真剣で家族に恋しなさい!    作:HidEnd

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風間ファミリー

俺の目の前にいるのは土下座をしている体格の良い同級生。

 

「恭夜さん!これをどうぞ!」

 

土下座した状態で、食べ物を恭しく渡してくる生徒A。

 

「なぜ、こうなった?」

 

本当にどうしてこうなった。

俺が何かしたのだろうか、あの転校初日のことが関係してるのか?

まだあれから二週間しか経っていないのに、なぜ俺の交友関係がこんなことに。

 

俺の周りには、恭夜さん!恭夜さん!と崇める男子の群れ。

そう、こいつらは勝手に俺の舎弟を名乗っている。

いや、認めた覚えはないのだが。

 

「おーおー、すごい人気だねえ。恭夜」

 

その時に声をかけてきたのは、同じクラスの井上準。

グラマーなお姉さん好きで、頭髪がフサフサしているのが特徴だ。

何気に突っ込みもうまい。

さらに意外なことに、これでも医者の息子らしい。

何度か簡単な応急処置をしているところを見かけたことがある。

 

「準か、俺はこんなやつら認めた覚えはないんだけどな」

 

「いいじゃないですか?人気者なんて羨ましいです、惚れてしまいそうだ」

 

熱い視線を送ってくるこいつは葵冬馬。

こいつも医者の息子で、準とは昔からの付き合いらしい。

準は冬馬のことを若と呼んでいる。

葵紋病院の跡取りと副院長の息子の関係だかららしい。

 

「全部分けてやるぞ、冬馬」

 

「恭夜さん!ぜひ俺を鍛えてください!」

 

「うるさい」

 

いい加減うるさくなってきたので思い切りぶん殴る。

そうすると、決まってこいつらはありがとうございます!と言ってくるのだ。

 

本当に、どうしてこうなったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、俺が転校してきた次の日の話。

 

あんな発言をしたからか、俺に近づこうとするやつは少ない。

一部女子たちがプレゼントと言って色々渡してきたが、前の学校でもあったことなので気にしてはいない。

 

だが、そのプレゼントをもらったことに対して不満な奴らが大勢いた。

なぜあんな不気味な奴がモテるのか、と。

要は、男の僻みだ。

 

そして何故か、決闘と称して俺に集団で殴りかかり、全員残らず返り討ちにした。

 

「いやいや、すごいですね。恭夜君」

 

「おいおい、若。あいつ絶対危ないって!」

 

それを見ていたのだろう少年二人が、物好きにも俺に近づいてきた。

 

「……何か用か?」

 

「これは失礼。私は葵冬馬と申します、こちらは井上準」

 

「ま、まあ。よろしくな」

 

少し怯えているようで、ぎこちない挨拶をしてくる。

 

「……あー、疲れた。準、なんか買って来い」

 

「え!?いきなりパシリ!?しかも呼び捨てだし!」

 

「では私の分もお願いしますね」

 

「若までかよ!……仕方ねえ、ちょっとそこで待ってろよ!」

 

良いパシリだ。

初対面の奴のいうことを聞いてくれるなんて、そうそういない。

 

「ふふ、面白いでしょう?準は」

 

「ああ、お前らといると面白そうだ」

 

「では、友達になりませんか?」

 

「……家族だ」

 

「え?」

 

「俺たちは家族、いいだろ?」

 

「ふふっ、ええ。いいですよ」

 

と、こんな会話が行われた。

今でも、あの展開から家族ができるとは思わなかった。

 

その後戻ってきた準とも家族になろう!

発言をして驚かせたが、準は普通にそれを認めてくれた。

 

こんなに早く家族が出来るとは、俺の学校生活はうまくいってるようだとこの日は思っていた。

 

だが次の日。

 

「恭夜さん!」

 

俺たちは初めて三人で登校した。

そうしていると、昨日の同級生が集団で俺の名を呼んだ。

周りの生徒たちは、それを訝しげに見つめていた。

 

「なんだ、……また決闘か?」

 

「いえ、俺たちを恭夜さんの舎弟にしてください!」

 

そう、何故か俺の強さに惚れたとか言って舎弟にしろと言ってきた。

そういえば百代もこんな風にチヤホヤされていたなと思い出し、笑っていた。

 

その日は普通に断っていたのだが、毎日俺にまとわりついてくるので、何か言う気もうせた。

 

そして、時刻は二週間後にもどる。

 

 

 

 

 

 

 

「今思えば、意味不明な出会いだな」

 

「ふふ、そうですね。運命的な出会いです」

 

「いや、言ってないぞ。若」

 

「恭夜さん!」

 

「はぁ……」

 

そしてこんな状況になってしまっている。

まあ、冬馬や準といった家族が出来たことは嬉しいのだが、舎弟はいらん。

こいつらのせいで学校を俺がのっとろうとしている、近づく奴は誰でも殺す等といううわさがある。

教師たちも師匠のせいでそのうわさを信じたようで、最近俺に媚びてくる奴が多い。

 

「ですが、びっくりしました。恭夜が家族になろう等といいますから、不覚にもときめいてしまいました」

 

「いや、俺はそういうつもりで言ったんじゃないんだが……」

 

「あきらめろ、恭夜。若はいつもこんな感じだ」

 

「あー、メンドクセェ……」

 

最近では、師匠と暮らしているせいで師匠の口癖が移ってしまったり、めんどくさがりになってしまった。

俺としてはいい感じに前とは性格、口調共に変えれて嬉しい限りなのだが。

 

