ありふれた連盟の狩人   作:静岡万歳!

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みなさんお久しぶりです、次話投稿に2年もかかってしまい本当に申し訳ありません。

2年ぶりの投稿で早速メルドさんへの若干なアンチ描写がありますのでご注意ください。





"不平等"な戦い

 

ヘンリックが模擬戦を開始すると宣言して以降

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練場でメルド配下の騎士達が様々な道具や物資を持ってくると、それを組み立てて様々な場所に配置していく。

 

 

木で組み立てられた物に布を被せたら、その手前に椅子やらテーブルやら置いていく。

 

 

ヘンリックとハジメ、騎士団以外の面々は彼等が何を準備しているかは理解できていなかったが、準備を進める内に段々と何を作ろうとしているか理解した。

 

 

そして少しの時間を掛かかり、やがて完成した。彼等が作ったのは市街地の一部の様だ。

 

 

少々張りぼて感が酷い所はあるが、中世基準のトータスにしてはまぁまぁな出来だろう。

 

 

 

「アマノガワコウキ、サカガミリュウタロウ、ヤエガシシズク、シラサキカオリ、今呼ばれた4人は前に出ろ」

 

 

ヘンリックに呼ばれた光輝達4人は市街地を模した訓練場へと歩み出る。

 

 

「これより!模擬戦を開始する、想定は王国の大結界を掻い潜った魔族による市街地への襲撃」

 

 

「魔族は現地市民達に虐殺の限りを尽くしており、諸君らは現場に最も速く到着し、これから侵入した魔族との戦闘を開始する所だ」

 

 

「また、魔族は騎士団の人間2人を魔法で操り、彼等の意思とは関係無く殺戮に加担させている」

 

 

「そこでだ、諸君ら4人のする事はその魔族を殺害……」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

殺害と言い出したヘンリックに対し、光輝は彼に抗議する様に口を挟む。

 

 

「なんだ?」

 

 

「いきなり模擬戦だなんて俺達は聞いてません!それに魔族が大結界を掻い潜っただなんて、そんなのありえな」

 

 

 

「あり得ない事は"いつも突然に"起きる物だ、それに実戦もな。4人共準備をしておけ!」

 

 

 

彼の言葉をヘンリックはそう切り上げると、市街地を模した中で背の高い建物の背後にハジメと2人の騎士を連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物の裏に入り、ハジメと騎士達2人は顔合わせをすると自己紹介を始める。

 

 

「私はニート=コモルド、騎士団の三番隊隊長だ」

 

 

 

「南雲ハジメ君、君と話すのは初めてだったな、よろしく頼む」

 

 

 

ハジメは一彼の名前を聞いて一瞬固まるも、ここで吹き出すのも無礼と感じて挨拶を返す。

 

 

 

「初めましてコモルドさん、今日はよろしくお願いします」

 

 

 

コモルドとの自己紹介を済ませると、彼はもう一人の騎士とも話す。

 

 

 

「アラン・ソミシーだ、所属は……言わなくても分かるか。あの時は助かったよ。よろしくな」

 

 

 

アランはハジメにオルクス迷宮の礼を言うと、ハジメもそれを笑いながら受け取り、そして模擬戦の作戦会議を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、

 

 

 

光輝達が場に上げられ、他の使徒達がざわつく最中、メルドはヘンリックと共に決めた今回の模擬戦の決定した日の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「模擬戦……?模擬戦なら訓練の一環でしているが……」

 

 

「いや違う、もっと本格的な模擬戦だ。木剣でなければ刃を潰した剣でも無い、実物でやる」

 

 

騎士団の宿舎の団長室でメルドとヘンリックの二人が話をしていた、どうやら内容は神の使徒の事の様だ。

 

 

「近頃のあの連中の訓練にやや怠慢を感じる、たしかアマノガワだったか? どうも連中の中にはあの小僧率いる"4人組"に任せればいい、そんな楽観的な態度で訓練を受ける者達が増えてきている様だ」

 

 

「だから模擬戦という訳か……しかし模擬戦と言っても何をする気なんだ?殆んどの事は訓練でやっているだろう」

 

 

彼のそんな言葉に対し、ヘンリックはこう返した。

 

 

「まだやってない物があるだろう、"斬り合いを"」

 

 

