フィギュアヘッズ世界に来たので2footとフィギュアヘッズを愛でたいと思う 作:明田川
ほんの少し長いです。
残弾が残り少なかったオスクリダット小隊はなんとか補給を終えて再集結地点へと急いでいた。
空は航空機と対空ミサイルの爆発で随分賑やかなことになっており、時折流れ弾が障害物を粉砕するのだから怖いものだ。
「後ろからも敵がぞろぞろと…他に危険な場所は?」
『戦線の左側は優勢のようなのです』
「本当にまとめて放り込んで来たなバベルの野朗」
やっと見えてきた再集結地点では、2footの残骸すら積み上げて障害物として使っている有様だった。本来持つ筈の重量級が破壊されたのかガトリングガンを放つ中量級に、脚を失い腹這いになって狙撃を続ける軽量級など厳しい状況であるのが見て取れる。
「こんな激戦じゃあ当てる気がなくても味方の弾で死にそうだ」
『どうするのです?』
「回り込んで正面を避けるぞ、側面でならウチのに案内してもらえそうだ」
『隊長ー!遅いヨー!』
『あの声は…』
「補給部隊の三人だ、さっさと抜けるぞ」
襲いかかる敵2footの頭部を破壊してから蹴り倒すと、重要なセンサを失ったのか立てずに腕と足を動かし続けている。
本当に脆いものだなと胸に向け数発撃ち込み、コアを破壊して先に進む。
それを見ていた僚機も同じように頭部を破壊してから転ばせ、敵を捌いてゆく。
「遅れるな、倒す相手は最低限でいい」
時には足を、時には腰を撃って敵の動きを止める。
補給部隊の三人の援護も届き、彼らのライフルでの射撃が倒すべき敵の数を減らしてくれる。
『こっちです隊長!』
「ケリーか、助かる」
『リペアキットとサプライキットも用意してあります、お使い下さい』
「そりゃいい、それで状況は?」
『御射鹿の防衛隊の2割が消滅しました、全滅一歩手前です』
「ここまで来るとEMPで味方もろとも機能停止に追い込むのが得策とも思えるな」
2footや航空機の電子機器に影響を与えるEMPはとても強力だ。
それの使用は敵戦力の殲滅という結果をもたらすが、それと同時に御射鹿は防衛隊の殆どを失うことになる。
「だが今は足掻こう、どうしようもないと判断してEMPを起動するのは上層部の仕事だ」
『機体の修理と補給、終わったのです!』
「行くか」
座り込んでいたオスクリダットを立たせて前を向き、ロケットランチャーに弾頭を装填する。
「大物を潰すぞ、ジャイアントキリングは2footのお家芸だ」
BOTgame初期に自身の何倍もある大型2footに打ち勝ち、大きな航空機さえ撃ち落とし、ひと回り大きなソルジャーさえも破壊するポテンシャルは伊達ではない。
「俺達の最優先目標はソルジャーだ、奴を暴れさせはしない…いいな?」
『『『了解!』』』
「補給部隊はこれまで通り味方の援護頼む」
『了解デース!』
ー
障害物をものともせずに迫るソルジャーに向け、ロケットランチャーが叩き込まれる。
その強固な装甲は数発の直撃程度で撃破されるほど柔ではない。
「このソルジャーは任せろ、航空機を頼む」
『了解、助かった』
「この地点にはぐれた僚機がいる、使ってやれ」
『そりゃ助かる、もう俺1人だったからな』
応戦していたスナイパーライフルを持つ軽量級とバトンタッチし、ソルジャーを攻撃する。
正面から気を引いているうちに、側面に回り込ませた僚機に攻撃指示を出せばロケットランチャーが放たれコア付近に直撃した。
『イェーイ!』
「ナイスだモリィ、そのまま隠れてろ」
『了解ー』
「カルディナはタイミングを合わせてロケットランチャーを同時に撃つぞ」
攻撃のあった側面に振り向いた瞬間、正面の二機が装填の終わったロケットランチャーを構えた。
「今っ!」
首と腹部に命中した弾頭はソルジャーの装甲内部で爆発、飛散し内側から破壊した。
いくら装甲が強固だろうと内部はそれほどでもない(ただの2footに比べて強固だが)ため、ソルジャーを破壊する際には有効な手段だ。
『や、やったー!凄いよ隊長さん!』
「喜んでる暇はないが…二人ともいい攻撃だった、次もその調子で頼む」
無線は混乱を極め、マップにはソルジャー確認と増援要請が大量に書き込まれている上に敵で真っ赤だ。
「次に向かうぞ、リロードはしておけ」
言うなればゲームでストーリーが進み、出てきた中ボスがいつの間にか雑魚敵として配置されていて、しかも数が思ったより多かった時の絶望感に近い。
「航空機の数も減ったが、対空砲火も弱まってるな」
対空戦闘を行っている2foot達もかなり不味い状況らしいが、それは補給部隊に任せてソルジャーを破壊しなければ。
『ソルジャーがすぐそこまで来ている、止められない!』
「止める、攻撃を合わせてくれ」
『わ、分かった!』
