ありふれた連盟の狩人   作:静岡万歳!

9 / 10
三ヶ月以上も更新せず大変申し訳ありませんでした



言い訳になりますが、コロナと緊急事態宣言に仕事が右往左往されたりされなかったりの繰り返しでリアルが少しキツイ状態に陥っていましたが、最近マシになってきましたのでやっと次話が投稿出来ました。



文字数も少々長めになりましたが、是非どうぞよろしくお願いします。



後今回オリキャラが登場します。


溝と問題

「な、南雲くーんッ!貴方も来ていたんですねッ⁉︎」

 

 

「ええ、まぁ......」

 

 

王宮でハジメは愛子と会って話をしていた、彼女の話を聞くにあの後ハジメが居なくなった後に突然教室が光り出し、気が付けば神殿の様な場所に召喚され、王宮に招待されてそのまま戦争に参加させられてしまったとの事らしい。

 

 

「うぅ、わたしは......わたしは不甲斐ない教師失格の女です......ッ!戦争の参加を絶対に止めさせるべきだったのに......」

 

 

「そうですか」

 

 

(あいつら畑山先生の言う事無視してあの様かよ)

 

 

愛子が言うには戦争に真っ先に参加を表明したのは光輝でその後に雫、龍太郎と香織が参加を表明していきそれに釣られる形で残ったクラスメイト達も参加した様だ。

 

 

「それにしても誰かしら異を唱える人は居なかったんですかね?戦争に参加するんですから自分の命が惜しい人ぐらいは居てもおかしくは無いと思いますが」

 

 

「......多分、内心は居たんだとは思いますけどそれを言う勇気は出なかったと思います、ただでさえ天之河君が主導してそれに異を唱えたとしたら、最悪吊るされる事も覚悟しなきゃいけないでしょうから」

 

 

 

「それに、日本とは法も成り立ちも何もかも違うこの国で反対なんかしたらそれこそどんな目に合わせられるか......」

 

 

愛子の言葉にハジメは納得した、異を唱え様とした者達は日本人特有の"同調圧力"に気圧されて何も言う事が出来なかった。その点に関してはハジメも彼等に同情はした。

 

 

(まぁそりゃそうか、誘拐同然で転移させられて、戦闘を強要されて拒否すれば最悪見せしめで誰か殺されかねないしな。それに反対かましたら最悪"僕"みたいな目に遭わせられるかもしれないし)

 

 

「それにしてもよくもまぁ天之河くんは即決で決められましたよね、彼はメサイアコンプレックスか何かなんですか?いくら助けを求められたからって戦争に参加するとなれば普通、八重樫さん達や先生、クラスで相談ぐらいはすると思うんですけど」

 

 

 

「相談自体されなかったですよ.......みんな何故か乗り気になっていましたし、私が彼らに抗議してる時も危機感も無しにほんわかしてましたよぉ......」

 

 

「えぇ......」

 

 

愛子はどんよりした顔で溜め息を大きく吐き、それを聞いたハジメは心底困惑した様な、呆れた様な顔が混じった反応だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメは今現在クラスメート達と共に座学を受けている、内容は宗教やエヒト神の"素晴らしさ"や亜人族や魔人族が如何に野蛮で下劣な存在かだ。

 

 

 

クラスの殆ど、特に光輝は大真面目にノートを取る様に筆で紙に書いており、反対にハジメは必要と思われる箇所だけ書いて後は紙の隅に適当な落書きを描いていた。

 

 

(野蛮な魔人族と亜人族ねぇ......これじゃあ座学っていうよりは"洗脳"だな、それに異教徒には容赦しないとか実に中世らしい国だなぁハイリヒ王国は)

 

 

ハジメは呆れた顔で片肘を付きながら座学を聞いていると、そんなハジメの態度が気に食わなかったのか座学を担当している男、ゼルマン・ベネトが彼に指を指す。

 

 

「南雲ハジメッ!座学を真面目に聞くつもりが無いのであれば部屋を出て行け!他の使徒様達は真面目に聞いているというのに不真面目な態度を取るなんて恥ずかしいと思わないのかッ!"ステータス"の低い出来損ないめ!」

 

 

ゼルマンは顔に青筋を立てている辺り余程ハジメの態度......というより個人が気に食わないらしい、クラスの全員がハジメに視線を向ける

 

 

彼が気に食わないというのもある意味当然でもあった、召喚されたエヒト神の使徒達の最後の1人であり、自分達を期待させておきながら箱を開けてみればステータスは最低クラス。

 

 