「な……ッ⁉︎」

 

 

彼の言葉にメルドは狼狽えるも、反論する。

 

 

「それはまだ待ってくれないか……あいつらにだって心の準備が必要なんだ」

 

 

「準備?その準備とやらはいつまでかかるんだ?この世界は魔人族やらの脅威に晒されてるんだろう、いつまであの小僧どもを甘やかしている」

 

 

「甘やかしている?私が?」

 

 

「現にそうだろう、あの迷宮の一件以降の訓練で、お前のするモノは奴らに何処か甘い物ばかりだ」

 

 

「私は確かに人参と棒の要領でお前にその役を渡した、お前なりの考えあってのモノだろうがこの際ハッキリ言おう。お前はアイツらの親を気取ってるのか?」

 

 

彼にそう言われてメルドはショックを受けた様な顔になる。

 

 

「もし親を気取っているのなら、お前のやってる事は子供を散々甘やかして大人になったら放り出す様な親と何も変わらんよ」

 

 

 

「それにメルド、奴らに兄貴分扱いをされてさぞかし気持ち良かっただろうが、"お前もハイリヒの人間"だと言う事を忘れるなよ?」

 

 

 

ヘンリックのその言葉はメルドの心に重石の様にのしかかる。

 

 

 

そうだ、訓練でこうして親しくなっているが、元々あの少年少女達は本来なら親元で育っていなければいけない歳だ。

 

 

 

魔族の脅威の無い平和な世界で平穏な日々を送っていた彼らを、エヒト神と我々の都合で呼び出し、剣を持たせて戦わせにいく。

 

 

 

世界の脅威の"魔人族"と異世界から少年少女達を呼び、戦わせる"我々"、はたして非道なのはどちらなのだろうか?

 

 

 

「……そう、だな。ヘンリック殿、あなたの言う通りだ」

 

 

「今まで私は、光輝達と共に過ごし、共に戦い、訓練をしていく最中でいつしか彼らに情がわいてしまっていた」

 

 

「最初は1人前の勇者に育てようと接していたが、共に居る内に私は、彼らに人を殺めさせたくは無いと、そんな思いを抱いてしまったのです」

 

 

 

懺悔の告白の様にメルドは話す。2人の居る場所が告解室で、目の前に居る相手が"神父"であれば、彼に赦しを与えたかもしれない。

 

 

 

しかし、目の前に居る男は神父では無く"狩人"、ヘンリックからは赦しの言葉など出てこず、剣呑な視線でメルドを見ながら口を開く。

 

 

 

「メルド、お前は1人の人間としては大層立派だが、国の武官としては失格もいいところだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「構えろ!もう戦闘は始まってるぞ!」

 

 

 

場に響くヘンリックの言葉にメルドは回想を終わらせると、各々武器を構える光輝達に視線を向ける。

 

 

 

香織と雫を守るかの様に龍太郎と共に立つ光輝の顔には勝利への確信が浮かぶ、それは自分達が負ける筈が無いと、そう自信に満ち溢れていた。

 

 

 

「光輝......お前が思う程、戦いは簡単な物じゃ無いんだ......」

 

 

 

メルドは誰にも聴かれない様にそう呟くと、これから起こる戦いをただ静かに見つめる。

 

 

 

 

 

「雫は香織を守ってくれ!龍太郎は俺の援護を頼む!」

 

 

「わかったわ!」

 

 

「おうよ!」

 

 

 

光輝の出した陣形は自分と龍太郎が前衛を務め、雫に回復役の香織を守らせるといった物だ。

 

 

 

その状態で周囲を警戒する4人をハジメは物陰から見つめていた。

 

 

 

(前衛2人に後衛1人、そして護衛1人か......セオリー通りの陣形だね。不意打ちで白崎さんから仕留めようかな?それとも......)

