死神は、魔族が当たり前になっている絃神島でも目撃されたことはない
それはひとえに、死神が魔族ではないからだ
死神が何を指すのか、ということさえ現代ではわからない
「つっかれた…」
夜斗は机に突っ伏しながら言った
気だるげに顔を上げ、またすぐに突っ伏す
「…仮にも指揮官がそれでいいのかよ、主」
「黒鉄かぁ…。ノックしろって言ったはずだろぉ…」
「言われてた気がしてきたな。草薙からの定時報告だが、聞くか?」
「おー、頼むぜー」
「ディミトリエ・ヴァトラーから送られてきた荷物の中に入っていた女が邪神の花嫁だったんだとよ。同タイミングで俺らが襲撃されて、そっちの対応に当たったから現地の様子は不明。対応終了後に邪神が復活していて、またそっちの対応に向かった。聴取によると、邪神の祭壇がアメリカだかの軍人の中にあって、そいつに邪神の力が宿った」
「アンジェリカ・ハミーダだっけ?あの女。そいつは死んだのか?」
「殺したってよ。邪神の力が宿った経緯としては、軍人が荷物女を取り込んだんだと。だからまぁ、制御が効いていた」
黒鉄は報告書として送られてきた紙を読み上げ、夜斗を見た
政府との話し合いを終えたばかりの夜斗は、若干老けて見える
「制御用回路を七式突撃降魔機槍で破壊したところ、邪神は崩壊・分裂し落下。その後は知っての通り、俺と草薙と雪音で対応した」
「ほーん。まぁ結論から言うと島に被害はない、と?」
「ないな。強いて言うなら俺の能力が無駄に進化したし、今すぐにでも島を破壊することができるようになった」
「良好良好。牽制しやすくなったな」
夜斗は満足げに椅子に座り直し、肘掛けに肘をついて足を組んだ
そして黒鉄の背後に立つ莉緒にようやく気がついた
「…レヴィアタンじゃねぇかなんでここに…」
「主に用があるんだとよ」
「うむ。草薙と共に過ごし、守り守られるために汝を主と認め、草薙を娶る許可をもらいに来た」
「性別逆じゃないかな普通。まぁいいや、草薙を好いてると?」
「…わからぬ。二人でいるときは気分が良くなるが、雌がいると腹正しく思う。故にこれを恋愛感情と感じた」
「ほーん…。あのバカでかい魔獣にも感情がね…」
「…主」
「ああ、わかってる。莉緒、草薙を夫とするには条件がある。とりあえず一つだけ伝えておくが、家事くらいできるようになれ」
夜斗は指を鳴らした
現れた夜架が、莉緒を見てクスッと笑った
「莉緒さん。わたくしが、貴女に家事を教えますわ。スパルタで」
「ぬ…。お手柔らかに頼む、だぞ」
楽しげな夜架と、それを警戒する莉緒
二人を見て夜斗は、久々に温かみを感じたのだった