ありふれた連盟の狩人   作:静岡万歳!

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あーもうめちゃくちゃだよ(上位者並の感想)


愚か者たち

 

 

(さてと...彼等を退避させたのは良いとして、問題はこの骸骨どもだな..."聖職者"はヘンリックが抑えてるから問題は無いとは言え...)

 

 

襲い掛かるトラウムソルジャー達の攻撃をステップでハジメは躱していく、そして背後から"赤い"一体が襲い掛かる。

 

 

「チッ!」

 

 

それに気付いたハジメに、背後に振り向いたと同時にエヴェリンで頭を撃ち抜かれた、そして頭を水銀弾で砕かれた赤い骸骨は"何故か"存在する筈が無い血液を全身から吹き出して倒れた。

 

 

(こいつら...ヤハグルや聖杯ダンジョンに居たのと同じタイプか?)

 

 

ありもしない血液を吹き出して倒れたその姿に、かつて悪夢の世界で見たモノ達を重ねる。

 

 

(だとしたらこの骸骨どもを召還してる"存在"が居る筈だ、"鐘を鳴らす女"の様に)

 

 

ハジメは戦いながらも視線でLANCELを探し、見つけた、どうやら彼も骸骨達に苦戦している様で、召還者を探す余裕は無さそうだ。

 

 

(あの連盟員も苦戦しているみたいだなぁ、こっちも悠長に探してる暇は無いし、地道に仕留めながら行くしか無いか)

 

 

ハジメは考えるとノコギリ鉈の仕掛けを作動させて大型の鉈へと変えた、そして襲い掛かるトラウムソルジャー達から一定の距離を保ちながらも地道に仕留めて行く。

 

 

 

 

 

 

ハジメ達3人が残って時間を稼いでいるその間に、メルドは回復した騎士団員と香織を呼び集め、光輝達を担ぎ離脱しようとする。

 

 

トラウムソルジャー達は、アランと優花の2人の懸命な呼びかけで冷静さを取り戻した幾人かの生徒が周囲に声を掛け連携を取って対応し始めている。

 

 

「待って下さい! まだ、南雲くんがっ」

 

 

 撤退を促すメルド団長に香織が猛抗議した。

 

 

「ダメだ! 撤退しながら、香織には負傷者達を治癒してもらわにゃならん!」

 

 

「でも!」

 

 

 なお、言い募る香織にメルド団長の怒鳴り声が叩きつけられる。

 

 

「あの坊主が何の為に残ったと思っている!思いを無駄にする気か!」

 

 

「ッ――!」

 

 

 メルド団長を含めて、メンバーの中で最大の攻撃力を持っているのは間違いなく光輝であるが、いかんせん彼は判断力が不足している。

 

 

それに気絶させた以上、戦力には入らない。

 

 

「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟」

 

 

 香織は泣きそうな顔で、それでもしっかりと詠唱を紡ぐ。淡い光がメルドと光輝を包む。体の傷と同時に魔力をも回復させる治癒魔法だ。

 

 

メルド団長は、香織の肩を強く掴み頷く。香織も頷き、もう一度、自分達の為に残ったハジメ達を振り返った。

 

 

そして、光輝を担いだメルド団長と、負傷し、疲労困憊な雫と龍太郎を担いだ騎士団員達と共に撤退を開始した。

 

 

 トラウムソルジャー達は依然増加を続けている。既にその数は軽く百体は超えているだろう。階段側へと続く橋すらをも埋め尽くしている。

 

 

だがある意味それで良いのだろう、所々隙間が空いていたのなら、無謀にも突貫した生徒が包囲され惨殺されていただろうから。

 

 

最初の時に、その所為で窮地に陥っていた生徒は結構な数がいたのだから。

 

 

それでも、未だ死人が出ていないのは、ひとえに騎士団員達のおかげだろう。彼等の必死の防衛が生徒達を生かしていたといっても過言ではない。

 

 

もっとも、既に彼等は満身創痍の状態だが。

 

 

 

もし騎士団員達のサポートが無くなれば、延々と増え続ける魔物にパニックを起こし、魔法を使わずに剣と槍を振り回す生徒がほとんどである以上、もう数分もすれば完全に瓦解するだろう。

 

 

 

 生徒達もそれをなんとなく悟っているからこそ表情には絶望が張り付いている。優花とアランの呼びかけで少ないながらも連携をとり奮戦していた者達も限界が近いようで泣きそうな表情だ。

 

 

 

