正義と、大義と。   作:新田良

43 / 49
第四十一話 そして異常に気づく。

 

 

 一夏の身体がぐらりと傾いた。

 そのまま糸の切れた人形のように無抵抗で海へと落ちた。

 

 致命傷だ。誰もがそう思った。冷静にそう思ってしまうほど、どこか現実味のない光景だった。

 

 まさか、本当に誰かが死ぬなんて。

 覚悟していたはずなのに。こうなるかもしれないと思っていたはずなのに。

 実際には夢にも思っていたかったとぼんやりと自覚する。

 

 絶対防御は核すらも瞬間的に封殺する超絶的な防御機構だ。明らかにエネルギー保存則から逸脱しているそれは、ISを『戦争』から『競技』へと変えてしまうほどに。

 

 だから、誰もこの結果を予想できなかった。たったの一撃。連続で発動は不可能。故に死ぬのなら爆撃のような状況でのみ。絶対防御ならいかなる攻撃も一度なら必ず防げたはずだった。

 

 それなのに、真っ逆さまに落ちる一夏の腹は大きく抉れている。

 

 撃ち抜いた福音はピタリと停止していた。電池切れでも起こした玩具のように微動だにしない。この事態は福音にとっても予想外だったのか、それとも深層にいるナターシャ・ファイルスがヒト殺しに対して忌避感を抱いていたのか。

 

 空に真っ赤な糸を引き、海面に白い花が咲く。

 

 何よりも鮮烈な光景だった。

 

 「き……ッさまぁああああ!!!」

 

 箒が紅椿を駆り、その手にした空裂を無防備な福音へと叩きつけた。

 福音は圧倒的な紅椿の膂力に叩き落とされたが、海面付近で我に返ったように翼を再び広げて空を疾走する。

 

 逃走する福音を見て、箒はまなじりを一層に怒らせ、先回りするように妨害し、強引に戦闘へと持ち込む。福音も翼からエネルギー弾を斉射して、接近しようとする箒を引き離す。

 

 その隙にもっとも近くにいた鈴が損傷して上手く動かせない機体で、一夏が水没したと思われるあたりに駆け寄った。

 

 櫻井が通信を開いた。

 

 『凰鈴音、待て』

 

 「待てるかッ! 一夏が、一夏が―――」

 

 鈴は半狂乱で叫んだ。

 息を大きく吸っているはずなのに息苦しい。自分がいまちゃんと飛んでいるのかも怪しい。目ばかりを大きく見開いて、一夏が沈んだ正確な位置をぎょろぎょろと探す。

 

 しかし、櫻井の声はあくまで冷静だった。

 

 『落ち着け。こちらでバイタルチェックもできている。ISの生体保護機能ならあと一時間は心臓を止めない。だから、いまは作戦に戻れ』

 

 普段ならばこの絶望的な状況でその平常心は賞賛した。だが、今はただただ癇に障る声色だった。

 

 「作戦に戻れ!? 作戦はとっくに破綻したってあんたが言ったのよ! お腹を大怪我してた、早く探さないと……」

 

 『なら……、海に沈む死体の数を増やすか?』

 

 「……ッ!」

 

 まさにがむしゃらに海に潜ろうとした鈴と、それに続こうとしたシャルロットたちをその言葉が深々と縫い止めた。

 

 猪突猛進の一夏にはない、代表候補生として培った冷静な判断力が正しく今の状況を再整理する。

 

 『ここは作戦領域外だ、それも日本寄りのだ。今、やるべきことは八つ当たりでも復讐でもない。すでに敗けた。迎撃作戦は失敗した。だから、今ここで出来る最善を尽くせ。誰も死なせたくないのならやれないことよりもやれることをやれ』

 

 「……ッ! ―――わかったわよ!」

 

 鈴が怒りに任せて片割れとなった双天牙月を投げ捨てた。シャルロットたちも苦渋で唇を噛みながらも従う意志を示す。

 

 「なんか櫻井に諭されるって腹立つわ……。てか、なんであんたそんなに冷静なのよ。仮に一夏が死んだらあんたもただじゃすまないでしょ」

 

 『ブリーフィングで言ったはずだ。織斑一夏はなんだかんだ言って生き残る。そういう人種の人間だと。そう思わないか凰鈴音?』

 

 「……ええそうねそのとおりね。あんたの言葉を借りるとなると、問題なのはいまのあたしたちってわけなのね」

 

 『零落白夜の脅威も速攻力も失われた。福音が篠ノ之箒を落とせばお前ら全員さっくり死ぬぞ』

 

 鈴はぎりっと歯を食いしばった。

 

 「こんなところで死ねるかっての! あんたの言うジンクスって言うなら叩き潰してやるわ」

 

 その強気な発言に櫻井はほとほと感心した。もしやこの絶望的な状況でそんな言葉を吐けるとは。

 鈴の宣戦布告のような啖呵にシャルロットたちも笑ってしまう。

 

 「それで、わたくしたちはどうすれば良いのですか櫻井さん」

 

 『セシリア・オルコットはそのままだ。狙撃で福音の気を散らせ。どうせ反応されるだろうから、撃墜よりも福音の意表を突くように狙撃しろ。のこりの三人はこの場から半径20km範囲内の避難が後回しにされた漁船を引きずってでも避難させろ。絶対に殺すなよ、誰か死んだら明日から僕は拘置所だ』

 

 「それはそれで見てみたいのに残念ってとこかしらね!」

 

 『軽口を叩ける余裕があるならいいな。状況開始!』

 

 櫻井の号令の下、それぞれの役割を果たすために動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬はその一連の流れを後ろから見守り、その心理誘導のうまさに内心で舌を巻いた。

 

 櫻井があのまま一夏の救出を選択したいたのなら、おそらくこの戦線は完全に瓦解していただろう。死人がさらに増えていただろう。だから、櫻井は一夏からいったん意識を外させ、『希望』を持たせた。

 

 一夏の死から目を逸らす『逃避』と、一夏が生きている『希望』でパニック寸前の鈴たちを状況が機能するように動かした誘導術は賞賛してもいい。

 

 櫻井が振り向かないまま、千冬に言った。

 

 「恨み言があるなら聞きましょう。殴りたいのであれば気絶しない程度にお願いします」

 

 「バカにするな。アレがそうそう死ぬわけがないだろう!」

 

 その力強い千冬の断言に、櫻井が驚いたように振り向いた。その眼に宿った感情は分からないが、その顔を見れただけでも溜飲を下げられた。

 

 櫻井は苦虫を噛み潰した顔をしながら前を向き直る。

 

 「よくわからないところで二人は兄弟ですね」

 

 該当する表現がわからないといった様子で櫻井が言う。

 

 一方で、エレナがあくまで冷静でいられる二人のことを理解できないといった様子でまくし立てた。

 

 「それで、センナくん。これからどうするっスか。ホーキとゴスペルをこのまま戦わせるわけにはいかないっス! 早くしないとホーキがっ」

 

