正義と、大義と。   作:新田良

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第十三話 嵐の前夜

 

 

 

 

 

 

 

 それからと云うもの、その騒動は三日間も続いたのだ。

 あの時に押し寄せてきたのはほんの一握り。他にも多数の、と云うよりもほぼ全ての部活動の予算が削減されており、挙句には机や椅子などの備品維持のための予算まで削減されてしまっていた。生徒会の横暴だと部活動生はもちろんのこと、先生までもが生徒会室に苦言を申し立てに来たのだ。

 大方を捌ききって、楯無はふへーっと生徒会長の机に突っ伏して脱力した。珍しく疲れた様子を見せている虚も一息をつこうとお茶を淹れ始めた。

 

 「疲れた疲れたー。まったく、堪ったもんじゃないわね」

 

 「まったくです。さてあの人が帰ってきたらどうしてさしあげましょうか」

 

 うふふふふっ、と朗らかに笑っているはずなのにその笑顔が真っ黒に見えてしまうのは一夏の目の錯覚だろうか。とても怖いです虚さん、とは正面から言えない。

 騒動の原因たる修正予算を組んだのは、鬼の守銭奴櫻井千奈である。櫻井が組んだのなら予算が大きく削られているのも納得できる。とはいえ、生徒会室に文句を言いに来られても困るのだ。なにせその櫻井が今現在行方不明なのだ。

 虚はとても楽しそうに白い拳をゴキゴキと鳴らした。

 

 「いったいどこにいったのでしょうか。のこのこと帰ってきたら私の拳が唸りだしそうです」

 

 「おおおおお、お姉ちゃんがあんなにマジギレしてるのちょおひさしぶり……」

 

 妹の本音はいつも眠たげにとろんとしていた目を見開いて慄いている。もはや怖すぎて直視できない。一夏は冷蔵庫から買ってきたケーキを取り出そうかと思案し始める。

 幼馴染のキレっぷりに同じく恐る恐るといった様子の楯無は一夏に近づいてそっと耳打ちする。

 

 「一夏くん一夏くん。櫻井くんの携帯番号とか知らないの?」

 

 「それが、櫻井のやつケータイを持ってないんですよ」

 

 櫻井は携帯電話を持ち歩かないどころかそもそも持っていなかった。小学生ですら携帯電話を持ち歩く今の世の中では希少人物といえるかも知らない。一夏の連絡もいつも向こうからだ。非通知であることから公衆電話を使っているのであろうが、いったいどこで何をやっているのだろうか。護衛である櫻井がいないせいで一夏はこの三日生徒会室の仮眠室で寝泊まりしていたのだ。なんでも生徒会室は見かけによらず学園で上位の安全地帯だとか。90mmライフル砲を撃ちこまれても大丈夫と櫻井は豪語するが、その事実が尚更怖い。

 楯無もそれを知っていたようで、さして落胆するわけでもなく、そう、とため息をついた。

 そんな時だった、突然生徒会室のドアが開いた。件の真犯人だった。

 

 「お疲れ様です」

 

 「あら櫻井さんいったいあなたはどこにいっていたのですか? いったい、どのツラ下げてここに来たのかしら。この三日大変だったんですよ、あなたがあんな巫山戯た予算案を提出したもんでしたから。この負債はいったいどうして埋め合わせしましょうか。文字通り埋めます? アスファルトに覆われた地面ですけど元に戻せば文句はないでしょう」

 

 うふふふふっ、と上品に笑いながらいつの間に距離を詰めた虚が櫻井の襟首を両手で掴みあげてきゅっと締め上げた。いったいその細腕のどこからそんな強力(ごうりき)が出るのだろうか。櫻井の身体が宙に浮き、足がぷらぷらと力なく揺れている。

 ガタガターっ、と幼馴染の所業に怯えていた楯無であったが、もがいていた櫻井の生命活動が停止したのを見て慌てて虚に飛びついた。

 

 「わわわっ、虚ちゃんストップ! 櫻井くんが死んじゃうって!」

 