 誰もがもうダメだ、何もかもお終いだ、そう思ったその時

 

 

「お前達何をやっている!訓練を思い出せ!さっさと陣形を作って連携をしろ!この馬鹿者共が!」

 

 

彼等の頼れる団長が強烈な一撃を敵敵に与え、次々と打ち倒していく。

 

 

メルドの頼もしい声に、気力が復活していく。

 

 

手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、香織の魔法の効果も加わっている。精神を鎮め、リラックスできる程度の魔法だが、メルド達の活躍と相まって効果は抜群だ。

 

 

治癒魔法に適性のある者達が負傷者達を癒していき、魔法適性の高い者達が後衛に下がり強力な魔法の詠唱を始める。

 

 

そして前衛の者達はメルドの指揮下で隊列を組み直し、倒すことより後衛の守備を重視し堅実な動きを心がける。

 

 

香織達の懸命な治癒が終わり、完全に傷が癒えた騎士団員達が守備に加わり、反撃の狼煙がここに上がった。

 

 

ハジメのクラスメイト達の強力な魔法と武技の波状攻撃が、敵に目掛けて次々と襲いかかっていく。

 

 

その攻撃は凄まじい速度で魔物達を殲滅していき、その速度は魔法陣による魔物の召喚速度を超えていた。

 

 

そして、遂に階段への道が開いた。

 

 

「全員私に続け!階段前を確保するんだ!」

 

 

 メルドが掛け声と同時に走り出し、香織の魔法で完全に回復した龍太郎と雫がそれに続いてトラウムソルジャー達の包囲網を次々と切り裂いていく。

 

 

 そうして、遂に全員が包囲網を突破した。背後で再び橋との通路をトラウムソルジャー達が密集して閉じようとするもの、そうはさせないと言わんばかりに騎士達が蹴散らす。

 

 

メルドや騎士達、クラスメイト達の猛攻で包囲網を崩し、安全の確保が出来た為に今の内に全員が撤退しようとした所で香織が待ったを掛けた。

 

 

それを聞いたクラスメイトが訝しそうな表情をする、それもそうだろう、目の前に階段があるのだ。

 

 

一刻も早く安全地帯に行って逃れたいと思うのは当然だ。

 

 

 

「皆、待って!南雲くん達を助けなきゃ!南雲くん達が3人であの怪物達を抑えてるの!」

 

いきなり変な事を言いだして後方を指差す香織に、クラスメイト達は何を言っているんだという顔をする、それもそうだ。彼等からしてみればハジメはハイリヒ王国に召喚された際に、居なかった人間なのだから。

 

 

この世界に存在する筈の無い人間の名前を出した香織に困惑するクラスメイト達だが、香織が指差す後方を見ると、そこには確かに3人の男達が赤いトラウムソルジャー達や橋にいるでかい魔物と戦闘をしていた。

 

 

「なんだよあいつら、何で銃なんか持ってるんだ...?それに変な武器持ってるし」

 

 

「南雲って...白崎さんは何言ってるんだ?あいつがここにいる訳ないだろ」

 

「あの3人の中に南雲くんがいるの?」

 

 

 次々と疑問の声を漏らす生徒達に優花が声を出した。

 

 

「あの中で紺色のジャケットを着てるのが南雲よ!白崎さんの言う通り!みんなであいつを助けに行こうよ!」

 

 

香織の言葉に優花が同調した、2人からしてみればハジメやその仲間達は命を助けてくれた恩人だ。彼女達からしてみれば騎士団員達やクラスメイト達の傷は治癒され、冷静さを取り戻した以上、助けに戻りたいのだ。

 

 

彼女達の主張を聞いたメルドは一瞬悩んでしまった、確かに彼等や部下の傷は治癒されて冷静さを取り戻した以上、ハジメ達の加勢に向かえば確実に助ける事は出来るかもしれない。

 

 

しかしメルドに取って気掛かりは橋にいるあの橋にいる魔物擬き(イレギュラー)と2人を囲む赤いトラウムソルジャー達だ。この2つは自分達が今まで討伐してきた魔物とは何かが違う、何か別の生き物の様な"不気味さ"感じるのだ。

 

 

更にメルドはハジメが自分に言った言葉を思い出す。

 

 

"戦闘が出来た所で連携が出来なきゃ意味が無いんですよ"

 

 

今でこそ彼等は冷静さを取り戻してはいる、然し下手に救援に向かえばイレギュラー達に命を脅かされ、再び混乱を招いて今度こそ死者を出すかもしれない。

 