 「わかっている。僕も可能な限りは手を打つ。だが、未だに福音のワンオフアビリティの能力の詳細がわからないのは痛いな。エネルギー切れ寸前であったのにも関わらず、あれだけの戦闘能力は異常だ。おそらく足りないエネルギーをワンオフアビリティの能力で保管している。世界ランク第一位と同じような能力だと厄介すぎる……」

 

 ぶつぶつと考察なんてし始めた櫻井へエレナが本気でキレた。金髪と拳を振り回しながら怒鳴った。

 

 「ネクラに引きこもってないで早くしてください! どーせセンナくんのコトだから自分で動かないでカカシみたいにふんぞり返っとくだけなんでしょ!? 極悪非道で暗躍ぐらいしか取り柄がないんですから働いてくださいニート!」

 

 「な、なんたる罵詈雑言……! さっきまでめちゃくちゃ働いてたのに!」

 

 とはいえ、今からまさに考えていたことはエレナの言うとおりだったので哀しかったりする。

 

 エレナが胡乱気な目で櫻井をジトっと見た。

 

 「だってセンナくんどうせイチカくんを倒した時の『アレ』使う気ないっスよね……?」

 

 「あーうん、まあ……。『アレ』は曰く付きの種も仕掛けもあるもんだから。そうそう表に出せないというか」

 

 話が変なところへ飛び火してきたと櫻井は通信を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『織江。更識簪。聞こえてる?』

 

 「なに?」

 

 「え、えっ。わ、私?」

 

 時折漁船へと飛んでくるエネルギー弾を雪片参型で消し飛ばしていた織江と、専用機が正しく完成していないため離れた位置でレーダー通信の中継機材を抱えて支援していた簪が反応した。

 まさか呼ばれるとは思ってもいなかった簪はうっかりと中継機材を取り落としそうになって、慌てて持ち直した。

 

 「いまけっこう忙しいんだけど」

 

 『二人にお願いがあるんだ』

 

 「お願い?」

 

 織江と簪は首をかしげた。

 こんな状況でされるお願いとは果たしてなんだろうか。

 

 それはこの状況で当然のことであり、同時に思いもしないものだった。

 

 『十分でいいから二人で福音を足止めしててくれ』

 

 「「……、」」

 

 二人はしばらく黙った。簪に至ってはいつもの冗談だとも疑った。

 

 福音を足止めする? 

 

 冗談にしか聞こえない。ワンオフアビリティを発現した福音は、すでに既存のISと隔絶としたスペックを誇る紅椿さえも押さえ込もうとしている。

 

 箒が右の空裂と左の雨月を振るうと、刃からは超高圧縮されたエネルギーが海面を引き裂きながら突き抜ける。それだけでもう埒外な熱量と破壊力が迸っている。

 それだけでも埒外な戦闘力だ。

 

 対して、福音は翼からエネルギー弾を霰の如く射出し、あるいは三枚双対の翼を一翼を槍へと変貌させ、気化爆弾さながらの暴虐を振りまいている。

 銀の翼がない福音自体はそのスペックを大きく落としているはずだが、ワンオフアビリティがそれらを大きく上回り、紅椿でさえも比肩しうる性能を引き出していた。

 何よりも、ワンオフアビリティの性能が異常だった。エネルギーが枯渇していたはずの福音はいまや無尽蔵とでもいうかのように思うがままに戦っている。攻撃一辺倒の零落白夜とは違い、福音のワンオフアビリティは攻撃、防御、機動など総てのスペックを叩き上げていた。

 挙句の果てにはそれを操るのは世界トップクラスの操縦者。

 

 それを二人で足止めしろと? そもそも、簪に至っては専用機すらも完成していない。

 

 「櫻井、……それって冗談、だよね?」

 

 『そろそろ篠ノ之箒の状態がヤバい。バイタルチェックもレッドアラートを連発してるし、なによりも篠ノ之箒の精神が擦り切れる寸前だ。このままだとすぐに限界がくる。この状況で紅椿が落ちればその時点で詰むぞ』

 

 理由はわかる。理解できる。だが、だからと言ってそれが可能であるかはまた別の話なのである。

 

 しかし、櫻井とてなんの考えもなく大事な妹にそんなお願いをするわけがない。

 

 『織江は『諸刃の剣』を、更識簪は『八咫烏(ヤタガラス)』の起動を許可する』

 

 それを聞いた織江はわかったと即答し、一方で簪の反応は芳しくない。

 

 「え、っと。櫻井、私の装備は完成してないんだけど?」

 

 『基本プログラムはできているんだろう? あとは更識簪の腕次第だ』

 

 とんでもない無茶振りだった。しかもそれで福音を足止めしろというダブルパンチ。

 簪は場合も忘れて、えー…、と黄昏れてしまう。

 

 櫻井の言っていることは無茶苦茶だ。でも、惚れた相手にデキるところを見せつけたい。

 相反する理性と感情がぐるぐると回転し、やがて簪はおずおずと言い出す。結局は打算が勝利してしまった。

 

 「じゃ、じゃあ貸一つ、ね……。こ、今度、買い物に付き合ってもらうから……」

 

 『……? 買い物? その程度で苦労をしてくれるなら安いものだ。いいよ』

 

 あっさりと櫻井は了承した。

 

 簪は勝利のガッツポーズ。周りに誰もいないし、音声のみの通信のため感情表現はやりたい放題である。

 

 櫻井は知らない。背後で千冬やエレナがとても冷たい眼で彼を見下しているコトを。その氷のような眼は、「お前実は人間嫌いじゃねえだろ」とありありと語っていた。

 

 黙って聞いていた織江だったが、

 

 「なら千奈。わたしは―――」

 

 『ん? 織江も? いいよいいよ織江のぶんは僕が買ってきてあげる。むしろ通販のほうが良くない? とりあえず和牛10kgぐらいで足りる?』

 

 空気が凍りついた。聞いていた簪やエレナの顔が真っ青になる。ついでに櫻井の正気を疑った。

 

 櫻井はその変化に気が付かない。むしろ彼は最高の善意を織江に捧げたと胸を張っている。

 

 千冬たちは確信した。コイツは、ただのバカだと……。

 

 「……よし、殴ろう。うん、そうしよう。千奈、帰ったら棒立ちになっておくこと。力いっぱいぶん殴るから、ISで」

 

 『木っ端微塵だよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織江は目的のプログラムを起動させる。途端に広がる数々のウィンドウ。小窓の中では様々なデータが激流と言える速度で流れている。

 織江はそれを一切目を通さずただ眺めていた。

 やがて、一つの選択肢が表示される。

 このプログラムを起動させるか否かの選択肢。あまりに一方的で理解させるつもりのない確認事項。余人が見たならば、その得体のしれなさに、本能的に消去のボタンを押してしまうだろう。

