政治にそこまで詳しいわけでもなく、書きたかった流れを書いただけなので多目に見て頂ければ幸いです。
少しだけ未来のとある日、首都東京にある総理大臣官邸にテロリスト集団が押しかけていた。
テロリスト集団は国会議事堂の周辺にバスマジックリンを大量に散布している。
「私たちの話を聞け! さもなければ、この数十倍ものバスマジックリンがお前たちの周りに撒かれるだろう! バスマジックリンでお前たち政治家の汚れた思想を洗浄してやる!」
そう、総理大臣官邸にいる総理大臣たちに対して叫んでいるテロリスト集団。彼らがこのような行動を起こしているのには理由がある。
一週間ほど前、消費税を13%に引き上げる法律が閣議決定された。そして、軽減税率のシステムも改正されることになった。ノートや鉛筆など、日常生活で使わなければならない道具の税率は12%で、お菓子などの生活に大きく影響しない食べ物は11%、野菜や肉、米などの主要な食べ物については10.5%、飲み物は10%となる。
この決定に異議を唱えているのが件のテロリスト集団である。彼らは消費税を変えるのは構わないのだが、一律にしろと叫んでいるのだ。
2019年に軽減税率が適用されて以来、国民の税率計算は複雑の一途を辿っている。そこからも軽減税率の適用対象はころころ変わった。そんな細かく1%単位で変動するややこしい税率に国民のフラストレーションは溜まり続けていた。そんな中でこの決定だ。意味が分からない。軽減税率の対象を細かく区分しすぎである。これならいっそ、13%で統一された方がマシだ。そんな決定に贄を切らした人々が一致団結し、この騒動を起こしている。
そんな暴動の渦中である官邸の中は大きなパニックになっていた。
「総理! かなりの規模で暴動が起きています! このままではどうなるか分かりません!」
「構わん、放っておけ。彼らの行動はバスマジックリンを撒くだけの可愛らしいものだ。じきに鎮圧されるだろう。
それよりも決めなければいけないことが多数あるのだ」
「そうは言いますが、もうかなりの被害が出ています! 近隣には影響ないのですが、官邸の周りはバスマジックリンだらけです!
それに鎮圧されたとしても、内閣の信用はガタ落ちです!」
「だから、放っておけと言っているだろう! あのような人間は私たちが対応すればするだけつけあがるのだ!!」
このように口論を続ける総理大臣と秘書。彼らが口論をしている間に官邸の中へテロリスト集団が侵入してきたとの報告があった。
「警備員はなにをしているのだ! なぜこうも簡単に侵入される!」
「警備員の半数はあちらに寝返りました! 今、残りの警備員は重要箇所を守るように指示しています。
また、テロリスト集団の人数は5000人をゆうに超えています! このままでは官邸が陥落してしまうのも目前かと!」
総理大臣たちにとっては絶望的な状況だ。今から警察や自衛隊の招集をかけても到着する前に官邸が陥落してしまう。
テロリスト集団の行動は洗練されており、彼らが暴動を起こしてから官邸に侵入するまで10分もなかった。官邸の警備は万全のはずである。しかし、彼らこんな動きをしたということは、政府の中に誰かしら内通者がいると考えられる。だが、今は内通者を探している場合ではない。テロリスト集団の狙いが総理大臣である以上、総理大臣はどうにかして逃げないといけないのだ。
退却していく総理大臣一味。しかし、テロリスト集団の進軍速度はとてつもなく速かった。いとも簡単に追いつかれてしまう。そこで、総理大臣の秘書が声を上げる。
「私が殿を務めましょう。総理、あなたの言うことには不満も数多くありました。ですが、あなたが国民のことをしっかりと想っているのは知っています。ですから、あなたはこんなところで終わってはいけないのです!」
「だ、だが! お前ひとりでは!」
「なに、少しは武術の経験もありますので。あなたたちが逃げる時間くらい稼いでみせますよ」
そう言い残し、単身テロリスト集団へ向かっていく秘書。総理大臣たちは彼に背を向け逃げることしか出来なかった。
そこから数々の犠牲を払い、逃げ続けた総理大臣だったが、あえなく追いつかれてしまう。
「なあ、総理大臣さんよ。ちゃんと話を聞いてくれよ。このまま逃げるようなら、あんたをバスマジックリンで洗濯することになるぞ!」
脅された総理大臣。彼はもう逃げられないと悟り、テロリスト集団との話に応じる。
「わかった、私も簡単に死にたくはない。話を聞こう。願いはなんだ」
「そこまで、大層なことじゃない。消費税の税率を13%で一律にしてくれってんだよ」
そうテロリスト集団のリーダーが口にした瞬間、総理大臣の顔が驚愕に染まる。
「どういうことだ……? なぜ、自ら高い税を払おうとする?」
「いや、俺たちも高い税を払いたいわけじゃない。けれど、軽減税率がややこしすぎて、それの計算に比べれば、高くても一律の方がいいってことだ。ここにいる5000人、全員がそう思ってる」
「そういうことだったのか……。
私は今まで出来る限り税率を上げないように努力してきた。しかし、不況も重なり、消費税を上げざるをえなかったのだ。だから、軽減税率を多く導入することで可能な限り負担を減らそうとしてきた。それが間違いだったというのか」
そこからはとんとん拍子に事が運んだ。10万人のテロリスト集団と政府は和解。総理大臣たちはこの責任をとって辞任した。しかし、この騒動で総理大臣が国民のことを大切に思っていることが国民に伝わる結果となった。こうした彼の思いは次の総理大臣の決定に少なくない影響を与えることとなる。
その後、内閣総理大臣に任命されたのは前総理大臣の秘書であった。彼は前総理大臣の政治を踏襲しながらも国民の意見をこれまで以上に取り入れており、後世では歴代最高の総理大臣として名を馳せている。