おまけに天職は用途が不明な物と戦闘向きでは無い生産職、そんなステータスも低ければ天職も最低レベルの男が偶々側にいた黄衣の男と共に特別扱いを受けている。

 

 

そんなハジメが気に食わなかったからこそ彼はこの座学で半ば晒し者にするかのか様に指名し、高圧的な態度で接した。

 

 

(ふんッ!こんな気も弱そうな男など所詮あの黄衣の男が側に居なければ何も出来ないに決まっている!どうせ泣きながら私に許しを乞うのだろうよ)

 

 

ゼルマンは内心ハジメを嘲笑し、見下していた。そして早く彼が泣き出して恥を晒す瞬間をいまかいまかと待ちわびている。

 

 

しかしハジメは泣きだすどころか怒りの表情をゼルマンに向ける事もしない、彼は日本古来からある能面の様な無表情でゼルマンを見つめる

と、やがて口を開いた。

 

 

「恥ずかしいと思わないのか?その言葉そのまま貴方......と、ハイリヒ王国にお返ししますよ」

 

 

「そちらこそ、異世界から僕らを誘拐して戦闘を強要させてる挙句に自分達は血も碌に流そうとしないで高みの見物を決め込むなんて恥ずかしいと思わないんですか?」

 

 

「それと僕の扱いが気に食わないなら国王陛下とイシュタル猊下に直談判でもなされたら如何です?まぁそれが出来ないからこんな小物じみた事をしてるんでしょうけど」

 

 

無表情で淡々としながらも、ゼルマンとハイリヒ王国を侮辱するハジメ。彼のあまりにも過激な言動に侮辱されたゼルマンは茹でられたタコの様に顔を真っ赤に染める。

 

 

「南雲ッ!今直ぐゼルマンさんに謝れ!ゼルマンさんは魔人族の危険さを俺たちに親切丁寧に教えてるんだぞ!」

 

 

「天之河の言う通りだぜ!南雲ぉ、授業を邪魔すんならさっさと出ろよ、俺たちは"真面目"に授業を受けてるんだからさぁ。みんなも授業を邪魔する南雲には出てってほしいよなぁ?」

 

 

そんな時に光輝が"授業の妨害"をするハジメを糾弾する様に立って睨み付け、それに便乗する様に檜山が立ってヘラヘラした顔で光輝を援護する。

 

 

 

光輝に便乗する檜山を見てハジメは"虎の威を借る狐"という言葉を思い出して彼を鼻で笑うと、檜山もハジメに侮辱されたという事を本能で感じたのかゼルマンと同じ顔をする。

 

 

そしてクラスメート達はハジメが気に食わない者は檜山に同調し、そうでない者達はこの状況をどうすればいいかオロオロしている。

 

 

 

この雰囲気の中、雫がため息を吐きながら全員を諌めようと立ち上がったその瞬間

 

 

「もうよい!南雲ハジメ!今ので貴様は私の講義を受けるのに値しないと判断した!即刻この部屋から出て行け!」

 

 

顔を茹でタコの様に真っ赤に染めて怒り狂った様子でゼルマンはハジメに退去を命じた。

 

 

その言動にそうだそうだと言わんばかりの顔をする光輝、そして檜山を筆頭とした反ハジメ派は出て行けとコールし始める。

 

 

そんな彼らに対し、雫が異を唱えようとしたその時

 

 

「待ってくださいゼルマンさん、南雲くんは「わかりました!ゼルマン"先生"!」えっ?」

 

 

「不肖ながらこの南雲ハジメ、我らが偉大なるゼルマン・ベネト先生のお言葉通り、下賎な私の様な人間が貴方の講義を受けるに値しないと

私自身もそう思っていましたので即刻退出して自習させていただきます。それでは!」

 

 

 

ハジメは言葉を丁寧に、そして口調は侮辱の限りを尽くす様な喋り方でそう言うと、手荷物を持って即刻出て行った。

 

 

 

出る間際に香織や雫が引き止める様な事を言っていた気がしたが、彼はそれをガン無視して上機嫌に部屋を後にした。

 

 

 

そして部屋にはゼルマンの怒鳴り声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、それじゃあ始めますか」

 

 

 

ゼルマンの講義から退出したハジメは今王城の図書室へ来ている、目的は先程言ったとおり、自習だ。

 

 

 

「や〜っと1人で伸び伸びできるなぁ......ここなら口煩く言われないし、"ストーカー"も来ないから最高だなぁ」

 

 

 

ハジメはそう1人呟くと持ってきた本のページを開いていく、ページには魔物の絵と特徴、そして弱点が書かれている。

 

 

 

