ありふれた連盟の狩人   作:静岡万歳!

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ちょっと光輝ファンの方、メルドさんのファンの方、ヘンリックの解釈違いの方注意です。


うんざりな再会

2人は服を血塗れにしながら何層もある階段を登っていき、通路を道なりに進んで行くと出口らしき場所から光が差し込む。

 

 

 

ヘンリックとハジメはお互いに襲撃を警戒しながら武器を構え、ゆっくりと道を歩いて行くとやがて外に出た。

 

 

 

「何だここは...?」

 

 

「......」

 

 

外に出て目にした光景にヘンリックとハジメは圧巻と困惑が入り混じった瞳で辺りを見渡す、2人がそうなってしまうのも無理は無い。

 

 

ダンジョンらしき場所でいきなり目が醒め、合流して獣と戦い、妨害を受けながらも獣を狩って外に出たら

 

 

活気のある人々と屋台、そして受付の様な場所が存在するのだから、ハジメはともかく、ヘンリックまでもそうなってしまうのも仕方ないだろう。

 

 

 

「ヤーナムじゃあ...無い見たいですね、仮にここがヤーナムで、ヤーナム市民(やつら)にもああいう一面があったと思えば納得は出来なくは無いですが...そこら辺はどうなんです?」

 

 

ハジメは自身にとっても、ヘンリックにとっても分かりきった質問をする。質問をされた彼は鼻で笑ってからこう答えた。

 

 

「お前は余所者を忌み嫌って、"輸血された血を嗜む"様な連中が活気があるとでも言うのかい?」

 

 

彼はハジメの質問に対し、如何にもくだらないと言わんばかりの顔をする。

 

 

ヘンリックにでさえ此処まで酷く言われるのだ、ヤーナムの地に住む民衆がどんな人間達なのかは想像に難しくない。

 

 

彼から分かりきった答え聞いたハジメは問答を終わらせると、周囲を観察する。

 

 

(周りの状況からしてヤーナムでは無いのは分かる、あの陰気な連中がこんな活気のある場所なんか作る訳が無い)

 

 

(周りの連中の装備品も妙に古い...誰も"銃器"を持っていない、それにヤーナムとは雰囲気が違う...向こうが悪夢だとしたら、こっちはまるで"異世界"だな)

 

 

ハジメは周りの景色や建物、人間達の服や装備品から、ここがヤーナムとは違う世界だと理解した。

 

 

「ハジメくん!!!」

 

 

そんなハジメに、元の世界で嫌になるぐらい聞いた白崎香織(厄介な女)の声が掛かった、声のした方へ振り向くとそこにはクラスメイト達と甲冑を着た男達が居た。

 

 

「香織!綾子!すぐ2人に治癒魔法を!」

 

 

「「はいっ!」」

 

 

メルドが焦った様子で香織と辻綾子に指示を出し、出された彼女達も心配と驚愕が混じった様子で2人に駆け寄ろうとする。

 

 

「...なるほど、どうやら彼等は私達が重傷を負ったと勘違いしているらしい」

 

 

ヘンリックはメルド達が何故あんなにも焦りの表情を浮かべるのか最初は分からなかったが、今の自分達の状態を見て納得した。

 

 

彼もハジメも、お互い狩った聖職者の獣の血と臓物に塗れていたのだ。

 

 

ヤーナムの狩人である2人は慣れきっていたから分からなかったが、ヤーナムを知らぬ彼等からしてみれば、血に塗れてしまう程の重傷を負ってしまったとも取れる。

 

 

「......」

 

 

「坊や、お前があの少年達を睨む理由は分かるが今は抑えろ、下手に仕掛けてしまったら後が面倒だ」

 

 

「ええ、分かってますよ...」

 

 

クラスメイト達を嫌悪感の篭った目で見るハジメに対し、ヘンリックは小声で忠告する。

 

 

忠告に大人しくハジメ従い、彼とヘンリックはそのまま此方に到着した2人の治癒魔法を受ける事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...これで終わりです、大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫だよお嬢さん...君こそ大丈夫かい?酷い臭いだろう」

 

 

「い、いえ大丈夫です!」

 

 

(嘘....この人、これだけ血塗れなのに傷が全くなかった...疲労は治せたけど、まさかこの血って全部返り血なの...!?)

