スサノオによる攻撃は一方的なものであった。
攻撃方法は至って単純。手に持つ剣を振るうだけのものである。
しかし、そこに乗っている速度や威力は計り知れないものであり、これを防ぐ方法は彼女にはなかった。
(なんて馬鹿力なの!?一端距離をとらないと不味いっ。)
スサノオの攻撃は想像を絶するものであり、まさしく最強無敵と呼ぶに相応しいものであった。
しかし、スサノオにも弱点と呼べるべき穴があった。
確かにスサノオの攻撃方法はシンプルが故に、物凄い程の破壊力を秘めている。
しかし、その攻撃一つ一つに隙とも言えるものが存在していた。
その隙を突いて彼女はスサノオから距離をとることに成功した。
その姿を見て何を考えてか、男は身にまとっている骨組みの巨人を治めた。
(何故あの男があの化け物を治めたかは定かではあるが、チャンスは今しかないっ!)
彼女は両手を男に翳すと、魔力を込める。
「第五位魔法:龍の息吹:(ドラギオンブレス)」
突如として、彼女の両手から直径1m程のビームともいえる光線が、男目掛けて放射された。
第五位魔法:龍の息吹:(ドラギオンブレス)、これはどんな万物も原子レベルで崩してしまう、伝説級の魔法である。
もしこれが直撃すれば、うちはマダラでも跡形も無く塵にされてしまうだろう。
すぐそこまで迫ってきている魔法を避けることはもう出来ない。
勝利を確信した彼女は信じられない光景を目の当たりにする。
本来、この魔法は触れた物を原子レベルにバラバラにする魔法である。
この男もまた例外ではなく原子レベルにバラバラになるはずであった。
しかし目の前の光景はビームが男を溶かしている姿ではなく、ビーム自体を吸収している姿であった。
「やはりな。魔法とやらは確かに忍術と違う。しかし、エネルギーとしては同一のものか。これで魔法に対する警戒は多少緩めても構うまい。」
そこには何事も無かったような光景が広がっていた。
否、彼女は確かに伝説級の魔法を放った。がしかし、その魔法はどういうことか男に当たるどころか消滅してしまっている。
この男が使ったのは輪廻眼による、忍術の吸収。
しかし、吸収したのは忍術ではなく魔法であった。
そう、この男がスサノオを解除した理由は他でもない。この能力が、魔法でも有効かどうかの検証のためにわざと、スサノオを解除したに過ぎなかった。
しかし、彼女はそれを知る術はない。
そんな実験とは知らず、その光景に彼女はただ、唖然としていた。
そして男は唖然としている彼女に一瞬にして近づき、腰の携帯バックのようなものから、刃物を彼女の首に突き立ててきた。
「まだやるか?」
彼女を纏っていた赤く逞しい炎の鎧は、それが合図となり消えていった。
「それが賢い判断だ。今からお前は俺の配下に加わり、俺に忠誠を捧げる。もし俺がお前を利用価値の無いものと判断した場合は、お前の命は無いものと知れ。」
そう冷たく彼女に語った男は、手に持った刃物をバックに戻す。
彼女は先の戦いは勝算が無いものであると戦時中考えていた。
せめて傷一つ、歯の一本でも死に土産に持ち帰るくらいの気持ちで戦っていた。
諦めて命を差し出すという手段もあるにはあったが、それは彼女が持つプライドが許さなかった。
しかし、目の前の光景を目の当たりにして、そんなプライドも折れてしまっていた。
男が振るう化け物の一太刀は凄まじい程の威力を誇っていた。
にもかかわらず、目の前の光景は何も変わっていない。
変化しているところと言えば、彼女が放った炎で溶けた公道くらいである。
その光景を見て、つい口走ってしまった。
「何故、確かにあの攻撃は辺りを破壊するに可笑しくない威力であったはず・・・。」
その言葉を聞いた男は当然のごとく、しかし冷たく彼女に言った。
「砂利と本気で喧嘩する大人がどこにいるというのだ。」
彼女は唖然としたが、変に納得してしまった。
そして彼女はこの男に忠誠を、命を捧げることに戸惑いはなかった。
「・・・・。私の名はジャンヌ・ダルク、この命なんなりとお使いください。」
彼女は壊れていた。壊れているが故に、この男に世界の可能性を感じていたのだ。
(きっと、この男なら変えられる。この汚らわしい世界を。)
そうして、歪んでいる二人の物語は始まっていった。