──────────ー第3アリーナ
入学式から数日経った放課後、俺はレインと一緒にアリーナを借りてISの訓練を行っていた。初期設定は入学前に終わったから、とりあえずその他機能が正常に動くかの試運転も重ねている。
PICも異常なし、ホバー移動も飛行も良し、ウィングスラスターも問題は無い。ハイパーセンサーも正常だ。
それにしてもこの『クロスライザー』、やっぱいつてみても極悪人ズラだな。少なくとも初見で敵認定されそうだ。
『誰が極悪人ズラじゃい』
ん?今どっかから声が……気のせいか?
「零!よそ見すんな!」
「うわっ!?」
なんて思ってたらレインが思いっきり双刃剣を振り下ろしてきたので横に沿った。かれこれ数十分避けている。こちとらまだ動かして日が浅いのにさっきから手加減がない。
というか何故かこの数日間レインの機嫌が悪い、何があったんだ?
「おらぁ!」
「く!」
両手に大型双剣クロスマッシャーを展開し、レインの一撃を塞ぐ。
そして剣を弾く反動を利用して距離を取り、クロスマッシャーを素早くガンモードに切り替えて弾丸を放つが、レインはいとも簡単に避ける。
「!?」
と同時にヘル・ハウンドの両肩についてる犬頭から炎が放たれる。幸いギリギリ避けることが出来たが。スコール姐さんの家系は炎が得意らしい。何かレインが昔やってたゲームみたいな設定だな。
しかし気の所為だろうか、両肩の犬頭も何故か怒っているように見える。
「……あっち」
さっきの炎、避けきれなかったか。腕の装甲が少し焼けてる。
「…………あ」
正気に戻ったように、レインが声を漏らす。
「おい零。大丈夫か」
「ああ、大丈夫だよ。少し装甲が焦げただけだから」
「そ、そうか」
先程の鬼の形相はどこへやら。
それにしてもレインのIS操縦技術は凄いなぁ。やっぱ3年間通ってる上に入学前から毎日のように動かしてたからか。
「とりあえずもう時間だから戻るか」
「うん、そうだな」
今日は避けてばっかで何も出来なかったな。クロスライザーにはクロスマッシャー以外に武装があるから今度は上手く使いたいな。
「ほら」
「?」
「疲れただろ?手ー繋いでやるから」
「いや、別に「いいからほら!」
無理やり手を捕まれ、そのまま入口まで連れていかれる。こいつ、こんな強引な奴だったか?
てか観客席から悲鳴やら叫びやらが聞こえてるけどいいのか?
「………………」
「あ、フォルテさん」
「ふぉ、フォルテ……」
入口に戻ると、フォルテさんがジト目でこちらを睨んできた。
「……手ー繋いでるっすね」
「あ、いやな?これh「どうせ私は遊びっすよぉぉぉーー!!!」あ!待てって!」
────────────────ー
「んで、一夏と箒は訓練機の予約は出来たの?」
「いやぁ、それが今週の分はもう埋まってるらしくてさ。来週まで無理って言われたんだよ。借りれたとしても2つはきついかもしれないらしいし」
「下手すれば専用機が先に来るかもな」
訓練の後、俺は一夏と箒と一緒に夕食を食べていた。
レインは今フォルテさんの所にいる。相当落ち込んでいるらしい。
「セシリアも射撃の訓練に付き合ってくれるって言ってくれたぜ」
「へー、セシリアさんがねぇ」
セシリアさんは確か射撃タイプのISを使ってたっけ、ブルー・ティアーズ、礼子姉さんが強奪したサイレント・ゼフィルスの姉貴分にあたるISか。
そういえばサイレント・ゼフィルスは今頃どうしてるかな?やっぱマドカが使うのか?