 主である楯無に飛びつかれて我に返ったのか、虚はハッと居住まいを正した。

 

 「もうしわけございませんお嬢様。うっかりお嬢様の初恋の相手を……」

 

 「わわわっ、虚ちゃんストップ! だから違うって!」

 

 「僕はうっかり殺されかけたのか……」

 

 けほけほっ、と咳を吐きながら櫻井が床に取り落した書類を掻き集める。結構大事な部分を見事に流された楯無は複雑な唸り声を出した。

 溜め息をついて、楯無は腕組みをする。腕組みをすると豊満な胸が押し潰れる。

 

 「怒っているのは私もなんだからね。あんな予算案出しちゃっていったい何を考えているの? っていうか、いままでどこ行ってたの?」

 

 「まあ用事があったんだけど。そろそろ騒動が治まるかなって帰ってきたらちょうどいい感じに」

 

 楯無が笑顔で櫻井の襟首を掴みあげてきゅっと締め上げた。今度は一夏が慌てて楯無に飛びついた。

 

 「おお、お嬢様がこんなに怒ってるのちょおひさしぶり。さっくんすごい」

 

 「感心してないでのほほんさんも手伝って! 櫻井が殺される!?」

 

 一夏のおかげで九死の一生を得たはずの櫻井は反省したようすも見られず、

 

 「織斑一夏、茶」

 

 「待っておりむー! そのヤカンはマズいってーっ! 中身沸騰してるからーっ!」

 

 キッチンからぴゅーぴゅーと音の鳴るやかんを振り上げながら持ってくる一夏を珍しく本音が常識的に止めに入った。

 仕方なく一夏がキッチンにもう一度引っこみ、お茶を淹れて戻ってくると櫻井が缶コーヒーを飲んでるのを見て思わずちゃぶ台をひっくり返しそうになるが、あいにく生徒会室にはガラステーブルしかなかった。

 缶コーヒーをまずそうに飲みながら櫻井はなんとでもないように言う。

 

 「何でって、無駄だから減らしたんですけど」

 

 「減らしたって……。二割も減らせばみんなさすがに怒りますよ」

 

 なにせ金にがめついIS学園の生徒である。一割減らせばデモ。二割減らせばクーデターである。

 頭痛がするのか虚が目元をおさえる。ありとあらゆるところから減らされた予算は総額二億円。流石世界最強のISを運営するIS学園の予算である。

 非難されたコトが不満な様子の櫻井が顔を顰めた。

 

 「何を怒っているんだ。僕は違反をしたわけじゃない。理事長の判子だってある」

 

 「確かにそうですけど……」

 

 正論を言われて虚が言いごもる。

 そうなのだ。これほどまでに巫山戯た予算を組み上げたのであるが、問題なのはこの予算案が正規の手順を踏んで決議されているのだ。予算は生徒会が独断で組むものの、それを精査する理事長の判子が押されているため誰も覆すことができなかった。櫻井がいくら無茶をしようと理事長が許可を出せばまかり通るのだ。

 それが大きな疑問。どうして理事長はこの予算案を許可したのだろうか。不満はいたるところで爆発しているし組んだほうも許可したほうも正気とは思えない。

 虚に正気じゃない人認定された櫻井は呑気に掻き集めた書類の順番合わせをしている。

 

 「そもそもあの提出した予算はつなぎの予算だ」

 

 「つなぎ、ですか?」

 

 要領の得ないように虚が繰り返した。実際に櫻井の言っているコトは意味不明に近い。

 

 「IS学園の予算は予算決議されないと動かせない。だから本予算のためのそのつなぎ」

 

 「……それで消えた予算二億円はどうなったんですか?」

 

 最も問題は消えた予算についてだ。櫻井はあらゆる予算を削ったが、その削った予算の差額がどこに回されたのか何度も調べた虚にもわからなかった。理事長もそれに気が付いていないはずがない。

 理事長もここ三日櫻井と行方不明となっていた。

 虚が修正予算案を手で叩いて問うと櫻井は目もくれずに書類を数枚抜き取って虚に差し出した。

 

