「そこまで、ですわ」
草薙が放った球体を手で掴み消したのは、夜架だった
怒りに満ちた表情で黒鉄と草薙を見ている
「今、獅子王機関を潰すのは得策とは言えない。というのが、先程出た主様のお達しですわ」
「…そうか。であれば、煌坂紗矢華。貴様の身柄は俺が拘束させてもらう。文句は言わせんぞ、犯罪者は貴様の方だ」
黒鉄の影が浮き上がり、不定形な生物のように蠢く
それに呑まれた紗矢華は、どうなるのか。と莉緒が訊ねた
「大したことはない。モードが3つあってな」
「一つはさっき俺の影に移動してきたみたいに、影があるところに転移するってやつ。んで二つ目がありとあらゆるものを喰らい尽くすやつ。最後が喰ったものの時間を止めて保管するってやつだから、死んだりはしねぇ…よな?」
「満点だ。じゃあ俺はスピリダスに帰るぞ」
「ああ、あんがとさん」
黒鉄に軽く手を振って、草薙は槍を持ち直した
「少なくともこの槍が雪霞狼とやらと同じ機能を使えるのはわかったし、言霊も同じでええんかな?」
「…?」
「まぁ見てろって。雪霞の神狼、千剣破の響きをもて楯と成し、兇変災禍を祓い給え」
草薙の詠唱に応えて、雪霞狼だったものが結界のように神格振動波を発する
それによりかけられていた呪術の核が破損し、デパート内の人間たちが起き上がる
「…刻印呪術じゃなかったけど、さっき反応があったのは刻印呪術だったはず…。てことは、第零機関以外の別の何かがこの世界に来たってことか…?」
「どうした、草薙」
「なんでもない。とりあえず古城たちのところに戻ろう」
草薙は嫌な予感を振り払うように首を横に振り、莉緒を連れて店内に戻っていった
その直後、スピリダスでは
「…5人目の真祖…?」
「ああ。煌坂紗矢華から聞き出した情報によると、静岡県駿河湾のど真ん中の空間に亀裂が発生して、それが広がって円になった。その中から出てきたのがそいつだったんだとよ。んで、そいつ曰く俺らに用があるっつー話で、その護衛兼監視で煌坂紗矢華がこの島に来たらしい」
「…草薙を襲った理由については?」
「5人目に対抗できるかを調べるのと、5人目を俺らが匿ったんじゃねぇかっつーことで、捕らえて情報吐かせようとしたらしいぜ。まぁ結局俺らに捕まってるんじゃ話にならねぇけどな」
夜斗は顎に手を当てながら思考を巡らせていた
そこにきたのは、夜架だった
「悪いニュースがありますけれど、置き気になられます?」
「なんでいいニュースがないんだ…。で何?」
「剣巫の武装、七式突撃降魔機槍が草薙さんの魔力で破損しましたわ」
「うっわまじで悪い知らせじゃんか。アイリスを呼べ」
「かしこまりました」
夜架が立ち去ったあと、夜斗はため息をついた
「これ、アイリスが創れればいいけど創れなかったらまじで事件なんだけど…」
「…どうにかなんだろ」
黒鉄は草薙に軽い怒りを覚えながらも、割といつものことであるために諦めの意味を込めてそう言った