 

 

綾子はヘンリックの治癒を担当し、彼が身体に一切傷を負っていない事に驚愕していた。

 

 

自分達の教官でもあり、兄貴分であるメルドやリーダー格で最も強い光輝ですら治癒魔法を掛けなければならない程の傷を負ったというのに、自分が治癒魔法を掛けた男にはそんな傷は見当たらなかった。

 

 

逃げ回っていた、という言葉を脳内に浮かべたがそんな言葉は直ぐにかき消される。何故なら逃げる理由など無いし、寧ろ彼は率先してあの"山羊頭の魔物"と戦う姿を綾子自身が見ていたからだ。

 

 

(強いんだ...この人...)

 

 

そんなヘンリックに綾子は何処か打ちのめされた様な気分になる、いきなり異世界に召喚されて困惑こそしていたがカリスマのある光輝が戦争に参加する表明を出し

 

 

そんな彼の中のカリスマと正義感に酔った"子供の自分達"も彼と共に戦争の参加に決意した、唯一の大人であり教師でもある"畑山愛子"の反対を無視して。

 

 

そして特別な力を与えられ、万能感に酔いしれ、メルド達に褒められ、意気揚々と迷宮に向かった結果がこのザマだ。

 

 

「あっ、あの...」

 

 

「なにかな?」

 

 

そんな気分になっている綾子だったが、それでもヘンリックにとある言葉を伝えようとする。

 

 

「ありがとう、ございます...私達を助けてくれて、それと攻撃に巻き込んで申し訳ありませんでした」

 

 

いきなり頭を下げた綾子から礼と謝罪の言葉を受けたヘンリックは一瞬だけ目を丸くしたが、直ぐに元に戻してこう返す。

 

 

「礼に及ばんよ、私も君たちの様な若い少年少女が死ぬのは見るに堪えないからね、ただ謝罪と礼を言うのだったらあの坊やにも言ってやってほしい」

 

 

ヘンリックは綾子にそう返すとハジメの方に首を向ける。

 

 

「あの坊や...南雲の事ですか?」

 

 

「そうだ、指示をしたとはいえあの坊やも君たちを助けに軽装で向かったからね、是非とも謝罪と礼を言ってやってくれ」

 

 

綾子の今の胸中を言葉で表すと"驚愕"その物だ、地球でのハジメは何時も時間ギリギリに来て、"心配してくれる香織"や"注意する光輝"に対してだらしなくて不真面目なクラスメイトと言う認識だった。

 

 

それに加えて昼間の教室で香織を怯えさせた最低な男でもあった、しかし今は違う。今の綾子がハジメに向ける感情は畏怖に近い感情だ。

 

 

光輝が致命傷を与えたとはいえ自分達が撤退せざるを得なかった山羊頭の魔物と大量の骸骨達に対し、ハジメ達は"3人"で残り、そして魔物を仕留めて帰って来たのだから。

 

 

(3人...?)

 

 

そこで綾子は引っかかった、迷宮内ではハジメ達は"3人"だったと言うのに、今この場ではハジメと目の前にいるヘンリックの2人しかいない。

 

 

「さてと、疲労感も治まったから失礼するよ、私はこれからあの...メルドという人と話をしてくるからね、治療をありがとうお嬢さん」

 

 

「あ、あのっ!」

 

 

ヘンリックが礼を言ってメルドの方へ向かおうとした所を綾子は呼び止める。

 

 

 

「おや、今度は何かな?」

 

 

「あの...もう1人の...甲冑の人はどうしたんですか?」

 

 

綾子は声を震わせながら甲冑の人、LANCELの事を尋ねる。どうか無事でいて欲しい、内心そう願いながら。

 

 

そんな綾子を見たヘンリックは一瞬悩む素振りを彼女に見せた後、こう答えた。

 

 

「彼なら喰われて死んだよ、残念な事だがね...中々に勇敢な男だった」

 

 

ヘンリックの答えに綾子は固まってしまった、"死んだ"知り合いでも無かった自分達の代わりに戦った甲冑の男は、あの魔物に喰われて死んだ。

 

 

その事実に綾子は何も言うことも、動く事も出来なくなってしまった。そんな綾子を見たヘンリックは彼女に「冥福を祈ってやってくれ」と言うとそのままメルドの方向かった。

 

 

(すまないねお嬢さん...そして悪いな、連盟員よ)

 

 

