真剣で家族に恋しなさい!    作:HidEnd

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原っぱ争奪戦

俺が一子と再会したあの日から一年が経とうとしていた。

そして今日、俺たちはいつものように原っぱで遊んでいる。

 

この一年で何かが変わったといえば、新しい仲間が増えたことだろう。

 

そいつらの名前は島津岳人に師岡卓也。

 

岳人はキャップや俺が調子に乗っているだとか言って喧嘩をふっかけてきた。

俺はもちろん返り討ちに、キャップは大和の知恵を借りて勝利。

 

というか本当の理由が告白されているのを見かけたかららしい。

年が下にもかかわらず、俺よりも背が高いことが特徴だ。

 

もう一人の卓也とは、岳人とキャップの喧嘩を見ている中、大和と俺の三人で談笑していた。

無理やり岳人につれられてきたようだった。

だが嫌がっている様子はなく、むしろストッパーとしてついてきたらしい。

 

こちらは平均に比べると、背が低めで身体の線も細い。

女の子にも間違われそうだ。

 

そして二人の喧嘩が終わるころ、何故かなし崩し的に友達になっていた。

その翌日、ふらっと原っぱにやってきて仲間になった。

 

本当は百代も誘おうかと思っているのだが、何故か俺を避けているようなきがする。

この間、強引に問い詰めてみると。

実は、一子のことを気にしているようで顔をあわせにくいんだとか。

そんなこと、一子は気にも留めていないんだが、百代は変なところで繊細だから困る。

 

そんな日々が続いたある日のことだった。

 

俺たちが原っぱで遊んでいると、俺と同じ学年と思われる少年たちが集団でやってきた。

 

「おいおい、何だよお前ら!ここは俺たちの遊び場だぞう!」

 

先陣をきって叫ぶのはわれらがキャップ。

 

「ふん、風間ぁ。お前最近生意気なんだよ。それに川神!お前の妹には散々迷惑かけられてんだよ!」

 

「百代が?……どうせお前らがちょっかいだしたんだろうが」

 

「うるせえ!……ふっ、どっちにしろここは俺たちが使わせてもらう。お前らはさっさときえな」

 

「ちょっと!ここはアタシたちが使ってるんだからあんたたちが消えなさいよ!」

 

「……一子。俺の背中に隠れて叫ぶのはやめろ」

 

「ははっ、知ってるぜ。お前らは全員クズの集まりらしいな?」

 

「んだと?」

 

クズという言葉に岳人が反応する。

こいつがいままで耐えてたことに驚くが、もう我慢の限界らしい。

 

「風間は親が冒険家なんていうバカな仕事をやってるし、直江ん家は両親共に家にも帰ってこないらしいじゃないか。島津は最底辺のバカだし、師岡はいじめられっ子」

 

それぞれ、完全にキれかかっていた。

大和はこんな悪口など冷静に流しているように見えるが、気に乱れを感じる。

 

「それに、そこの岡本と川神。お前ら、親にも捨てられたんだってな!……クズの証拠じゃねえか!」

 

少年が言うと同時に、周りの奴らが笑い出した。

 

こいつらは今、完全に言ってはならないことを言った。

俺のことはどうでもいい。

俺の家族を馬鹿にし、俺の家族を傷つける。

それだけが、不快だった。

 

「うっ……、ぐすっ」

 

一子は泣いていた。

一子自身、思わなかった日々はないのだ。

なぜ自分が捨てられたのだろうか、と。

自分は生まれてきても良かったのだろうか、と。

孤児院時代、何度も聞いた言葉だ。

 

「おいおい、やっちまったな」

 

「ああ、恭夜の琴線に触れた」

 

「大丈夫かなあ、あの人たち。……ま、どうでもいいけど」

 

「けっ、やっちまえ。恭夜!」

 

みんなはわかっているみたいだ。

俺は静かに気を高めた。

 

「なんだかな……、じじいには止められてるんだよ。一般人には武術を使うなってな」

 

「は?なにいってんの、川神」

 

こいつらは百代のことしか知らないのだろう。

俺が武道をやってることを。

 

「それでも、やっぱり我慢は出来ないな。俺の家族を傷つけたんだから」

 

言いながら、俺は一子の頭をなでてやる。

それだけで安心したのか、一子は笑顔を見せてくれる、

あのときの、笑顔だ。

俺がこいつらに救われた、あのときの。

 

数秒後。

少年たちは、地にひれ伏していた。

 

「いつ見てもすげえな、恭夜の野郎」

 

「ね。もはや災害級だよね」

 

岳人と卓也はもう慣れたのか、平然としている。

 

「ずるいぞう、恭夜!俺にも相手を残しておけよ!」

 

キャップはいつものようにはしゃいでいる。

 

「ふっ、俺たちに手を出すからこうなる」

 

大和は……、いつも通りだった。

 