彼が持ってきたのは図鑑の様だ、著者の名前は書かれていなかったが、ハイリヒ騎士団の紋章が描かれていた事から騎士団の誰かが書いた物かと思われる。

 

 

 

「誰かは知らないけど、これを描いてくれた騎士には感謝しないとな」

 

 

 

彼はこの本を描いた人間に只々感謝していた、ヤーナムでは獣や上位者の弱点や特徴を描いた本など無く、全部身体で覚える他なかった。

 

 

 

ならばゲールマンに助言して貰えばいいとの意見もあるが、そういう時に限ってあの車椅子の老人は何処かに消えるし、戦いを知らない人形に聞くのも論外だ。

 

 

 

そしてなにより、図鑑を開いて弱点や特徴を調べるのは此処がヤーナムの様に死んでも夢に帰れるとは思えないからだ。

 

 

 

トータスに来てからは、狩人としての力は確かに使えるが、だからと言って向こうと同じだと思えない。下手をすればかつて始末した狩人達同じ様に死んで終わりのパターンもあり得る。

 

 

 

だから、この図書室へと来た訳だ。因みに自習という形で来たのは心象を良くする狙いもある。

 

 

 

 

そうして魔物の情報のページを捲っては書き写してを繰り返す最中、ハジメはある魔物のページを開き、そこで手を止めた。

 

 

 

「こいつは......?」

 

 

 

ページには人間の首から大きな"百足"が這い出ている絵が描かれていた。

 

 

 

魔物の名称は"パラズィート"、直訳すれば寄生虫だ。

 

 

 

パラズィートと書かれていた魔物の見た目に彼は既視感を覚えていた、それはヤーナムの禁域の森で相対した"蛇"に寄生された者達だ。

 

 

 

彼等も寄生されていたが、パラズィートととは違い、頭そのものが破裂して蛇に乗っ取られている様だった。

 

 

 

ハジメはパラズィートの特徴や弱点の部分に目を向けるとそこにはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

"パラズィートは如何なる攻撃や魔法を持ってしても討伐が不可能である。自己再生も持っているのか、与えた傷は直ぐに回復されてしまい消耗するだけの不利な戦いを強いられるだろう"

 

 

 

 

"パラズィートの姿を確認した際は即座に撤退か、もしくは錬成師および魔術師の協力の元、何重にも拘束し、迷宮で遭遇した際は奥深くへと叩き落すこと。

 

 

 

 

「......成る程、殺しきる事が出来ない訳か。これは厄介だな.....」

 

 

ハジメはそう呟くとパラズィートの資料を書き写す。

 

 

 

(まさか召喚されたのもこいつらを殺せってのもあるんじゃないだろうな?)

 

 

 

彼は一瞬頭でそう考えたが、自分で首を左右に振って無いと答えを出した。

 

 

 

そもそもの話、イシュタルも言っていた様に召喚されたのは魔人族との戦争に勝つ為だ。

 

 

 

対象が奴らに限定されてある以上、たかだか寄生虫にヤられた連中を殺す為だけに召喚された線はありえない。それで危機ならばエヒト自身が排除すればいいだけの事。

 

 

 

それに召喚する力はある癖に排除する力が無いのは都合がいいにも程がある、もしも本当に無くて助けを求める為に召喚したのであったらとんだ無能の神様だ。

 

 

 

そう頭の中でエヒトを侮辱しながらハジメは図書室で1人"勉強"をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日

 

 

 

朝の講議を終え、昼食を終えた勇者一行は戦闘訓練を行うべく訓練場にて集うと準備を始めていた。

 

 

 

準備をしながら談笑したり、何故か自信満々な顔をしたりしているクラスメイト達の能天気さにハジメは呆れた様な顔をする。

 

 

 

そして教官の補佐を務める彼も未だ来る気配の無いメルドとヘンリックの為に書類を取り出して準備を始め様としたその時、

 

 

 

「ッ⁉︎う......ッ!」

 

 

 

突如左腕に焼ける様な痛みが走った、彼はそれを魔法による攻撃だと判断すると撃ってきた方向に顔を向けると、そこには檜山達4人組が歪んだ笑みを浮かべて立っていた。

 

 

 

「よぉ、南雲。なに準備しちゃっしてんの? お前がやっても意味ないだろが。ステータス最下位のマジ無能なんだしよ~」

 

 

 

「ちょっ、檜山言い過ぎ! いくら本当だからってさ~、ギャハハハ」

 

 

 

「ステータスがカスの癖になんで先生気取るわけ? 俺なら恥ずかしくて無理だわ! ヒヒヒ」

 

 

 

「なぁ、大介。こいつさぁ、なんかもう惨めだから、俺らで稽古つけてやんね?」

 

