これからも、引き続きよろしくお願い致します。
今回の話は色々とアレンジと妄想が入っています。
『行ってきまーす』
『気をつけてねー』
ハジメは今夢を見ていた、それは車椅子に座る老人と背が高く綺麗な女性を模した人形が居る奇妙な夢では無く。
かと言って血と獣に塗れた何処までも冒涜的で悍ましい悪夢でもない、まだ平穏な日常を送っていた頃の夢だ。
いつも通り朝を起きて、朝食を食べて学校に向かい、授業を受けて学校から帰り、そして両親の手伝いをしながら
自らの趣味に没頭する。そんな日々をハジメは幸せに思っていた、最も学校では自分のオタク趣味を馬鹿にはされていたが。
しかしそんな彼にとっての幸せはある日を境に突然終わる事になった、その日ハジメはいつも通りの朝を迎え、朝食を取って家を出た。
家から出た先の交差点信号が赤から青に変わり、渡ろうとしたその矢先だった。
何処から音も無くクラクションすら鳴らさずに現れた謎の車が、まるでハジメ1人を跳ねようと言わんばかりに猛スピードで突っ込んで来た
そんな車を見た通行人達は彼を助けようとしたが、車のスピードには敵わず、彼もまたいきなりの事に動く事が出来ず。
容赦無く車に跳ねられた、ぶつけられた痛みと共に少しの間の浮遊感をハジメは感じ、そして落下した。
最後にハジメが目にした物は必死に手当てをしながら自分を呼びかける通行人達と、自分の身体に纏わりつく様に現れた妖精の様な小さな骸骨達だった。
「...っ、ここは...?それにしても随分懐かしい夢を見たな...」
食堂から消え、懐かしい夢から醒めたハジメは気が付けば何処かのダンジョンの様な場所で横になっていた。
起き上がって自分が身に付けている服を見る、それはいつもの学校で着ている制服では無く、あの悪夢の世界"ヤーナム"で着ていた狩装束だった。
「クソっ!」
それがわかった彼は苛立った様子で土を叩いて毒づいた、食堂で透けた時点で嫌な予感はしていたが、よりによってまたヤーナムか!と言わんばかりに。
「自分が纏う狩装束に毒づく奴は初めてみたよ」
そう思っていた最中、ハジメは誰かに話しかけられた、声のした方へ首を向けると其処には土の壁に腕を組んだ狩人が寄りかかっている。
その狩人は"黄味がかかった独特の狩装束"を身に纏い、"羽根を着けた黄土色の帽子"を被っていた、ハジメはこの狩人の名前を知っている。
「...ヘンリック?」
「いかにも、私がヘンリックだよ坊や、ビルゲンワースで"連盟員"としてマダラスの弟と共に協力した以来だな」
「まぁ直接会うのはこれで2度目になるがね」
狩人ヘンリックがそう返したその瞬間、ハジメは彼から離れ"所持品"からノコギリ鉈とエヴェリンを取り出すと、それを持って身構える。
「待て待て、そう身構えなくたっていいだろう...意識の無い坊やを誰がここまで運んだと思っている」
「坊やが身構える理由は大方ガスコインとその妻と子の件だろう?安心しろ、もう踏ん切りはついた、そうでもなきゃお前に協力などせんよ」
ヘンリックはそう言うと壁から離れ、腰に携えた仕掛け武器と短銃に手すら掛けずに近いていき、遂には至近距離まで距離を縮める
彼の狩人としてあまりに無謀すぎる行動にさすがのハジメも警戒を解かずにはいられなかった、そして武器をしまう。
「...僕は「言うな」っ...」
「坊や、お前が言いたいのは私の"家族"の事だろう?あれはお前の所為じゃない、ああなる事を予測出来なかった私が悪い」
「ガスコインだってそうだ、奴には"獣"になる兆しがあった、その時に私は狩人として奴を狩るべきだったのに奴を狩れなかった」
「私が奴を狩ろうとするその度に"娘婿"としての顔が浮かんで、何度も何度も先伸ばした挙句に遂には手を掛けられず...その結果があの様だよ」
ヘンリックの言うあの様とは地下墓地で遭遇したガスコイン神父の事か、それとも発狂したヘンリック自身の事かハジメにはわからなかった。
そしてヘンリックが懺悔の様に自分の思いを喋り終えると、その場で黙り込む。
そんな彼に対し、ハジメは慰めの言葉を掛けようとしたが何一つ思い浮かばない、掛けていいのか迷うし、なにより
彼を
「...すまないな、獣狩りとしてみっともない姿を晒してしまった...柄にも無い...」
「感傷に浸るのはもう終いにしよう、今はとりあえずこの謎の場所を抜け出さなければない、付いてこい坊や」
