ありふれた連盟の狩人   作:静岡万歳!

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初投稿です


今までずっと読者側の人間でしたが、ハーメルンで様々な作品を見ていく内に


創作意欲を刺激され、こんな作品を書いてしまいました。


まだまだ至らぬ点も御座いますが、どうかよろしくお願いします。




後原作ヒロインやクラスメイト(主に光輝、小悪党への)アンチ描写がある為、ファンの方はご注意を。


異世界と悪夢への召喚

 

 

 

「はぁっ...!はぁ...っ!」

 

 

 

 

南雲ハジメは背後から追いかけてくる三匹の犬から逃げながら、とある街を駆け回っていた。その街はハジメが常日頃から歩いている見慣れた日本的な街とは違い

何処か19世紀半ばの欧州を思わせる街並みだ、それに加えてハジメが着ている服も日頃から着ている私服や通っている高校の制服とは違う

 

 

 

ハジメは燻んだ紺色のスーツジャケットの様な物を着ているが、そのジャケットには真鍮で出来た飾りの様な物が腕や胴体、首などそこら中にまるで御守りの様に巻き付けられている

 

 

 

そして被る帽子も見てくれは鐔の長い中折れ帽子の様にも見えるが鐔は無残にも歪んでしまっている、口元も布で出来たマスクで覆われているせいで息も絶え絶えだ。

ハジメは息を切らしながら必死に走り続け開けた場所に出たその瞬間、背後に振り返り三匹の中の一匹の犬の頭を左手に持った銃身の長い短銃で撃ち抜いた。

 

 

 

犬は一瞬の悲鳴をあげて倒れ込むと残った二匹は獰猛な唸り声をあげながらハジメに突っ込んで行く、そしてハジメは迎え撃とうと右手の鋸の刃が付いた武器を構えたがその時

 

 

 

「more‼︎blooood‼︎‼︎」

 

 

 

背後から獣の様な悍ましい声を聞いたその瞬間、ハジメは目を見開いて背後に振り返るが遅く、一瞬の痛みと共に意識はそこで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、7時30分

 

 

 

「はぁ......」

 

 

 

耳をつんざく程五月蝿い目覚まし時計にハジメは叩き起こされ、深い溜め息と共に布団から起き上がる。

 

 

 

(またあの夢だよ...)

 

 

 

ハジメは心の奥底から疲れ切った目で制服に着替えて朝食を取ると鞄を持って玄関へと向かう、その途中両親から自分を心配する声を聞いたが

その疲れた顔を隠す様に笑顔で大丈夫と返しそのまま学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着くと靴を下駄箱に入れて上履きに履き替え、ハジメは階段を上っていき、自分の教室へと歩いていく。

そして教室の引き戸に着くとハジメは大きく溜め息を吐き憂鬱な顔をしてしまう、その理由は教室の中へと入れば直ぐに理解できるだろう。

 

 

 

溜め息を吐いて意を決してハジメは教室に入った。

 

 

 

「よおキモオタ!エロゲでもやってお寝坊かぁ?」

 

 

「うーわっ、オタクって本当キモいわ〜」

 

 

 

教室へ入った瞬間不愉快な声がハジメに浴びせられる、声のした方へと振り向くとそこには4人の男子がニヤニヤと不快な笑みを浮かべながらこちらを見ていた、

名前はそれぞれ檜山大介、斎藤良樹、近藤礼一、中野信治、彼等はハジメを見つけ次第馬鹿にし侮辱する、そんな人間達だ。

 

 

 

ハジメはそんな連中の声を無視すると自分の机へと着いた瞬間とある女子生徒から声をかけられた。

 

 

 

「南雲くんおはよう!今日もギリギリだね、もっと早く来よう?」

 

 

 

「ああ、おはよう白崎さん」

 

 

(はぁ......)