 

 

檜山達はそう好き勝手な言葉を吐く、そしてやられたハジメは一度周囲を見渡すと、周りの使徒達は見て見ぬふりをする様に離れていく。

中には園部が止めようしたが周りに無理矢理連れてかれた。

 

 

(素晴らしい仲間達ですこと)

 

 

 

心中でそう毒づと、ハジメは彼等に向き直る。

 

 

 

「キミらって学習能力無いんだね、ヘンリックが言ってた鞭打ちの件もう忘れたの?」

 

 

彼がそう言うと、先頭にいた檜山がこう返す。

 

 

 

「ハッ!あんなクソジジイオレらで囲んで叩けば余裕だわ、あのジジイの前に南雲ぉ〜お前からぶっ潰してやるからなぁ?」

 

 

 

「テメェ生意気なんだよ!いきなり出て教師のお仲間気取りやがって!」

 

 

 

「ってかさぁ、南雲の服ダサくね?全身黒でベルトも黒とか中坊のファッションかよッ」

 

 

 

「ギャハハッ!」

 

 

 

何時も通りと言っていい程ハジメを馬鹿にする檜山達、特に檜山はヘンリックにやられた事などもう忘れたかの様に振舞っている。

 

 

 

因みにハジメが今着ている装束はヤーナムシリーズだ。

 

 

 

「南雲〜感謝しろよなぁ?テメェみたいな無能を"勇者様"の俺たちが鍛えてやるんだからさぁ」

 

 

 

檜山がそう吐くと、近藤と共に武器を構える。そして中野と斎藤の2人は魔法の構えを取る。

 

 

 

そんな彼等にハジメは心底呆れた顔をすると、"所持品"からガラシャの拳を取ると左手に嵌め、そして仕掛け武器の一つ、"爆発金槌"を右手に持つ。

 

 

 

そして......

 

 

 

「ここに焼撃をのぞ...ブヘェッ⁉︎」

 

 

「は......っ?」

 

 

「え......?」

 

 

中野が火球を撃とうとしたその瞬間、それを見たハジメは駆け出して彼の顔面に力いっぱいにガラシャの拳を叩き込んだ。

 

 

 

鉄塊そのもの力いっぱい顔面に叩き込まれた中野は倒れこむと両手で顔を抑えて痛みに悶えながら転げ回る。

 

 

 

「ひだぃ......ッ!ひだぃぃぃッ!!」

 

 

 

転げ回る時に一瞬見えたが、どうやら鼻がひしゃげてしまい、歯も1.2本程折れてしまってる様だった。普通なら顔面がひしゃげてもおかしくは無いが、そうならないのは使徒たる所以の力か。

 

 

 

そんな惨状の彼を見て、後の3人は雷に打たれた様に固まってしまう。そして3人の内の1人、もっともハジメに近い距離にいる斎藤が彼の方へ振り向くと

 

 

「......ヒッ⁉︎」

 

 

斎藤は怯んだ声を出してしまった、黒い三角帽を被ってマスクで口元を覆ったハジメの表情は分からなかったが、目をこれでもかと言わんばかりにかっ開いて己を見つめるその姿。

 

 

 

言葉こそ無いものの、それはまるで"次はお前だ"とそう語り掛けているかの様だった。

 

 

 

「南雲テメェッ!よくも良樹をッ!」

 

 

 

槍術師の近藤が槍の先端を向けてハジメに攻撃を仕掛ける、が、そんな攻撃もステップで横にずれる事であっさりと回避されてしまう。

 

 

 

そして近藤の真横にずれたハジメは爆発金槌を脚の関節を狙って叩き込む。叩き込んだ際に何かが折れた様な感触を金槌越しに感じたが、彼はそれを無視する。

 

 

 

「ぎゃあああああッッッ!!?脚がっ!あしがぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

 

爆発金槌の仕掛けを起動させなかったとはいえ、片脚の関節部分に大型の金槌など叩き込まれれば幾ら使徒といえど無事では済まない。

 

 

 

近藤はヤられた片脚を抱えながら倒れると赤子の様に泣き叫ぶ、そんな彼を見たハジメは何も攻撃出来ずにいる斎藤を次の標的に決めると彼目掛けて襲い掛かる。

 

 

 

「ヒッ!こ、ここに風撃を望む!風球!」

 

 

 

風術師の斎藤は魔力で作り出した風の球をハジメ目掛けて撃ち込んで近づかせない様にするが、ハジメはそれをステップで回避しながら近づいてくるので彼も焦ってしまう。

 

 

 