彼はそれまでの空気を断ち切る様にそう言い出すと、腰に携えた短銃とノコギリ鉈を手に持って歩いていく。
ハジメはそんな彼に何も言わずに、同じ様に武器を持って付いていく。
(喪った物はどう足掻いても取り戻せやしない、たとえ"人の道"から外れてしまったとしてもだ)
(今の私は"連盟員"として人の淀みを..."虫"を潰し続ける、ただそれだけの事だ)
ヘンリックはそう思考しながらハジメと共に脱出を目指すのであった。
同時刻、オルクス大迷宮にて。
オルクス大迷宮と呼ばれるこの場所は、ハジメ達が元居た地球でもなければヤーナムにも存在していない、この異世界"トータス"に存在にのみ存在している。
オスカー・オルクスという男が創造した全100階層からなるこのオルクス大迷宮は、トータスに存在する7大迷宮の一つだ、階層を進めば進んで行くほど強力な魔物が出現するらしい。
そんな危険な場所に数人の甲冑を着た騎士と、10数人の統一感の無い服装に身を包んだ10代の若い男女が隊列を組んで歩いていた。
「はぁ......」
「もう!元気だしなよカオリン!南雲くんならもしかしたら別の場所に転移したかもしれないってメルドさんが言ってたじゃん!」
「そうだよ香織ちゃん、イシュタルさんもその可能性があるって言ってたし、希望はまだあるよ!」
その隊列の後衛の方で学校の制服とは違う、ファンタジーな衣服を纏い、杖を持って落ち込みながら歩く香織を2人の少女が励ましていた。
快活な雰囲気を纏った少女の名前は谷口鈴、小柄でこの集団のムードメーカーだ、美女や美少女が好きらしく同級生からは心の中におっさんを飼っていると言われているらしい。
そして鈴の後に香織を励ました眼鏡をかけた黒髪もショートボブの少女の名前は中村恵里、性格は温和で大人しく、美女や美少女を見ては暴走しがちな鈴の抑え役を務めている様だ。
後衛の三人を中心に周りをよく見てみると数人の騎士以外、隊列は香織達の見知った顔の男女で構成されていた。
そう、この隊列の若い男女は全てハジメのクラスメートで構成されていた、彼らが何故この異世界トータスにいるかというと、ハジメが食堂から消えた同時刻、彼等もまた教室からこの世界に転移したのだ。
転移した先のハイリヒ王国に到着して情勢を教えられ、更に転移の際に特別な力を与えられた彼等のリーダー格の光輝が考え無しに引き受けてしまった結果今に至る。
因みにこの迷宮には居ないが、転移した際に畑山愛子が魔人族への戦いに難色を示したが、浮かれている10代の少年少女達はそれをあっさりと受け流した。
後衛の彼女達が話しながら歩いていると、突如先頭を行く光輝達や騎士達が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に彼等は戦闘態勢へと入り込む。どうやら魔物のようだ。
「擬態しているぞ! 周りをよく見ながら警戒しておけ!」
隊列の先頭の男が立ち止まると振り返り、一向に声を響かせながら伝える。
男の名前はメルド・ロギンス、クラスが転移したハイリヒ王国の騎士団長を務めており、今回は彼等の護衛兼教育の為に迷宮へ出向いている。
クラスの教育係を任されており、豪放磊落な性格で直ぐにクラスの面々と打ち解けた事から、彼等からは兄貴分の様に慕われている
そして各々はそれぞれのパーティへと編成され、魔物を警戒する。そして前方の壁が突如変色し、その場起き上がる様に動き出すとカメレオンの様な擬態能力を持った魔物が一行へと襲い掛かった。
この階層で起きた魔物との戦闘の結果は勇者・騎士達の圧勝だった、彼等はそれぞれの能力を活かした戦い方で見事勝利を掴んだ。もっとも約一名の判断力が欠如した攻撃で危うく全員が危機に陥るところではあったが。
階層内の魔物の掃討が完了し、一行は少しの間小休止を取る事にした。クラスの面々はそれぞれのグループで固まって談笑してる最中、メルドは階層の石橋の対面に3人の人影が此方を見ている事に気が付いた。
「なんだ?冒険者か?」
メルドが目を凝らしながら見ると、3人の内2人は軽装で帽子を被ってマスクをしているため顔が見えない、右手には鋸の様なギザギザの刃が付いた武器を持っている。
そして残った1人は自分達騎士団と同じ様に甲冑を纏い、細剣と盾を持っているが、被っている兜に覗き目の類が存在しない事に気がつく。