 

 

 

ハジメは少しの間考え、やがて何かを思いついたのか、離れた場所で同じく物陰に隠れるアランとニートにハンドサインを出した。

 

 

 

そして

 

 

 

「みんな警戒するんだ、南雲の奴はどこから.......ッ!?」

 

 

 

光輝は全員に警戒を促し、指示を出そうとしたその瞬間。4人の前に“それ“は現れた。

 

 

 

彼らの前に現れたソレを言葉で表すなら、"灰塗れの骸骨"だった。魔女の様なとんがり帽子に鎖帷子と朽ちた布切れ、

 

 

 

そして極め付けは8つの目が付いた頭蓋骨の様な面、そんな異様な出立ちにヘンリックと事前に確認していたアラン、ニート以外の全員が息を呑む。

 

 

 

「ア"ア"ア"ア"!!!ハァッ!!」

 

 

 

ハジメは獣の雄叫びの様な声をあげてある人物に真っ先に襲い掛かった、それは

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

雫だった、ハジメの姿を見て固まって隙を生んでしまった。それ故に真っ先に彼に狙われてしまう。

 

 

 

(正直この中じゃ君が一番厄介なんだよね、判断力あるし)

 

 

 

彼が雫を狙った理由にはもう一つある、それは4人の中で戦闘力が光輝に次いで高く、彼よりも冷静で状況を見れる存在だったからだ。

 

 

 

ハジメは獣の様な雄叫びを上げながら、手に持った大型の鉈の形状をした仕掛け武器"獣肉断ち"の仕掛けを起動させる。

 

 

 

駆動音が鳴り響くと刃に仕込まれたワイヤーによって獣肉断ちはそのリーチを大きく伸ばし、それを振り上げると彼女の横から刃を叩き込む。

 

 

 

「くッ!」

 

 

それを見た雫は逃げれないと悟ったか、手に持ったシャムシールでガードしようとする。だがしかし、彼女が防御の姿勢を取る事はハジメにとって想定されていた事だ。

 

 

 

(先ずは君だ)

 

 

 

刃が雫に叩き込まれようとし、ハジメが懐のスローイングナイフを取り出そうとしたその瞬間

 

 

 

「雫ッ!?危ねぇッ!!!」

 

 

 

龍太郎が咄嗟に彼女を庇い、前に出ると両腕でそれを防いだ。

 

 

 

(なかなか勇気あるなぁ、脳筋だと思ったけど意外とやれるのかな?)

 

 

 

そんな彼を見てハジメは感心するも、獣肉断ちの刃は龍太郎のその強靭な腕に深く食い込んでしまった、肉を斬り裂き骨まで到達してしまう刃に龍太郎も痛みに顔を歪める。

 

 

 

「がぁ……ッ!クソッ......タレがぁッ!!」

 

 

 

痛みに顔を歪めながらも反撃に出ようと前に出て、ハジメに拳を食らわせようとする。が、ハジメは即座にステップで下がり、 龍太郎の片足に向けてナイフを投げた。

 

 

「ぐおッ!て、てめぇ……ッ⁉︎」

 

 

投げられたナイフは見事に太ももに刺さり、片膝をつく龍太郎。それでも諦めまいと立ち上がろうとしたその瞬間。

 

 

 

「ム"ゥ"ア"アァァァッ!!!」

 

 

ハジメが左手に持った鉄塊によって頭を殴り倒されると、その意識を刈り取られた。

 

 

 

「リュウタロウサカガミ、死亡!」

 

 

ヘンリックが龍太郎の戦死を告げると、その声にある人物が強い反応を示す。

 

 

 

「龍太郎ッ⁉︎南雲っ!お前ぇぇぇッ!!!」

 

 

「待ちなさい!光輝ッ!」

 

 

 

親友をやられ、冷静さを欠いてしまった勇者が仲間の制止を無視して灰の骸骨に斬りかかった。

 

 

 

龍太郎をやられた怒りで場を見ずに、感情任せに此方に向かってくる光輝の姿にハジメはため息を吐く。

 

 

 

獣肉断ちを"インベントリ"で仕舞うと、ルドウイークの聖剣を装備する。そして聖剣で斬りかかった光輝に対し、こちらも背負った鞘に剣を押し込み、仕掛けを起動して斬りかかる。

 

 

 

 

 

そして勇者の聖剣と狩人の"聖剣の贋作"がぶつかると、訓練場に大きな音が鳴り響く。

 

 

 

 

灰の骸骨と勇者が互いの剣を何度もぶつけては剣戟を演じ、その様を見るクラスメイト達は呑気に歓声を上げる。その最中でハジメは光輝に鍔迫り合いながらも語りかける。

 

 