「お、お前何で魔法を回避できるんだよ!ステータス最下位の雑魚の筈だろ⁉︎」

 

 

 

斎藤は風球を撃ちながら彼にそう問いかけるも、返答は一切無い。そんな対応に自分が見下されていると錯覚した斎藤は怒って更に風球を撃つが回避されるだけだった。

 

 

 

「ここに風撃を望む、風きゅうゴォっ⁉︎」

 

 

 

また風球を撃とうとした斎藤だったが、撃つ事に夢中になってしまっていたのか、既に至近距離に居たハジメに爆発金槌の先端部分で腹を思い切り突かれた事によって詠唱は強制的に終了される。

 

 

 

「ゲホッ!ゲホッ!て、てめうぎゃあッ⁉︎」

 

 

 

腹を突かれて激しく咳き込む斎藤だったが、ハジメを睨み付けた次の瞬間に腹にガラシャの拳を打ち込まれ、悲鳴をあげながら膝をつく。

 

 

 

「う、ぐ、ウォエエェェェッ」

 

 

膝をついた彼はそのまま食べた昼食を逆流させて吐いてしまう。ゲロを足元に吐かれ、それがブーツに掛かったがハジメはそれを気にする事も無く、身体を檜山へと向けて歩いていく。

 

 

 

「ヒィッ!く、くるなぁッ⁉︎」

 

 

 

仲間が瞬く間にやられた彼は逃げ出そうしたが腰が抜けてしまっているのか、うまく身体を動かせず、情けなく四つん這いで逃れ様としている。

 

 

 

そんな彼を見たハジメは爆発金槌の後ろに付いた撃鉄を己の肩に当てて仕掛けを起動させる、すると小炉付きの金槌の部分に火が纏わりつく

 

 

 

そして駆け出してジャンプするとそのまま檜山の眼前の地面に目掛けて、一気に金槌を叩き込む。

 

 

 

ドゴォンッ!

 

 

 

訓練場に雷鳴の様な音が鳴り響き、檜山の顔面に砕かれた地面の破片や土、そして叩き付けた際の熱風が襲う。

 

 

 

そしてハジメが檜山の眼前に立って見下ろすと、"生意気なキモオタ"に見下されている"そう思った彼は憤りながら持っていた短剣を下から突き上げる形で刺そうとした。

 

 

 

「て、テメェッ!ギャアッ⁉︎」

 

 

 

しかしその前にハジメは短剣を持った手を踏みつけて阻止された。

 

 

 

 

「......もうお終いですか使徒の"檜山"殿?御学友の皆様は必死に戦われた様ですが」

 

 

 

「貴方だけは戦いもせずに背を向けましたねぇ?鍛えてやると言ってこの有り様、これでよくもまぁ粋がれるのか不思議ですよ」

 

 

 

檜山から戦闘能力を奪ったハジメは他人行儀で、何処か蔑みと嘲りが入り混じった口調で檜山を煽りたてる。

 

 

 

「んだとてめぇっ、ひぃッ!」

 

 

自分を侮辱された檜山は彼を睨みつけようと見上げた瞬間、恐怖心に襲われ悲鳴をあげる。

 

 

 

己を見るハジメのソレは人では無く(けだもの)を見る目であった、そして己を見下ろす黒い瞳には見られると檜山はハジメ以外の"別のナニカ"にも見られている様な感覚を覚える。

 

 

 

彼自身、それが錯覚なのか本当なのかは分からない。恐怖に支配された以上判断も付かない。

 

 

 

 

仲間を瞬く間にやられ、恐怖に怯え、自分を馬鹿にしてきた時と打って変わって何も出来ないでいる檜山。

 

 

 

「フン」

 

 

 

「あ......?ギャアッ⁉︎」

 

 

 

そんな彼をハジメは馬鹿にする様に鼻で笑うと顔面を蹴り上げて仰向けへと変えさせる。

 

 

 

彼は無様に地面に転がる檜山の腹に片脚を乗せ、そして"所持品"でガラシャの拳を仕舞うと今度は"狩人の散弾銃"を取り出してソレを左手に握る。

 

 

 

「ぎっ、あっ...ひっ!ヒィッ⁉︎」

 

 

 

痛みに悶える檜山の頰に銃口を強く押し付けると彼は更に怯えた態度をハジメに取る。

 

 

 

「ま、まで!まっでくれよ南雲ぉっ!おでっ、おれが悪かった!もう!もうお前にちかづかねぇしキモオタだって馬鹿にしねぇ!」

 

 

 

「だから......っ!だからぁっ!」

 

 

 

檜山は必死に命乞いをするが、ハジメは目の色を変える事を一切しない。

 