ヘンリックは先程、"甲胄の男"LANCELは喰われて死んだと綾子に言ったがあれは嘘だ、実際は違う。

 

 

本当のLANCELは聖職者の獣を狩った後、足早に狩りの邪魔をした"君たち"を殺しに向かおうとした。

 

 

事実をそのまま伝えれば余計な混乱と動揺が拡がりかねない、だから彼女に嘘を教えたのだ、それが傷付く事だとしても。

 

 

そしてヘンリックとメルドが合流し、話し合いを始める一方、ハジメと香織達の方では言い争いが起きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言い争いはハジメと香織を中心に、まるで紛争地帯の様に起きていた

 

 

「説明しろ南雲!何故お前だけが銃を持っているんだ!あの人は誰なんだ!答えろ!」

 

 

「ちょっと光輝くん!南雲君は血塗れで今治療してる最中なんだよ⁉︎今聞かなくたっていいでしょ!」

 

 

「香織は黙っててくれ!南雲は銃という危険な物や可笑しな武器を持っているんだ!先ずはそれを取り上げてから」

 

 

「取り上げるって何...?天之河!先ずは南雲の治療をしてから謝罪と礼を言うのが先でしょうが!仮にも私達を助けた人間に対して言う言葉がソレ⁉︎」

 

 

「な、なんで園部さんが出てくるんだ...?南雲!園部さんに何かしたのか⁉︎」

 

 

「ハァ⁉︎南雲があたしにどうやって何かするって言うのよ!」

 

 

(はぁ...またか...)

 

 

血塗れで香織から治癒魔法を受けているハジメは、内心かなりうんざりしていた。

 

 

血塗れなだけで傷はもう治ったと言うのに聞かずに無理矢理寝かせて魔法を掛ける香織。

 

攻撃に巻き込んだ事を知ってか知らずか、礼の言葉も無ければ謝罪の言葉も無く、ただ問い詰めてくる光輝。

 

そんな光輝に憤慨して食ってかかる優花。

 

光輝に便乗して罵声混じりに参加してくる檜山達(小物共)

 

 

まるで召喚される前の再現とも言っていい光景にはさすがのハジメもうんざりしてくる、そんな時だった。

 

 

「光輝達も園部さんも、檜山くん達も一旦落ち着いて!」

 

 

救世主か否か、八重樫雫(まとめ役)が介入してきた。雫の介入には檜山達もさすがにこれ以上言えなくなり。

 

 

光輝と香織は説得で抑えられ、優花だけは唯一不満げではあったが友人の宮崎奈々と菅原妙子に半ば引きづられる様に下がった。

 

 

「...ごめんなさいね、南雲くん、光輝も悪気は無くて...」

 

「ああ、助かったよ八重樫さん、悪気が無いなら"仕方ない"さ」

 

 

(悪気は無いなら"誤射"も許されるのかい?)

 

 

"悪気は無い"その言葉を彼女から聞いたハジメは呆れの視線を彼女に送りながら、内心皮肉を吐く。

 

 

何故それを言わないか?言えばまた言葉の紛争が始まるからだ。

 

 

「...傷はもう治ったみたいだから、もう良いよ白崎さん」

 

「え、でっ、でも...」

 

「傷ならもうとっくのとうに治ったからさ、それにこれ以上近くに居たら血の臭いが君にも付くし」

 

 

ハジメは香織に礼を言って離れようとしたが、彼女はそれでも離れようとしなかった為、ハジメは言葉巧みに香織を説得し、雫のフォローもあって離れる事が出来た。

 

 

そして今にも何か言いたげな光輝に向き合うと、彼に話しかける。

 

 

「君には僕を攻撃に巻き込んだ事について、色々と言いたい事はあるけど先ずは礼を言っておこうか」

 

「れ、礼?」

 

 

ハジメが礼と言い出すと光輝は困惑した顔になる。

 

 

「ああ、君の攻撃で僕の片手足はグチャグチャになったけど"アレ"に決定打を与えてはくれたからね」

 

 

「それで巻き込んだ事にはチャラにしてあげるよ、それで次君達が僕に魔法を撃ち込んだ事についてだけど...」

 

 

ハジメが次に言葉を続けようとしたその瞬間。

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」

 

 

光輝が待ったを掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誤射をした...?一体何を言ってるんだ!クラスのみんなが何でお前を撃つ必要がある!出鱈目を言うな!」

 