 織江は、即座に肯定の項目を選択した。

 データの中身を読み取れたわけではない。これがいかなる法則に従って作られたプログラムであるかも知らない。

 知っていることはたったの一つ。櫻井がこれを作り出し、そして使ってとお願いされた事実のみ。

 ならば、織江に迷うという選択肢は存在しない。彼女は今までで櫻井ほど誠実に大事なものへ全力を尽くす人を見たことがない。

 信頼しているのだ。盲信でもない、一方的な献身でもない。

 織江は櫻井と対等な立場でいたいと願っている。

 だからこそ、彼女は応えるのだ。櫻井の意志に。

 眼を開ける。最悪の世界に変わりはない。

 

 「『諸刃の剣』―――起動」

 

 瞬間、織江の姿が掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プログラムを起動させた瞬間、簪は思わず息を詰まらせた。

 次々と矢継ぎ早に現れるデータはもはや一種の暴力とも言えた。

 僅かに怯んだ簪だったが、決意して顔を引き締めキーを叩いていく。

 簪は、懸命に、素早く、それでいて正確に必要なデータだけを整理していく。

 その光景はまるで音楽の演奏だった。細いか弱い指がキーの上を踊り、データの奔流をうまくいなしてカタチを作る。

 簪に余裕はない。いまこの作業が失敗したのなら、このプログラムはもう初期化しなければならなくなるからだ。

 眼を忙しなく動かし、指は素早く繊細に、しかし大胆にキーを押していく。

 まったくどうして自分はこんなことをしているんだろう、と呆れてしまう。

 いくら櫻井の指示だからってどうかしている。どうせ失敗したって怒られないし、ここで失敗すればいままで頑張って構築してきたデータは水の泡。

 それでも、簪の手は止まらない。脳みそはすでに容量いっぱいで熱いぐらいなのに足りない演算を補助している。

 親類からは姉に比べられ、やれ気弱だの才能がないだの言われたのに、どうしてこんなに頑張っているんだろう私。

 自分でも笑ってしまう。ここまで来て言い訳がましい自分に対してだ。

 あんな極悪非道に惚れた自分が恨めしい。

 私は『ヒーロー』や『正義の味方』に憧れている。でも、そんな人は本当にいないと櫻井は言った。

 私はショックを受けた。そんな私に櫻井は言った。そんな都合の良い群像なんていらないと、そんな人間がいれば自分なんてものを放り出してしまうと。意味がないと。

 納得なんていかない、いくわけがない。

 それでも、嬉しかった。何の価値も見いだせなかった私の存在を肯定してくれて。

 だから、求められたのなら叶えようと思った。こんな私にもできることがあるのなら、精一杯頑張ってみよう。

 視界を覆っていたものが全て消える。世界は全く別なものへと変質していた。

 

 「『八咫烏』―――起動」

 

 簪の時間軸が世界からズレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人が戦闘を開始したのを見て、櫻井は回線を開いた。

 

 「篠ノ之箒、下がれ」

 

 『下がれ!? 何を言っているんだ! コイツがッ、一夏を!!』

 

 そのあまりの気迫は櫻井は少しばかりどう扱おうか思案してしまうほどだった。

 

 「勝手に殺すなよ。織斑一夏はたしかに生きている、はずだ。いつまで持つか知らないが。今から五分だけ織江と更識簪が時間を稼ぐ。その間に海底から織斑一夏を引きずって来い」

 

 紅椿の莫大な推進力ならば動きがどうしても遅くなる海中でも十分に動けるはず、という判断だった。

 

 一夏が生きている、この発言を聞いていくらかの冷静さを取り戻した箒だが、今度は別の問題が発生する。

 

 『しかし、櫻井。それだと福音が―――』

 

 「だから引っ張り上げたらそこらへんの無人島にでも捨てて加勢しろ。十分だ、これ以上は足止めしておく二人が持たない」

 

 『―――ッ! わかった十分だな!』

 

 言うや否や、一度上昇した箒は紅椿の展開装甲を前面に尖らせると、ロケットのように海面を蹴散らして一気に水中に潜り込んだ。

 

 それを見たエレナは唖然としたようすで、同時に感心もしていた。

 

 「強襲用エネルギーシールド……。ホーキの専用機は何でもありっスね」

 

 「よりどりみどりだな。あのエネルギーはいったいどこから持ってきてるんだ?」

 

 こればっかりは櫻井も呆れ果てた。

 

 モニターの中では苛烈な戦闘が行われていた。

 

 福音が翼を広げ、放射状にエネルギー弾をバラ撒く。その一つとして防御力の薄い朔夜にとっては致命傷とも言える威力を内包している。

 散弾を連射しているような圧倒的な射撃密度でありながら、その一撃は爆弾にも等しい威力を持っている。あまりにも理不尽であり、あまりにも隔絶としていた。

 

 織江はそれを避ける。彼女の持つ超絶的な反射神経と天性の勘がエネルギー弾を躱し、あるいはカタナで消し飛ばす。

 

 しかし、このままいけばジリ貧であることは間違いない。だから、福音も余裕を持って逃げ惑うしかない獲物を追い詰めることだけを考えていた。

 

 そこへ、星を砕く一撃が奔った。寸前で気がついたのはさすがは機械ゆえの反応速度と言えた。

 

 だが、セシリアは落胆していない。櫻井のオーダー通り、隙ができた。

 

 瞬間、黒い影が空を裂く斬撃のような軌跡を残して駆ける。ハイパーセンサーの恩恵がなければ、この距離では対応も難しかっただろう。

 

 撃ち抜くのは間に合わない。そう悟った福音が翼で身体を覆うと、カタナは翼を貫通して、実体剣が福音に僅かな傷とダメージを与えた。

 

 奇妙な感触に織江は違和感を感じる。

 

 福音は突き放そうと翼を広げた。

 

 しかし、もはやそこは織江と朔夜の間合いだった。

 

 "―――ギッ!"

 

 突き放せない。ワンオフアビリティを開放した福音に追いつけたのは紅椿だけ。まさか、ただのISが追いつけるはずなどない。

 

 「朔夜の機動力が上がってる……? これはどういうことですか、櫻井さん」

 

 その変化に気がついた真耶が問うた。

 出し惜しみしていたのなら解せない話だ。あの状況で機体性能を出し惜しむ余裕などなかったはずなのだから。

 

 「別に出し惜しみしていたわけじゃありませんよ。織江は本気で戦っていたし、朔夜も最高出力で稼働していました」

 

 「でもオリエはたしかに速くなってるっスよ」

 

 「『諸刃の剣』。僕が組んだ運動プログラム。ISのエネルギーを放出させて出力や運動性能の補助をする」

 

 「その出力をいったいどこから持って―――」

 

 ここで千冬とエレナが気がついた。

 

 789―――

 

 767―――

 

 744―――

 

 減っているのだ。その数値は朔夜の残量エネルギーを表している。

 

 「シールドエネルギーから……? でもそれは無理っスよ? エネルギーシールドはISの基本機能の一つっスけど、その設定は誰にも弄れないハズっス」

 

 「そうだな。だから僕はその過程を弄ることにした。エネルギーシールドは外部からの攻撃をISと操縦者が感知して、そのエネルギー分だけ相殺するように発進する。自動でも発動するが、操縦者がそれが何の脅威であるのか正しく認識すればするほど効率の良いエネルギーシールドが生成される。