「.......天之河くんさぁ、僕にばかり構ってていいの?」

 

 

「うるさいッ!お前を倒せば、この模擬戦は終わるんだッ!」

 

 

光輝は彼の話を振り払う様に聖剣で斬りかかる、然しそれをステップで躱されると側面から斬りつけられるも光輝は何とか防ぐ。

 

 

「くうッ!」

 

 

またもや鍔迫り合いの状態になると、ハジメは光輝に聞こえる様に大きく溜め息を吐いた。それを挑発と受け取った光輝は怒りで弾こうとしたその時だ。

 

 

 

「良いのかな?あの2人を守らなくて」

 

 

ハジメがそう言い放つと、光輝はハッとした顔で雫と香織の方を見る。そこにはアランとニートに追い詰められる2人の姿があった。

 

 

「雫ッ!香織ッ!」

 

 

「もう遅いッ!」

 

 

一瞬とは言え雫達を見てしまい、隙を見せてしまった光輝をハジメが見逃す筈も無く、鉄塊で腹部を殴り怯んだ所を彼の肩部にルドウイークの聖剣を思い切り叩き込んだ。

 

 

「しまッ......!?ぐっ!があァッ!」

 

 

「コウキアマノガワ死亡ッ!」

 

 

 

重い一撃を二発も食らった光輝は堪らず倒れ込み、それを見たヘンリックは戦死の通達をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ......あのおバカ......ッ!」

 

 

 

光輝の戦死の通達を聞いた雫は苛立った様子でそう吐き捨てる、模擬戦の相手は最低でも3人だという事は事前に理解していた。

 

 

南雲ハジメ

 

 

アラン・ソミシー

 

 

ニート・コモルド

 

 

この3人がヘンリックの方へ向かう姿を見たからだ。最初こそまだ良かったが、龍太郎がハジメにやられてしまってから全てが狂った。

 

 

本来なら伏兵に備えて光輝と共に香織の側にいて、3対3の状態で居ようとしたが、親友をやられて頭に血が登った光輝がハジメの元へ向かった瞬間にニートとアランが襲撃を仕掛けたのだ。

 

 

2人を相手にしながら香織を守り、必死に光輝に呼びかけるも彼が答える事も無く、結果この有様だ。

 

 

「......香織」

 

 

「何、雫ちゃん?」

 

 

「1人、あの"魔法"で拘束する事は出来る?」

 

 

雫は背後に居る香織に振り向かずにそう聞く、香織は顔をやや顰めながら

 

 

「まだ完璧じゃないけど......何とかやってみるね、雫ちゃんっ」

 

 

「えぇお願い、香織」

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、残りは八重樫さんと白崎さんか......これじゃあ出る幕も無いかなぁ」

 

 

アランとニートに追い詰められる2人を見て、ハジメは面白くなさそうに呟いた。彼の予想としては、ハイリヒの最高戦力と言える4人との戦いは激戦になるだろうと思っていたのだ。

 

 

だが蓋を開けたらどうだ?龍太郎を仕留め、それを見た光輝が激昂して突撃を仕掛けるも返り討ち、そして残ったのは雫と香織の2人のみ。

 

 

雫は脅威とは言えそれは4人集まればの事、戦力は半減して相方は回復役の香織となれば雫の脅威は大きく下がる。

 

 

「こりゃ出る必要も無いかなぁ」

 

 

「ふざ......けるな......ッ!」

 

 

そう独りごちるハジメに返す者が居た、それは光輝だ。這いつくばりながらも顔をハジメに向け、彼を睨みつけている。

 

 

「香織と雫に手を出してみろ.......ッ!その時は俺が」

 

 

「天之河くん」

 

 

自身を睨みながら話す光輝にハジメは向き合うと、彼の横っ腹に鉄塊を打ち込む。

 

 

「がはァッ!?」

 

 

「死人が喋るなよ」

 

 

ハジメは冷たくそう言い放つと再び香織達を見つめる。2人は何か仕掛ける様だがそれはどんな物なのかは分からない。

 

 

ハジメは手持ちのルドウイークの聖剣をインベントリに仕舞うと、様子を見るかの様に腕を組んでそこに立つ。

 

 

 

 

模擬戦は未だ終わらない




作中で銃を使わないのは単純に殺しちゃうから禁止という理由です
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