しかし、この世界でジャンヌのように生き抜いた少女なだけであって、決して本人ではございません。
少女の枯れ果てて、とても冷たい言葉が戦いの火蓋となって切り落とされた。
少女を中心に展開している黒く透明な壁は、意志があるかのようにグニャリと曲がり始めた。
そして黒い何かの形が整いっていく。
(あれは魔法の一種なのは間違いは無いはずだ。しかし、魔法には詠唱が必要のはずだが・・・)
少女を取り巻く黒いものはやがて鋭利に尖って行き、槍のようなものが出来上がって行く。
その数凡そ三十、漆黒の槍達は重力に反し優雅に浮かんでいる。
それに対して少女はとても悲しそうな目をしていた。
「第4位魔法~漆黒の夢~(ナイトメア)」
そう少女が枯れた声で呟くと、槍達は命令に従うようにマダラに目掛けて一斉に飛んでいった。
その槍の速度は目に疑うものであり、手馴れた忍でも視認するのがやっとだろう。
そんな驚異的な速度で飛来してくる槍が一本だけならまだ避けられるかもしれない、しかしそれが三十本ともなれば話は別である。
一瞬で男が串刺しにされ、終わるとこの場に居合わせたものがいたらそう思うだろう。
最も、視認すら出来ないのだから気付いた時には男は海栗のようになっているだろうが。
そんな数の暴力とも言える槍達はマダラを刺そうと迫ってきているが、マダラは腕を組みながら優雅に立つ。そして・・・
ズブブっ
肉は裂け、骨は砕け。見るに耐えない姿がそこにはあった。
まさに拍子抜けであった。
「あははっ!いい光景ね!!まったくこの世界は汚れ切っていて最高だわ!」
その光景からこの少女は壊れてしまっていることがわかる。
この少女はどこで道を踏み違いこのようになってしまったのだろうか。
どこの世も世界が人を壊し、人が人を壊していく。
愛があるからこそ憎しみが生まれ、光あるところに必ず影が生まれる。
これは世界の輪廻であるが故に、何処の世もこれだ。
「そうだ、この世界は汚い。」
突如として串刺しになったそれは言葉を放った。
一言で言い表すなら、その現象はありえないである
そこに立っているものは物。
決して生者などではなく死者なのだから、有り得ない光景である。
そんな奇妙な光景を目の前に、少女はフリーズしていた。
「それ故に、この世界に存在する価値はない」
そう断言した物は上から溶けていき、最後には槍だけが残った。
「貴様もそうは思わないか?」
その声は先ほどの方向とは逆、つまりは少女の後ろ側から聴こえてきた。
「っ!!」
そこには化け物が不動たる姿で顕現していた。
否、化け物と呼ぶにも惜しいものであろう。
男は確かに腕を組み、先ほどとは変わらずの姿勢を保っている。
しかし、男を取り巻くものがその存在感を異様なものへと変えていた。
それはまさしく魔王のそれであった。
彼を取り巻くのは青く、そして冷たい炎。
そして、彼を囲うのは青白く、そして絶対的強者を連想させる骨の巨人であった。
普通のものならこの者に対して、恐怖心を煽り、失神する者や逃げ出すもの。そして許しを問うものが正常だろう。
しかし、この少女は壊れている。
もう普通ではないのだ。
その少女がこの男に対する印象もまた壊れているものであった。
(美しい・・・)
そう。これが彼女の心からの声であった。
そして、この男の言うことは正しいものであると、この少女は本当にそう思えてしまっていた。
しかし、少女はだからといって、その男に降伏することは無かった。
それは少女・・・、否。彼女がとうの昔に捨てた不屈の心、聖乙女の血がそれを許さなかったからだ。
そして、彼女は心に何かを決めると、絶対的強者との遊戯を再会することにした。
「ええ、確かにそう思うは。こいつらにしろ、この世界は腐っている。」
そう言うと彼女は近くに転がっている男達の死体に軽蔑の目を向ける。
そして彼女の行動は早かった。
近くに転がっている死体の唇に自らの唇を宛がったのだ。
そして、その死体は燃え盛り、その炎は少女を纏い始めた。
「私の名はジャンヌ・ダルク。この世界に未練はとっくにないけど、今一つ、未練が増えたわ。」
その炎は少女を完全に覆い、鎧の形となり、腰には一刀の剣が構成されていった。
「貴方を切ることよ。」
そういた矢先、一瞬にして男の前まで移動したジャンヌは剣を抜き、渾身の一撃を放った。
それはまさしく一閃の輝き。
しかし、男に刃が通ることは無く、代わりに骨の巨人に刃が当たる。
その炎が刀身を覆うほどの業火は凡そ三千度程あり、近づくだけで溶けてしまうほどの熱が込められている。
そんな灼熱の刀身を見事なまでに扱う彼女もまた美しいものであった。
(確かに、魔法とは強力で厄介だな。しかし、これがもし彼女の渾身魔法だというのなら、少々拍子抜けだな。)
そう、確かにこの世界において彼女はとてつもなく強いものに分類されていた。
そんな彼女の攻撃は一騎当千、最強なまでに謳われるものであったからだ。
しかしそんな攻撃も、うちはマダラの前では通用しない。
しかし、そんな攻撃でもうちはマダラにとっては有能でもあると考えていた。
彼女の攻撃は確かに男には届いていない。
しかし、僅かながらにスサノオから漏れて来る熱や衝撃波が彼女に対する評価を一段に跳ね上げた。
(この完全体とまではいかないがスサノオ内部に影響を与えるとは、この娘、殺すに惜しいな。それに、この世界の事を色々と知るのに利用できるかもしれん。)
こんなことを考えている間にも、スサノオの外部ではジャンヌによる一閃の攻撃が繰り広げられている。
そして、この攻撃方法では傷すら与えられないことに気付き、ジャンヌはスサノオから距離をとった。
「そんな攻撃ではこのスサノオには傷一つ付きはしないぞ?」
そして、ジャンヌはより一層警戒心を高めていた。
「そちらから来ないのなら、今度はこちらから攻めさせてもらおうか。」
そういった矢先に、骨の巨人が動き出した。
その巨人の手からは長細い棒状のものが生成され、刀の形へと変化していく。
「貴様の攻撃力は中々のものだったぞ?このスサノオ内部にまで衝撃波が伝わってくることはそうそうない。」
そう言いながらも、一方的なスサノオによる攻撃が始まった。
というわけで、中二病全開の一話でした。