 

 

 

ハジメに声をかけてきた女子生徒の名前は白崎香織、この学校の二大女神の片割れで男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。

腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味優しげな大きな瞳。

そんな香織に声をかけられ返事をした瞬間、クラスのほぼ全ての男子女子生徒から睨まれ、舌打ちをされてしまう。

 

 

 

ハジメにとっての憂鬱とは彼女という存在だった、クラスメート達から快く思われていないハジメに唯一フレンドリーに接してくれる存在だ

 

 

 

ここだけ見れば彼女に対しそんな感情になるとは思えないが問題は彼女の行動とそれに対するクラスの反応だ。

 

 

 

彼女に話かけられる度にクラスの連中は先程の反応を示すし、それに彼女自身も時折自分の後をつけるといったストーカーの様な行動をする時がある、ハジメにとってそれがとても鬱陶しかった。

 

 

 

そして彼女に話かけられた瞬間クラスの男共は殺意の篭った視線を向け、女達は軽蔑の目を向けてくる。

 

 

 

そんな憂鬱なハジメと元気な香織にある三人の生徒が話かけてきた、その三人を見た瞬間ハジメは内心うんざりとした表情になる

 

 

 

「南雲くんおはよう、今日も大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「そんなやる気のねぇ奴にやっても無駄だと思うけどな」

 

 

 

 

先程声をかけてきた生徒達の名前はそれぞれ、八重樫雫、天之河光輝、坂上健太郎。それに白崎香織を入れたらこのクラスの上位カーストだ

 

 

 

 

先ずは八重樫雫、その外見はクールでカッコいいという印象の女子生徒だ。髪型は黒髪のポニーテールで身長は172cmという女子にしては高い身長で凛とした雰囲気は何処か武士を彷彿とさせる。

 

 

 

そして二大女神の片割れでもある、また雫はこの学校では剣道部に所属しておりその腕はかなりの物だ、その凛とした雰囲気と剣道の腕に美貌から彼女は男子にも女子にも人気があり良く後輩の女子生徒に告白されては顔を引きつらせている光景を良く見かける。

 

 

 

次に天之河光輝、いかにも"キラキラ"と輝いた名前をしている男子生徒だ、名は体を表すという言葉通り、行動振る舞い全てにおいて"光り輝いている"男だ。強い"正義感"とその"優しい"性格そして完璧なルックスから学校の女子からは絶大な人気を誇る。

 

 

 

最後に坂上龍太郎、17歳の高校生でありながら身長は驚くことに190cmもある男子生徒だ、部活は空手部で性格は熱血漢で如何にもスポーツマンという言葉が似合う男子生徒だ。

 

 

 

また、龍太郎自身やる気の無い人間が嫌いな様で、ハジメを見る度に鼻で笑う事もあれば先程の様に突き放した対応を取る事もあるぐらいだ。

 

 

 

「...ああおはよう八重樫さん、天之河君、坂上君、これでも早めに寝たりして努力はしてるんだけどねぇ...どうしても寝坊しちゃうんだよ」

 

 

 

「なら尚更努力するべきなんじゃないのか?香織だっていつまでも君に構ってる程ヒマじゃないんだ、それに毎回毎回香織に優しさに甘えてて恥ずかしくないのか?」

 

 

 

(僕は彼女に甘えた事なんか一度も無いし、その白崎さんが毎回毎回"世話"をしにくるんだよなぁ...頼んでもいないのに)

 

 

 

光輝の言う香織のお世話に関して文句を言いたくなったハジメだったが黙る事にした。ただでさえクラスの連中と上位カーストの4人、そして小物共が勢揃いしているこの状況で、そんな言葉を吐けばどうなるかなんて火を見るより明らかだ。

 

 

 

それに努力をしろというこの上ない正論をぶつけられたが、はっきり言ってこればかりは努力のしようがない。

 

 

 

第三者からしてみれば"何を甘えた事を言ってるんだ!"と怒るだろうがハジメからしてみれば毎晩毎晩19世紀のヨーロッパみたいな場所でホラー映画に出てきそうな"獣"や見るも悍ましい"冒涜的なナニカ"に殺し殺される悪夢を寝る度に見せられている。

 

 

 

そのせいで疲れがまったく取れないんだ、寝坊するんだ。

 

 

 