 

メルドは彼女達の気持ちは理解しているし、本音を言えば助けに行ってやりたい、然し今のメルドは指揮官だ。命を預かる人間だからこそ冷徹とも言える命令を彼等に出す。

 

 

「...だめだ!我々は予定通り撤退する!前衛組!ソルジャーどもを寄せ付けるな!後衛組は遠距離魔法!治癒組は後衛の側にいろ!」

 

 

「そんな!」

 

 

「何で助けに行かないんですか!南雲くん達が...!」

 

 

「何度も言わせるな!!!」

メルドの命令に対し、あまりにも冷徹と感じた優花と香織が抗議するも、腹の底まで響く様な彼の怒鳴り声に2人は怯み、声を詰まらせてしまった。

 

 

「...すまない、2人とも...お前達の気持ちは理解している。だが私はお前達の命を預かっているんだ...今は耐えてくれ、頼む」

 

 

2人に怒鳴ってしまった事をメルドは謝罪し、あくまでも今は耐える様に諭した。2人は感情では助けに行きたかったが、状況を理解はしていた為、泣きそうな程顔を歪ませながらクラスメイト達の方へ向かった。

 

 

一方、ビリビリと腹の底まで響くような声に気を引き締め直す生徒達。近づくトラウムソルジャー達を仕留めながら階段を目指していく。

 

 

前衛組の中にいた檜山大介は自分の命が脅かされる恐怖を感じていた、檜山は直ぐにでもこの場から逃げ出したくて仕方ないが、メルドの命令がある以上下手に独断で動く事は出来ない。

 

 

が、香織に南雲ハジメが怪物達を抑えてると言われた時、ふと脳裏にとある情景が浮かび上がった。

 

 

それは自分達が召喚される前のあの学校の日常の出来事だ。

 

 

高校に入学した時に香織を一目見たその時からずっと檜山は彼女に好意を持っていた。しかし、学校の二大女神の1人である香織と自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような完璧な相手ならば住む世界が違うと諦める事が出来た。

 

 

しかしある時、二大女神の片割れでもある香織が光輝の様な完璧な男では無く、ハジメに明確な好意を持っていると知ってしまった時は頭の中が真っ白になってしまった。

 

 

自分より劣った存在である南雲が、ゲームばかりして寝坊をする様なキモオタが何故白崎香織に好意を持たれる?。それなら自分でもいいじゃないか、美しい女神である香織の隣にキモオタ風情が調子付くな。

 

 

と、檜山はそんな考えを本気で持っていた、だから彼は徒党を組んでハジメ個人を攻撃していたのだ。

 

 

ただでさえ溜まっていた場違いな不満は、憎悪にまで膨れ上がっていく。香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだ。

 

 

その時のことを思い出した檜山は、赤いトラウムソルジャー達と橋にいる魔物を抑えるハジメ達を見ながら、顔を泣きそうに歪ませながらも今も祈るようにハジメを案じる香織を視界に捉えた。

 

 

紺色のジャケットを着たのがハジメだと言った優花が言っていたのを聞いていた檜山はあの中でハジメを視界に捉えると、彼はほの暗く、歪みきった笑みを浮かべた。

 

 

 

 

その頃、ハジメはただひたすらに赤いトラウムソルジャー達をノコギリ鉈で切り刻み続けていた、距離を離しては鉈にして大振りで纏めて切り捨て、近づかれたらノコギリに戻して素早く切り刻む、これの繰り返しだ。

 

 

(斬り捨ては召喚されの繰り返しで疲れてくるな...これじゃまるで終わりの無いモグラ叩きだ)

 

 

大して傷は受けていないが疲労は感じている、チラリと後ろを見るとどうやら全員この場から撤退する最中の様であった。

 

 

「...まだ撤退出来てないのか」

 

 

それぞれが隊列を組み、前衛、後衛、回復に分かれている。後衛組が詠唱の準備に入っているのがわかる。先ほどと比べれば大分冷静さを取り戻した様だ。

 

 

「陣形は...さっきよりは大分マシか、あのメルドって人を行かせて正解だったな」

 

 

骸骨達は相変わらず仕掛けているが、この分なら無事に撤退が出来るだろう。彼自身クラスメイト達は嫌いではあるが死んで欲しいまでは思っていない。

 

 

ハジメがメルドに言った言葉は彼の中では本心の言葉だ、ハジメがヤーナムで様々な人間達を助け、教会に連れて顔見知りの間柄になった事があった。

 