 なら、誤認させればいい。ISが脅威を誤認すればシールドが発生する。シールドは外部からのエネルギーを相殺するカタチでエネルギーを発生させているのなら、誤認したことによって発生したエネルギーは余剰分となって反作用へと変化する。そのエネルギーを利用すれば、最高出力に限界のあるエンジンを利用せずとも高速移動が可能だ」

 

 「さ、さすが詐欺師っスね……」

 

 「おい」

 

 風評被害だと批難してくるが、そう評するしかなかった。

 おそらくこれには絶対防御が使用されている。絶対防御は並外れた防御力を誇りながらも、その使用エネルギーは明らかにエネルギー保存則の常識から外れている機能だ。

 つまり、ISは何度も頻発する死の危険から操縦者を守ろうとしているのに、その頑張りはこの男によって追加のロケット機構のような扱いを受けていたのである。ISに詐欺を働くなどこの男ぐらいしかいないだろう。

 

 福音は縦横無尽に駆け抜ける織江へ苛立ちを募らせる。

 いくらカノジョが圧倒的優位に立っていようと、いやむしろ、圧倒的優位にたっているからこそ、戦闘が一方的に進まない事態は機械のカノジョへと焦燥感をつのらせた。

 

 いくら撃とうと織江は止まらない。ナターシャ・ファイルスがこれまで経験したことのないような運動性能でエネルギー弾の連射を掻い潜っている。織江も足止めが仕事であって、倒すことが目的ではないため、ギリギリで躱せる距離を維持する。最初の一撃は単純に福音への挑発にほかならない。

 

 福音がさらに射撃密度を高めようとしたところへ、荷電粒子砲の一撃が飛来した。

 

 福音はやはり反応する。翼を振って払い落とす。もしかしたら、もはや不意打ちなど通じないのかもしれない。

 

 簪はさらに荷電粒子砲を連射した。福音は翼を広げて防ぐ。

 

 いまさらその程度は脅威でもなんでもない。翼一枚で事足りる。しかし、煩わしかった。

 

 福音は飛んでいる羽虫を焼き殺す程度の感覚でエネルギー弾を斉射した。

 

 簪の視界を埋め尽くすようなエネルギー弾は避けようがない、はずだった。

 

 簪は躱す。機体を上下左右に小刻みに振って避け、そして反撃として荷電粒子砲を連射した。

 

 "―――ギッ?"

 

 簪の動きが速いわけじゃない、むしろ照準を乱さないためか遅いと言ってもいい。それなのに、中らない。

 

 "―――ギギッ"

 

 福音は操作可能なエネルギー弾を操って、直接へと集中させる。簪はそれを正確に、確実に選別して撃ち落とした。

 福音は指揮者のようにエネルギー弾を操る。掃射されるエネルギー弾なかで収束したエネルギー弾が爆ぜて華を咲かせる。

 しかし中らない。中らない。

 

 簪は必要最低限の動きだけでエネルギー弾の奔流を避ける。それは芸術的なまでだった。

 

 その光景にエレナと真耶が目を見張る。

 

 「更識簪の専用機、打鉄弐式に搭載されている第三世代兵装『八咫烏』。その正体は最新のスーパーコンピューター八台からなるマルチタスクエンジンだ。その能力は"未来予知"」

 

 「み、未来、予知……?」

 

 エレナは突然、恐ろしいことを聞いたかのように身体を震わせたが、僅かな短い時間であり、エレナは後ろにいたためその変化に誰も気が付かなかった。

 

 「既知の情報を演算して視覚化する。それを過去に見れば見るほど、そしてすでに知れていることであればあるほどその精度は正確になる。規定の性能しか発揮しない銃弾ならその銃口が向いた瞬間に弾道が視覚に表示される。自動で表示されるだけだから操縦者への負担もほとんどない」

 

 「……む。それって、わたしのストライクラプターのテスタメントの上位互換ってコトっスか?」

 

 櫻井は少し考えてから首を振った。

 

 「方向性が違うな。テスタメントは操縦者が認識して機械が最善の選択を判断をする。だから反射速度が圧倒的に早い。対して八咫烏は機械が認識と演算するけど、表示された未来どう扱うかは操縦者にかかっている。当然、その未来が正しいという保証もないし、未来を見せられたからって正しく対応したり反応ができたりとは別の話だ」

 

 福音がエネルギー弾をバラ撒いた瞬間には簪の退避場所が確定している。視野に奔る朱い線。言われなくとも忌避するその線から逃げるように隙間に機体を滑り込ませれば何発何千発撃たれようとも簪には中らない。

 

 流石にこれ以上距離が縮まればスペースを失って直撃するが、あんな化物相手に接近戦なんて簪はこっちから願い下げらしい。

 

 つかず離れずの距離を維持したまま注意を引き、同時に注意を引き過ぎないように織江に擦り付けながらも状況をコントロールする。

 簪には天賦の才がないがゆえに、自分のできることを客観的に正しく見ることができる。

 これが櫻井が持つ簪への評価だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ええいっ、アイツはどこまで沈んでいったのだ!」

 

 海中深く、箒は真っ暗闇になってきたなかを物凄い速度で突き進む。途中に群れにあおうがサメにあおうが構わず蹴散らしていく彼女は暴君だった。

 

 光の届かない海は不気味だ。支えがないとはこれほどまでに人を不安にさせるのか。宇宙とはこういうところなのだろうか。

 

 自分が発する音以外に何も聞こえない。せめて声を出せればと思うが、海であるので望むべくもない。

 

 箒は自分から沈むようにしてさらに奥深く沈む。海溝でもないはずだが、なかなか底が見えてこない。目撃する魚の種類も随分と見慣れないものへと変わってきた。

 

 しかし、箒も全速では潜水ができない。ときおり周囲をハイパーセンサーで精査する。しかし、海中での使用を想定していないためか、探知できる範囲が狭い。

 

 箒は大きな螺旋を描くように突き進む。ISにはPICが装備されており、気を失ったとはいえ、PICが作動していれば通常よりも緩やかに沈んでいる可能性があるためだ。もしも沈んでいる一夏を追い越してしまえば本末転倒である。

 

 やがて、完全な闇になった。光がないからまったく見通しが効かない。箒はハイパーセンサーの情報だけを頼りに進んでいくが、予想以上の恐怖に気が触れそうになる。

 

 それ以上に、一夏を探し出せないのではないか、という一抹の疑念が彼女の心を蝕んだ。

 

 「どこにいる。見つかってくれ早く……!」

 

 焦れば焦るほど、雪玉が坂道を転がっていくように不安がどんどん大きくなっていった。

 

 時折、意識しなくなった頃に姿を表す見たこともないような異形の魚に小さな悲鳴を上げ、逃げ出すように潜っていく。

 

 呼吸が荒い。生体保護機能が自動的に水を酸素に変換して供給しているはずなのに息苦しい。気がつけば、自分の呼吸音だけを意識していた。

 

 「あ―――……」

 

 箒は時間を確認して声を失った。すでに八分が経過している。一夏はまだ見つかっていない。

 

 慌てて意味もなく上下を忙しなく見てしまう。

 

 「どうする!? 引き返さないと織江たちが……。でも一夏だって」

 

 こんな地獄の底みたいな世界で取り残していくのか? 仮に上へ戻れたとして、このあとちゃんと救助が間に合うのか? もしかしたら、これが最後のチャンスなのでは?

