に惚れられ、勝手にフラれなければならんのだ!!」
平塚先生は俺と相席の机をバシン ──!!と叩き恐い表情で怒号を上げた。
恐い…非常に恐い。三十路で未婚…やはりこいつ…ヒス女であったか。
「マジ勘弁してくださいよ、先生…でも気持ちはお察しすますよ。…両思いだと思ったらいきなりフラれて、そりゃ哀しいっすよね。」
「まだ言うか…というか君が私にこんな卑猥な感情を抱いていたことはこのレポートを見て初めて知ったのだが…」
「まぁベビースモーカーは努力でなんとかなるとしても年齢はどうにもならないんですよね……」
「おい、私の話を聞いているのか」
「というわけで俺と再び会うときは来世に期待してください。次は同級生だと良いですね!!じゃあね!!」
爛々とした笑顔で俺はそう告げると席を立ち上がり、颯爽と先生に対し背を向けた。
完璧──。
今までの恋愛経験から培われてきたテクを使えば女の子──いや、女──いやいやオバハンをフったときのフォローでさえも俺にとっては容易なことである。
「ぐべっ──」
だが一瞬、喉を潰された感覚に陥ったかと思えば、俺の身体は平塚先生の方に引き寄せられる。
それは平塚先生が俺の制服の襟首を乱暴に掴み自身の元に引き戻したからであった。
「まだ俺に未練が!?」
「まだほざくか小僧。これ以上舐めた口を聞くようなら痛い思いをすることになるぞ」
痛い思い…だと…?
言っちゃった。言っちゃったよ……。
この時代にそんな歯の浮くような台詞言っちゃったよ!
PTAも少年法もみんな俺様の味方やで……しゃぶりにしゃぶりつくして頂こうか…!!
獲物を見つけた狼もきっとこのような感情なのだろう。
口元から漏れるニヤニヤが止まらずヒクヒクと頬が踊りだす。
「はぁ?痛い思いっすか?なんすかそれ?今のこのゆとり時代に教師が生徒に暴力っすか?笑わせないでくださいよ先生~」
俺は先生の教師にあるまじき大胆発言に対し、ハッと鼻で嘲笑してやった。
「まぁ俺、結構喧嘩つぇーし?その辺の不良三人ぐらいなら余裕で捻っちゃうくらいだし?やるってんならやってやりますけど、あぁ…でもそちらさんが手をだすのは不味いんとちゃいます──」
俺が饒舌に自身の強さを語らっている途中、突然平塚先生の拳がグワッと目の前に迫ってくる。
その拳の速度は俺にの目に残像を捉えさせた。
そしてその拳の風圧が俺の前髪を軽く揺らすと、鼻先5センチ手前で静止する。
えっ?ていうか何コレ?拳が五つぐらいグワッて…というかマジで見えなかったんだけど?
俺は唖然としながら表情ごと体を硬直させる。
そしてなんとか我に返り、その重い口を開いた。
「あっ…あぁ、あぁ…!なかなかヤるじゃん平塚先生。なんつうの?なかなか良い正拳突き?じゃない?まぁ今のなら合格かな?うん…今回は俺の寛大な心に免じて手を引いてやりますよ。じゃあ!」
決してビビった訳ではないが、生憎俺は女性に手をあげる主義はない。
なので今回は手を引いてあげると忠告して席を立ち上がろうと腰を浮かせる。
「次動いたら、あてるぞ櫻木…」
だがあまりに冷ややかな先生の声の中に殺意を感じ取った俺はそっと上げ気味だった腰を椅子に下ろした。
そして無表情のまま俯く。
その俺の姿はこれでもか──という程に『絶望』の二文字を如実に表していた。
もしくは『絶対絶命』、『背水の陣』と言ったところか…。
「あの…なんでしょうか平塚先生」
「やっと静かになったか櫻木」
平塚先生はハァ──と溜め息をついてそのヤらしく膨らんだ胸ポケットからセブンスターを取り出した。
そしてタバコを1本引き抜いて口にくわえ火をつける。
つーか生徒の前で堂々とタバコ吹かせんじゃねぇよ…。
ぜってーこの国語教師、地雷だよ…。
「ようやく本題に入るわけだが…改めて聞く。このレポート用紙はなんだ」
「『高校生活を振りかえって』との内容だったんで、これにかけて先生に声をかけられ、振り返った場面から書くという工夫をこらしてみました」
「違う…誰もそんなことは聞いていない。あと…別にうまくない」
あぁん?この俺様の文才馬鹿にしてんの?たかが国語教師の分際で?
