正義と、大義と。   作:新田良

35 / 49
第三十三話 はたして、被害者はどちらでしょうか

 

 

 

 

 

 なにやら不穏な空気を察して、触らぬ神に祟りなしとばかりに逃げ出した一夏。

 

 さっさと荷物を置こうと自分と千冬の部屋の前にやってきたが、その足をはたと止めた。千冬と櫻井は真耶の部屋にいつはずなのに、部屋の中から話し声がしたからだ。

 

 一夏が驚きと恐怖に体を震わせる。

 

 「幽霊か泥棒か……、どっちだ……! いや、どっちにしろ千冬姉ぇの部屋に忍び込もうとは命知らずな……っ!!」

 

 いったいどちらのお馬鹿さんかは知らぬが、仮に後者だとすればいま救急車を呼ばなければ犯人が可哀想だ。

 それに今は櫻井もいる。以前に掃除しに一時帰宅した我が家に運悪く空き巣がいたが、問答無用で櫻井がボコボコにして救急車ではなく、連絡を受けて自衛隊のゴツい車に放り込まれていずこかへ連行されって行った。

 

 はたして、一人で暴走族を壊滅させた千冬と敵と定めれば平気で腕の骨を圧し折る櫻井とどっちが怖いだろうか。

 

 まだ姿見ぬ不埒者の心配をしていた一夏だったが、襖の向こうから聞こえてくる声が知ったものであるコトに気がついた。

 

 そうと分かればためらう理由もない。

 

 安心した一夏は襖を遠慮なく開けた。

 

 「なにやってんだよみんな……」

 

 襖の開けた先では想像の通り、いつものメンバーがくつろいでいた。ただし、織江の姿が見えない。

 

 少女たちはいきなり襖を開けた一夏を認めるなりくたびれきった顔をする。もはや意味不明。説明がほしい。

 

 いろいろ言いたいコトがある一夏を差し置いて、女子代表で鈴が呆れたように文句を言う。

 

 「一夏。あんたおっそいのよ。なんで風呂に入るのに一時間もかかってんのよ」

 

 「……む、別にいいじゃんかよ風呂ぐらい。好きに入らせてくれよ」

 

 大変有意義な数少ない趣味とあって一夏は一歩も引かない構えだ。それどころか、鈴は女の子なんだからもう少しゆっくりお風呂に入ったらどうなんだ、男らしすぎるぞ、などと余計なコトまで言う始末。

 

 鈴が顔を真っ赤にして拳を振って怒りだした。

 

 「う、ううううっさいわよ! 男子だったら拙速に十分で終わらせなさいよまったく」

 

 「旅館に来てそれは鬼の所業だろ……」

 

 どうやら鈴の鴉の行水は相変わらずらしい。銭湯に行ってもさきに上がった鈴が待たせるなといつも怒鳴るので誘わなくなったのだがそれをいたく気にしていたのだが、一夏が知る由もない。

 

 「……し、しかたないじゃない。あんまり長くつかってるとすぐのぼせるし……」

 

 「まあ、鉄のような女だもんな鈴は……」

 

 「どういう意味よそれ」

 

 キッと睨みつけてくるので一夏は両手を挙げて降参した。せっかく風呂に入ったのに取っ組み合いなんかして汗を掻きたくはない。

 

 「というか、何やってんだみんな……」

 

 忘れてはならないが、ここは織斑千冬女史の部屋である。子羊がおいそれと立ち入っていい場所ではない。

 

 などと、考えていると、暇つぶしに広げていたらしいトランプをひとまとめにしながらラウラが察した様子で、

 

 「嫁を迎えに行こうと抜け駆け……げふんげふん。一夏を迎えに行こうと全員でこの部屋に来たんだがな。途中で酒瓶を両手いっぱいに抱えた教官とすれ違って―――」

 

 「あ、もういい。いまので理解した」

 

 どうやら酒を飲もうと真耶の部屋へと移動しようとした際に見つかってしまったらしい。

 