 

「実際に撃たれたんだから言ってるんだろ?あの時、獣が石橋から岸まで一気に来た時に、君達の中にいる"クソ野郎"が僕に撃ってきたんだよ」

 

 

ハジメはそう言ってクラスメイト達を鋭い目で見ると、その中の殆どが後ろめたさからか、それとも心当たりがあるからなのか目を逸らす。

 

 

もっとも、彼等の中の後ろめたさと心当たりは主に混乱して乱射した事だろうが。

 

 

「君達の中の誰かさんのおかげで僕が使ってる銃もこんなザマさ」

 

 

腰に引っ掛けていたエヴェリンを取って、その無惨な姿を見せると彼等の目に動揺が写る。

 

「この際だ、混乱して"僕ら"を撃った事には目を瞑るよ。その代わり、僕に魔法を撃ち混んだ奴に是非とも出てきてほしい」

 

 

「"狩りの妨害した挙句に銃を壊してくれた"お礼をたっぷりしてやるからさ...」

 

 

平静を保ちながら淡々と、そして言葉の中に怒りを感じさせながらハジメはクラスメイト達を鋭い目で睨み付ける。

 

 

彼に睨まれたクラスメイト達は蛇に睨まれた蛙の様に硬直し、萎縮してしまった。

 

 

本来の彼等なら"ハジメ程度"に睨まれた所で、その高い能力と自信で鼻で笑えただろうが、恐怖で混乱し、戦いから撤退した以上言い返す事も睨み返す事も出来ない。

 

 

「な、なぁ南雲...」

 

 

「なにかな?遠藤くん」

 

 

そんな中からクラス一影が薄いと言われている男子、遠藤浩介がハジメに話しかけてくる。

 

 

浩介が話しかけた瞬間、「居たのか遠藤」や「いつからいたの⁉︎」という声が出て浩介が涙目になるが、その直後に「コントをするな」とハジメが冷たく言い放つと直ぐに終わる。

 

 

そんなハジメに浩介は感謝の目で見るが、猛禽類の様な鋭い目で見返されて顔を俯かせてから彼は再び話しかける。

 

 

「南雲...お前、身長そんなに高かったか?」

 

「...は?」

 

 

いきなり突拍子でもない事を言い出した浩介にハジメは鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をした。

 

 

そしてクラスメイト達と自分の身体を見比べて呟く。

 

 

「伸びてる...」

 

 

元の世界でのハジメの身長はお世辞にも高いとは言えなかった、香織よりちょっと高いか、それぐらいだ。

 

 

しかし今の自分の身長は高くなっている、浩介に言われるまで気付かなかったが、今の身長は光輝と同じぐらいだ。

 

 

「おい南雲...何でお前だけが身長が伸びてるんだ?まさかあの獣と何か関係があるんじゃないのか?」

 

光輝がハジメに疑いの目を向けると、クラスメイト達はそれに釣られる様に疑いの目を向けだした。それを見た雫が光輝を説得し、香織、優花が庇おうとしてまた言い争いが起きだした。

 

 

(こいつ妙な所で、勘が鋭いな...それにしても"こいつら天之河くんが言い出した瞬間"に直ぐこうなったな、先導役が居なきゃ碌に思考も出来ないらしい)

 

 

ハジメは軽蔑の目で言い争いを起こすクラスメイト達を見ていると、メルド率いる騎士団とヘンリックがこちらの方へ歩いて来た。

 

 

「みっともない真似は辞めろお前達!一先ず我々はそこにいる"使徒"南雲ハジメとヘンリック殿と共に城へと帰還する!直ぐに準備をしろ」

 

 

兄貴分であり、教官でもある彼の一声に光輝達はがそれを聞いて準備を始め出す。

 

 

「ああ、少し待ってくれないか」

 

 

そんな時にヘンリックが声を出すと準備は一旦止まり、彼は全員から注目される。

 

 

「如何されましたか?ヘンリック殿」

 

 

メルドがヘンリックに話し掛けるが、彼はメルドを手で制すると光輝達に目を向け話し掛ける。

 

 

「あの時、迷宮内の戦いの際に山羊頭の魔物に大きな一撃を与えた者がいるだろう?誰なのかね?」

 

「はい!」

 

 

ヘンリックの呼びかけに光輝は元気良く手を上げて返事をする。

 

 

「ほう...君か、すまないが名前を聞いてもいいかな?」

 

「天之河 光輝といいます」

 

 

ヘンリックは光輝に近づき、彼の眼を見た。光輝の目は輝きに満ちている、美しく、それこそ穢がれなど知らぬかの様に。

 

 

「甲冑を着る前は何をしていたんだ?」

 

「学生をしていました!」

 

「学生?そうか......」

 

 

光輝が学生だったと知り、ヘンリックは光輝以外の少年少女達を見る。

 

 

(坊や含めて、元々皆戦いとは無縁の場所に居たかのか...)