 

教会にはいろんな人達が居た、嫌味ったらしい老婆、偏屈な男、医療教会の聖女、市街の娼婦、赤いローブの男。

 

 

自分に良くしてくれる者もいれば、自分の事をよそ者と嫌う者も居た。不快な思いもする事はあったが、狂った悪夢の世界に連れてこられたハジメからしてみれば獣じゃない人間なだけマシだった。

 

 

しかしそんな人間達もハジメがビルゲンワースで"ロマ"という上位者を狩り、月が赤く染まったその時をきっかけに彼等は狂った。

 

 

老婆は認知症の類を患わった言動をした末に死に、偏屈な男は話を聞かなくなり、聖女は狂って襲い掛かり、娼婦は悍ましい赤子を産んで発狂し、ローブの男はただ怯える様になった。

 

 

そんな経験をしたからこそハジメはこれ以上顔見知りに死なれたくは無かった。

 

 

 

「これじゃあ埒が明かないな...!こうなったら」

 

 

襲い掛かるトラウムソルジャー達の攻撃を躱しながらハジメは仕掛け武器のノコギリ鉈から大型の片手斧へと持ち替えた。

 

 

新たに持った武器はぱっと見はなんの変哲も無いただの斧に見えるが、これもノコギリ鉈と同じ様に仕掛け武器の類の物だ。

 

 

ハジメは早速斧の仕掛けを作動させる、すると斧の柄がガキンと音を立てて伸びていき、もはや斧槍と言っていいぐらいの大きさになった。

 

 

新たに持った仕掛け武器の名前は"獣狩りの斧"、斧としての特性を活かしたこの武器は仕掛けを作動し、変形させる事によってノコギリ鉈以上の状況対応能力を持つ。

 

 

「...はぁっ!」

 

 

全方位から攻撃を仕掛けてきた魔物達に対し、ハジメは一度身体を捻ってから直ぐにその場で回転する様に斧を振り回した。

 

 

すると魔物達はその身体を斧に砕かれながら吹き飛ばされる、彼の周囲にいた魔物は全て狩られた物の、まだ召喚される。

 

 

「ああくそったれ!これだけ仕留めてるのにまだ召喚されるのか!」

 

 

魔物達を仕留め続けて最早50は軽く超えている、だというのに直ぐに補充するかの様に召喚されていくその姿に毒づくハジメ。

 

 

ただでさえ魔物達は強く、その召喚者を未だに見つけられず、後方を見れば未だに撤退がされていない。

 

 

その3つの事にハジメはだんだん苛立ちが募っていく、しかし彼にトラブルが降りかかった。

 

 

GIAAAAAAAAAA!!!

 

 

聖職者の獣が甲高い獣声をあげながら突如ハジメとLANCELの元に乱入してくるかの様に跳躍して襲い掛かったのだ、いきなりの事で橋にいたヘンリックがこちらに向かって必死に走るのが見える。

 

 

そして獣と至近距離になったその瞬間にハジメにさらなるトラブルが降りかかる、階段の方から1発の火球が彼に向かって放たれ、それが直撃したのだ。

 

 

「がぁっ⁉︎」

 

 

(なっ、なんだ...!?)

 

 

火球に撃たれたハジメが体勢を崩す間際、階段の方へ目を向けた。階段にいる殆んどのクラスメイト達が恐怖に満ちた目で獣を見ており、次々と腕を前面へと突き出していく。

 

 

(あいつら僕を撃ちやがったな...!獣の餌にでもする気かよクソッタレ共め!ヤーナムの連中でも共闘相手を罠に嵌める奴は居なかったぞ!)

 

 

クラスメイト達の起こした行動にハジメは内心怒り狂っていた、魔物達との戦闘で混乱して間違えて撃ってしまったのならまだ理解はできる。

 

 

しかし今の彼等が仕掛けた行動は明らかに自分を狙っての攻撃だ、近場にいる魔物を攻撃せず、あからさまと言っていいぐらいに自分を狙って撃ったのだ。

 

 

そして自分を撃った瞬間にまるで予めに決めていたかの様に全員が手を向けて次々と魔法の弾が撃ち込まれてくる。

 

 

魔法弾は聖職者の獣を撃っているが、獣はビクともしていない。魔法は乱射するかの様に次々とトラウムソルジャーとハジメやLANCEL、

挙句にはヘンリックまでにも向かってくる。

 

 

「このっ...クソ野郎どもがぁっ!!!」

 