 普段は思慮深い千冬であるが、こういう時は妙に間が悪いというか頭が悪い。大方、秘密にする代わりにこの部屋の借用を認めたのだろう。

 

 身内のだらしなさに呆れながら一夏は手にした荷物を部屋の隅におく。その際に、千冬の荷物の合間からウィスキーボトルが顔を覗かせているのは幻覚だろうと決めつける。修学旅行のゲーム持ち込みよりかもヒドい。

 

 教員用の座敷は、生徒にあてがわれた部屋よりも幾分か広いため、大人数で集まるならたしかにこっちの部屋のほうが都合がよかった。

 

 「そういや織江はどうしたんだよ。いないじゃん。まさか仲間はずれ?」

 

 ここで首でもかしげられたら、一夏は友達を信じられなくなりそうだったが杞憂だった。

 一夏はエレナと箒から白い目を頂戴する。 

 

 「織江は―――」

 

 箒が口を開きかけたその時、まさに襖がもう一度開いて当人が現れた。

 もともと凄まじい美人である織江は浴衣を着るとさらに磨きがかかっている。櫻井が箱入りにするのも無理はない。

 

 「(しっかし、みんな浴衣を当たり前のように着こなすんだな……)」

 

 和服に着慣れている箒は当たり前として、外国人である仲間たちが着崩れを起こしている様子はない。さすがは女はみんな女優であると言われるだけある。

 

 一夏は思わずこの光景をカメラに収めようという欲求を抑える。これだけ冥福な光景を記念に残せないのは口惜しいが、これを弾に見せたら女に飢えてるので絶交させる可能性がある。

 

 織江の手には紙袋がある。それを見咎めたのはやはり鈴だ。間違い探しなどが得意な彼女は良い悪い関係なく目敏い。ついでに言うと、視界に映った違和感を見つけてそれがなんなのか答えを出す天性の才が彼女にはある。

 

 「お土産袋?」

 

 「へー、織江ってばもうお土産買っちゃったんだ。気が早いね」

 

 笑顔のシャルロットだが、織江は首を傾げている。まるでシャルロットの言いたいコトが全く理解できていないように。

 

 「お土産? 私は買わないけど」

 

 と、言いながら織江は袋から包装されたお菓子の包みをバリバリと破き始めた。

 

 「あ、いま食べるんだ……」

 

 「売店で和菓子が売ってなかった」

 

 悲しそうな顔で言う織江。普段ならば花月荘には和菓子のサービスもあるだろうが、臨海学校で貸切状態のいまはそんなサービスは含まれていない。代わりに売店では生徒向けにスナック菓子が割り増しの在庫で陳列しているが、あいにく織江はスナック菓子をあまり好んでいない。

 

 織江はひとつふたつと包装を破いて、それらを円の真ん中に滑らせた。

 

 「食べる?」

 

 欠片のような端的な問いだが、織江の思いやりは感じられる。

 

 「え、いいっスか? オリエが買ってきたのに」

 

 「いい。もうひとつある」

 

 そう言って、みっつめの包装を破き始める織江を見て、一同は苦笑いを浮かべた。

 

 「じゃあ、あたしたちは飲み物でも買ってくるわ」

 

 鈴に続いてセシリア、シャルロット、ラウラ、エレナが立ち上がる。

 一夏と箒もそれに続こうとしたが、セシリアが止めた。

 

 「お二人はそのままでよろしくて」

 

 「い、いやそれは……」

 

 「どうしてだセシリア?」

 

 鈴が頭を掻きながらどうでも良さそうに言う。

 

 「あたしたち代表候補生は国から支度金ってコトで使いもしない金を支給されてるの。こっちはもともと庶民だっていうのに、百万も二百万も貰っても金銭感覚狂うから逆に使えないっての」

 

 「そうだねー」

 

 一応、社長令嬢であるが庶民育ちのシャルロットも同調する。

 セシリアは高笑い。

 

