※初めの方を少し修正しました。
…………私の名は織斑マドカ
私は最高の人類を夢見て作り出された人工生命体、織斑千冬を元に作られた人間だ。
しかし、私は出来損ないだった。いつも優秀だった姉さんと比べられ、研究員の奴らから蔑まれてきた。所詮はスペアでしかないということだ。
私の姉さんは数年前にとある男を連れて逃げ出した。私ではなく、その男を……それはそうだ、私のことなど知らないのだから。
それでも飯を貰えるだけマシだった。
でも、そんな生活は突然終わりを迎えた。
生まれてから数年経ったあの日、私は研究員の奴らから殺されかけた。もうこんな出来損ないを生かしておく価値はないということだろう。私の存在は表に出てはならない、なら始末した方がマシということだ。
だから……私はあそこから逃げ出した。
だが、人工生命体とはいえ、まだ幼い私にとって、一人で生きていく術など知らない。
「…………お腹……空いた……」
空腹で死にそうだ、知らない船に乗ってただひたすら歩いて逃げた。おかげでもうこの数日間何も口にしていない。
このまま土に帰るのもいいかも知れない。出来損ないの私の命なんぞ、貴重でもなんでもないのだから。世界を憎む気力も、姉さんのことを追いかける気力も、もう残っていない。
「………………」
「………………」
「…………ねえ」
ふと、顔を上げると見知らぬ男児が私のことを哀れむような目で見ていた。
「……君、何があったの?」
「…………?」
「やつれ具合が酷い。それにその痣……普通にぶたれてつけれるようなものじゃない」
私には男児が何を言っているのか、空腹のあまり耳に入ってこなかった。
「おい零。何やってんだ、さっさと行くぞ」
「礼子姉さん、この子、死にかけてるよ」
「はぁ? んなもんほっとけよ。さっさと帰るぞ」
そう言いながら女性は向こうへ去る。
「……とか言ってるけど、姉さんは僕を拾ったじゃないか」
そう言いながら、男児は私を抱き抱える。
「軽い……軽すぎる」
「?」
「……帰る場所、ないんでしょ?」
「…………」コクッ
私は男児の問に頷く。
男児は私を抱き抱えたまま、どこかえ連れていく。もうこの際、こいつの貢物にでもなってやろう…………もう私の命など……
「ん? なんだ、連れてくのか?」
「うん」
「ふーん、おめーにしては珍しいな」
「何となく、助けてあげたかったから」
ゴツンッ
「そんな生半可な気持ちで連れて帰んじゃねえよ、そういう所から情報が漏れるだろうが」
「ごめん…………」
「たく、おめーが面倒見るんだぞ」
「わかってるよ」
────────────ー数年後
『シュミレーション終了、お疲れ様でした』
スピーカーからアナウンスが響くと同時に、2mの小型の球体のハッチが開く。中からISのバイザーを付けた少女が出てくる。
「お疲れ様、M」
「ん、スコールか。すまないな」
Mと呼ばれた少女は、金髪の淫乱漂う女性から投げられた飲料水をキャッチする。
「相変わらず熱心ね」
「なに、仕事がないからただ暇を潰しているだけさ。そう熱くはなってない」
「暇潰しねぇ、にしてはココ最近新記録更新が続いてるようだけど」
「偶然だ偶然」
Mはペットボトルの蓋を開け、ボトル内の水を飲む。
「ぷはっ……そういえばオータムと0は?」
「んー、多分もうそろそろ「馬鹿野郎が!」ほら来た」
入口付近から、オータムの怒鳴り声が響く。
『たく! だからあんだけ気をつけろっつっただろうが!』
『分かってるって、でも仕方ないだろ? まさかあーも大人数で来るとは思わなかったんだよ』
『お前はいっつもそうやって安易にやりやがって、ちーとはこっちの身にも…………ておい! 0! まだ話は終わってねーぞ! てかその前に傷口塞げ!』
オータムの怒鳴りに振り向きもせず、0はそのまま自室に向かう。
「0ったら、まーた何かやらかしたのね。いい加減にしないとオータムの髪の毛がストレスで抜けるわよ」
その光景を、スコールはやや呆れた表情で見ていた。
このようなやり取り、今日始まったことではない。0が思春期を迎えてからずっとである。
「…………それじゃあ、私はオータムを癒しに行くから……あら」
スコールはMに話しかけようとしたが、いつの間にか姿を消していた。
「あらあら、相変わらず0のことになると速いわねーMったら」
「スコール──…………」
「はいはい、どうしたの」
「0の野郎が最近私を避けてやがるー……」
「そう、それは辛いわねー(オータムったら、0を拾った時とはまるで別人ね、まあこの子のこういう一面も好きだけど)」
──────────ー0の部屋
「…………いっつ、やっぱ痛いな。そりゃあ集団から一斉に撃たれればこうなるか」
今日の仕事は何時もよりキツかった。何せただの強奪に何十人もの警備が着いてたんだからな。ISの。
こちとら男だからISなんて使えないのに全く上の人間はどうかしてるぜ。
ま、こうして無事盗んで生きて帰ってこれただけでも良しとするか。
あーくそ、血が治まらないな。やっぱ礼子姉さんに手伝ってもらった方が良かったか?
