三単語小説   作:薫。

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お題:「引きこもり」「伊達メガネ」「寝袋」

 男は激怒した。必ず、かの自身の学力を馬鹿にした伊達メガネ野郎を除かねばならぬと決意した。

 男には勉強が分からぬ。男は一介の学生である。クラスカーストは下の上くらいで過ごしてきた。けれども自身が馬鹿にされることに対しては、人一倍に敏感であった。

 きょう未明男は自宅を出発し、学校を越え街越え、十里はなれたとある山へやって来た。男には勉学の素養がない。ただ忍耐力だけが取り柄だ。

 

 許せね────!!!!!!!!!! あんの伊達メガネ野郎、俺のこと「陰キャで勉強が出来ないとかなんの取り柄があるんだよ」って馬鹿にしてきやがった!!!! 絶対に目にもの見せてやるからな!!!! 

 けど、あいつ学内テスト一位なんだよなあ。いつも満点だし、俺じゃ勝てないだろう。ならどうするか? フィジカルで勝てばいいのさ。留年したっていい。あいつを見返すためならそれくらい些細なことだ。

 俺は!!!! 山に引きこもってやる!!!! 山籠もりして、フィジカルを鍛えてみせる!! 

 

 俺が今いる山は一度入ったら二度と帰ってこられないと有名な熊の出没する山だ。既に帰り道は分からない。ここで、熊を倒せるくらい強くなれればあんなやつイチコロって寸法よ。俺は今高校二年生。一年以内で帰ってこなければあいつは卒業してしまう。だからそれまでに強くならないといけない。俺が持ってこられたのは寝袋とチャッカマン、日記、そいて三日分の飲食物のみ。つまるところ生活基盤を早急に整えなければいけないのだ。

 

 一日目。なんの成果も得られなかった。ただ筋トレをして過ごしただけだった。

 二日目。上に同じ。

 三日目。流石に不味いと感じ、山を駆けずり回る。すると川を見つけた。これで飲み物には困らないだろう。それだけで大きな進歩だ。

 四日目。節約していた食べ物も残り半分くらいだ。少し山を舐めていたかもしれない。

 

 七日目。ついに食糧が尽きた。これからは食べられるものを探さなければいけない。

 

 九日目。腹が減った。

 

 十一日目。ウサギが現れたので殺して食べた。あまり美味しくはなかったが食べられるだけ満足だった。

 

 十六日目。熊にボコボコにされた。絶対に倒せるようになってやる。

 

 

 

 五十六日目。猪を殺せた。

 

 

 

 八十日目。熊にリベンジ。だけど何もできずに負けてしまった。

 

 

 

 

 

 百八日目。食べられる草と食べられない草が分かってきた。犠牲になった動物たちに感謝。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二百七十二日目。熊に傷をつけることが出来た。一歩前進。

 

 

 

 

 

 

 

 

 三百三十五日目。なにか、あと一つのピースさえ埋まれば倒せそうなのに。それが分からない。

 

 

 

 

 

 

 残り三日。俺は未だに熊を倒せていなかった。体つきは一年前とは比べものにならないだろう。これなら伊達メガネ野郎は倒せるはずだ。帰るまでの道のりも既に把握している。しかし、熊を倒さずに山を下りることは俺のプライドが許さない。あと一つなにかきっかけがあれば倒せるはずなんだ。

 

 

 残り一日。この日付までに山を出ないと俺は予定日までに家に着けず、死んだことになってしまう。なにか、なにかないのか? 俺は熊を諦めないといけないのか? いや、違う。俺は絶対に熊を倒して、伊達メガネ野郎も倒してやる。そう決めたんだ!! 

 

 ……なぜか力が溢れてくる。俺の決意に肉体が答えてくれたのか? これなら、これなら熊を倒せる!!!! 

 

 

 

 

 

 あの後熊を倒した俺は無事に自宅へ帰ってきていた。親からは変わり果てた肉体を見て少し引かれたがそんなことは些細なことだ。

 明日はついにあの伊達メガネ野郎を倒す日なんだ。そう思うと楽しみで眠れない。ああ、今から本当に待ち遠しいぜ。

 

 

 

 朝早くに起きて、家を出る。伊達メガネ野郎がいつくるか分からないから張り込んでおかないとな。

 そして数十分くらい経っただろうか。通学路を歩いてくる伊達メガネ野郎を見つける。

 

「おい、お前。よくも一年前俺のことを馬鹿にしてくれやがったな」

 

「はあ? お前一年も学校に来ないでなにやってたん……っひ!!! 

 な、なんだよ。その体!! なんでそんなに筋骨隆々になってるんだ!!??」

 

 愚問、だな。

 

「それはお前を倒すためだあああああ!!!!!!」

 

 伊達メガネ野郎の顔をぶん殴る。すると、伊達メガネ野郎は顔をめり込ませながら盛大に吹っ飛んでいく。そして気絶してしまった。

 なんだ、こんなにもあっけなかったのか。周りの生徒たちは俺を恐れるように離れていく。そんな生徒たちを見ながら、俺は虚しさを覚えるのだった。強すぎる力はこんなにも虚無感を生み出してしまうのか……。

 いや、これで俺を馬鹿にするに人はいなくなったんだ! これからは平穏に暮らせるはずだ!! 

 

 しかし、男の戦いはまだ終わらない。この事件を皮切りに男は各方面から狙われることとなる。そして、この世に男を馬鹿にする人間がいる限り、男の戦いは続いていくのだ!!!!! 

 

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