 「おほほ。わたくしはいまさらそんなはした金にはこだわりませんわ。ジュースなんてグロス単位、ガロン単位でもって差し上げてもよろしくて」

 

 「わーすごいねー……。飲みきれないよそれ……」

 

 さすがセシリアの金銭感覚は庶民とは違った。寮部屋に豪奢なベッドを持ち込むような女である。実家とやらははたしてどれほどまでなのだろうか、とちょっと下世話な興味も湧いてくる。

 

 お言葉に甘える形で待っていると、セシリアたちが両手いっぱいに飲み物を抱えてやってきた。

 

 各々が好きなジュースを取り、ささやかな宴会が始まる。

 

 女が集まるといない友達の愚痴が始まるというが、この場においては鬼の居ぬ間にうわさ話というのか、話題はこの場に居ない櫻井についてだった。

 

 話の発端は櫻井と友達になろう鋭意努力中の一夏だった。

 

 「なあ、織江。櫻井ってどんなやつなんだ?」

 

 【……、】

 

 返答は女子一同からの冷たい眼差し。

 解せぬ。なぜ変態でも見るかのような目で見られなければならないのか。

 

 「なんでそんな目で見るんだよ……」

 

 「普段は耳の遠い大型犬みたいに鈍感なあんたがあいつどんな奴なんだって興味持ったら驚くわよ……」

 

 「……嫁よ。女に興味がないと思ったら男色だったのか……」

 

 「アプローチもすべてかわされるわけですわ……」

 

 「不潔だ」

 

 「おりむらくん……」

 

 「おおおおお……。なんだこれ。どんなやつなのか聞いただけで言われもない中傷が……。あとシャルはなんでそんなに離れるの?」

 

 正座一つ分距離をあけたシャルロット。その目は悲しげに伏せられていて俺は悪くないと言い切れなくなる。

 

 「……で、櫻井ってどんなやつなんだ?」

 

 問われて織江は少し考えるように首をかしげた。

 

 「思考が幼稚園児で止まった十歳児」

 

 「えらく具体的で難解な答えだな……」

 

 どこか気品さえも感じる所作で和菓子を口に運びながら織江は加えた。

 

 「常識は身につき始めてるけどそんなことは知ったコトか唯我独尊わがまま放題の自己中野郎ってコト」

 

 【……、】

 

 何とも言えない沈黙が降りる。さて、なんと反応を返せば良いのやら。

 

 同時に、一夏は、なるほど、と納得げに頷いた。織江の所感は簪のそれとどことなく似通っていたからだ。

 やはり、櫻井という人物はただ悪いやつではないらしい。

 櫻井への評価を上向き修正した。

 

 「どうしてそんなことを訊くの?」

 

 「……ん、だって友達になるには相手のコトを知らなくちゃいけないだろ?」

 

 少し詰まりながらも、一夏は恥じらうことなく言う。

 

 織江は和菓子を口にくわえたままぽかんと固まり、しばらくして口に含んだ分を飲み込みながら一夏を見つめていた目を逸らした。

 

 「……変な人」

 

 「変っ!?」

 

 まさかの言われよう。あなたのお兄ちゃんですよね、とはなんとか飲み込めた。言ったところで否定されるのは目に見えている。

 

 「あなたみたいな人初めて見た。千奈の態度を見た人はたいてい始めは距離を測りかねて身動きが取れないのに」

 

 「それを言ったらエレナはレアケースなんだな」

 

 言を受けて、織江はエレナに目線だけを向け、そうね、と小さく零す。

 

 「櫻井は友達がほとんどいなさそうだな」

 

 とラウラ。

 

 織江は厳かに頷いた。

 

 「そうね。わたしが言えたコトじゃないけど」

 

 まるで友達と遊ぶ周りの子供が自分とは立場が違うとでも言うような、同感ができないといった態度。

 

 「オリエは普通に友達ができそうっスけど」

 