 

 

 

「あ、ああああ......」

 

 

 

彼が引鉄らしき部分に指を当てる所を見てしまうと、檜山は遂に碌な言葉を発する事すら出来なくなってしまい、ズボンの股座部分を濡らしてしまう。

 

 

 

 

もう終わった、"死んだ"。そう悟った檜山は恐怖に目を見開きながら目の前の絶望(ハジメ)に打ちひしがれていたその時。

 

 

 

 

「何をやってるのっ⁉︎」

 

 

 

 

二大女神の片割れ(白崎香織)が思わぬ救いの手を差し伸べてきた。檜山が香織の声のした方を見ると、そこには香織の他、光輝、雫、隆太郎のトップカースト4人組が集まっている。

 

 

 

 

ソレを見た檜山は絶望に染まった顔から何を企んだ下衆な顔へと変え、ハジメに向かって

 

 

 

 

「バカが」

 

 

 

ニヤケながらそう言うと次の瞬間、出来る限りの大声で檜山はこう叫んだ。

 

 

 

 

「白崎ぃーッ!天之河ーッ!助けてくれぇーッ!!南雲がッ!南雲がイカれやがったんだ!」

 

 

 

彼がそう叫ぶと2人の顔色は変わり、4人は急いでハジメ達の元へと駆けていく。

 

 

 

「へへ......ざまぁみやがれキモオタが、調子に乗るからこうなんだよ......」

 

 

 

(こいつある意味凄いな)

 

 

 

先程から態度を一変させて自分を侮辱する檜山に、ハジメはある種の感心を覚える。が、

 

 

 

「ぐぎゃあ⁉︎」

 

 

 

取り敢えず檜山の顔面を強く踏みつけておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、ハジメを取り巻く状況は最悪と言っていい程悪い。

 

 

 

胸ぐらを掴んでこちらを睨み付ける光輝

 

 

 

信頼が揺らいだ様な表情でこちらを見る雫、警戒した目付きの龍太郎、驚愕した顔で見る香織と優花。

 

 

 

香織に傷を癒され、ハジメに向かってざまぁみろと言わんばかりに笑う小悪党4人組に恐怖に染まった目で見るその他のクラスメート。

 

 

 

 

「言え!南雲ッ!何で檜山達を痛め付けた、檜山達は俺達の大事な仲間何だぞ!それをお前は......ッ!」

 

 

 

何時も通りに光輝は正義感を振りかざす、ハジメは何か反論を考えたが側から見れば少なくとも"痛めつけた"事に関しては正解なのでやや耳が痛い。

 

 

 

「言った所で天之河くんが僕の言葉なんか信じる訳ないでしょ?どうせ言ったって檜山くん等の味方するだろうし」

 

 

 

「ふざけるな!南雲、お前のそういう態度が檜山達の気に障ったんじゃないのか?それで彼等はお前を注意しようとして」

 

 

 

「わぁスゴイ、憶測で人を叩くなんて天之河くんもやるねぇ、そこの"恥知らず4人組"の仲間入りしたらどうだい?きっと仲良くなれるさ」

 

 

 

「何だと!?」

 

 

 

光輝の言葉とハジメの皮肉の応酬に段々と2人はヒートアップしていく、と言っても熱くなっているのは光輝だけだが。

 

 

 

そんな2人の様子を見て見かねたのか雫が助け舟を出してきた。

 

 

 

「光輝落ち着きなさい!ねぇ南雲くん、何が起きたのか教えて欲しいのだけど.......いいかしら?」

 

 

「言った所でねぇ?」

 

 

「そんな事言わないで、ね?」

 

 

 

雫にそう頼まれ、ハジメは何が起きたのかを説明した。

 

 

 

しかし、

 

 

 

「嘘を吐くな!檜山達がそんな事をする筈が無い!」

 

 

 

案の定、光輝は噛み付いた。それを見たハジメはため息を吐くと半笑いで

 

 

 

「ね?言ったでしょ、信じる筈が無いって」

 

 

「それはお前が嘘を吐くからだろう!」

 

 

「嘘じゃ無いわ!」

 

 

 

再び論争が始まりかけたその時、優花のある言葉によって中断される。

 

 

 

「ちょっと優花っち......」

 

 

「妙子どいて!」

 

 

菅原妙子の制止を振り切って、彼女は光輝達へと駆けていき事情を説明する。

 

 

 

 

「そうか......よく分かったよ、園部さん」

 

 

 

「天之河くん......!」

 

 

 

光輝のやっと理解したかの様な言動に優花は希望を持った顔をするが、彼の次の言動に凍り付く。

 