この俺にタメはって批評したきゃ太宰でも夏目でも連れてこいやコラァ…
平塚先生の呆れた言葉と表情に対して俺は再び牙をむくように睨み付ける。
たがそれに対し、平塚先生はグッと握りこぶしをつくった。
経験に基づいた恐怖とはなかなか拭えるものではない。
俺は再び暗い表情で俯いた。
「それに君の文章は上手いとか上手くない以前の問題だ」
「じゃあ何が問題なんでしょうか…」
「真面目に書け」
はー?真面目ってなんだよ?そもそも真面目って意味はよぉ?
①本気であること。真剣であること。また,そのさま。
②誠意のこもっていること。誠実であること。また,そのさま。だろ?
誠意を込めて本気で先生に別れを告げた俺のどこが不真面目なわけ?
寧ろ紳士だろうが…。
「せんせぇ言わせて貰いますがねぇ?おりゃあ俺なりに真面目に…」
「聞いてやっても言いが今の君からそれほどマシな言葉がでてくるとは思えん。もしチャラけたことを言えば…分かっているな?」
俺の言葉を遮って先生はまた握りこぶしを作った。
その拳に込められた意味は重々理解している。
「う…うぃーす…」
なので俺は二つ返事だが素直に言わない方を選択した。
もう一度言おう。人は経験に基づいた恐怖をなかなかに拭うことはできない。
「それに君に関して真面目にしろというのはこのレポートだけではない…成績もだ…」
痛いところを突かれた。まさかこんな如何にも職務怠慢してそうな国語教師に真面目な指摘をされるとは。
だがこのまま折れる俺ではない。世の子どもたちが成績ちらつかせりゃあ済むと思ってんなよ……。
少しヤンチャボーイの仁義を教えてやらぁ。
「はぁ?成績?なんすか? 頭の悪い俺への当て付けですか?そんなことよりも子どもができないことじゃなく、できることを伸ばしてやるのが大人の役目じゃないんすか?今しか伸びる時期はないんすよ?何がダメかより何が良いかでこの俺様を語ってやれよ!!」
「お前…多少まともなことを言ったと思ったら最後の方に自己の欲望だけが滲み出てるぞ」
ったりめーだ……結局一番大事なのは自分だけよ。
だが女の子だけは別だ。
道端で倒れている女の子が居れば、手を差し伸べる。
そして女の子は俺様に惚れる。
その流れで俺様のハーレムが形成されていく。
あぁ…なんつー完璧なLIFE計画。
「つうかさぁできねぇもんはしゃあないじゃないっすかー無理じゃないっすかー」
だが取り敢えず今は俺様のラブLIFE計画のため、成績という唯一無二のウィークポイントの追求からこの教師の注意をそらす必要がある。
なので俺は頬杖をついて、そっぽを向き、悪態をついた。
「できないことはないだろう。出題される問題をある程度押さえて内容を理解して望めば定期テストで赤はそうつかん」
たが平塚先生は俺の駄々をこねるような言葉など歯牙にもかけない様子で平然と答えた。
「つまり君に必要なのはある程度のことをこなす『真面目』さだ。何もガチガチに真面目になれとは言わん。ある程度の友人関係を築くには多少周りに流されることも必要だろう。そういえば君──友達はいるのか?」
「なんすか藪から棒に…」
不意に投げかけられる質問に俺は首をかしげる。
「いいから答えろ」
「まぁいますよ、クラスでは葉山とか結衣ちゃんとか優美子ちゃんとか妃菜ちゃんとか?」
多少腑に落ちなかったものの俺は質問に答えた。
「9割がた女子生徒だな…」
「あぁ…あと戸部とか」
「なんだそ最後ののないがしろ感は…。ふむ…まぁいい。だが少し安心した…実は君と同じように舐めた文章を書いた奴がいてな。てっきり君もおなじ穴のむじなかと思ったがその辺に関しては君は大丈夫そうだ」
平塚先生は腕組みしながら安心したようにウンウンと頷いた。
なんだそりゃ?