 エレナが持参したスナック菓子をバリバリとかじりながら言う。

 確かに無愛想ではあるが、性根や口が悪いわけでもなく、受け身であれば十分に会話可能だ。

 

 しかし、織江はさらりと無表情でこんなコトを言う。

 

 「無理ね。わたし、小学校中学校でイジメられてたもの」

 

 【……えっ!?】

 

 耳を疑うカミングアウト。

 一夏たちは反応に困った。励ましたところでそれが良いとは限らない。何より、あっさりと言ってのける織江はそのコトをまったく気にしていない。

 

 気まずい沈黙が流れる。

 

 「……ええっと……なんで?」

 

 思わず聞いてしまった一夏。

 隣に座っている鈴からの肘鉄が脇腹をえぐった。

 

 ハラハラと見守るが、当人である織江は、やはりなんともないといった顔で理由を述べた。

 

 「学年で一番人気者だった男子がいたんだけど、告白されてフッたらイジメられた」

 

 「……ああ、なるほど。やっぱそういうのってどこでもあるもんだな」

 

 程度に差はあれど、小学校ぐらいならすでにカーストともいえる上下関係ができてくる。主に、カッコいいとか運動ができるとか頭がいいなど。織江はどうやらその中でもトップクラスの人間をフッたらしい。

 

 「……織江、あんたどうせ遠慮なくフッたんでしょ」

 

 そこは多少なりとも恥ずかしがったりなどすれば向こうも少しは面子が立つのだろうが、織江がその程度で動揺しそうもなく、真顔でイケメン男子をフッた姿が目に浮かぶ。

 

 「うん。あんまりしつこいから遠慮なくぶん殴った」

 

 【ぶん殴った!?】

 

 「そりゃイジメられるわ!」

 

 どうやら織江はそのころからアグレッシブだったらしい。

 

 当然の反応だったが、そんなみんなの反応がお気に召さなかったらしい。

 織江が不満そうに目を細め、わずかに眉間をよせる。

 

 「だって、しつこかったから。クラスの前でいきなり告白してきたり。最後は家の前までついてきたり」

 

 「あー……、そりゃキモいわ。ストーカー予備軍じゃないの」

 

 「そんなコトが一年に二,三回起きて気がつけば女子の半分が敵に」

 

 「……ん? それでも半分だったのか?」

 

 「そうね……、そんなイケメン共を年に何度もフッてたら全員敵に回してもおかしくはないけど」

 

 箒と鈴が意外そうに言う。彼女も日本の学校に通っていたから、日本の友達関係やイジメの実態をよく知っている。日本はイジメまでもが団体主義である。

 

 「大丈夫。最後はきちんと三分の二は敵になったから」

 

 何が?、の問いは全員で黙殺した。

 

 「差分は学年で一番人気の女子が千奈に告白してすげなくフッたから」

 

 「ここでアイツが出てくんのかよ!」

 

 「っていうか、告白されるんだ櫻井!?」

 

 一夏と鈴が悲鳴をあげる。

 

 「千奈は無駄にスペックが高くて顔もそこそこには良いから。あと喧嘩は強かったし」

 

 「櫻井さんも哀れですわね……」

 

 ついでに言うと、櫻井はほぼ保健室登校をしていたため、女子生徒からは謎のそこそこカッコいい男子と見られていたからかもしれない。

 

 普通の学校に通ったコトがないからか、他のみんなとは同情ができなかったラウラ。よくわからないといった顔のままコーヒーを飲み干して、

 

 「ほう、では、織江の学校生活とは殺伐としたものだったんだな」

 

 私と同じだ、と頷くラウラ。それは違う、と全員が心の中でツッコんだ。

 

 唯一ラウラの事情を知らない織江は首を横に振った。

 

 「手を出されたことはほんの数回ぐらいしかなかったし、平和だったけど」

 

 「……? ずいぶんと小心ものの集まりだったのね。それとも、織江に非がないってあとから気づいた?」

 

 「さあ……、直接手を出してきた人は男子は病院に、女子は不登校。最後はまとめて転校していったから」

 

