やはり俺様の青春ラブコメはまさにパーフェクトである。   作:morikuma

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櫻木幸太は少し変わる。

雪ノ下雪乃とある女子生徒たちの会話

「櫻木幸太はあなたにとってどのような存在?」

 

「どういう存在ていうか、まぁ変わってるよね。しゃべり方可笑しいし、なんかナンパばっかしてるし」

「そうそう、『付き合いたいならジュース買ってきて』とか言ったらマジで買ってくんのあいつ!」

「マジおもろいよね~!!あんな軽薄な奴と誰が付き合うかっての!!」

「まぁ顔は悪くないんだけどね~」

「なに?あんた、あいつにちょっとでも興味あったわけ?」

「ないない!!あり得ないってー!!それにあいつのせいでなんかキモいメール回ってきたしさぁー、マジ最悪」

「あぁ、あれね、でもそのお陰であいつナンパに来なくなったよねー、ぶっちゃけウザかったらマジ感謝って感じ」

「てか、悪評流されて突然黙っちゃうとかプっ、まじダサすぎだよねぇ、アハハハハ!!」

「まぁいい薬になったじゃん?あのカラッポ頭でも一応回りの目とか気にするようになってさぁ逆に感謝してほしいって感じ」

 

「感謝とは──どういうこと?」

 

「あぁ、あのメールさぁあいつの知り合いだけに流れたっぽいけどアイツのことキモいと思ってるメンバーでtwitterとかグループLINE使って拡散させたんだよねぇー」

「てかそれ提案したのあんたでしょ!!まじ鬼だよね~」

「いいじゃん、いいじゃん 寧ろいい薬になったしょ?」

「まぁねこっちも来なくなって清々したしね~」

「「アハハハハアハハハハ」」

 

「……………」

 

「てかさぁなんで雪ノ下さん、あんな奴のこと聞き回ってるの?」

「え、嘘もしかして雪ノ下さんあんなのがタイプとか?」

 

「いえ、ただの部活動よ」

 

「なにその部活?ヤバくない?ストーカー部?」

「ヤバ!なにその鬱陶しい部活!!最悪ぅー」

「アッハハハハハハ──!!」

 

「そうね、最悪ね」

 

「?」

 

「だって低俗な人間の情報を得るために、あなたたちみたいな更に低俗な人間から情報を得なくちゃならないんだから」

 

×××

「あぁ……しんでぇー……」

 職員室をでた俺は自販機に小銭を入れながら気だるげに呟く。

 何だか今日は色々有りすぎた。

 昼休憩という短い時間で物凄い密のある濃い時間を過ごした俺は既に疲労困憊の状態である。

「ファンタ~、ファンタ~」

そして泥酔したような呻き声を上げた俺は冷た~いのファンタにボタンをプッシュしようと腕を伸ばす。

 

『はぁ!?今何て言った?もっかい言ってみろよ‼』

──!?

 ボタンをプッシュしようかというとき物凄い剣幕の怒声が響いた。

 その怒声に疲労困憊な俺は思わずビクッと肩を震わしてしまう。

 別にビビったわけではない。

 あれである、ウトウトしてるときに、突然先生とかに声かけられるとビクッとしちゃう、それと同じ感じ。

 あれ、てかこれビビってね?

 いやびびんないよしかも怒声は俺が愛すべきレディーの声だったしね。

ガシャコン──。

 そんな言い訳のような独白を並べていると、自動販売機から聞き覚えのある音が鳴る。

 言うまでもなく缶が落ちる音だ。

 だが自販機から落ちてきた物は俺に衝撃的な事実を突き付ける。

「これ、MAXコーヒーじゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 俺は思わず大声で驚嘆した。

 先程の肩を震わした勢いで思わずプッシュしちゃった俺の指は残酷なことにもそのターゲットをはずして しまったのである。

「おいおい、マジかよ、よりにもよってこのコーヒーの個性をぶち壊しに来てる甘ったるいMAX君かよぉ、もはやコーヒーとしての定義を見失ってるだろコレ」

 若干偏見に満ちた愚痴をこぼしながら、俺はMAX君を握り鬱陶しげに見つめる。

 買い直そうとも思ったが、こう見えても倹約家な俺は自販機で飲み物を買うのにも結構奮発したつもりだ。

 スーパーならこれの3割は安く買える。

「仕方ねぇなぁ、飲むか……」

自分の貧乏癖を怨めしく思いながらも、おれは仕方なくそのMAX君を開け、口をつける

『はぁ!?大体あんたさぁ!!生意気なんだよ!!