つまり俺以外に平塚先生に絞られたそいつは友達もいねぇぼっち野郎てことか?
嘘だろ(笑)ぼっちとか(笑)都市伝説っしょ(笑)
「じゃぁ恋人とかは?」
またもや唐突な質問を平塚先生は俺に投げかける。
だがその質問には特に気にかけることなく、寧ろ自慢げに答えた。
「28人待ちっすね」
「に…28人待ち?」
平塚先生は怪訝と驚愕が混じり合ったように表情を露骨に歪めた。
ふむ…先生は少し混乱しているらしいので、聡明で英明な俺様が凡人な彼女に説明してやればなるまい。
はぁ…なんて優しいんだろう俺様は。
俺が…女の子なら完璧に俺に惚れてるね。うん。
「まぁ…俺は今年に入りこの学校で28人の女の子と面識を持ちました。そして28人の女の子のメアドをゲッツし、28人の女の子に惚れ、また彼女たちも俺に惚れました」
「おい待て、最初の3つは見逃してもいいが、最後のはどう考えてもおかしくないか」
俺は『チッチ』と平塚先生に対して舌を鳴らす。
そして人差し指を立て、左右に振ることで彼女を制した。
「それはおかしくないんですよ先生。何故ならば俺を見た女の子が俺に惚れるのは必須!まさに世界の真理!ならばこの俺もそんな女の子たちを愛をもって受け入れなければならいなんですよ」
更に俺はボディランゲージを加え雄大に語って見せる。
「そしてそんな俺に魅入られってしまった28人の女の子たちに告白することで俺は彼女たちをリードしてあげたっつーわけすっよ。まさに愛の片道切符をギブユーしてあげたってこと。だから俺は今のところ28人の女の子の答えを待っている…。とまぁこいうわけです」
「いや…少し待ちたまえ。もし今後二人以上が君の告白を受けたとしたらどうするつもりだ。きみはまさか二股かけるつもりなのか?」
「はぁ?二股だぁ?俺がそんな不純な行為に走るように見えますか!先生!」
「28人に告白してる時点でもはや健全とはいえないが…」
「まだ分かってないようですね先生。俺を見た女の子は確実に俺に惚れる。そしてこの28人が俺の答えにOKを出すのもまた必須。だから二人以上がOKを出すなんてことは想定内ということです。だから俺は一人の女の子と一日、付き合って、そこで別れます。そして二人目とも一日付き合ってそこで別れます。それなら浮気にもならないし28人全員に愛を注ぐことができるというわけです。まさにこれぞ愛の平等な配当!!」
「ある意味浮気より最低な行為だぞそれは……。」
「確かに俺にとっても一日でわかれるというのは名残惜しくはある……。だがこの俺の命、何十年の間の一年、365日は全女性のために注がれているのですから一日として無駄にはできないんすよ!先生!」
俺は拳を握りしめて熱く語って見せた。
ふっ…この俺の愛のポリシーを聞いて先生が更に俺に惚れてしまわないか心配だ…。
「取り敢えずうちの女子生徒が思慮深く、分別のつくものばかりで安心したよ」
「どういうことっすかそりゃあ」
「28人に告白して未だに28人待ちということはまだ誰一人として答えをだしていないないということだろう」
「確かに未だに誰一人として答えが返ってきませんね…どうやら今年の子猫ちゃんたちは恥ずかしがり屋ばかりみたいです…。んまぁそこもまたキュートではありますが…」
「違う、誰もまともに君の相手をしていないということだ…」
平塚先生は困窮した表情でため息をついた。
30になると疲れやすいんだろうか…。
ため息をつくと幸せを逃す。
だが歳を取るとため息が増える。
そして婚期も逃す。
んーなんという負のスパイラルだろうか…。
「ここまで話を聞いて理解できたが、君は随分締まりのない生き方をしているようだ。そんな緩い態度では今後とても社会に適応できるとは思えん。」
平塚先生は疲れた表情をキリリと引き締めると急に真剣な面持ちになる。
そして俺に厳しく諭して見せた。
というか俺が社会に適応できていないだと?