 「櫻井ィイイイイイイ―――!!!」

 

 ヤツだ、ヤツしかいない。むしろヤツでなければ不可能な芸当だ。

 

 叫んだ一夏の背後の襖が突然開いた。

 

 「呼んだか」

 

 「きゃあああああああああああああああああああああああああ――――!!!」

 

 恐怖で思わず女の子みたいな悲鳴をあげる一夏。いまの武勇伝を聞いたあとだと恐怖百倍。

 

 「……織斑一夏。女子に囲まれすぎてとうとう……」

 

 「とうとうってなんだよ! お前のせいだよ、っていうか織江が遠慮されてた理由ってお前のせいじゃねえの!?」

 

 「否定はしない。むしろ悪い虫がつかなくなって良かった」

 

 「うわぁあああああ! 開き直ったよこいつ」

 

 ドン引きする一夏。

 しかし、箒たちはお前もシスコンだろうが、といった胡乱な目で見たが、一夏は気が付かない。

 

 櫻井は入り口から部屋を見渡しながら、

 

 「というか、おまえらはここに集まって何やってんだ、……乱交?」

 

 次の瞬間、櫻井の顔面にコーヒー缶が突き立った。

 

 「……は、鼻が。鼻はどこだ……」

 

 櫻井の卑猥な暴言に怒るかと思われたが、織江は倒れた櫻井を呆れた様子で見下ろした。

 

 「千奈……、あなた、酔っ払ってる?」

 

 「……は?」

 

 「あー、センナくんお酒飲んでるっス! っていうか酒くさっ!」

 

 顔をしかめた織江。一夏は疑問に思うが、エレナの指摘を受けて確かにアルコールの匂いが漂ってくるコトに気がついた。それに櫻井の顔もなんだか赤いような……。

 

 「でも櫻井は千冬姉ぇたちの相手をしてたから匂いがうつったんじゃ……」

 

 「そうだそうだ。ぼくは酔ってにゃい」

 

 「酔ってるじゃないっスか! 腰においた手に握られてるのは何スかーもうっ!」

 

 櫻井は手にしていたボトルを見やり、首を振った。

 

 「違う。これはお酒じゃない。えーっと……、すぴりたす?」

 

 「それは世界一度数の高い酒だぞ!」

 

 「たしかアルコール度数96のヤツだよね!?」

 

 生産国ポーランドのお隣の国、ドイツ人とフランス人が戦慄する。

 

 もはや酒とも呼ぶのもおこがましい劇物だ。少しでも火を近づければ即座に炎上する。火が点くのではない。炎上するのだ。蓋を開けているだけでどんどん揮発するそれは、よく見れば火気厳禁の警告がまざまざと記されている。

 

 一夏の隣、つまりは一夏と同じく近い位置にいる鈴は座ったまま思わず後ずさる。

 

 「な、ななななんでそんなモノ持ってんのよあんたは!」

 

 「凰鈴音、その体勢だとパンツが見えてるぞ。黒か、凰鈴音の体型だと色気が足りなくないか?」

 

 「ギニャアアアアアアア!!!」

 

 鈴が2Lペットボトルを腕力だけで櫻井の顔面に叩きつけた。

 

 「やっぱ酔ってんのかな……?」

 

 「デュノア違う。千奈は元からこうだから」

 

 「そう、だね……」

 

 「あれ、おかしいな。なんか納得されたぞおい。僕のイメージどうなってんの?」

 

 頭の上にクエッションマークを浮かべるが綺麗に無視される。付き合いは全員で数日の面子であるのにコンビネーションは抜群だった。

 

 「で、なんで櫻井はそんなモンを持ってんだよ」

 

 「痛み止めだ。手っ取り早く酔っ払ったりするのに便利なんだよコレ」

 

 と、先ほどとは打って変わって極めて真面目な理由を語る。

 そう言えば、櫻井は肋骨の骨を何本か折っていたのだ。その身体で千冬たちの介護は文字通り骨が折れただろう。

 

