真剣で家族に恋しなさい!    作:HidEnd

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少年期
これからの『俺』


俺が目を覚ましたとき、そこは小さな部屋だった。

あたりを見回してみると、大体1LKといったところか。

 

「おう、目ぇ覚めたか」

 

声をかけてきたのはおっさん、釈迦堂だ。

ここでやっと自分がどういう環境におかれているか理解する。

 

「そう、か。俺は負けたのか……」

 

「ああ、ひどい負け方だったわ」

 

「……この部屋は?」

 

「借りた」

 

簡単に言ってくれる人だ。

まあ、師範代として給料をもらっているし、金に困ってるという話は聞いたことがない。

何気に行動が早い。

 

「……あー、どうすんの?おっさん」

 

「恭夜お前、何か口調変わったな?それと、俺のことは師匠と呼べ」

 

「川神は破門。なら、俺は今拾われる前の恭夜だからな。つーか、今更師匠って……」

 

そうだ、俺は川神院を破門された。

今までの自分でいる必要も無い、むしろ変わらなければならない。

百代にいたっては、俺を恨んでいるかもしれない。

もう俺は、川神を名乗ることはないのだから。

 

「うっせえよ、とりあえず……お前、学校行け」

 

一瞬、呆然としてしまった。

このおっさんは何言ってるんだ?

 

「学校ねえ……、金あるのか?」

 

「おいおい、俺は川神院元師範代だ。それにお前小学生だろーが」

 

「まあ、別にいいが。今からか?」

 

「ああ。ちなみに前とは違う学校だからな、戸籍も変えた」

 

「……は?」

 

学校が違うのはいい。

百代や仲間たちに今会うのは気まずい。

それに別れも告げられなかった。

それより、戸籍の件だ。

 

「裏のルートがあるのよ、ちなみに性は釈迦堂だ」

 

「なんてことしてんだ、負け犬が!」

 

いや、釈迦堂のおっさんには感謝している。

だからって性までもらうのは色々といやだ。

 

「ああ!?てめえも、百代の奴にボロ糞に負けてんだろーが」

 

「ちっ、まあ学校通うのに名前だけじゃ不便だからな。仕方ないから、いやだけど、使ってやる」

 

「オイ、今舌打ちしたか?あーあ、悲しいねぇ。不出来な弟子のために色々気を使ってやったって言うのによぉ」

 

「らしくないことすんな、……師匠」

 

「……さっさと行け、ちなみにお前年齢一つ下になったから」

 

「は?」

 

また呆然とした。

詳しく問い詰めると、その裏のルートで手に入れた戸籍に記載されている人が俺より一つしたらしい。

それにあわせて名前だけを変更したようだ。

その裏のルートとやらをひたすら問い詰めてやりたかったが、師匠になにをいっても無駄な気がしたのであきらめた。

 

それにしてもせっかく俺が呼んでやったのに、この態度とは。

まあ、俺の今の家族はこの人だけだ。

鉄心のじじいや、百代とは縁が切れてるし、家族と一方的に思ってる仲間たちも許してはくれないだろう。

いまでも皆に感謝しているし、家族であったことには変わりないのだから。

 

とりあえずこのボロい部屋を出る。

俺が通う学校への地図を投げて渡された俺は、その通りへ進んでいく。

地図を見てわかった事だが、ここ川神のすぐ隣の市だ。

ということは、自然に前の学校の近くに通うことになる。

誰かに会わないことを願うだけだ。

 

 

 

 

 

その学校に俺がついたとき、とりあえず事務所に立ち寄ることにした。

俺がここに転校するのは知ってるので、案内か何かしてくれるだろう。

 

「……すいません、今日からここに通うはずの、……釈迦堂……、恭夜ですけど」

 

「え?もう一度名前を言ってくれますか?」

 

何て惨い仕打ちをする受付の人だ。

俺が覚悟を決めて名乗ったというのに。

仕方がないので、今度は少しはっきりと名前を言ってやる。

 

「釈迦堂、恭夜です」

 

「ああ、釈迦堂君ね。聞いてるわよ、……それにしても釈迦堂なんて珍しい苗字ね」

 

こいつ、わざとやってるんじゃないか?

敵意を向けてにらむと華麗にスルーされた。

その後、ついてきてと言われ、職員室へと案内される。

 

「失礼します、今日転校してきた釈迦堂君を連れてきました」

 

じゃあ、またね。と手を振ってくる事務所の受付の人。

馴れ馴れしい態度に少しいらついたが、転校してきて緊張してると思い?ほぐそうとしてくれたのだろうと思うことにした。

 

「失礼します」

 

「ああ、君が釈迦堂君かい?……えーと、授業中自由にしてもいいからね」

 

何か、意味不明なことを言われた気がする。

授業中自由にしていい?

そんなことを言う教師がどこにいるんだ。

 

「あの、意味がわからないのですが?」

 

「いや、別に君を特別扱いしてるわけじゃないんだよ?……ただそういう風にするように校長から言われてね」

 

あんた一体何をしたんだ師匠。

俺はこの扱いの犯人は師匠であることに確信していた。

俺の小学校生活を邪魔したいのだろうか?

教師から特別扱いなど受けていたら、周りの生徒たちに変に思われるだろうが。

 

俺はそのとき、不適に笑う師匠の顔が頭に浮かんでいた。

 

「まあ、これから授業も始まるから、今日のところは隣の子に教科書みせてもらうようにしてね」

 

「……わかりました」

 

これは最低でも教科書は出すようにしておけということだろうか。

まあ、自由にしていいといわれたのだから、自由にするか。

 

「さて、ここが君の教室だ。呼んだら入ってきてね」

 

俺はとりあえず頷いておいた。

教師が教室に先に入って、何分かしてから俺の名前が呼ばれる。

俺が教室に入ると、何人かの男子の笑い声と、ほとんどの女子の叫び声が聞こえた。

 

笑った男子は俺の苗字に反応したようだ。

そういうやつは、殺気をあてて泡を吹かせておいた。

自由にしていいといわれたし、大丈夫だろう。

 

「俺の名前は釈迦堂、恭夜だ。今後俺を苗字で呼んだら殺す」

 

そうこれは重要なことだ。

ここまで脅しておけば誰も俺を苗字で呼ばないだろう。

これからの学校生活釈迦堂と呼ばれ続けるのはいやだからな。

 

俺がこんな態度をとったのにも関わらず、女子たちはキャーキャー騒いでいた。

それに反して男子の怨嗟の声も、そいつらはさっきと同様殺気をぶちあてる。

 

「おいおい、何かヤベー奴が転校してきたな?若」

 

「ふふ、楽しそうじゃありませんか?それにこれからが楽しそうだ」

 

今思えば、これがきっかけだったのかもしれない。

これからの学校生活があんなことになるとは俺も思っていなかった。

 

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