EMPグレネードで数秒動きを止める間に、周りの味方と攻撃を集中させる。
助けを求めていた重量級もガトリングガンで応戦してくれているし、生き残っていた僚機も懸命に攻撃している。生存性の高さと連携の自然さから見て、意外と経験豊富な分隊なのかもしれない。
「…よし、ソルジャー撃破!」
たった数秒でボロボロになったソルジャーの背後に回り込みコアにライフルを叩き込みトドメを刺し、次の場所へ向かう準備を始める。
「俺達はこのまま遊撃を続ける、ここのポイントで孤立している味方を助けられるか?」
『…この場所なら問題ない、大丈夫だと思う』
「頼む、もう一機も失う余裕は無いんだ」
『任せてくれ!それと、あんたらも倒されないでくれよ!』
助けた重量級が僚機と共に味方の救援に向かったのを見届けると同時にロケットランチャーのリロードが終わり、準備が出来た。
「さあ次の…」
『敵航空機なのです!』
反射的に遮蔽物に隠れると火を噴いている敵航空機がこちらに吊り下げた二つのガトリング砲を見せつけていた。対空砲火から逃れるため、少し離れたところを運悪く見つかってしまったようだ。
「下手に動くな、バラバラにされるぞ!」
『どうするの隊長!?』
「赤い排熱部を狙うしかない、それ以外の場所は2footの火器じゃ歯が立たないからな」
荒れた地上で運用するために強固に作られた航空機の分厚い外装が、こんな時に牙を剥くとは皮肉なものだ。軍事利用されるのは目に見えていたことだろうが、復興のための航空機の扱いがこれかと思うと少し思うところはある。
「奴は手負いだ、ここで墜としたい」
『手伝うぜ恩人さんよ』
敵航空機の右側のガトリング砲の給弾ベルトが突如破壊され、バラバラと砲弾が地面に落下する。
それは少し遠くで狙撃銃を構えた軽量級の仕業で、敵航空機の小さな弱点を正確に射抜いて見せたのだ。
「助かる!」
『良いってことよ、恩は忘れない主義でね』
右側のガトリング砲を失い、死角となった方向に回り込みロケットランチャーを放つ。
ミサイルと違い敵を追尾してはくれないが、電子機器がない分炸薬は多く威力は高い。
「命中!」
『当たったのです!』
自分が放った弾頭が命中したことで更に噴く煙の量を増やし、ガトリング砲を狂ったように乱射する敵航空機にリロードしたロケットランチャーを一斉に向ける。
「撃て!」
動きが鈍ったところに三発も撃ち込まれ、敵航空機はやっと地に落ちた。
空を見れば敵航空機の数も少なく、味方が上手くやったのか逃げ帰る敵機の姿もある。
「やっと流れが戻って来たか?」
『みたいだな、だが恩人さんの仕事はまだあるみたいだぜ』
スナイパーに示された方向を見れば、ソルジャーがこちらに向かって来ていた。
いつの間にか立て直せていた味方の活躍により、数を減らしていたソルジャーだがそれでもかなりの数がこの辺りに居る。
「殲滅する、手伝ってくれ」
『ソルジャーの共同撃破数が増える上にアンタの頼みだ、勿論手伝うさ』
『俺も居るぞー!』
声を上げたのは、先程助けた重量級だ。
味方の救援に成功したようで、もう1分隊を引き連れて戻って来た。
『補給部隊って子達から補給は受けた、これで働ける!』
「敵掃討に重量級の存在は不可欠だ、有難い」
急遽結成されたソルジャー狩りチームは、その後5機撃破の大戦果を上げ帰還する。
オスクリダットはボロボロになっていたが、未帰還機は出なかった。
ー
おまけ
この防衛戦が行われる少し前の出来事。
「ケリー、コーヒー煎れてくれ」
『コーヒー?』
「どうした」
『いえ、珍しいなと思いまして』
人工知能であるフィギュアヘッズ達は、2footに入って戦う時以外は専用の端末に入ったり、家のサーバーに入っていたりと場所を変えることが出来る。
今は家のサーバーに入っているので、対応した家電なら動かすことが出来るのだ。
『苦い飲み物は苦手では?』
「…昔の映像作品を見たら飲んでみたくなってな」
恐る恐る口をつけると、案の定苦くて顔を顰めてしまう。
ケリーが一緒に用意してくれていた砂糖とミルクを入れ、口当たりをマイルドにしてから再び口をつける。
『今度から、カフェラテを用意しますね』
「いや、すまなかった」
『気にしないで下さい』
ケリーはこの後、自らの隊長が苦い物が嫌いだという他のフィギュアヘッズに無い情報を独り占め出来たことに束の間の優越感に浸っていた。
しかしソフィーに聞かれた際に話してしまい(ソフィーは可愛い者、物双方に弱いのだ)、結局皆に共有されてしまうのだった。
取り敢えず防衛戦終了です、次は番外編を挟んで2foot達とスナイパーと重量級乗りの掘り下げを行います。
機体の画像を挿絵として貼るのはどうかと思うので画像は貼りませんが、攻略wikiから画像を見てもらえると良く分かるかと思います。