 「悪いな櫻井。千冬姉ぇたちの世話を任せて」

 

 「任されてない。というか、知ってたなら助けに来いよ」

 

 「それは御免こうむる」

 

 真耶も酒癖が悪いらしいが、千冬も酔い出すと一気に悪化する。その絡みは周囲に被害が及ぶこと火の如し、酔いつぶれた千冬を動かせないこと山の如し、である。

 

 「大変だったな」

 

 「ああ、大変だった。山田教諭の胸は脱いだらとんでもないと言ったら―――」

 

 「マジで!?」

 

 ドゴシャッ!!、と二人の顔面から人体が発してはいけない音がする。

 

 馬鹿な男二人を女子陣は憐憫な目で蔑んだ。中でも鈴、ラウラ、エレナの三人は個人的な感情を燃え上がらせている。

 

 何はともあれ、いつものメンバーが全員揃った。櫻井は酒瓶を、それ以外はジュースを手にしてお茶会が始まる。

 

 みんなで持ち込んだお菓子をつまみながらつまらない世間話をしていく。

 お国柄の話題も多いが、全く方向性の話題を次々提示していくのはやはりエレナだ。

 エレナは濃い酒の匂いに酔ったと思ってしまうほどテンションが高い状態で、

 

 「それじゃ、ここは定番の恋バナでも―――……、このメンツじゃ無理っスね……」

 

 「エレナさん、どういう意味ですのそれ……」

 

 「いやだって……、どうせ振ってもできないっスよこれ」

 

 集まった女子のほとんどが医中の男子が一人同じ人間。しかも当事者全員集合。いったいここでどんな恋話ができると言うのか。

 

 「……じゃあー、イチカくんなんかないっスか」

 

 「んー……、ないなー。というか、俺は初恋すらまだという……。恋ってあるのか?」

 

 コイツ死ねばいいのに……。

 

 女子の感想は一致した。エレナや織江さえも見つめる目が氷のように冷たい。

 

 「じゃあ、センナくん……」

 

 さも期待してないかのようにエレナが振ったが、意外にも櫻井は考え始めた。

 

 「え、ウソ。センナくん、なんかあるっスか?」

 

 見やれば、織江も驚きに目を少し見開いている。

 

 「前に仕事でタイに行くコトがあったんだけど」

 

 「タイ! 横から槍でも刺された気分っス!」

 

 なぜか憎たらしげなエレナ。

 織江の目も剣呑だ。おそらくは自分の知らないところで起きているのが憎いのだろう。

 

 「同僚と一緒にタイで情報収集してて、とあるバーに入ったんだけどそこで色白美人に声をかけられて、気がついたらソイツがホテルに連れ込まれてて」

 

 「あっ! なんかオチがわかった気がする! 俺は聞きたくねえ!」

 

 突然一夏が叫んだ。まるで恐ろしい何かを聞かされてしまうかのように。

 

 そこへ興味津々な無邪気な問いが飛ぶ。

 

 「で、どうなったんだ?」

 

 「ラウラさん!?」

 

 櫻井は珍しく悲しそうな顔をして言う。

 

 「次の朝に緊急帰国して辞職した」

 

 【うわぁ……】

 

 疎い箒や織江は首をかしげたが、事情がわかっちゃったほかはなんとも言えない表情になる。

 

 

 ヒント:タイではニューハーフバーがとても多い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 明らかに櫻井の機密保持的な違反がありますがスルーしてください

 8月が終わり自分の学校では夏休みがあと一ヶ月。技術士の勉強もしなくてはいけないのに、やりたいゲームや買いだめした本がたくさんあって困る…


 読み専ではないので一年ぶりに他の二次小説読んでみれば総合評価が1000とか2000とか普通に超えててスゲーと自信をなくしました…。いったいどうすればよいのやら…


 アドバイス、批評、ついでに感想評価要望をお待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。