コンコンッ
「ん? 誰だ?」
「……私だ、零」
「ん、Mか。いいぞ、入ってくれ」
ガチャッ
「だからプライベートではマドカと呼べと…………てお前!? なんだその怪我は!?」
「何って、撃たれたんだよ。まあ動脈やってないから大したことない」
「何処が大したことないんだ! お前と言うやつは本当に…………貸せ!」
マドカは俺から包帯を取り上げ、腕をキツく縛る。
「いてててて、きついきつい」
「止血だ馬鹿者。全く、オータムの奴が心配するわけだ……ほら出来たぞ」
マドカは俺の腕を軽く叩く。こうだと軽くでもけっこう痛いもんだな。
「サンキュー……て、要はこれだけか?」
「ん、そうだな」
マドカは何故か顔を赤くしながら両手を拡げる。
「何それ?」
「……!? このバカ!」
マドカは俺の頭をはたく。一応頭も掠ったから結構痛い。
ダキッ
「バカ……約束だろう……帰ったらハグするって」
「……そういえばそうだったな」
そうか、確か任務前にマドカと約束したんだっけか。流石に今回は死ぬかもしれないからもし生きて帰ってきたら何かするって、たしかあん時もマドカにはたかれたっけか。
それにしても随分と熱い抱擁だな。
ん?
「お前、泣いてるのな?」
「…………」ギュウゥゥゥ…………
「ぎ、ギブギブ」
俺を絞め殺すきか。
まあいい、約束は約束だ。今日は好きなだけ抱かせてやろう。
────────────────ー
「はい、食べて」
「………………」
男児に抱き抱えられた私はそのままとある場所に連れていかれた。どうやらこいつとさっきの女性が泊まっている部屋らしい。
部屋に入って早々私は服を脱がされ、シャワーを浴びせられた。体も洗われた。髪が酷くパサついていたため、洗われた時はちょくちょく引っかかっていた。
そして今、男児は私に料理を差し出してきた。何やらスープのようなものである。
だが正直、空腹が続いた状態で食べ物を見ると、逆に気持ち悪さが増す。
「一応消化にいいものを入れといたから」
そう言うと、男児はスプーンで料理を掬い、私の口元に近づける。
気持ち悪くてあまり食欲はわかない。しかし空腹なのは確かだった。
結局私は空腹に耐えられず、気持ち悪さを押し殺しながら差し出された料理を頬張る。
「………………」
「美味しい?」
「………………」
あまりに空腹だったため、味は分からなかった。けど温かいスープがお腹を満たしてくれていたのは理解出来た。何日間ぶりか分からない食事だった。
「泣いてるの?」
男児に指摘され、私は自分の目から涙が出ていることに気がつく。
そういえばココ最近追われている恐怖で涙なんか流す暇がなかった。
「…………ひぐ……」
「よしよし」
男児は私を優しく包み、頭を撫でる。
こんなことをされたのは生まれて初めてだった。あそこでは人間のような扱いを受けていなかったからな。
「おーい、零、飯買ってきたぞ…………何やってんだお前」
「ああ礼子姉さん、おかえり。ちょっとこの子が泣いちゃったからさ。寝るまで少しね」
「おめーが泣かせたのか?」
「うーん、多分。料理が不味かったのかな?」
「お前が作るスープが不味いんならそこいらの野郎のはドブの味だな」
「褒めてるの?」
「貶してはねえよ…………で、そいつどうすんだよ? お前がちゃんと面倒みるってんなら上の奴らに私から話をつけておくけど?」
「うん、出来ればそうして欲しいけど。僕の時はどうだったの?」
「あー、あんまし難しくはなかったな。お前だって別に反抗的なわけじゃなかったし。何より家は人手不足だから子どもでも真面目にやる気のあるやつは大歓迎だってよ」
「……じゃあこの子に聞いてみるしかないかな。出来れば危険なことから遠ざけたいけど」
「なんだ、そいつが好きになったのか?」
「好きって?」
「……あー……お前にはまだ早かったか……いや忘れてくれ。ほれ、とりあえず飯」
「? ありがとう」
零
オリ主。幼い頃にオータム(礼子)に拾われた。