あの日見た夢をもう一度、あの日見た光のその先へ   作:白髪ロング娘スキー

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act11 鍋パーティー 1-2

 

 ほんのりと湯気の上がる、赤く色付いた湿り気の残る肌。

 触れればもちもちと柔らかく、離せば名残惜しむかのように手に吸い付いてくる張り。

 最高級シルクなど軽く鼻で笑い飛ばせる魅惑のボディ。

 

 そんな完成された肉体を持つ女が、俺の前で寝転がっている。

 体を焼くような心地よい熱に浮かされ、惚けた視線でこちらを見上げてくる雪。

 そんな期待に応えてその体に跨り、ぷくりと膨らんだ肉に指を乗せた。

 

 強張った体を解すため、全身の肉を余すところなく揉みしだいていく。

 上へ向かいながら揉みしだき、先端まで辿り着くと硬くなったそこを指の頭で撫でる。

 硬くなったそこが柔らかくなるまでぐにぐにと。

 

「んんっ、ふぅ、はぁぁ、ふぅ……」

 

「このくらいの力で大丈夫か、雪?」

 

「だいじょぶっ、だよ。んぅ……」

 

 蕩けた表情で、ぼそりと声を漏らす雪。

 その反応に、もう少し強くした方が良さそうだと思いながら、更に雪の体に触れていく。

 まずは肩から行こうか。

 

 肩こりというものはなりやすく、治しにくい。

 特に女性は脂肪の塊を胸から垂らしているため、肩こりの悩みに悩まされる事が多い。

 雪に関してはその心配は無いかと思っていたが、触ってみると意外とコリが酷い。

 だがこれに関しては働き過ぎによる疲労だろう。

 それならば治し方も簡単だ。

 

 ほっそりとした腕を持ち上げて背中側に反らせ、ぐるぐると円を描くように回す。

 もう片方の手は肩の付け根に置き、うっかり肩が外れないよう固定。

 それが終われば反対側の手も同じように回していく。

 

 疲労による肩コリは大抵筋肉が筋張り、血が上手く回らなくなる所為だ。

 ならばこうして肩を回してやり、血の通り道を作ってやればいい。

 肩を回す、背中の後ろで手を組むなど自分でもやりやすい。

 

 まぁ自分でやるよりも人にやってもらう方がずっと気持ちいいし、やり方も教えてあるのにこれという事は、雪も俺にやってもらう事を期待して放置していたのだろう。

 もしくは、単純に俺の言った事を忘れたか。

 

 ……足へ移ろう。

 

 手を伸ばし、もっちりとした柔らかくも張りのある太ももに触れる。

 そして一揉みした瞬間、一瞬雪の足がピクリと動いた。

 

 その震えを手で感じた瞬間に太ももから手を離し、くるぶしを掴んだ。

 アキレス腱を手で挟み、脛骨と腓骨の隙間に指で圧をかけながらゆっくりと揉み上げていく。

 太ももには触れない様に、反対側の足も一緒に揉み上げる。

 

 そうして暫く揉み続け、体から力が抜けきったタイミングで手を太ももにまで回した。

 先程とは違って今度は特に反応も無く、雪はただ息を吐くように声を漏らしている。

 

 それを見てもう大丈夫そうだと思い、足を腕で抱えて指圧していく。

 小指から人差し指の4本で抱えた足を支え、両手の親指でゆっくりと揉み上げていく。

 上へ上へと向かい、足の付け根に辿り着くと今度は下へ下へと抱えた手で締め上げながら下ろしていく。

 それを2、3度繰り返し、逆の足も同じように揉んでいく。

 

「気持ちいいか?」

 

「はぁぁ……ふぅぅ……んぇ? なに?」

 

「いや、なんでもない。気持ちよさそうで良かったってだけさ」

 

「んぅー、きもちぃーよ?」

 

 なら良かったよ。

 もはや呂律も回らず、眠気全開の雪に思わず笑いながら、更に揉んでいく。

 

 そうして足もみを続け、足に溜まった疲労やコリが抜けたところで、今度はさらに上に行く。

 疲れが溜まりやすい腰と背中を、背骨伝いに揉んでいくのだ。

 本来は尻もやるのだが……俺の勇気が足りない。

 

「それじゃあ、背中もやるぞ」

 

「んー」

 