 

自分達に向けて魔法弾を撃ち込んだ彼等に怒りの声をあげながら、襲いかかるトラウムソルジャー達を斧で砕いていくハジメ。

 

 

しかし、その直後に聖職者の獣が甲高い獣声をあげながらその肥大した腕で殴りかかる。

 

 

「チッ!...っ⁉︎ぐぉっ!」

 

 

ハジメは間一髪で回避出来たものの、視界の外からのトラウムソルジャーの剣によって左腕部を斬り裂かれてしまった。

 

 

腕を斬り裂かれた痛みによってエヴェリンを落としてしまい、彼に窮地が訪れる。こんな事態を起こした階段の人間達を睨みながら見てみた

 

 

クラスメイトの殆んどが恐怖に染まった顔で魔法を乱射するかの様に撃っている、それを見たメルド達騎士団と一部のクラスメイトが止めさせようとしているが、彼等は聞きもしない。

 

 

恐らくではあるが、橋でヘンリックと戦闘していた聖職者の獣が跳躍していきなり近い距離で現れ、ただでさえ高まっていた恐怖心が檜山が放った一撃によって決壊しこの様な事態になってしまったのだろう。

 

 

もっとも、無数に飛び交う最中で戦っている彼からしてみれば、クラスメイト達の事情など知った事ではないが。

 

 

ハジメはトラウムソルジャー達の剣撃からなんとか逃れながら懐から血液の入った注射器を取り出す、そのまま注射器の先を太腿に突き刺すと親指で血液を体内へと押し出していく。

 

 

そして血液が全て彼の体内へと送られた次の瞬間、驚くべき事が起きた。トラウムソルジャーによって斬り裂かれ、骨まで見えていた左腕部の傷は一瞬で治癒されて元通りになったのだ。

 

 

まるで魔法にでも掛けられたかの様に。

 

 

しかし血液が治せたのはあくまでも傷であって、戦いの疲労までも回復はできない。再び斧を両手で持つと聖職者の獣と魔物達を視界に入れる。

 

 

(獣を視界に入れながらなおかつ骸骨達の相手をして、そして魔法も回避しなきゃならない、無理難題だなこれ)

 

聖職者の獣の様子を見てみると獣の顔は此方を向いており、再び襲いかかってきた。

 

 

GAAAAAAAAAAA!!!

 

 

獣の手をなんとか回避しながらハジメはヘンリックとLANCELの様子を見る、2人とも骸骨達の相手をしていたが、獣がハジメを狙っている事が分かった瞬間に助けに向かおうと此方に走ってくる。

 

 

(出来るだけ早く来てくれよ...)

 

 

獣と魔物、何方も相手をしながら戦闘していると、この場に響く様な男の声が、階段の方から聞こえて来た。

 

 

「南雲っ!!!避けろぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」

 

それはメルドの声だった、ハジメは声のした階段の方へ振り向いたその瞬間、光り輝く斬撃が階段から此方へ放たれた。

 

 

斬撃はトラウムソルジャー達を次々と巻き込んで斬り裂きながら、恐ろしい速さでハジメと聖職者の獣へと向かっていく。

 

 

「くっ!...があぁぁぁぁっっっ!?」

 

 

「坊やっ⁉︎」

 

 

ハジメはローリングで斬撃を回避したが、完全に避けきる事は出来ず、斬撃の余波を食らって壁へと吹き飛ばされた。斬撃の射線上に居なかったヘンリックとLANCELは幸いにも巻き込まれなかった様だ。

 

 

「が...!あ...っ...!」

 

 

壁にぶつけられたハジメは咳こみながらも状況を確認しようと起き上がろうとしたが、右手足からくる痛みによってそれは出来なかった。

 

 

彼の右手足は血に塗れていた、手は可笑しな方向に曲がって足に至っては骨すら見えてしまっている。

 

 

それでも左手で何とか身体を起こしてハジメは状況を見た、赤いトラウムソルジャーの殆んどが先程の斬撃で消滅している。

 

 

聖職者の獣は直撃を食らってしまったのか身体を大きく裂かれ、左手を失っていた。

 

 

ハジメは痛みに耐えながら首を階段の方へと向ける、そこには先程の斬撃を放ったであろう人物、天乃河光輝が何かを決意した面持ちでその剣の切っ先を聖職者の獣へと向けていた。

 

 




少々ヘンリックおじさんと連盟員お兄さんが空気になってしまいましたね、次話で必ず活躍させます。
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