 

「──!?ぶっ!!」

 先程とは違う声色の咆哮が俺の耳をつんざいた。

 その声にまたもや驚かされ、俺は再び肩を震わせビクつく。

 今度はその勢いで口に含んだMAX君を全て吹き出してしまった。

「一度ならまだしも二度とまでも……」

 ポタポタと口からMAX君をこぼしながら俺は呟き、グシャッとMAX君を握り潰した。

 いくらレディーの声とはいえ、今の疲労困憊の俺には普段の寛容ぶりを保つ余裕はない。

 怒りは沸々とこみ上がり、俺の体をワナワナと震わせる。

「泥水を飲ませながら、泥水をさえも飲ませなかったお前の罪は重いぞクックックックックックッ……エロいことをしてやる」

 MAX君に対して名誉毀損で訴えられそうなことを呟きつつ、俺は悪い顔で一歩、一歩とその声のした方向歩みを進める。

──?

 俺はその咆哮が女性3人が言い争っている現場だと突き止めた。

 そしてそれを突き止めた俺はあからさまにその顔を歪ませた。

 なぜならそこにいたのは全員俺が知りうる人間だったからだ。

 だが何より俺の興味を惹き付けたのは先日出会った、いけすかない女の存在だった。

「雪ノ下?」

 そうあの雪ノ下雪乃が、俺が過去にナンパしていた女の子二人と言い争っていたのである。

 言い争ってるというか、雪ノ下がいつもの冷徹な顔で二人を見下し、その態度に彼女たちが噛みついてるといった感じだ。

 まぁアイツ態度悪いからなぁ、なんか勘に触るようなこと言ったんだろう。

 あの二人も二人でどことなく我の強い感じの娘たちだ、爆発させる燃料としては規模が大きいと言っていい。

「大体そっちがあのナンパ野郎のこと聞いて来たのに教えてあげてるこっちが低俗ってどういうこと?失礼極まりないっしょ?」

「最初から雰囲気は察していたのだけれど、さっきの話を聞くまで貴方たちがここまで低俗な部類とは思わなかったの。話を聞くまで気付かなかった私の見識に落ち度があったことは認めるわ、ごめんなさい」

「あんたまだあたしらのこと嘗めてんでしょ?」

女の子が雪ノ下に対して怒りをぶつける。

だがそんなことにも動じず、雪ノ下はその憎らしい態度で二人を皮肉った。

「貴方たちこそ嘗めすぎよ、人の悪評をばらまいてさも自慢気に語るなんて、誰も不快にならないとでも思ってるの?だとしたら愚の骨頂だわ。自分の愚かさを自覚し悔い改めなさい。」

「っ──てめぇ」

 雪ノ下は冷酷な目つきで涼しげに呟く。

 その表情は本当に不快そうな表情だ。

 しかも事の発端はおそらく俺のことらしい。

インガオーホーとはまさしくこのことだろうか、俺は顔に手を当てめんどくさそうに俯いた。

「お人好しめ」

 今日3人目のお人好しに俺は頭を悩ませる。

 本当にめんどくさい。

 誰が頼んできたわけでもなく心配し、同情し、救おうとする。

「大体なんであんたが櫻木のこととやかく言われて怒ってんの?」

「あの愚鈍な人間に同情なんてしてないわ、ただ貴方たちの行為に虫酸が走ったから抗議してるだけ」

どうやらまた勘違いだったようだ、あいつらはとことん自分を貫いてるだけだったな。

誠に生き辛い生き方だと思う。

 この正しいということが淘汰される世界で柔軟に適応できないということは、其れだけで押し潰されないか不安になる。

「だから自分の愚かしい行為を反省し本人の前で謝りなさい」

だがその真っ直ぐな生き方に俺は羨望も抱く。

 常にリスクを避けて卑怯な行き方をしていた俺にとってそれは憧れでもあった。

 だからといって俺に何ができる?