 背骨は柔軟な動きを可能にするために、多くの脊椎が軟骨を挟んでくっ付いている。

 軟骨は動き回る衝撃を全て吸収し、まるでゴムの様に徐々に徐々に縮んでいく。

 そうして縮んだ軟骨が吸収しきれなかった衝撃が骨に響いて痛みだすのだ。

 

 背骨の骨と骨の隙間に親指を置き、優しく圧をかけていく。

 ゆっくりと骨の隙間を広げるように押し、縮んだ軟骨を伸ばす。

 幾重にも重なる骨の節目全てにこれを繰り返して首までやる。

 そこまでやったら、今度は腰まで再び指圧をかけていく。

 

「あ”あ”あ”……きもぢぃー」

 

「なら良かった」

 

「やー、ほんとにとーかのマッサージきもちーよー」

 

 それならばこちらもやりがいがあるというものだ。

 

 続けて首のマッサージに入ろうとした時、部屋と居間を繋ぐ扉がバンっと勢いよく開かれた。

 突然鳴り響いた大きな音に、思わず雪と二人してそちらの方を向く。

 

「~~~ッ、紛らわしいにも程があるわ!」

 

 開かれた扉の先。

 そこには、顔を真っ赤にしながらこちらを睨んでいる夜凪景がいた。

 

 

 

 

 


 

     

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鍋パーティー 1-2

 

 


 

 

 

 

 

「あはははは! なるほどね! 私と透歌がね! あはははは!」

 

「むぅ、あれは誰だって勘違いすると思うわ。黒山さんも変な事言ってくるし……」

 

「おいおい、俺は柊と小僧が同じ部屋に入って出て来ねぇって言っただけだぞ」

 

「明らかに騙そうとしてる言い方じゃない!」

 

「あはははは!」

 

 こたつに入り、アルコールが回って顔が赤くなっている大人二人に弄られている夜凪景を尻目に、鍋の具合を見る。

 少ししんなりしたキャベツにネギ、つるりと箸から逃げるなめこやオクラに少し崩れた豆腐。

 

 うん、もう大丈夫そうだな。

 

「夜凪姉弟、キッチンから器と箸取ってきてくれるか。器は一番右の棚の灰色の奴だ。手分けして全部持って来てくれ」

 

「「はーい!」」

 

 キッチンに走っていく双子を見送り、鍋の火を弱めた。

 そして双子が持ってきた器に全て均等に具材を盛り、ゆず醤油とポン酢を用意して完了だ。

 鍋の中に具材を詰め込んで、と。

 

「おーい景、雪、あとそこのロクデナシ。飯の準備出来たぞ」

 

「「はーい」」

 

「あー? 誰がロクデナシだって?」

 

「お前以外いるのか黒山墨字?」

 

 そう聞くと、真っ直ぐこちらを指差す黒山墨字。

 ……自覚はあるからなんも言い返せねぇな。

 

「おら、いいから飯食え!」

 

「お? 言い返せないんですかー?」

 

「お前だけ飯抜きにすんぞ黒山墨字」

 

「さーて飯だ飯」

 

 ったく。

 

「それじゃあ皆揃ったところで、食うとしますか」

 

 手を合わせて

 

「「「「「「頂きます」」」」」」

 

「ゆず醤油とポン酢、好きな方をかけて食えよ。何もかけないと殆ど味しないからな」

 

 器にゆず醤油を垂らし、夜凪景に手渡す。

 因みに雪は何もかけない派だ。

 由緒正しき本来の水炊きの食い方でもある。

 殆ど味はしないけど。

 

 まぁ雪が好きで食ってるなら問題は無い。

 他人の好み云々に口出ししても良い事は無いからな。

 

 夜凪景がゆず醤油を出しすぎて器の半分がゆず醤油に埋まったのを尻目に箸を取る。

 そして、垂らされたゆず醤油が光を放つ青々としたキャベツを口に入れた。

 

 うむ、美味い。

 シャキシャキとしたキャベツはとろりとした甘みがあるし、その後にゆず醤油の酸味がスッと通り抜けていくのも良い。

 オクラはコリコリとした食感が楽しく、出汁をとられた肉にはゆず醤油が深く染みている。

 豆腐は謎の中毒性があるし、なめこなんかはぬめぬめだ。

 