と目の前の三人に言って信じるだろうか?否、信じる訳が無い、この悪夢を見始めてからは担任やスクールカウンセラーに相談したが前者は言い訳、後者は妄想、と片付けられて笑われてしまった、その日以来ハジメはこの悪夢を誰かに相談する事も無くなった。

 

 

 

「ん?何言ってるの光輝くん?私は南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

 

 

「ブっ」

 

 

「えっ、あっ、ああ...本当に優しいよな香織は...」

 

 

(なんだコレ)

 

 

 

香織の天然発言に雫が吹き出し、光輝は独自の解釈をし、そしてそれに何故笑い出す竜太郎、とコントの様な状況を作り出したこの4人に思わずハジメは苛立ちを感じながら白い目を向けてしまう。

 

 

 

そうしていると始業のチャイムが鳴り始め、担任が教室へと入ってくるとクラスにいる生徒達はそれぞれの席へと戻って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり生徒達はそれぞれ友人や中の良いクラスメイト達と席を付け昼食を取り始める中、ハジメは鞄からウ○ダーゼリーを取り出してキャップを取るとそのまま中身を絞り出す様に飲み尽くすとそのまま教室を出ようとしたその瞬間

 

 

 

「南雲くん」

 

 

 

厄病神(しらさきかおり)から声をかけられた、ハジメはそこで立ち止まるとそこで香織やクラスメートから見えない角度で顔を歪ませると、直ぐに直して香織へと振り返る。

 

 

 

「どうしたの白崎さん?」

 

 

 

 

「南雲くん教室から出るみたいだけど、今から購買で何か買ってくるの?良かったら一緒にご飯食べない?」

 

 

 

我らが女神、白崎香織からのご飯のお誘いが来たその瞬間教室の空気が不穏な物に変わった。男子と女子達はハジメを睨み付ける、男子の視線はまるで誘いに乗るのを断れ!と女子は断ったら許さない!と視線で訴えて来ている様だ。

 

 

 

そんな彼らの目を見たハジメは(どっちだよ!)と内心毒づく。

 

 

 

「誘ってくれて嬉しいけど遠慮しておくよ白崎さん 僕はもう済ませたからさ。せっかくだから八重樫さん達と食べなよ」

 

 

 

ハジメは懐から萎んだゼリーの容器を取り出すと、なるべく彼女を傷つけない様に、なおかつクラスを刺激しない様に断るが...

 

 

 

「えっ! 南雲くんのお昼それだけなの? ダメだよちゃんと食べなきゃ!お弁当分けてあげるからこっちきて!」

 

 

 

(もういらないって言ってるのに何で君は理解してくれないんだ!)

 

 

 

そこで彼女の天然が炸裂した、香織はハジメが手に持っている物を見ると目の色を変えて、腕を引っ張りながら自分の席へと連れて行こうとする。

 

 

 

そして教室の雰囲気は段々と悪化していき、空気が悪くなっていくのをハジメは感じた。ハジメは如何にかして彼女の手から逃れ様と考えていた最中、思わぬ所から救いの手が差し伸べられた

 

 

 

「香織。こっちで一緒に食べようか。南雲はもういらないみたいだしさ、それにせっかくの香織の美味しい手料理を南雲なんかに食べさせるなんて俺が許さないよ?」

 

 

 

その人物は爽やかに微笑み、そして癪に障る台詞を吐きながら現れた、クラスの人気者の光輝の登場だ。さり気なく自分を侮辱してきた光輝に対しハジメは苛立ちを感じはしたが今回ばかりは感謝する事にした。

 

 

 

流石の彼女もイケメンの光輝の誘いを断らないだろうと踏んだハジメは光輝へ協力する様にこちらも切りだそうとしたが

 

 

 

「白さ「え? 何で光輝くんの許しがいるの?」...」

 

 

しかし彼女の天然に対しなんの効果もなかったのか、あっさりと撃沈した。そして素で聞き返した香織に思わず雫は「ブフっ」と吹き出し、光輝は困った様に微笑みながら香織に話かけ始めると龍太郎も参加し始め、気がつくと4人は仲良く喋り始めた。

 

 

 

(こいつらは本当になんなんだ...?)