 

 

「南雲に脅迫されたんだね、可哀想に」

 

 

 

「は......っ?」

 

 

 

光輝の発した言葉に、優花は"こいつは何を言っているんだ?"と言いたげな顔に変わり固まってしまう。

 

 

 

「南雲、お前は最低最悪な男だ。狂って檜山達に襲いかかり怪我を負わせ、あまつさえ香織と園部さんを脅迫して誑かそうとする、俺が見てきた中で1番と言っていい悪だ」

 

 

 

「"俺"が最低最悪なら物事を碌に見ないで正義振りかざす"盲目野郎"の天之河くんと」

 

 

 

「群れなきゃ何も出来ない有象無象の"獣"以下の檜山くん達はそれ以下になるだろうね」

 

 

 

「んだとテメェ!」

 

 

 

ハジメの皮肉と嫌味によって論争は更にヒートアップする、親友を侮辱された怒りからかいつの間にか龍太郎も参加してきた。

 

 

 

180を容易く超える龍太郎に凄まれてもハジメは全く怯まずに嫌味と皮肉を吐き続ける、彼自身口調が段々"乱暴"になってきているが気付いていない。

 

 

 

光輝、龍太郎、檜山達の6人を敵に回してもなおも続けるハジメだったが遂に檜山達が武器を取った事を切っ掛けに一触即発な雰囲気となる

 

 

 

雫は光輝と龍太郎の2人を必死に宥めているが彼等は聞く耳を持たず、後の人間達はどうすればいいか分からずあわあわしている。

 

 

 

そんな時だ。

 

 

 

「何をしているお前達!」

 

 

 

声のした方向に全員が振り向くと、ハジメと光輝以外の全員が顔を青褪める。

 

 

 

彼等が顔を向けたその先には、

 

 

 

顔に青筋を立てているメルドと、心底呆れた表情でこちらに歩いてくるヘンリックの2人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「訓練の準備もしないで"遊んでいる"とは大した度胸だな?」

 

 

 

「そ、それは......」

 

 

 

ヘンリックが彼等に対し、呆れた表情で問いかけると、鞭打ちの件で彼に対し恐怖心が芽生えた使徒達は青褪めて口吃ってしまう。

 

 

 

精神的に言えば1番成熟している雫ですら顔を強張らせてしまう程に。

 

 

 

「ナグモ、"教官の補佐役"としてのお前に聞こう。何があった?」

 

 

 

ヘンリックの問いに対し、ハジメが口を開こうとした瞬間

 

 

 

「南雲の奴が俺達に襲いかかったんですッ!!」

 

 

 

彼を妨害する様に檜山が口を出した、それに対しメルドが一瞬目を丸くしたが直ぐに元に戻す。

 

 

 

「あ、あいつ!自分のステータスが低いから俺達が羨ましくて!だから「黙れ」え......?」

 

 

 

檜山が口八丁嘘を織り交ぜ、ハジメを悪役に仕立て上げ様としたがヘンリックの一言の前に容易く終わる。

 

 

 

「私は補佐のナグモに説明を"要求"したんだ、"お前"じゃない、立場を弁えろ」

 

 

 

ヘンリックは彼に睨み付ける様にそう言うと、檜山は青褪めながら蛇に睨まれた蛙の様に大人しくなった。

 

 

 

そして要求されたハジメはヘンリックに説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほぉ......なるほどな」

 

 

 

 

説明を聞かされたヘンリックは能面の様な表情を浮かべながら腕を組んで檜山達を見つめる、檜山達4人は小さい悲鳴をあげる。

 

 

 

「ああ、それと"あんなジジイ俺達で囲めば余裕だ"って言ってましたよ」

 

 

 

ハジメが笑いながらそう言うと、ヘンリックは獲物を見つけた狩人の様な表情に変わる。

 

 

 

「それはそれは......中々叩き甲斐がありそうだなぁ」

 

 

 

猛禽類の様に目付きを鋭くさせながら笑う彼に、クラスの大半の人間が鞭打ち以上の恐ろしい事を始めるんだと本能で察する。

 

 

 

 

「違いますヘンリックさん!檜山達は南雲に襲われたんです!」

 

 

 

光輝がヘンリックに対し食ってかかる、本来なら相手にせず切り捨てるが、どういう訳か彼は光輝の意見を聞き入れた。

 

 

 

「ほぉ?ナグモが奴らに襲いかかったのか?」

 

 

 

「そうです!檜山達は南雲の態度が癪に障って、それを注意したら南雲が逆上して」

 

 

 