 誰も喋らず、ひたすらに鍋と酒をカッ食らう。

 静かな部屋にはぐつぐつと煮える鍋の音と、箸が器に擦れる音のみが響く。

 シャキシャキコリコリと聞こえてくる咀嚼音はまるで一つの音楽の様だった。

 

 そうして食べる事暫し、気付けば鍋の具材は無くなっていた。

 

「腹いっぱいになったか?」

 

「んー、もうちょっと欲しいかな」

 

「まだ食べれるわ」

 

「酒のお代わりは無いのか?」

 

 だよなぁ、だって俺が用意したの5人分だもん。本来なら黒山墨字の分ねぇもん。

 一人増えた事で、全員の食べる量が一人前分減っているのだ。

 用意した具材を食べきっても腹いっぱいにならないのは当然のこと。

 

 あと酒は冷蔵庫に入ってるから好きに取って来い。

 

「持って来てくれよ若者」

 

「冗談抜かせオッサン」

 

 ……さて、少しイレギュラーもあったが、こんな時の事も考えていない訳じゃない。

 キッチンに向かい、冷蔵庫を開いてあるものを取り出し、水洗いしてざるに放る。

 そして居間に戻り、それが入ったざるを掲げた。

 

「うどん煮るぞ」

 

「待ってましたぁ!」

 

「酒は?」

 

 うるせぇなぁ、ホラ。

 ビールの入った缶を泡立たないように投げ渡し、こたつに入り込む。

 

「お、サンキュー」

 

 さて、うどんを煮るとしますか。

 弱めておいた鍋の火を強くし、うどんを放り込む。

 

「どんどん食えよー、うどん無くなっても炊いた米で雑炊も作れるからな」

 

「……流石に多過ぎじゃねぇか?」

 

 ぶっちゃけ俺もそう思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅー食った食った」

 

 結局、用意していたうどんは食い尽くされ、炊いてあった米で作った雑炊も殆どが無くなった。

 一番食ったのは俺で、次が雪。その次に夜凪景が来て最後に夜凪姉弟だ。

 黒山墨字に関してはあくまで酒の肴として食べていたため、そこまで消費に貢献はしていない。

 

 そして、そんな雪たちだが、一人残さず夢の中だ。

 雪はうどんを食ったらバタンキュー。夜凪家は雑炊を食べている途中で眠くなった双子の世話で離脱、そのまま就寝。

 今この場で起きているのは俺と未だに酒を入れてる黒山墨字だけ。

 その黒山墨字も、先ほどからなにやらイヤホンを付けてタブレットを見ており会話は出来そうにない。

 

 となると……片付けますか。

 こたつから出て立ち上がり、器に残ったものを纏めて重ねていく。

 よし、持っていこう。

 

 そう思った時、待ったがかかった。

 

「よぉ、お前名前なんだったか」

 

「名前? 柊透歌だが」

 

「ふーん。ちょっと付いて来いよ」

 

「? 取り敢えず器片付けてからな」

 

「それでもいい。外で待ってるぞ」

 

 そう言い残し、黒山墨字は外に出て行った。

 

「何の用事だ……?」

 

 気になるが、取り敢えず器を片付けていく。

 洗い物かごに水を溜め、使った食器を全て突っ込んでいく。

 洗うのは後でいいだろう、話が終わるまで浸け置きだ。

 

 手を拭き、靴を履いて外に出る。

 黒山墨字は玄関の近くでタバコを吸っていた。

 

「で、何の用事なんだ?」

 

「いや、お前の名前を聞いておきたくてな」

 

「? だから柊透歌だって」

 

「本当に?」

 

 …………こいつ。

 

「初めまして、キング・オブ・ヒューマン。いや、こう言った方がいいか? 重要無形文化財。最年少人間国宝、如月逢魔」

 

 


 

主人公プロフィール

 

 

柊 透歌(ひいらぎ とうか)(17)】

9月15日生まれ 身長172cm AB型 YouTuber

 

【好きなもの】

才能、進化、夜凪景の才能、柊雪、意識の無い時間

 

【嫌いなもの】

自分の才能、無才能者、才能を無駄にする奴、肉じゃが

 

【趣味】

夜凪景の観察、昼寝

 

【好きな映画】

『JOKER』『ルース・エドガー』『新感染~ファイナル・エクスプレス~』『ミスト』

 

「人の本性、そして変わりゆく心が知りたい」

 

 

【トラウマ】

桜、雨、朝、孤独

 

 

 

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