馬鹿な…寧ろ適応しすぎて社会と同化しそうな勢いだぜ……。
そのへんのことをこの俺様が先生に諭してやらねばなるまい。
「お言葉を返すようで悪いんすけどー俺、バイトしてるんでー『働く』ということに関して多少社会には適応できてると思うんですけどーあと俺独り暮らしなんでぇーもはや自立しちゃってるっていうか?社会のど真ん中に直立しちゃってるっていうかぁー?なんなら逆立ちも朝飯前──みたいな?」
俺は平塚先生の的外れのヒジョーにありがたくないお言葉を論破して差し上げた。
さぁこれでこいつもグゥの音もでないはず。
寧ろ教師としてこの俺様を表彰しろ!!なんなら卒業証書がいい!!単位ヤベェから!!
「そんな君には更正を図ってもらうため奉仕活動を命じる!!」
「人のはなし聞けや!!ごらぁ!!」
俺は平塚先生の歯牙にもかけない態度に対して指差し、怒号を上げた。
なに?なんなの?こいつは両耳の間には頭がついてないの?
脳みそから耳にかけて空洞になってんの?
情報ちゃんと処理しろやゴラァ!!
「あーなんだ?まず『よぉー?』とか『みたいな?』とかの気だるそうな言葉遣いを直したらどうだ?」
「しっかり聞こえてんじゃねぇか!!」
「ふん…なら聞くが、君はこの学校の学費を誰に払ってもらっている」
「え……」
俺は平塚先生の唐突な質問に口角をひきあげ、言葉を詰まらせる。
「親だろう。それに人生は甘くない。君はバイトをしていると言ったが、バイトごときは社会の責任を重く求められないから『楽して働けている』という今の現状に落ち着いているだけだ。現実の社会はもっと厳しい」
「そ、そんなことは…」
容赦のない言葉攻め。先生の言葉のジャブが俺の心をえぐる。
「今の君は目上に対する態度もなっていない。そんなことでは必ず世間からハブられる。それと君に徹底的な社会の現実を教えてやろう」
平塚先生はタバコをフゥーっと吐き終え、今までにない厳しい顔つきで告げた。
「この世は学歴だ」
「うがぁー!!その眼鏡の曇った目で俺を見下すなー!!優等生どもがー!!」
俺は過去の残像を悲惨な砲口と、机に頭をガタンと打ち付ける行為で振り払おうとする。
そんな俺を見て平塚先生は毅然として勝ち誇った態度でいた。
「よし、ならば君は奉仕活動の命を承諾するということでいいな」
「はい…わかりました…ってイヤ待て待て」
俺は一瞬この女の言葉のドツボにはまりかけ、思わず肯定的な返事をしてしまいそうになる。
だが冷静に考えてみろ。
「それと学歴となんの関係がある」
そうだよ!!気づいたよ!!気づいちゃったよ!!
世の中知識じゃない!!発想力だよ!!エジソンの発明しかり、ニュートンの万有引力しかり社会はこの俺様のような発想力を必要としているのだよ!!
『天才』──この言葉は知識だけあるガリ勉の特権じゃない。
天才とは正に一概に言えるものではないということだな。フハハハハ──!!
「先生ぇー悪いんすけどぉー俺、今気付いちゃったんでぇー先生の仕掛けたトラップに!!そして同時に自分の才能に!!というわけで奉仕活動なんていう先生の職権濫用に基づく押し付けには断固拒否させていただきますぅー」
「単位……」
平塚先生は愉しげな俺の言葉に対して相反するよう、静かに呟いた。
「は?」
そんな平塚先生の単語に俺は疑問符を浮かべる。そして同時に間抜けな声を上げた。
「君は去年から赤点を取り続けて進級もギリギリだったそうじゃないか」
「そうっすけど?」
「私の言うことに従い奉仕活動を行えば単位をやると言っているんだ。貯蓄はしといて損はないだろう?」
そして平塚先生は犬に餌を与えるときのような目で俺を見下し、得意そうに頬を歪めた。
「君はこの社会を中卒という肩書きを背負ったまま生きていくつもりか?」
「ご指導よろしくお願いしますせんせぇー!!」
俺は机に額がつくほどに頭を下げた。
『学歴』と『奉仕活動』──この二つを『単位』という存在が仲介することにより全て繋がったのである。
何はともあれ教師の職権濫用は誠にけしからんと思う今日この頃であった。
ふぅ……
日本語があってるか心配です(*_*)