 「はいこれ新しい本当の予算案」

 

 無視されたコトにむっとしたが、虚はその紙束を受け取った。楯無もその予算案を虚の肩越しから覗き込む。そして、首を傾げた。

 

 「……。これ、どこが変わったの?」

 

 「変わってる。最後の行」

 

 「最後……」

 

 ページをめくって最後の項目を見る。そして固まる。

 

 「なにこれ」

 

 「IS自主訓練用の予算だけど」

 

 「それはわかってるの! 私が聞いているのはどうして予算が“二十四億も増えてる”のっ!?」

 

 意気込んで訊ねる楯無。虚も訝しげな細目で櫻井を見ている。

 

 「まさか、出資者を脅して巻き上げてませんよね」

 

 「布仏虚は僕のコトをなんだと思っているんだ?」

 

 「じゃあこれはいったいどういうコトなんですか?」

 

 「予算がとても足りなかったから株で儲けた」

 

 櫻井がさらっと意味の分からないコトを言い出す。一夏はもちろんのコト、楯無も虚も目を丸くした。

 

 「……はい?」

 

 「かぶってあのかぶ? 漬物がおいしい」

 

 「それは蕪だ。どうやって蕪で二十四億儲ける」

 

 「じゃああの屋久島の?」

 

 「それはウィルソン株だ。それで儲けたら僕凄い」

 

 「それじゃ御労しいほうの―――」

 

 「それは寡夫。ってかまだ結婚してねぇよ。誰だよ死んだ妻」

 

 「ええっと、一夏くん?」

 

 「俺が死んでるんですかっ!?」

 

 あらゆる可能性を上げたがそれを否定され、そろそろと楯無たちは目を書類に戻した。紙面にはやはり二十四億の数字が。

 

 「はぁっ!? はぁあああああああああっ!?

  株で二十二億儲けたーぁっ!? 桁いくつ間違ってんの櫻井くん!?」

 

 楯無が頭を抱えて叫ぶ。一夏は恐れ戦き、本音は無邪気に目を輝かせる。

 

 「これでいっぱいお菓子かえるね!」

 

 「こんなにいっぱい買わないよのほほんさん。っていうかお菓子いっぱいの今の現状でも不満なのっ?」

 

 一夏が今度は別の事で本音に慄く。いつ見てもお菓子をいっぱいにほうばっている彼女は太らないのだろうか。

 とはいえ楯無はそれどころではない。櫻井に掴みかかる勢いで訊ねた。

 

 「いったいどうやって? 儲けるにしろこんなあっという間に……」

 

 「そりゃ何度も綱渡りみたいな賭けに買ったけど。それに僕には情報とかあったし」

 

 「情、報……?」

 

 「自慢はできませんが友達はいませんが知り合いは多いんですよ。ポーカーでボロ勝ちした相手を真っ裸に引ん剥いて小間使いにしたり」

 

 「本当に自慢できないわね……」

 

 楯無が冷や汗を流して引いた。この男は自衛官ではなかったのか。また櫻井の謎が増える。

 虚が慌てて言った。

 

 「だ、ダメですよ櫻井さん!」

 

 「何が?」

 

 「株取引で内部情報をもとに取引するのはインサイダー取引で違反なんです!」

 

  インサイダー取引とは、上場会社等の役職員など会社関係者が、その会社の株価に影響を及ぼす重要事実を知って、その重要事実が公表される前に、その会社の株式の売買などを行うことである。なぜインサイダー取引が違法なのかと云うと、このような取引が行われると、こうした情報を知らない一般投資家にとって不利となり、取引市場の公正性や健全性が損なわれる恐れがあるため禁止されているのだ。

 インサイダー取引を行った場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方を課せられる恐れがある。そして、もちろんであるがインサイダー取引によって得た財産は没収される。

 なのだが、櫻井は、はあ?、と顔を顰めるのだった。

 

 「それがどうしたっていうんだ?」

 

 「どうしたって……!」

 