(妙だなあの3人...冒険者にしては少し雰囲気が違う、あの騎士甲冑の奴もそうだが帽子の2人組のあの武器はなんだ...?工具の様に見えるが裏側にも刃が付いている、あんな武器は見た事が無いぞ)
メルドは3人組に得体の知れ無さを感じながら、一応罠の可能性も考慮してフェアスコープで3人組の周囲を見るが特に確認は出来なかった。
彼は一度騎士達を自分の方へ集めると石橋を警戒する様に伝えた。
一方、ハジメ達。
ハジメ達も石橋に到着するまでの道中、様々な獣擬き達を仕掛け武器で狩っていきながらここに到着すると、向こう側にいる集団を見つめていた。
「...奇妙な連中だな、狩人にしては大人数なうえに仕掛け武器どころか銃すら持っていない。甲冑の連中は随分と旧い装備品ばかりだ、ヤーナムの群衆共だとしても装備が豪華すぎる」
「おまけに甲冑の連中以外は全て坊やと同じ10代の子供ばかり、一体奴等は何だ?何の目的があってこの場所に居る?」
遠眼鏡で向こうの集団をざっと見渡したヘンリックは疑問を口にする、そんなヘンリックをよそにハジメは自分が狩人呼びの鐘で呼び出したカインハーストの騎士甲冑を着た"連盟員"LANCELを見ていた。
(この連盟員、かなり凄いな...即席で組んだとはいえ、的確に僕とヘンリックさんに合わせてくれる)
ハジメはLANCELが持つ武器を見る、右手には銃と騎士剣が合体した見た目のレイテルパラッシュ、左手には青いガラスを被膜した工芸品の様外観の湖の盾。
カインハーストの騎士兜や手甲や足甲、医療教会とカインハーストの武装を持つLANCELを見てハジメの脳裏に"とある狩人"を思い出させる
(大聖堂に居たあの狩人は何者だったんだろう?カインハーストに関係してるのは解るけど何故あの狩人"烏羽"さんにとどめを刺さなかったんだ?それに烏羽さんはあの後何処に行ったんだ?)
そうハジメが思案していると橋の向こう側から声が響いた。
「こら! 勝手なことをするんじゃない! 安全確認もまだなんだぞ!」
声を聞いたハジメ達は橋の対面を見る、先頭で自分達を見ていた男が横の壁の方を怒鳴りつけていた。それを見たハジメはヘンリックと同じ様に懐から遠眼鏡を取り出し、男が怒鳴った方を見る。
「あれは...っ!檜山君⁉︎それにクラスの皆⁉︎何でここに居るんだ⁉︎」
遠眼鏡で橋の向こう側に元の世界のクラスメート達を確認したハジメは驚きのあまり疑問を口に出してしまった。
「あの連中を知ってるのか坊や?」
「騎士甲冑の人間達は知りませんが、それ以外は全員知り合いです!」
そんなハジメを見たヘンリックは彼に尋ねる、それにハジメが返答したその瞬間、更に向こうから声が響いた。
「団長!トラップです!」
騎士の1人が先頭にいた男、団長に警告を出したが一歩遅かった。
壁によじ登った檜山が壁の中で煌びやかに光る石に手を触れた瞬間、その石を中心に魔法陣が広がっていき、それは徐々に向こうに居る彼等
を包んで行った瞬間、大量の獣擬き達が彼等を包囲する様に現れた。
「くっ!総員戦闘準備に入れ!」
向こうに居る団長が声を響かせる様に指示を出して全員に戦闘の準備をさせる、慣れた騎士達や先頭に居た光輝達や永山達は完了したが
後の人間達は混乱している様子だ。
「助けに行った方が良さそうだな...2人とも付いて来い!」
「はいっ!」
それを見たヘンリックとハジメは彼等の援護に向かおうとして連盟員LANCELと共に石橋を駆け出したその瞬間、ハジメにとって"聞き覚え"がある獣の唸り声が石橋の上から聞こえた。
そして"それ"は唸り声をあげながらハジメ達3人の前に落下して現れた、その獣はとても大きく白い体毛で覆われており、猿や人の様に二本足で立ち左腕は歪に肥大していた。獣の角の形状はまるでヘラジカを思わせる。
そしてハジメは本来此処に居る筈が無いその獣を見て驚愕した。
その獣の名前は"聖職者の獣"
かつてヤーナムに来たばかりのハジメが後に自分が手にかけた古狩人、ガスコイン神父と共に狩った最初の獣だった。
連盟員 LANCEL
装備品
頭 カインの兜
胴 カインの鎧
手 カインの手甲
足 カインの足甲
右手 レイテルパラッシュ
左手 潮の盾
名前の元ネタ ローゼンタール社ネクストAC TYPE-LANCEL
ARMORED CORE for Answerより