 ここまで歪んでしまった俺に真正面から立ち向かいあの場を制す力なんぞ持ち合わせていない。

だけど今日気付かされたこともある。

 俺は息をするように卑怯な生き方をしていたがその空気は最悪で不快であったことだ。

 だから俺はあの場を黙って見過ごすことはしない。

 何より──

「嫌いな奴に助けられるなんて俺はまっぴらごめんだ」

 俺は俺なりのやり方であの場を何とかしてやろう。

 この大嫌いな俺の嘘っぱちで卑怯な方法であいつの善行ごとぶち壊してやる。

「やぁやぁそこの美少女二人!何を言い争ってんのぉ!」

 俺は意気揚々に二人の少女の間に割って入った。

 そして馴れ馴れしく肩に手を添える。

「さ、櫻木……」

 気まずそうに顔をしかめて少女たちが俺を見る。

 先程まで俺の悪評を流していたのだ、それは当然と言えよう。

「おぉよく見りゃ俺が出逢った中でワースト1の最悪女、雪ノ下さんじゃん?」

 突然現れた俺に対し雪ノ下は訝しげな態度をとる。

「邪魔よ、今貴方の愚鈍な発言に付き合ってる場合ではないの」

「あぁん?相変わらずむかつく態度噛ましてんな。お前なに様?神様?征夷大将軍様?むしろさまそのもの?summer?なんでそんな熱くなっちゃてんの?」

 いつもの調子で俺は軽薄な言葉を並び立てる。

 その言葉に雪ノ下は不快そうに眉を潜めた。

 多分俺のことを愚かしく思っていることだろう。

 自身の味方をしてくれてる相手に対し、ガンをつけているのだ、俺から見ても今の自分は滑稽といえた。

「邪魔と言ったわよね?どきなさい」

「そういうわけにはいかねぇだろう、俺の友達が大嫌いなお前と言い争ってる。なにが原因か聞く権利ぐらいはあるっしょ?」

「……ないわ」

 俺の言葉に雪ノ下は目を反らす。

 当然だ。彼女は真っ直ぐな人間でその根源は彼女が優しいからだ。

 俺が嘘でも友人だと言っている人間が悪評を流していたことなど言えるはずもない。

「やっぱりな、お前性格悪そうだもんな、どうせお前からつっかかたんだろう?だから言えねぇんだろう?」

「違うわ」

 雪ノ下は俺の言葉を煮え切らない表情で否定した。

「へーじゃあ何で言い争ってたんだよ?二人は教えてくれるよね?」

 俺は唐突に二人の女の子に疑問を投げ掛ける。

「えっ……いやそれは……」

 思わず二人は俺から顔を反らした。

 そしてイタズラを隠す子供のように俯く。

「あれ……も…もしかして俺に言えないようなこと?」

 俺は声を震わせながら不安そうな表情で尋ねる。

 その声に二人はますます表情の雲行きを悪くした。

「え……嘘……俺達友達だよね?」

 もう一押と言わんばかりに俺は弱々しい声で彼女たちに尋ねる。

 そんな俺に彼女たちが何も答えることができないことを知っている。

 だけどもう片方の彼女は我慢の限界であるはずだった。

「何でもないわ……私が勝手に彼女たちの態度が気に入らないから不平を訴えただけよ」

 そう優しすぎる彼女はきっと俺に同情する。

 そして俺を庇う。

 自分の善行を満たしてまで他人を傷付けようとは彼女はしない。

 自分の我を通すことでもたらす俺への被害を雪ノ下が予想できないはずもないのだ。

「あー……ていうか私たちもちょっと言い過ぎたって言うか……悪いところあったし」

「てか、休み時間終わるからもういくね!」

 もはやこの状況で俺と関わっても彼女たちにはデメリットしかない。

 それを理解した二人は強引に俺から離れて、逃げるように廊下を駆け出した。

 この結果は俺が望んだことだが、決して満足のいくものではない。

 まだ目の前に立つお人好しは煮え切らない表情で俺から目をそらしていた。