 

 

彼等を見てから今度はメルド達を見る。

 

 

(よくもまぁ...こんな子供達に武器など握らせる物だな)

 

(メルド・ロギンスは世界の危機で召喚したと言って居たが、こんな子供に自分達の危機を解決させようとするとはなぁ...この世界の連中は自分のケツも碌に拭えんらしいな)

 

ヘンリックはメルド達に呆れの視線を送ってから、そして再び光輝に向き直る。

 

 

「アマノガワと言ったな...君のその"戦い方"は誰に習ったのかね?」

 

「はい!メルドさんに習いました!」

 

 

光輝は自信たっぷりにそして胸を張ってそう答えた、そんな彼の返答に対し、ヘンリックはメルドの方を振り返り一瞥してから光輝にこう言い放った。

 

 

「そうか、君に"その様な戦い方"を教えたメルド団長は実に"優秀な"教官の様だ」

 

「彼も"君の様な"教え子を持ててきっと幸せだろう、これからも精進したまえよアマノガワくん」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

ヘンリックに褒められた光輝は、ハジメに詰め寄って居た時とは打って変わって子が親に褒められた時の様な顔をして彼に頭を下げる。

 

 

それを見た殆どのクラスメイト達は、自分達の"カリスマ"のあるリーダーが賞賛された事で気を良くしているようだ。

 

 

しかし中には雫や綾子、香織と優花、教え子を褒めらたメルドや騎士団員の様に、浮かない顔をする者も居る。

 

 

その者達だけは先程ヘンリックが言った言葉が賞賛では無く、"皮肉"だという事を理解していた。

 

 

その中で特に皮肉を痛感していたのはメルドと雫だった、メルドは光輝の攻撃で巻き込ませた挙句に混乱した彼等を上手く鎮めれず、撤退に時間を掛けてしまった事。

 

 

そして雫は同門の弟子でもあり、幼馴染でもある光輝を抑制に時間が掛かった結果、助けて貰ったとは言え赤の他人に此処まで言われてしまう程の暴挙をさせてしまった事だ。

 

 

(すまないなメルド・ロギンス、先程話してから君が出来た人間だと言うことは良く理解している)

 

(しかし"連盟の同志"をその剣で傷付けておきながら、あの"物言い"には我慢が出来なかったのだよ...許せ)

 

 

ヘンリックが賞賛の様な皮肉を吐いたのは若いとは言え、同じ志を持った同志であるハジメへのあの物言いに怒りを抱いたからだ。

 

 

側から見ればヘンリックの行動は大人げないが、しかし仮にも仲間を助けて貰って、攻撃に巻き込んだ事への謝罪も無ければ礼も無し。

 

 

そしでやる事と言えばただ問い詰める、こんな物、ヤーナムの狩人であろうがなかろうが、誰だって反感や怒りは抱くでろう。

 

 

本来ならメルドが皮肉を謂れる覚えはないかも知れない、しかし子が起こした問題に親が責を問われる様に、教え子が問題を起こせばその責は師である彼にも向かうのだ。

 

 

「さてと、私とそこの坊やは城へと招待されるのだったかな?」

 

 

「あっ、ああ!是非連れて行こう!南雲ハジメが使徒である確認もしなければならないしな!」

 

 

ヘンリックがメルドにそう言うと再び彼は指示を出してからヘンリックとハジメを含めた全員を連れ、それぞれ分かれて馬車に乗り込むとオルクス大迷宮を去っていった。

 

 

馬車に乗る際、香織がハジメとヘンリックが乗る馬車に自分もとゴネたが雫に無理矢理連れてかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、馬車にて

 

 

「なるほど、それが連中の事情って訳ですか...」

 

ハジメはヘンリックから話を聞いていた。彼がメルドと話しをした際、光輝達が召喚された理由、そしてこの世界の情勢や存在する人種と辿った歴史等だ。

 