 

 自分の手足さえも見えない暗闇に取り残されたまま考える。早く決断しないといけないのに頭がぼーっとして考えがまとまらない。

 

 呆然と立ちすくんでいると、視線の先で、鬼火のような薄らとした燈火を見た。

 

 「―――ッ! まさか……ッ!?」

 

 弾かれたように箒はその光に駆け寄った。地獄のような暗闇の中で見た光明は根拠もなく箒を惹きつけた。

 

 「あ、ああ……」

 

 見つけた。その光はたしかに織斑一夏であった。ISを纏ったその体躯はぼんやりと光っており、一夏の状態を確認できた。

 

 左腕は見るも無残な有様だ。完全におかしな方向に捻れてじんわりと出血している。だが、腕は繋がっている。今の時代の再生治療を受ければあっという間に完治するはずだ。

 

 だが、そのにはなくてはならないが、同時にあってはならないものがある。

 

 「―――傷が、ない……? いや、ふさがっているのかこれは……」

 

 福音に刺し貫かれた腹部の傷が消えてしまっている。しかしよく見れば肌の色合いや質感がやや違うように見える。まるで、急激に再生したかのようだ。

 

 「いや、いまはそんなことどうでもいい。おい、一夏! 起きるんだ! こんなところで寝てないで早く上に行くぞ!」

 

 一夏がまったく動ける状況でないのなら箒が引っ張っていくつもりだったが、さすがに数トンもの塊を海上まで引っ張り上げるのは苦労がいる。ハイパーセンサーで腹部の傷を調べたところ、内蔵を含めてなんの異常は見られなかった。

 

 しかし、いくら揺すっても呼びかけても一夏は目覚めない。おかしいと思った箒は全周波通信から個別通信に切り替えた。

 だが、送信はエラーが出た。

 

 「……は?」

 

 箒は慌ててもう一度全身を隈なくハイパーセンサーで調べたが、どこにも異常はない。心臓だって規則正しく動いてる。血色も悪くない。身体は至って正常だ。

 

 なのに、知覚をしていない。

 

 それはつまり―――

 

 箒の身体がどうしようもなく震えた。呼吸が上手くできない。現実を脳が受け入れない。だから声が飛び出た。

 

 「お、おい、一夏。何をやっているんだ。……早く、帰るぞ」

 

 一夏のまぶたはぴくりとも動かない。

 

 「死んだふりか……? 悪い冗談だな、そして

無駄だぞ。ハイパーセンサーを使えばお前が生きていることなんてまるわかりなんだから……」

 

 そう、ありえない。こんなにも温かいのに、死んでいるなんて、認められるわけがない!

 

 「なにをやっているのだ一夏……。あれだけ大言を吐いていたではないか、櫻井のあの顔をくじいてやると意気込んでいたではないか……!」

 

 せっかく出会えたのに。私はあんなにも嬉しかったのに。伝えたい、伝えなきゃいけない言葉がまだいっぱいあるのに。

 それがもう終わってしまうのか?

 

 気がつけば、箒の身体が震えていた。恐怖ではない、身を焼くような憤りでだ。

 彼女は一夏の胸ぐらを掴むと、顔が触れ合うぐらいに突き付けて怒鳴り散らした。

 

 「こんなところで死んでいる暇はないぞ一夏! お前が今時流行りもしない『正義の味方』を演じるならッ、最後まで責任をもって演じてその嘘を真に変えてみせろッ!!!」

 

 感情を爆発させた瞬間、箒は眼も開けられないような光に包まれた。

 

 「―――ッ、……ん? 

  ……、……んんっ???」

 

 おかしな声を出してしまったのは仕方がない。なぜなら、光に包まれた箒が閉じた目を開けてみると、そこは景色が変わっていた。

 

 箒は、なぜか砂浜の上で尻もちをついていた。

 そして、見上げた空では織江たちと福音が依然として死闘を繰り広げていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏は目を覚ました。

 

 「……う、うん?」 

 

 ぼんやりとした視界が鮮明になっても自分がどこにいるのかよくわからない。

 

 あたりを見渡すと、そこは不思議な世界だった。

 透き通った空は見たこともないほど碧い。浅く水の張った地面はまるで水面の上にいるかのような錯覚をおこした。世界が碧く染まっている。そんな世界がどこまでも広がっている。どこまで歩いても果てがないだろう。

 

 目を覚ましたというのに一夏はなぜか立っていた。まさか夢遊病ではあるまい。むしろこの世界こそが夢ではないだろうか。

 

 見たこともない世界なのにどうしてか安心感を覚えた。まるで、昔から見知っていたかのような。

 

 息を吐くが実感がない。

 

 なんだかよく分からない。ので―――

 

 「よし、何もしないでおこう」

 

 それはIS学園に入学して学んだ自己防衛術だった。彼にとっては、この摩訶不思議な体験もIS学園と大差がないらしい…。

 

 「ふふっ、あなたは面白いのねイチカ」

 

 鈴を転がしたような笑い声は背後から。

 

 振り返ると、そこには白百合のような少女が一人。白い服に麦わら帽子をかぶっている。

 踏み散らすのも躊躇われる処女雪のような肌やひっそりとした細い手足は触れ合うのを拒んでいるようで。長く垂らした白い髪のせいで肌なのか髪なのかわかりづらい。一夏よりも幾分か年若く見える。一夏が少し心配になるほど痩せて見えるが、むしろ退廃的な美しさを感じる。

 

 一夏は固まった。美しさに目を奪われたからではなく、明らかに健康を損なっている彼女の心配をしていた。

 

 彼女は少し困ったように首をかしげた。

 

 「なんのコメントもないのは哀しいわ。せっかく出逢えたのに」

 

 どこか拗ねているともとれる声。頭の奥にまで浸透するような綺麗な声色だった。

 

 「……つかぬことを伺いますが、俺たちってどこかで会ったことがないか?」

 

 問うと、少女は手のひらを合わせて喜んだ。

 

 「あら、嬉しいコトを言うのね。これ知ってる。ナンパってやつね!」

 

 「違います」

 

 面白いコだな、と思いつつも否定するが、少女はどこか蠱惑的な微笑みを浮かべた。

 

 「うーん、"今回は初対面よ"?」

 

 「君が言っている意味がよく分からない…。なんだろう、櫻井と話してるみたいだ……」

 

 「あらあら、女の子と話してる時に別の女の子の話はダメよ?」

 

 「ソイツは断じて女の子ではない!」

 

 なぜか必要以上に否定してしまう一夏。

 

 少女はころころと笑いながら、知ってる、と答えた。

 