憶測であることない事を大真面目に語る光輝にハジメは思わず噴き出す、彼が話す最中に優花が反論したがヘンリックが手で制す。

 

 

 

 

「なるほど......ナグモが逆上してヒヤマ達に襲いかかったのか.......」

 

 

 

「そ、そうなんすよヘンリックさん!南雲の奴が急に俺達に襲いかかるわ、ある事ない事ほざくわでヤバかったんすよ!」

 

 

 

ヘンリックが光輝の言い分を信じたと思い込んだ檜山は媚びへつらう態度でハジメを貶す。

 

 

 

そんな檜山を彼は冷ややかな目で見つめると、光輝達、檜山達以外の使徒達へ視線を動かして口を開く。

 

 

 

 

「檜山達が襲われていたとなると、だ.......お前達は一体何をやってたんだ?」

 

 

 

「"大事な仲間"が襲われていたというのに、お前達はそこでずっと呆けて突っ立ってただけか?」

 

 

 

「そ、それは......」

 

 

 

ヘンリックからの予想外な問いに、優花を含めた使徒達は全員口吃って俯いてしまう。

 

 

 

彼等は本当はハジメが先に攻撃を食らった事を知っている、だが檜山達の争い事に関わりたく無かったのも事実だ。

 

 

 

召喚された時には居なかった癖に、ダンジョンで何故か再会し、自分達を救ってそれなりの立場を貰えている。

 

 

 

だがそんなハジメに全員が全員恩義を感じていた訳ではない、中には檜山達の様に仇で返した者もいれば、痛い目にあってしまえばいいと妬みの感情で助け様としなかった者もいる。

 

 

 

しかしどうだ?そんなハジメは檜山達をあっさりと下した。痛めつける筈が逆に返り討ちにあった彼等を見て、ハジメに恐怖心を抱いてしまった。

 

 

 

「........お前達は本当の事を知っているな?本来なら全員"連帯責任"で鞭打ちを与えてやるところだが」

 

 

 

ヘンリックがおもむろに手を鞭に伸ばすと、使徒達の中から「ひっ」と悲鳴が聞こえる。

 

 

 

「だが今、ここで正直に吐けば、少なくとも"お前達全員"の鞭打ちは無しにしてやる。だから聞くぞ」

 

 

 

ヘンリックはそう言って使徒達に問い詰める。

 

 

 

「本当にナグモが 狂 っ て 襲 い か か っ た ん だ な ?」

 

 

 

「嘘だと思ってるなら手を挙げろ」

 

 

 

そう彼が言って暫くすると、使徒達は次々と手を挙げていく。彼等彼女等も鞭打ちの恐怖には耐えられなかった様だ。

 

 

 

「正直でよろしい」

 

 

 

ヘンリックは彼等にそう言って小悪党4人組に顔を向ける、彼等は顔を心底青褪めた様子だ。

 

 

 

「さてとお前達、"覚悟"しておけよ?」

 

彼のその一言に、これから自分達が"何をされる"のか察した檜山達は怯えて腰を抜かす、そんな彼等を見た光輝はヘンリックに尚も食ってかかろうとする。

 

 

 

「脅迫はやめてください!檜山達は「もうやめろ光輝!」メ、メルドさん......」

 

 

 

メルドの一喝に光輝は怯んでしまった。

 

 

 

「もうやめろ......これだけの証言と賛成があって何故檜山達を庇うんだ」

 

 

「で、でも!もしかしたら冤罪の可能性だってあるかもしれないんです!本当に南雲が「光輝」ッ......」

 

 

「頼むから、もうやめるんだ」

 

 

 

メルドの悲痛とも言っていい表情に、流石の光輝も黙り込む。

 

 

 

 

「.....さて、メルド。お前はバカどもを拘束してくれるか?」

 

 

「ええ、分かりました......」

 

 

 

ヘンリックに言われ、メルドは檜山達を拘束しようとするが、筆頭の檜山が抵抗しようとした為、止むを得ず殴り倒した。

 

 

 

 

そうして檜山4人組を拘束し、半ば晒し者の様にする。

 

 

 

 

「さてと、紆余曲折はあったが、やっと"訓練"ができるな」

 

 

ヘンリックがそう独りごちると

 

 

「訓練......ですか?」

 

 

近くにいた雫が反応して返すと、彼は雫に顔を向ける。

 

 

 

 

 

「ああ、魔人族の襲撃を想定した"本格的"な実戦訓練だ」

 

 

 

 

ヘンリックが彼女に向けてそう言い放った、悪い笑みを浮かべながら。

 

 




非常に分かりにくいかもしれませんが、今話にはSEKIRO要素がほんの少しだけ入っています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。