「知ってるか、冬馬?隣の学校では俺たちのうわさが流れているらしい」

 

「へえ、何ですかそれは?」

 

「何でも一つの学校を裏で操る小学生がいるとか、その傍らで知略謀略に富んだ天才小学生がいるとか、その二人に忠実な舎弟最強の頭髪がフサフサなやつがいるとか」

 

「それは素敵ですね、私の恭夜がうわさになるなんて嬉しい限りです」

 

「え?俺のうわさおかしくね?」

 

「何言ってるんだ準、お前だけは俺の舎弟を名乗っていいぞ。後冬馬、俺はお前のものじゃない」

 

「嬉しくないからね!?」

 

「ふふ、残念です」

 

なんだかんだ言って、俺はこの場所を気に入っている。

まあ、準以外の舎弟などいらないけどな。

準はその後、自称舎弟を名乗る奴から恨みの声を永遠と聞かされ俺になきついてきた。

 

まあ、こんな日々も悪くないと思える。

こいつらと新しい家族の日々を過ごせるのは単純に嬉しかったのだから。

 

 

 

 

 

そして俺は、いつものボロい我が家へと帰ってくる。

そしてドアを開けた先には、師匠が俺の帰りを待っているのだ。

 

言ってて気持ち悪くなりそうだった、

 

「ただいまー、親父」

 

「オイオイ、嫌がらせか?まだ釈迦堂にしたこと怒ってんのかよ」

 

「さっさと働けこのニートが!」

 

そう、この師匠は元川神院師範代。

暮らしていくのに十分すぎる金を持っている。

だから、こうして家に引きこもっているのだ。

 

「恭夜ぁ、死にたいようだな!?ああ?」

 

「上等だよ師匠。今回は20万賭けよう」

 

これが我が家の俺と師匠の決まりだ。

前に小遣いを寄越せ、と言ったときに俺に勝てたらやると言うので金を賭けた試合をやっている。

さすがに金が無いのは辛いので、毎回これで稼がせてもらうことにしている。

 

その後、俺の気封穴によって気が使えなくなった師匠と。

両手を折られた俺がいた。

両手が使えないので、遠距離から星砕きを使いまくり、かろうじて俺の勝利となった。

 

こんな日々も、悪くないなと二人同時に思っていたのは内緒であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の川神小学校。

 

「みんな、聞いてくれ」

 

そこには百代の暗い影があった。

今ここには、一子以外の姿がある。

親を失った一子は今、川神院にいる。

 

「どうしたのさ、モモ先輩?」

 

「そうだぜ、いつも元気な先輩らしくねえ」

 

「?……もしかしてワン子のことうまくいかなかったの?」

 

口々に百代の心配や、それをたずねる声が上がる。

 

「いや、ワン子は川神院で引き取ることになった」

 

「……よかった」

 

「私にまかせろって言ったのは、このことだったんだね姉さん」

 

大和がそれにやっと納得がいったという表情をしている。

 

「ん?なら何でそんなくらい顔してるんだ?」

 

「……恭夜が川神院を出て行った」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「どういうことだよ!?……なんで恭夜が!?」

 

「……そんな、恭夜が?」

 

皆が驚いた顔をして百代に向かって問い詰める。

百代は少しずつ語りだした。

あの日に何が起こったか、じじいにも聞いたこともあわせて。

 

「つまり、恭夜は姉さんとワン子の為に出て行ったってことか?」

 

「……そうだ」

 

「だから、ワン子はここにいないんだ」

 

確かに一子がこれを聞いたら自分を責めるだろう。

自分のせいで恭夜がいなくなったと。

 

「…なんで!なんでモモ先輩とめてくれなかったの!?」

 

京は百代につかみかかる。

今この中で恭夜に一番世話になったのが京だ。

恋といえる感情を持っているのは誰もが認知していることだ。

 

「やめろ京!姉さんだってつらいに決まってるだろ!?」

 

「……すまない、みんな」

 

「よし!」

 

そこで急に大声を上げるのがリーダー風間翔一。

 

「どうしたんだキャップ?」

 

「いや、恭夜は必ず帰ってくる!だってここにいるのはあいつの家族だぞ!」

 

「……そうだな。恭夜は家族には甘い」

 

「そうだぜ。まだ恭夜とは決着つけてないんだから、今度あったらぶっ飛ばす!」

 

「うん、恭夜はそういう人だもんね」

 

「……恭夜、…よし」

 

キャップの一言だけで皆は元気を取り戻す。

別に恭夜とは一生会えないわけではないのだ。

百代が言うには、釈迦堂という人と一緒に近くで暮らしているらしい。

なら、また会うこともあるだろう。

 

ただ、俺たちは家族だったなら、一言言ってくれてもいいのにと。

次にあったらその分も、問い詰めてやろうと決意する皆だった。

 

「よーし、みんな。そろそろ俺たちグループの名前を決めようと思う!」

 

「なんだいきなり?」

 

「後でワン子も呼んで話す!恭夜が言ってくれた家族を示す為にこの名前だ!」

 

「ああ、これなら恭夜も納得するな」

 

「恭夜がいつ戻ってきてもいいように、俺たちはこれからこれを名乗る!」

 

そう、これが俺たちのグループの名前が決まった瞬間だった。

皆はすぐに納得した。

これ以外ふさわしい名前はないと。

 

その名前が『風間ファミリー』。

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