 

 

 

勝手に連れてきておいてながら自分を置き去りで話し始める香織とその三人にハジメは気が付かないうちにかなりの苛立ちを募り始めていた。思えばいつからだろうか?この4人が自分の前に現れる様になったのは?

 

 

 

香織が自分に話しかけ始めてから気が付けばこの4人のグループはいつも自分の周りにいる、仲良くする気もないのに会うたびに自分を蔑ろにしてくる龍太郎 生活態度や香織の件で言及しても文句をつけてくる光輝 そんな2人を悪気はないからとで済まそうとしてくる雫 そして事あるごとに自分に話しかけてきてはクラスの空気に気づかない天然さを披露した挙句に付き纏ってくる香織。

 

 

 

「もううんざりじゃないか...」

 

 

 

ハジメは悪夢の中で出会った"とある男"が言っていた言葉を4人に気づかれない様に喋るとそのまま踵を返して教室の扉へと歩いていく。

 

 

 

「...あっ、南雲くん何処行くの!」

 

 

教室の扉に手をかけた瞬間、またも香織はハジメの腕を掴んだ。

 

 

「もう南雲くん、勝手に行っちゃだめだよ?一緒に「あのさ」っ...」

 

 

「っ!」

 

 

 

しつこいぐらいに自分に付き纏う香織にハジメは遂に我慢の限界になってしまい、これまで香織やクラスメート達が聞いたことも無い冷たい声を出した。

 

 

 

 

「僕は必要無いって言ってるよね?白崎さん、僕はさっきのでもう昼食は済ませたしこれ以上はいらないんだ。」

 

 

 

 

「でっ、でも」

 

 

 

「必要無いって言ってるだろ、二度も言わせないでくれるかな?」

 

 

 

 

ハジメの冷たい声に一瞬だけ固まるもそれでもなお食い下がる香織に対しハジメはそれまでの苦笑いを崩して冷淡な顔をしながら香織を見る。

 

 

 

 

今まで見たことも無い顔でハジメに見られた香織は顔を赤くするどころかむしろ顔を青くしてしまう、それを見た殆んどのクラスメート達が一斉に睨みつけてきたが、こちらが鋭い目付きで睨み返すと殆んどの生徒達が先程の彼女と同じ反応をしてしまう。

 

 

 

(いつも集団で睨んでくる癖して、いざこっちがやり返したらそれかい?)

 

 

 

そんなクラスメイト達に内心呆れながら、青褪めた顔をしながら腕を掴む香織の手を解いてそのまま教室から出たその瞬間

 

 

 

「おいっ!南雲!」

 

 

 

またもや声がかかった、今度はハジメも嫌そうな顔を隠さずに振り向くとそこには声の主である光輝と腕を組みながらこちらを睨む龍太郎が

居た。

 

 

 

「香織にそんな顔をさせておいて自分は教室から出ようとするなんて...!男として恥ずかしくないのか!」

 

「はっ?」

 

 

「はっ!こんな奴に言っても無駄だぜ光輝、女を悲しませる様な男として情けねぇ野郎には何を言っても無駄だ」

 

 

 

龍太郎は腕を組みながらハジメを鼻で嗤い、光輝は如何にも"正義感"に満ちた目でこちらを見つめていた。ハジメは二人が、厳密には1人が自分に対して何をしたいのかが直ぐに理解できた。

 

 

 

(ああ、僕を"裁判"にでも掛けようって訳か...君のお得意の"正義感"とやらで)

 

 

(まぁ裁判は裁判でも私刑込みの魔女裁判だろうけど)

 

 

この教室が裁判所なら教卓の前に立つ光輝はさながら被告人に"裁き"を下す裁判官、そしてその後ろに立つ龍太郎は被告人に"追及"をする検察官、香織は被告人に傷つけられた哀れな"被害者。

 

 

 

そしてそんな彼らの眼前にいるハジメは裁かれるべき最低な"被告人" 、後の連中は全て陪審員といったところか。

 

 

 

(これがアメリカのセイラム魔女裁判だったら僕は確実に有罪なんだろうなぁ...裁判官役の彼は間違いなくこっちの言い分なんかまったく聞かないし、助け舟みたいな物を出してくる八重樫さんもなんか彼と揉めてるし)

 

 

 

(有罪だったらどんな処刑が待ってるかな?絞首、火炙り、それとも煮えた油でも飲ませるのかな?)

