三単語小説   作:薫。

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お題 :「ツノ」「カレー」「信号機」

 鹿の角が入っているカレーを売っている店が近くにあると風のうわさで聞いた。とても人気で、お昼時には売り切れてしまうのだとか。

 鹿の角は言い表すことが難しい美味しさがあるらしい。普通に過ごしていたら、食べる機会なんてないものだ。単純にどんな味がするのだろうか。

 今日は休日で、特にすることもない。思い立ったが吉日というし、食べに行こう。

 今の時間は午前9時。のんびりと店に向かっても売り切れることはないだろう。

 調べたところによると家から徒歩20分くらいの場所にあるようだ。このくらいの距離なら天気も良いし、歩いて行こうか。

 そうして、最低限の支度をして家を出る。

 

 思ったよりも信号機が多い。

 

 赤信号で止まる。

 

 赤信号で止まる。

 

 赤信号で止まる。

 

 流石に止まりすぎだろう……。まだ家を出て数分しか経っていないのに。そんな風にげんなりしていると、なにやら辺りが騒がしいことに気が付く。何かあったのだろうか。

 

 「おい、信号機の上に猫がいるぞ!」

 

 「どうにかして助けられないかしら!?」

 

 どうやら、信号機の上に猫がいるらしい。その猫は降りられなくなっているようだ。不安な顔で鳴いている猫。どのようにしてこんなに高いところに上ったのだろうか。

 

 そうやって猫を観察していると、誰かが呼んでいたのであろう警察と専門業者が到着した。彼らも早く事態を解決したいのか、大急ぎでこちらへ向かってくる。

 

 「皆さん離れてください!私たちで解決しますので、近づかないようにお願いします!」

 

 警察がそう、辺りの人々に呼びかける。言うことを聞かず、離れようとしない人もいたが、そういった人は警察に引きずられるようにして連れていかれていた。俺はそれなりに離れたところで見ているので特に関係はない。

 そうして、周りに人がいなくなったことを確認した警察が辺りの道路に通行止めをかける。車も通らなくなった後、業者が手際よく猫を助けた。慣れているのだろうか、その手際よさに素直に感心してしまう。猫が無事でよかった。これで安心してカレーを食べにいける。

 

 

 猫の救出劇は思ったより時間がかかっていたらしい。今は午前11時40分、そろそろお昼時だ。急がないとまずいかもしれない。

 

 赤信号で止まる。

 

 赤信号で止まる。

 

 赤信号で止まる。

 

 何回止まるんだよ……。ことごとく赤信号で止まり続けた俺がカレー屋にたどり着いたのは午後0時の少し前だった。

 もうかなりの人が並んでいる。これ以上遅れをとるわけにはいかない。そう考えて、すぐに列に並ぶ。すると、カレー屋の店員が声を上げる。

 

「ここで、本日分終了でーす!」

 

あっぶなあ。本当にギリギリだった。あと少しでも遅れていればすごすごと帰ることになっていただろう。間に合ってよかった。

 

 

その後食べたカレーはすごく美味しかった。鹿の角はほかの味で形容しがたい美味しさがあり、その謎のうま味がカレーとうまい具合にマッチングしていた。3000円と結構な値段だったが、その値段に見合った美味しさだったように思う。そんな感想を抱え、帰路につく。

 

 

 

あ、カレー屋に財布を忘れた……。

 

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