 本当によくわからないが、どうも悪い人ではないらしい。

 

 ふと、一夏は無意識にあたりを見渡しているコトに気がついた。

 なぜだろうか。そう、帰らなくではいけない。

 

 とりあえず歩きだろうとした一夏へ少女が問う。

 

 「ドコへ行くのイチカ? ここは嫌い?」

 

 「いや、ここは好きだよ。初めて来たのになんだか落ち着く。こんな綺麗な世界はいつ以来だろう。

 でも、俺は帰らなくちゃ」

 

 そう言って、どこにいるかもわからないと答えたはずの一夏は適当に右に足を向けた。

 

 そこはいつの間にか、一面が茜色に変わっていた。かつて一番好きだった遠い日の風景。

 さざめく紅葉が旅立つように風に煽られて散っている。目を奪われるような美しいはずなのに、その世界はどこか儚くて物寂しい。

 

 これが、織斑一夏の始まりの日。

 

 少女は重ねて問う。

 

 「どうして帰るの? あなた、死んじゃったけれど……?」

 

 そうだ。なんで忘れてたんだろう。

 

 帰ればまた戦場に行かなければいけない。自分は腹に大きな穴を開けられて死んだではないか。

 

 「また、そこへ戻るの? あなたは知ったでしょ、自分の限界を」

 

 一夏は自嘲した。

 

 「あー、まー…、そうだな。たしかに、現実は厳しかったよ。実はなんとかなるんじゃないかって思ってたけど、あのザマだったよカッコ悪いよな」

 

 「そうかな? わたしはあなたらしくてカッコいいと思ったけれど。おとぎ話の勇者様がいきなり物凄い力でワルモノを斬っちゃうだけじゃ面白くないわ。だってそれって弱い物いじめだもの」

 

 近づいた少女が一夏の顔を覗き込む。

 茜色の世界に白い少女は切り絵のように見えた。まるで、少女という存在だけがぽっかりと切り取られてしまったような。

 

 不覚にも、一夏は少しドキリとした。

 

 「でも、ダメだった。もっと上手くやれたかもしれない」

 

 「うんうん。悩むのは良いことよイチカ」

 

 「いつまで経っても前に進まないのに」

 

 即断即決の護衛は優秀だった。迷いのない彼に憧れた。一夏も、彼のようになれたら、と幾度となく思った。

 

 「イチカ、悩んでもいいの。悩めるだけの選択肢があなたにはあるんだから。どうせいつかは決めることなのよ? 途中で価値観がひっくり返るコトだってある。後回しがなにも悪いコトだってわけじゃない」

 

 なんだか甘やかされた気がして面映ゆい。それに語る少女も知らず知らず顔が近くなって、なんだか恥ずかしくなって一歩離れた。

 

 少女はそんな一夏の反応を見て、嬉しそうにいっそう笑みを深める。

 

 「イチカ。あなたは力が欲しいのね」

 

 そう訊ねられて、一夏はそうなのかと自分で納得した。力さえあれば迷わないかもしれない。たとえその選択が間違えていてもなんとかできるかもしれない。そう思った。

 

 口から言葉が溢れ出す。

 

 「俺は、欲しい。みんなを守れるような力が。たぶん、俺はこれから何度だって躓くし、間違える。選択肢が二択だったって、そのどっちも選んだって後悔すると思う。だから、力があれば。自分が思ったようにできるようになれば、後悔だってなくしていけるかもしれない。もしかしたら救えなかった誰かを救えるようになるかもしれない」

 

 「……ふふっ、やっぱりカッコいいのねイチカ」

 

 少女がとんっと一夏の胸を押した。足元の水面に足を取られて一夏は尻もちをついた。どうしてか冷たくないし濡れた様子もない。

 尻もちをついた一夏の上に少女が馬乗りに跨がる。柔らかな感触が腹の上に乗った。少女はやはり雪のように軽すぎる。

 

 「うん。あなたのお友達がおかしな入れ知恵をしたおかげでパスが繋がりやすいわ。ホントはこういうコトになるなんて思いもしなかったかもしれないけれど、遅かれ早かれよね」

 

 「えーっと……」

 

 少女に胸の上に手を置く形で馬乗りにされ、一夏は困ってしまう。

 

 困惑して動けない一夏を見てひっそりと華のように微笑み、

 

 「今回はわたしが手伝ってあげる。だから、もっと強くなってわたしのところへ迎えに来て。わたしの王子様」

 

 少女は顔を一夏の顔へ近づけ、そのまま唇を深く重ねた。

 

 熱い、溶けるような感触が一夏の口の中に広がり、一夏の意識が消失した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風に舞う雪のように溶けた一夏を見届け、白い少女は落ちた麦わら帽子を拾ってかぶり直した。

 

 そして、霞んでいく茜色の景色を眺めながら、

 

 「覗き見はシュミが悪いわ、サクライセンナ」

 

 「さて、僕はわりと世界レベルの神秘を体感しているわけなんだが」

 

 彼女の世界。その中にぽっかりと空いた黒い穴。そこから櫻井は恐る恐る足を踏み入れた。

 

 「センナ、土足であがるのはニッポンジンとしてどうなのかしら」

 

 「靴下が濡れるだろ。それと僕の名前は櫻井だ」

 

 訂正を受けて、少女はクスクスと喉を鳴らした。

 

 「そうね。あなたの大事な人限定だものね」

 

 「いや、大事というか……うーん……」

 

 ジレンマに陥った櫻井。うんうん唸るが答えは出ない。

 

 「じゃあなんて呼ぼうか。サクライ? なんだかサムライっぽくてなんだか嫌ね。サクセン? あなたらしいけど人の名前じゃないわ。センサク? 語呂が悪いわ」

 

 「普通に櫻井と呼べばいいだろ。なんで友達感覚であだ名を付けようとする……」

 

 「イチカに見習って一期一会っていうのを実践してみようと思って。だって世界は新しいのよ。なにが起きるのかわからない。大事に噛みしめるべきよ」

 

 「そりゃすごい。ぜひ頑張ってくれたまえ」

 

 ぞんざいな口調に少女は微笑った。

 

 「残念だわサクライ。わたし、あなたにこそ『零落白夜』にふさわしいと思うの」

 

 「全然言っている意味がわからないが、僕はあんな能力ほしくない」

 

 櫻井の返答に少女は頷く。たとえ、櫻井が零落白夜を知らなくてもそう答えるだろう。

 

 「そうね。あなたに『零落白夜』は向いてないのかも。なんだかネクラだし」

 

 「どいつもこいつも人のコトを好き放題に言いやがって……」

 

 少女はますます嬉しそう。

 

 「でもすごいわ。今日は二人も友達ができちゃった」

 

 「なるほど。織斑一夏を含めて先客が二人もいたか」

 

 「これ知ってる。ツンデレね!」

 

 「違います」

 

 櫻井はげんなりと息を吐いた。彼自身、自分がいったい何のために来たのやら。

 

 帰るか、と元の穴がないので適当に歩きだそうとする櫻井。それを見て少女は二人共そっくりだわと言う。

 