 

 

 

そう思考している最中「南雲君っ!」とまたも自分を呼ぶ声が背後から掛かった、うんざりした様子でハジメは振り返るとそこには誰も居なかった。

 

 

 

 

首を左右に振っても誰もおらず、その場でハジメは首を傾げると「南雲君っ‼︎」と今度は怒気が混じった声が下から掛かった。

 

 

 

ハジメは視線を下に向けるとそこには次の教科の担当である教師、畑山愛子が弁当箱を手に持ちながら怒った様子でハジメを見ていた。

 

 

 

「あっ...畑山先生...」

 

 

「まったく!私が南雲君の名前を!どれだけ呼んだと思ってるんですか⁉︎教室の前でボーっとして!」

 

 

 

愛子はハジメが自分に気づかなかった事に怒り心頭の様子で、これが漫画ならプンスカと擬音が付きそうな怒り方である。

 

 

 

畑山愛子は今年で25になる女教師だ、身長は150半ばで顔も童顔で 性格もとても生徒思いの教師だ。この学校の生徒達からは主に

 

 

 

"愛ちゃん"、"愛ちゃん先生の呼び名で呼ばれている。

 

 

 

そんな彼女にハジメは誠心誠意謝罪をすると愛子も許したのか、少しばかりの注意をすると教室に入っていった。

 

 

「ふぅ...終わったぁ...さてと、この場からどうやって...ん?」

 

 

ハジメは例の"裁判"からどうやって逃げようかと考えようと振り返り、そして心底呆れ果てた。

 

 

 

(何で愛子先生囲ってみんなして和んでんだこいつら...白崎さんの件であれだけ大袈裟にしておいて、今回の事は大した事じゃないってか)

 

 

 

そんなクラスメイト達を廊下から見ながら呆れた様に溜め息を吐くと、そのまま学食の方へと歩いていった。

 

 

 

愛子を見て和んでいた光輝達がだったが廊下を見るとハジメが居ない事に気がつくと香織と光輝は廊下に出てハジメの名前を呼ぶが

 

 

 

もう後の祭りであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食堂

 

 

 

 

教室から見事脱出する事が出来たハジメは学校の食堂に到達する事が出来た、食堂の台所からは食欲をそそらせる匂いが漂う。

 

 

 

嗅ぐだけで腹の虫が鳴り、胃袋が脳へ空腹というサインを緩やかに送り始めていく。

 

 

 

そんなサインをハジメは我慢しながら購買の方へとたどり着く、テーブルには購買部の女性達の手作りであろう食物達が綺麗に並べて置かれている。

 

 

 

その中でハジメは二つの食べ物を取った、一つは表面がカリカリに焼かれたカレーパン、もう一つは卵が飛び出てしまいそうな程ぎっしり詰められ挟まれているサンドイッチだ。

 

 

 

 

購買の女性に500円玉を渡してお釣りを受け取り、そのまま食堂の席へと向おうとしたその瞬間「君、待って」と購買の女性から声を掛けられた。

 

 

 

ハジメは振り返って女性の元へ行くと、彼女から私物らしき飴玉が大量に入った袋を手渡された。

 

 

 

「あのこれって...」

 

 

ハジメが困惑しながら袋を手渡された理由を尋ねようすると、彼女から先に理由を話したら、

 

 

 

「おまけだよ」

 

 

「おまけ?」

 

 

「そう、いつも君って天之河君達と悪ガキの檜山君達に絡まれて大変そうじゃない?」

 

 

「私達もどうにか君の助けになってあげたいけど、職業柄どうにも出来ないのよ...君からしたら微々たる物かもしれないけど...こういう物で

少しでも気苦労を減らしてあげたらな、って思って」

 