「恭夜!ありがとう!」

 

一子は本当に、いい笑顔だった。

 

「うっ……、川神お前覚えてろよ!今度はもっとつれてきてやるんだからな!」

 

「よし!お前ら、作戦会議だ!」

 

「作戦って…、恭夜がいれば大丈夫なんじゃない?」

 

「いや、恭夜だけなら大丈夫だろうが、俺たちを守りながらとなると危ない」

 

「確かにな、俺でもお前らを守りながら大人数を相手にするのは難しい」

 

俺は何度も言うが驚異的なスピードやパワーがあるわけではないのだ。

基本俺の戦闘スタイルは気を使っての殲滅かカウンター狙いの持久戦だ。

時間をかければ誰にでも勝てる自身はあるが、皆を守りながらとなると短期戦になる。

それは、俺の苦手分野だ。

 

「それに、守られてるだけでいいのか?」

 

大和の問いかけに、みんなは否定の意を示す。

 

「俺様の出番だな!」

 

「うん、僕も協力するよ」

 

「あ、アタシも!」

 

「ひゃっほう!腕がなるぜ!」

 

「そこで提案だ……、戦力を増やそうと思う」

 

「大和、まさか……」

 

にやりと笑う大和を見て、俺は嘆息するしかなかった。

 

 

 

「それで、ここに来たわけか?恭夜」

 

俺の前には今、鬼が立っていた。

 

「ああ、協力してくれ百代」

 

おい!まだ私はきまずいんだといっただろう!

大丈夫だ!一子はそんなこと気にしていない!

私が気にするんだ!大丈夫なわけないだろう!

ああわかった!今度何か一つ買ってやるから!

本当か!?何でもいいんだな!?約束だぞ!?

 

アイコンタクトで会話を終わらせた俺は非常に疲れていた。

そこを慰めてくれる卓也。

 

「よし!協力してやろう。ただし!お前、大和といったな」

 

「!?はい」

 

「お前、私の舎弟になれ」

 

「は?」

 

「ちょうど舎弟が欲しかったんだ。もちろんいいだろう?」

 

このとき、大和は気づいていなかった。

この契約が一生後悔するはめになるということを。

 

「わかった、これでいいか?姉さん」

 

「よし!これでお前は舎弟だ!」

 

「百代、お前弟がほしかったのか……?」

 

「うっ!べ、別に下がいないから寂しいという理由ではないからな!」

 

「じゃあ、あとは頼んだぞ百代」

 

「ん?恭夜はいかないのか?」

 

「ああ、じじいに叱られてくる」

 

どんな理由があるにしろ俺が一般人に手を出したのには変わらない。

それに対しては、ちゃんとしかるべき処置を施してもらわなければならない。

 

「じじい、見てたんだろ?」

 

「ほっほっほ。さすがじゃのう、恭」

 

「気に関することなら誰にも負けねえよ」

 

「……おぬしに対する処罰じゃが特にないぞ」

 

「おいおい、孫バカにもほどがあるぞ」

 

「……そんなことより恭夜、本当にやるんじゃな?」

 

俺の一言は普通にスルーされる。

俺の名前を呼ぶことは、一種の合図となっていた。

これが、川神院に関することだと。

 

「……ああ、おっさんに聞いてるんだろ?」

 

「まあ、の」

 

「ルー師範代とおっさんの亀裂は徐々に広がってる。それにもう一つ」

 

「……」

 

「もう一つ、俺と百代どちらが川神院総代になるかで派閥ができあがっているだろう」

 

「すまないのう、恭夜ばかりに負担をかけておる」

 

何を言うんだか、あんたには感謝してもしきれない恩があるというのに。

 

「俺とおっさんは来年、ここを出ることにした」

 

「そう、か」

 

「俺はそのときに、百代と総代の座をかけて決闘をする。俺が負けたら破門にしてくれ」

 

「釈迦堂は精神面のことがあるが、なにも恭夜まで破門にすることはないのじゃぞ?」

 

「じじいにもわかってるだろ?……この川神院の意思は、正当後継者である百代を総代に、という事で固まりつつある、俺が負けたら川神ではいられないんだよ。結局俺は、どこまでいっても養子なんだから」

 

「……恭夜、何度も言うが」

 

「俺たちは家族であることにかわりはない。わかってるさ」

 

俺はそのまま部屋へと戻る。

じじいはいつもより深刻そうな雰囲気を漂わせ、川神院は少し負の空気で荒れている。

だが百代が帰ってくるころには、もう元に戻っていた。

 

ちなみに百代は一般人に手を出したことで処罰を受けていた。

やっぱりあの話をするために処罰を帳消しにしたのか、と俺は確信した。

さらに百代も俺たちの仲間になるようだった。

 

その日の晩、俺は百代の部屋で眠り、抱きつかれながら夜を明かしたのだった。

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