 「どうして帰るの櫻井」

 

 「拉致監禁が趣味か?」

 

 「だって、あなたがここにいれば、あなたは死んだも同然。これってあなたの『目的』が叶うんじゃない?」

 

 少女の言葉に、櫻井が一切の動きを停止させた。

 短くも長い沈黙。

 

 「……違う。僕は死ぬ気なんてさらさらない」

 

 「あなたは願ってるはずよ。理由さえあればあなたは死を受け入れる。だって―――」

 

 「黙れよ。殺すぞ」

 

 世界の半分が黒く染まった。碧と黒。二色にきれいに別れた空を見て、

 

 「やはり、あなたのほうが『零落白夜』にふさわしいと思うの」

 

 少女は目を細めてそう言った。

 

 「残念。あなたとは良い友達になれると思ったんだけど、少し怒らせてしまったわ。ごめんなさい。でも、あなたがイチカをイジメるからちょっと仕返ししようと思って」

 

 「……、」

 

 「怖い人。そう睨まないで。ホントはわたしが悪いのだけれど、この空がこのままなのはいけないわ。帰って」

 

 瞬きひとつの時間のあと、彼女の世界から櫻井が除外された。空はじんわりと元の色に戻っていくが、少し時間がかかるようだ。

 

 「本当に残念。死にたがりのあなたじゃ、わたしの王子様は役不足なの。だから、頑張ってねイチカ」

 

 そう言い残して、彼女は泡のように溶けて世界から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海上での戦闘はすでに天秤がどうやっても覆らないほどにまで傾いていた。

 

 「残りエネルギーが100を切った……! もう一分も持たない!」

 

 「もうこれ以上は無理! ねえ櫻井は!?」

 

 「いきなり出ていったっきり戻って来ないっス! ジエータイの人たちも残りのミサイルを全部撃ち切っちゃったし!」

 

 いくら善戦しようと限界がある。なにより、エネルギー残量というハンデがある。だが福音は一向にそんな気配を見せず、相変わらず好き放題にエネルギーを撒き散らしている。

 おそらく福音のワンオフアビリティはエネルギーの生成が可能なタイプだ。ワンオフアビリティのなかではスタンダードとも言える種類だが、風でも炎でもないこれはあまりに厄介すぎる……!

 しかもエネルギー兵装も物理兵装も効かない。これでは零落白夜よりも何倍もタチが悪い!

 

 福音もコツを掴んできたのか、一度に撃ち出すエネルギー弾の数が増えてきた。このままでは遠からずに落とされる。

 

 容赦なく最悪に転がっていく状況。

 

 福音はそろそろ終わりにするべく、翼をさらに大きく伸ばした。すでに1000mを越えようとしている翼で少女たちに絶望を刻み込む。せめて最後は安らかであるように。祈った。

 

 雨のように降るエネルギー弾など躱せない。防ぐスペースもない。水に潜る手段もあるが、なぜかあの翼になってから水中に接触させようとしても通り抜けるのだ。

 

 状況は詰んでいる。どうにもならないと、少女たちは動くことをやめてしまった。

 

 そこへエネルギー弾が殺到し、蹂躙―――しなかった。

 

 それどころか何も起こっていない。まるでさっきまでの光景は夢であったかのように。

 

 生徒たちが困惑してあたりを見渡す中、福音の眼はソレを見つけた。

 

 遠い遥か眼下の洋上にソレはいた。

 

 オリムライチカ。予想外にもその腹を穿ったはずだが、一体どういうことなのか傷がなくなっている。ただし、捻れ折れ曲がった無残な腕はそのままだ。

 

 いまさら敗残の死に損ないが何の用か。普通の外敵ならばそう唾棄しただろう。

 だが、福音は、ナターシャ・ファイルスの深層は、その姿に得体の知れない恐怖を感じた。

 

 オリムライチカが伏した顔をあげる。その生気の薄い顔が、真っ青な唇が言葉を吐き出す。

 

 「なんだ、結局はこの程度か」

 

 "―――、―――、―――、"

 

 その姿はなんでもない子供だましを見たかのようで、福音は激しい怒りを感じた。 

 その圧倒的な暴力が、瀕死のオリムライチカ一人に向けられた。

 

 「お前のワンオフアビリティはエネルギーと水との相互変換能力。水をエネルギーへ、あるいはエネルギーを水へと変換する。その程度でしかない」

 

 "―――ッ"

 

 初めて、福音の中から余裕に亀裂が入った。

 

 ワンオフアビリティの能力を言い当てられた。だが、だから何だというのだ!

 

 福音の怒りを表すように、水から生成されたエネルギーは敵を刺し貫く槍となって創生された。その輝きは神威のごとく輝く奇跡。誰も抗えないほどの圧倒的な力。いまさら矮小なカタナ一本で何が出来る!

 

 "―――オマエハ、シンダ! ダカラ、シネッ!"

 

 空が輝いた。

 エネルギー弾の総数は二、三百―――万発。

 

 地図が変わる。島々が一瞬で消し飛ぶ。世界がカノジョの色で染まる。

 

 まさに壁が圧殺しているかのような神秘の中で、オリムライチカは、前進した。

 

 "―――ッッ!!?"

 

 霞むほどの世界の中で、なおを進む薄汚れた白。

 

 彼は止まらない。ただその手にした白いカタナを一振り二振りしただけで、彼は安全圏を手に入れてしまう。

 

 緩慢にゆっくりと、しかし確実に距離が縮まる。じわじわと蝕む毒のように。

 

 一歩下がった。福音だった。下がった後に気がついて愕然とする。

 

 下がる? なぜ? 優位はジブンの方こそにあるハズだ!

 

 だがなぜ恐れる。なぜ身体が震える。

 

 正体不明の感情に突き動かされて、福音はオリムライチカを破砕せんと飛びかかった。

 

 二つの凶爪が振るう。あるいは背中の翼が槍となり串刺しにしようとする。

 

 だが、―――

 

 鍵爪の内に凝縮された悪意を込めて振るう。叩き付けられる凶悪な鍵爪を、オリムライチカは身体を反らして紙一重に避ける。舞踏のように続けて振るわれた悪手も踏み込まれ間合いを外され、素手で払われる。

 翼から突如として槍が伸びた。触れれば滅せられる神威の光槍。不意を突くように伸びた槍は神速の速度で振るわれた白金の刃に寸断された。

 

 福音はさらなる追撃を仕掛ける。仕掛け続ける。オリムライチカはその猛烈な攻撃を防ぐのみ。

 

 すでに瀕死の身体と、いつ止まるやも知れない機体は糸の外れた人形のように滑稽だ。オリムライチカは福音の動きについていけていない。

 

 なのに、―――

 

 ―――あと一歩。

 最後の一手が、なぜ決まらない――ッ!!