 

「日常生活を送っていたら世界の危機だから召喚して、強い能力を与えて自分達の代わりに戦ってくださいか...ハッ!随分とまぁ情けない連中ですね、その癖自分達で何とかしようとせずに偉そうにご高説垂れて子供にやらせる訳ですか..."ふざけた奴ら"だ」

 

 

ハジメは光輝達を召喚した"エヒト"という神、そして召喚されたハイリヒ王国を侮辱する。

 

 

「此処で言うんじゃない...御者に聞かれたら面倒だぞ、まぁふざけた連中には違いないが」

 

 

ヘンリックは侮辱をしたハジメを制すが、一部に同意する。彼も今回の言葉思う事がある様だ。

 

 

「そういえば坊や、お前はアマノガワくん達が参加した理由を聞いたかね。

 

「いいえまったく、聞く前に論争が起きましたからね...まぁ彼の性格上、正義感の類の理由で参加したでしょうよ」

 

「正義感?」

 

 

ハジメから正義感と言う言葉を聞いて訝しげな顔をするヘンリック、そんな彼にハジメは光輝の性格を話す。

 

 

「彼は良くも悪くも...とても正義感の強い人間でしてね、悪事を働く人間や困ってる人間が居れば見過ごさずに介入して問題を解決するんですよ」

 

「それだけ聞けば正義感が人一倍強い善人の様に聞こえるが?」

 

「善人?とんでもない!あれは正義感にトチ狂った傲慢な人間ですよ、思い込みが強い上に気に入らない人間の言葉なんかまるで聞きやしないその癖、気に入らない人間が被害を受けても耳なんか碌に傾けやしない」

 

「彼を言葉で表すなら、"不平等な正義"の味方だ」

 

 

ハジメは言葉の中に嫌悪感を混じらせてヘンリックに光輝の性格を語る、ハジメが言った内容は学校生活で受けた部分や、日常生活で目にした光輝の行動を目にして感じた事だ。

 

「なんともまぁ...厄介な性格をしている」

 

 

光輝の性格を聞いたヘンリックは苦笑した、彼もヤーナムで生活をしていて良くも悪くも光輝の様な人間と会う機会は殆ど無かったのだ。

 

 

「ええ..."本当に厄介ですよ"」

 

 

ハジメはため息を吐いて心底うんざりした顔をする。

 

 

(坊やも何かしら"やられた"クチか)

 

 

ヘンリックは心中でハジメの不幸を察する。

 

 

そして2人は馬車に揺られながら運ばれて行くと、やがて目的地である"ハイリヒ王国"へと着き、メルド達騎士団と光輝達、そしてハジメとヘンリックはハイリヒ王の待つ王城へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぃっ、ひぃっ、ひぃっ」

 

 

森の中をカーキ色の軍服らしき服を着た男がボロボロになりながらも、丸腰で息を切らしながら必死に走っている。

 

 

「な、何だってんだあの化け物野郎は...っ!こっちは小隊規模だったってのに俺以外をああも簡単に...!」

 

 

どうやら男は軍人の様だが、他は彼以外全員が死んだらしい。そして男は森の中で偶然見つけた人が入れるぐらいの空洞がある木を見つけるとそこに隠れる。

 

 

「はぁ...はぁ...クソッ!なんとかして軍に伝えねぇと..."奴"の事を伝えて懸賞金を掛けるんだ、いくら奴でも"ヘルシャー帝国"のギルドや大隊クラスの戦力をぶつけ...⁉︎」

 

 

男はそこから言葉を続ける事が出来なかった、男の目の前にその"奴"が現れてしまったのだ。

 

 

「あ、ああ...」

 

 

男は言葉を出そうにも上手く出す事が出来ない、罵声も命乞いも出す事が碌に出来ず、彼は"奴"の刀剣によって木ごと首を切り捨てられた。

 

 

「......」

 

 

軍人の男を切り捨てると、刀剣に纏った血を払う。然し"鴉羽の付いた外套"と"覗き目の無い兜"にはかなりの量が付いてしまっている。

 

 

だがそんな事を気にする素振りを見せず、血を振り払った刀剣を鞘に納めるとそのまま何処へと去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




タグにSEKIROと書いておいて、SEKIRO要素が未だにない件...そろそろ出したい。
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