 

 

袋を渡してくれた理由を聞いてハジメは己の苦労を理解してくれた購買の女性に思わず涙が出そうになった。

 

 

 

 

ハジメは彼女に感謝の言葉を述べると、そのまま食堂の席へ向かっていき、その途中自販機で飲料水を購入して手近な席へ座る。

 

 

 

「はぁ〜、やっと一息つけるなぁ...」

 

 

 

席へ着くとハジメはそこで力が抜けた様に溜め息を吐いた、彼にとって香織達の居る教室は牢獄その物だった。

 

 

 

教室に入る度に香織がこちらに近づいてきては光輝と龍太郎も付いてきては説教をしては蔑ろにし、そして雫が出張って来ては仲裁。

 

 

 

小物4人衆が鬱陶しく絡みクラスメイト達が睨み付けてくる そんな日常を学校で送るハジメにとって、食堂とはクラスに縛られない唯一の安らぎの場所でもあった。

 

 

 

ハジメは早速サンドイッチとカレーパンの包装紙を破くと、生地がカリカリに焼けたカレーパンを手に取って一口かぶりつく。

 

 

 

サクッとパン生地が音を立てて齧られ、中から辛く、そして微かに甘いカレーが溢れてくる。美味い ハジメは舌鼓を打っている最中、

 

 

 

「おい、あいつ2年の南雲じゃね?」

 

 

「あぁ、二大女神に付き纏ってるオタク野郎だ」

 

 

「光輝くんにあれだけ注意されてる癖に白崎さん達に付き纏うとか何様よあいつ」

 

 

と、ハジメにとって不愉快な声が自分の座る席を囲う様に聞こえてくる。

 

 

 

(ああ..."此処"もか、せっかく安らげる場所だったのに..."また"移動するはめになるなぁ...)

 

 

ハジメは心底うんざりした様子でため息を吐いた、此処もまたあの"4人"の影響が強い様だ。

 

 

(僕を羨む奴が居る様だけど、僕の何処が羨ましいってんだ?毎日毎日あの4人が来る度にストレスを与えられるのが羨ましいとかドMか何か?)

 

ハジメはそう心の中で吐くと、別の場所に行く為に食べるペースを早めると直ぐにサンドイッチとカレーパンを完食した。

 

 

 

そしてペットボトルの水を一気に飲み干すと、席を立って食堂から出ようとする。

 

 

 

「なっ...なぁ南雲?」

 

 

出ようとした瞬間声をかけられた、ハジメが声をかけてきた方へ向くと声の主は先程自分を見て話していた連中の1人だった。

 

 

「なんですか?」

 

 

ハジメが不機嫌を隠さずに話しかけてきた生徒に返事をする、ハジメの不機嫌な顔を見た生徒は一瞬怯むも、

 

 

 

 

どこか驚愕と困惑が入り混じった目でハジメを、正確にはハジメの身体を見ている。

 

 

 

 

その生徒が自分の身体を見ているのが分かったハジメは己の視線を自分の身体へと向ける。

 

 

 

「...はっ?」

 

 

ハジメは間抜けな声が出てしまった、自分の身体が透けていたのだ、それと同時に鐘の音が聞こえて来る。

 

 

 

(まさか...共鳴する小さな鐘か⁉︎何だってこんな時間に!でも何か...違う様な...)

 

 

 

聞こえて来る鐘の音に何処か違和感の様な物を感じながら、南雲ハジメは何も出来ずに食堂から透ける様にその姿を消した。

 

 

 

また、同時刻に彼のクラスである教室でも似た様な現象が起きた、教室にいた天之河光輝を筆頭とした生徒達と

 

 

 

次の教科の準備をしていた畑山愛子が、また同じ様に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








"悪夢"での南雲ハジメの主な装備品

頭 古狩人の帽子
胴 古狩人の細工装束
手 ヤーナムの狩り手袋
足 古狩人の細工ズボン


右手 ノコギリ鉈
左手 エヴェリン


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