 

 福音のワンオフアビリティは攻撃、防御、機動。ありとあらゆるポテンシャルを跳ね上げる。発動すれば何人たりとも抗うことなどできない絶対のはず。

 

 触れれば跡形もなく消し飛ぶ。振り払えば島がなくなる。

 

 それなのに、たかがカタナ一本。

 

 たしかにその圧倒的攻撃性能は認めよう。たしかにあらゆる光学兵器を打ち消す能力は類を見ない異常だ。だが、たかが威力がでかいだけ、打ち消せないエネルギーを逸らす程度のカタナを、

 ―――なぜ超えられない!?

 

 福音は飛び退る。後退したのではない、この位置が必要だったのだと自らに言い聞かせる。

 

 弾速を重視した弾丸が突き抜ける。銃火と爆炎を撒き散らし、破壊と暴力を振りまいていく。

 

 しかし、中らない。オリムライチカは前進をやめない。

 

 ベクトルの急激な変化から生まれる力を体幹の動きで瞬時にいなし、福音のワンオフアビリティの翼でしか成し得ないような急激な加減速と方向転換を行う。

 一見してあまりにもデタラメな動き。尋常ではない反射神経とバランス感覚が要求される超絶的な三次元機動。

 

 身体がどうしようもなく打ち震えた。

 福音は知っている。ナターシャ・ファイルスが眼を血走らせて何百回もその姿を眼に焼き付けていたのだから!

 

 その姿は、あの女に似ていた。

 

 「ブリュン、ヒルデ……?」

 

 呆然と零れた声は真耶のものだった。後輩として、尊敬するファンとして、彼女もその姿を眼に刻んだのだ。

 

 かつての最強が提示した機動概念。誰も真似ができない幻想。かつて憧れたのだ。強烈に惹かれたのだ。忘れるはずがない。

 

 「ま、さか……、ヴァルキリー・トレース・システム……!?」

 

 世界が打ち出した机上の空論。以前にラウラにも似たようなものが埋め込まれていたが、これは格が違う。

 

 いつそんなものが?

 

 この場でエレナだけがその正体を知っている。しかし、振り向いても『彼』の姿はどこにもなかった。

 

 突き出される純白の刃。

 

 福音は恐れるように身体を傾げた。首元を擦過する断頭台の刃。カノジョは知った。その気になれば、ジブンの命などあっさり摘まれるのだと。

 

 "ギ、ギィイイイイッッ!!"

 

 わざと翼のエネルギーを暴発させた。危険を顧みぬ自爆技。そんな手を使わされたコトが腹立たしい。

 

 しかし、手の内にオリムライチカの姿はない。

 

 遥か眼下の海上で、まるで恥ずかしい自慰でも目撃したかのような白けた眼で見上げている。

 

 福音は翼を振りまいた。ただ殺すだけでは飽き足らない。その膝を下り、地を這いつくばらせて、やっと溜飲が下げられる。

 そうやって福音はジブンの心を守った。

 

 掃射されるエネルギー弾から水面を滑走しながら逃げる白い影。福音はそれを追う。

 

 進路を塞ぐようにエネルギー弾が海面で爆発した。そびえ立つ白い水柱は突如として生まれた深い森だ。

 時速二千五百キロ。この高速度で飛び込めば、水柱に接触した瞬間に身体が爆ぜるだろう。高速で水と接触すれば、戦車砲の砲弾さえも木っ端微塵に砕け散る。

 福音は獲物を追い立てるように槍を照準した。

 

 オリムライチカは背後をチラリと見ると、

 触れれば弾け飛ぶ死の森に、

 "そのまま後ろ向きで突撃した"。

 

 福音は、もう、笑うしかなかった。

 

 この超速度下では急激な進路変更はもうはや不可能だった。翼を全面に覆い、自らも水の樹海に飛び込んだ。濃密にそびえ立つ水柱が叩き付けられ、ワンオフアビリティでエネルギーを相殺しているはずなのに凄まじい衝撃に何度も殴られる。

 

 視界が開けた。

 

 福音は翼を再び展開した。

 

 オリムライチカの姿は、ない。

 

 無機質のような軋んだ声が何処からか聴こえる。機械である福音は感情を削ぎ落とすとそういう声になると知っていた。

 

 「『奔れ 零落白夜』」

 

 頭の中は熱いのに背筋が凍る理不尽な感覚。ナターシャ・ファイルスの直感に突き動かされて、福音は身体を倒した。

 

 飛び出した場所のすぐ近く、重力に従い崩れる水柱の中でも最後まで残っていたひときわ大きな一つが袈裟斬りに斬り倒された。

 脅威はそこだけに留まらない。さらに数千mに渡って海面が真っ二つに切断された。

 

 "――― ……悪夢だ。"

 

 不気味なほどに時間をかけてどろりと元に戻る海を凝視して、そう思った。

 

 オリムライチカが零落白夜を構えた。

 ここで、福音は一つ、間違いに気がついた。

 

 零落白夜は白色なのではない。アレに色などない。万物が持つ意味を切り落としたように、世界と乖離しているのだ。

 総てを塗り消した残りカスの、空虚な色だ。

 

 福音は悟る。その色に触れれば、きっとジブンなどのみこまれてしまうことだろう。

 

 福音は逃げ出す。己が何者であるかなど、もはや関係なかった。

 

 「『継げ 零落白夜』」

 

 一瞬で一キロ以上離したはずなのに、オリムライチカの声はすぐ背後から福音を捕まえた。

 

 "――― これが、悪夢でないのなら何なのか。"

 

 振り向きざまに振るった両手の鍵爪が斬り落とされ、一瞬で細切れになる。

 充填していたエネルギーが暴発し、その隙に福音は距離を開け、エネルギー弾を撒き散らした。

 

 この世界に、神はいないのか。なぜあんな悪魔がのさばっているというのか。神は死んだのか。

 

 数万ものエネルギー弾がオリムライチカに殺到した。全方位から埋め尽くしたエネルギー弾から逃げ場はない。前後上下左右、見動きは取れないハズ―――

 

 「『堕(くず)せ 零落白夜』」

 

 総ての光の矢が霞のように散った。

 

 翼が泡沫の夢のように崩れ落ちる。

 

 そして、福音の世界が音もなく崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ついにきました主人公無双!

 やっとで仕上がりました福音戦。
 この後にエピローグを挟んで第二幕完結…(また嘘ついた…)


 ここで作中で登場した福音のワンオフアビリティについて説明。

・神の御手
 ナターシャ・ファイルスが発現したワンオフアビリティ。能力は水をエネルギーへの変換及び、エネルギーを水へと変換する。翼を形作っていた正体は福音が操っていた水であり、それを溜め込み開放することでエネルギー弾の射出、高速移動を可能としている。また敵からの攻撃、つまり外部からのエネルギーを水へと変換することで無力化することもできる。原作零落白夜の完全上位互換。水さえあればエネルギーを無限に供給できるが、福音自身に充填されるわけではない。また、エネルギー弾の射出数は増加するが、イメージインターフェイスで操るのは変わりないため、一度に誘導できる数は増えない。
 元ネタはイエス・キリストが水をワインへと変えた奇跡の逸話。



 アドバイス、批評、ついでに感想評価要望をお待ちしています

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。