 慌てふためく楯無や虚がおもしろいように、その懸念を何とも思っていないかのように不敵に笑って櫻井が言った。

 

 「僕が動かしたのはIS学園の予算だ」

 

 「……、? それがなに?」

 

 「IS学園は治外法権だ」

 

 などと櫻井は言うが、治外法権とはいったいどういった特権だったか一夏は思い出そうとする。

 治外法権とはA国内であってもその国の法律が適用されず、B国の法律で治めることができると云う外交特権の事である。

 

 「インサイダー取引は国際規定ですけど……?」

 

 「それは違う。各国で似たような取締りを自主的にやってるだけであって国際規定じゃないよ」

 

 「櫻井、それって国際規定とどう違うんだ?」

 

 「国際規定なら地球上にいる限り適用されるが、IS学園はどの国家にも属さない。つまり新しい自治国家みたいなもんさ。もちろんそんな規定はIS学園にはない。日本で取引したがIS学園の法には触れてないから問題ないよ」

 

 「「「……、」」」

 

 三人は沈黙してしまった。ここまで言い切られるといっそ清々しい気分になる。

 IS学園の制度をしいた理事長も、そしてIS委員会も、まさかIS学園の特権をこんな形で悪用されようとは露にも思うまい。

 櫻井は日本国の自衛官だが、日本から派遣されたではなくIS学園側が雇った人間なので確かに櫻井はIS学園に籍を置いた人間だ。

 

 「……、ちなみに理事長がよくOK出したわね」

 

 「ああ、理事長にはIS学園を格安で警備してくれる会社がありますよって僕が言ったら快諾してくれた」

 

 「ちなみにその会社って?」

 

 「僕が作ったペーパーカンパニー」

 

 「この詐欺師!」

 

 「自主訓練用の予算がこんなに増えたんだ。ウィンウィンだ」

 

 今度は虚も頭を抱えた。いったいどこがウィンウィンなのだろうか。というか、あなた本当に自衛官なんですか?

 

 「理事長にもすぐバレたんじゃないですか、これ」

 

 虚にそう言われて、櫻井が神妙な顔で口元に手を当てた。

 

 「そうなんだ。思ったよりもはるかに早くバレた。お人好しのご老人だと思ってたんだが、意外とバカにできないな」

 

 「櫻井くん、ロクな死に方しないわ……」

 

 楯無も呆れかえった。彼女も自分がお祭り好きだと自覚しているところがあるが、この男のところではしっかりと常識人のようなのだった。

 もはや何も言うまいと虚が新しい予算案を見直す。

 

 「でも理事長がよくこれに判子をしましたね。あなた詐欺師なのに」

 

 「人聞きが悪い。あと怒ってる?」

 

 「いったいどこにIS学園の予算ちょろまかして株で儲ける人がいるんですか……」

 

 「だから予算が足りないんだ」

 

 そこで虚がはたと思い至る。そう、櫻井はさっきも『予算が足りない』と言っていた。櫻井が増やした予算はISの自主訓練用の運用予算だ。確かにISの運用にはお金が掛かるし予算がたくさんあって困ることはないが、今のままでも充分な金額である。

 元の予算が一億円と少し。それがいまや二十五億円以上にまで膨らんだ予算を見て楯無が引きながら訊ねる。

 

 「まあ、いろいろ聞きたいコトは一度置いといて。このお金はいったいどうする気なの? 今にも戦争起こせそうなんだけど」

 

 本来の性能を充分に発揮できず、開発予算も大幅にかさんでいるのに世界がISを手放せない理由の一つに安いから、と云う理由がある。ISの燃料は基本的に電力であるため、航空機のように燃料代がかからない。またISには自己修復機能の一環としてエネルギーの再充電をコアが行うため、極論言えば稼働エネルギーが尽きても放っておけばまた動かせるのだ。また、ISには鉄壁の防御機構であるエネルギーシールドがあるため、戦闘機のようにミサイル一発で数百億が一緒に吹っ飛ぶこともない。さらに、ISの武装は基本的にマシンガンやアサルトライフル、大きなものでライフル砲など砲弾系統の武装が多いため、弾単価が現代戦闘の主力であるミサイルを遥かに超える低出費なのだ。