 確かに善行を行おうとした彼女がこのままでは報われない──。

「コーヒー……」

 俺は逃げ出した二人に視線を向けながら雪ノ下に呟く。

 というよりは妙な気恥ずかしさで彼女に視線を合わせれずにいた。

「コーヒー、お前のせいで無駄になったわ、お前金やるから買ってこいよ」

「は?」

 二人分の硬貨差し出し俺は呟いた。

 雪ノ下はそんな俺に一瞬、疑問符を浮かべながら俺を見る。

「そう、聞こえてたのね」

 だが即座に意図を理解すると少し寂しそうな声色で呟く。

 また同情された俺は少し歯痒い気持ちに駆られた。

「全部分かったうえで私を嵌めたのね、あなたみたいな荒唐無稽な人間にしてやられるなんて…気に入らないわ」

「は?」

 俺は雪ノ下から突然、発せられる侮蔑的な言葉に頬を引き攣らせた。

 さっきまでどこか気まずかった俺の表情は一瞬にして消え去り、残った表情はドン引きである。

「おい、お前さぁ…ちょっとはこの俺様に感謝しようという気概はないわけ?」

「感謝?そもそも助けられたという覚えもないのだけれど?あのままあなたが割って入らなくても私はあの二人を説き伏せていたわ」

「説き伏せたってなんだよ、てめぇは坊さんかよ。どの立場から人に対して接してんだオラ」

「仕方ないでしょ?人として生きる限り必ず優劣というものは生まれるわ、あなたのように愚鈍な人間もいれば、賢明な人間もいる。それを少し上の立場から諭すことは寧ろ感謝すべきことじゃないかしら?」

「その前に俺が馬鹿で、てめぇが頭いいみたいな図式を作り出していることがムカつくんですけど」

「だれも私が利口な人間だなんて一言も言ってないわ、ただあなたが愚鈍であることは事実だけど」

「はぁ?ふざけんなよ、勝手に結論付けてんじゃねぇよ、馬鹿。人に対して事実を示すときは根拠をいえよ」

「なら言わしてもらうけど、私に少しでも感謝しているくせにお金を渡して飲み物を買わせようだなんて…どうやったらそんな愚かしいことを発案して実行できるの?頭の悪さを通り越して人格を疑うわ…」

「はぁ?だれがいつてめぇに感謝したんだよ、コーヒー無駄になったからパシッてこいっつてんだよ。自尊心高すぎだろ、人格を疑うわ」

「そもそもあなたの物を私が台無しにしたことなんて全く身に覚えがないのだけれど?そういうのを八つ当たりというんじゃない?」

 この女は本当に何から何まで気に入らない。

 ひとつ口を開けば侮蔑、軽蔑のオンパレード。こいつの思考は人を蔑むことしないのか?

 俺はドン引きを通り越し、怒りに震えまくっていた。

 拳を握り絞め、頭を締め付けるような血管が浮き出ている俺の表情はまさに鬼の形相といっていいだろう。

 そして改めて思うのだった。

 この女は死ね――!!と。

「もう知るか二度とてめぇという人間は助けねぇ!!今度俺様に助けを請ってもてめぇとは一生関わらん!!」

「だからあなたに助けられた覚えはないの、人に二度も同じことを言わせるあたりがあなたの滑稽さを際立たせるわね」

「あっそ!!じゃあな!!てめぇは一生性格悪いまま友達もできず死んで行け!!」

「あなたに言われるまでもないわ、それじゃあね」

 雪ノ下涼しい顔でそういうとサラリと背を向ける。

 それに対して俺もワナワナと怒りに震えながら背を向けた。

 そういえば初めて会った時もそうだった。こいつの前では虚構張り巡らされた俺の態度も怒りに剥がされる。

 本当に気に入らない女である。

 俺は背を向けて歩く雪ノ下の対し一瞬、振り返ると同時に呟く。

「うぜぇ女」

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