 ISを持っていない小国程度ならばIS三機程度と二億円ほどあれば通常兵器をすべて鉄屑に変えることができる。

 

 「ですので休日に大会を開催します」

 

 「大会? なにの?」

 

 「何って、ここはIS学園なんだろ?」

 

 「あ……」

 

 やっとのことで櫻井が何を理由に予算を削減し資金を作り、違法スレスレの株取引で予算を組み上げ、そしてその予算を理事長が認可した理由が分かった。

 

 「IS学園が部活動の全国大会常連校なのは当たり前だ。なんせ世界各国が国のトップクラスの文武両道の才女を掻き集めた学校だからな。そしてIS学園が部活動に強いのも放課後が暇だからだ」

 

 そう、ISは世界最強であるが、最大の欠点があった。それは数。ISは総数が圧倒的に劣っていた。

 以前櫻井が言った通り、IS学園に常駐するISの数は三十機。非常時に備えて六機が稼働待機状態にあるから訓練には二十四機しか使用できない。放課後の貸し出し時間は授業終了の四時半から七時半までの三時間。休日は朝八時から夕方七時までの九時間。一人一度の使用時間は一時間だから一週間で七百九十二回分。IS学園の生徒数は三学年四百五十人だから均等に分配しても一週間当たり一時間半と少ししか使えない。とくに三年生に優先的に分配されるから一年の一学期にはほとんど使用できないと考えてもよかった。

 その結果、暇を持て余した生徒が部活をして、そして全国大会常連校となったのだ。

 

 「ぐだぐだとくだらない自主練よりも試合のほうがいい。薄っぺらな量どころかその量さえも少ない。それなら密度の濃い実戦形式の試合をしたほうがいい」

 

 「……、」

 

 楯無と虚は沈黙した。櫻井の言っているコトは正しい。反論するところは何一つない。強いて挙げればその予算はどこからくるんだと言えるが、その予算を櫻井はまさに作り上げた。

 ただ―――、

 楯無が真剣な顔で問うた。虚も櫻井の顔をじっと見ていた。

 

 「……ずいぶんと、IS学園のために頑張るのね」

 

 「織斑一夏にはもちろん参加してもらう。さっきも言った通りミルフィーユみたいな薄っぺらな自主練をだらだらと重ねるよりも、厚みも密度もある実戦形式をやったほうがいい。試合なら平均で二十分前後で終わる。アリーナ四つに訓練機二十四機で回せば二日で全員が終わる」

 

 「……ッ、」

 

 楯無と虚のまわりでは一夏と本音が櫻井の手際を感嘆としていた。ISを動かすのが好きな本音も喜んでいる。

 だが、楯無と虚だけが気が付いた。いや、櫻井が楯無と虚にだけ『警告』したのだ。

 そも、櫻井の行動はおかしい。櫻井が生徒会会計として働き始めたのは土曜日。そしてその予算を組んだのが日曜日。つまり櫻井は土曜日以前にはすでにこのシナリオを書いていた。あまりにも早い。そして理事長が認可を出すのも早く、そして独断的すぎる。おそらく織斑千冬ほどの教師でなければ知りもしなかった案件だ。

 楯無は事の重大さに息を呑んだ。気が付けば握りしめていた拳が汗でぬれている。 

 櫻井は、“見切り”をつけたのだ。今のIS学園の現状では無理だと。自衛官として国際情勢や戦場の駆け引きを知り、ISの開発に携わってISの限界を知り、そしてIS学園の現状を知った櫻井が見切りをつけた。それも、たったの一週間で。

 IS学園は常に狙われている。数があるとはいえ訓練機しかなく、またそれを操るのは教師なのだ。『専門家』には大きく戦闘力が劣る。

 早急にIS学園の底上げをしないといけない。だから櫻井は珍しくも焦っている。

 もしかしたら、『その日』は近いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さて、あと数話で終わらせるか。

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