「あら皆さん、ごきげんよう」
「あ、セシリアさん」
なんて思ってたらお盆を持ったセシリアさんが来た。
「お隣、よろしいでしょうか?」
「いいよ、座って」
俺の隣の空席に座る。
「おおセシリア、訓練は終わったのか?」
「ええ、先程。今日も上手く行きませんでしたわ」
何でもセシリアさん自身は偏向射撃を練習中だとか、空間把握とイメージで撃てるとかなんとか。身内(マドカ)がシュミレーションで普通に撃ててたから難しいとは思わなかったなんて言えないな。
「そういえば、零さんもケイシーさんと訓練されていましたわね」
「あれ、見てたの?」
「隣で訓練してましたから。もしかしてお気づきにならなかった?」
レインの猛攻を避けるのに夢中で全然気が付かなかった。
「零さん、失礼を承知でお聞きします。貴方、ISの稼働時間は」
「んー、アメリカで初期設定をやって…………それで動かして、今日またうごかしたから……大体16時間ぐらいかな」
「じゅ、16時間ですの?」
「そうだけど?何か変かな?」
「いえ、16時間にしては動きが良かったもので……」
そりゃあたった16時間でもあんな濃いスパルタ教育を受けてれば嫌でも動きは良くなる。本当は16時間以上だけど。
「指導してくれた人がとっても厳しい人だったからね、あの人に最低限動かせるぐらいにはしとけって扱かれたから」
「そうでしたの」
出来ればあんなスパルタ教育は二度とゴメンだ。
「いいよなぁ、俺も上手く使えるようになるかなぁ」
「訓練するしかないさ。ま、専用機が来たら約束通り一緒に訓練しようよ」
「そうだな、一緒に頑張ろうぜ!」
何か一夏といい感じになってる気がするが……というか今更だけど、俺、男友達なんて作ったことないな。そもそも友達がいないか。マドカは家族だし、レイン?レインは姉貴みたいなもんだから家族だ。
エクシアちゃんは…………どっちだ?
「いやぁこのサバ美味いなぁ」
「それはさわらだ織斑」
「え?鯖じゃないのか?…………ん?今の誰?」
「後ろだ、馬鹿者」
ふと、一夏の後ろに誰かが立っていた。
黒いスーツ越しでも伝わる整ったスタイル、膝まで丈のあるスカート、流れるような艶のある黒髪に蛇のように鋭い目付き、美人の類に入る容姿…………ふーん、この人が。
「あ、千冬姉」
シュバンッ!
「ここでは織斑先生だと言っただろ」
そう、後ろに立っていたのは人類最強の鬼……じゃなくて、なんだったっけ?
ああそうだ、ブリュンヒルデだ。そう、そこに立っていたのはブリュンヒルデの異名を持つ織斑千冬だった。
「いてて……お、織斑先生、何でここに?」
「ふむ、先程倉持技研から来週の月曜日にお前の専用機が届くと連絡が入ってな、それを伝えに来た」
「そ、そうですか。え?それだけ?」
「いや、それもあるが」
そう言うと織斑千冬は俺の方に視線を移す。何とも怖い、さっきの打撃といい性格といいマドカに全然似てない、似てるのは容姿だけだ。
それにマドカはあんな暴力しない、やるのは俺が怒らせた時だけだ。それに目付きだって可愛い。
「ふむ、お前が巻紙零か」
「はい、初めまして織斑先生」
「榊原先生から話は聴いている、いきなり入学が決まって大変だろうが頑張ってくれたまえ。何かあれば私に相談してくれて構わん」
脳筋先生への相談(物理的)は出来れば避けたいですね。ま、関係を作っておくのもありか。
「それと……織斑とは同じ男同士、仲良くしてやってくれ」
「ちょ、ちふ……織斑先生」
「はい、わかりました」
なんのかんのいってブラコンなわけだ、まあ2人で生きてきたのならそうなるか。
それにしても…………マドカも成長したらこうなるのかな?いや、そうだとしてもマドカはマドカだ。織斑千冬に似てようが関係ない。
「私の顔に何かついてるか?」
「いえ、何でもありません」
しまった、つい織斑千冬の顔を見つめていたか。後でマドカから何か言われそうだな。
「それじゃあ私は戻る」
「おう」
「はいだろ馬鹿者」
「あ、はい……」
織斑千冬は食堂から去っていく。
後ろ姿もマドカに……てさっきから何を考えているんだ。
「零さん、どうかなされましたか?」
「ん?いや、何でもないよ」
ピロンッ
あ、多分マドカからだ。でも怖いから見ない。
「どうしたんだよ零、まさか千冬姉に惚れたのか?」
「まさか、それは(ありえ)ないよ。ただ僕の家族に似てたから少し見てただけだよ」
「へー、千冬姉に」
似てるどころか下手すれば…………いや、なんでもない。
「はぁ……何処かに千冬姉を貰ってくれるいい男はいないもんかなぁ」
そういう事を女子の前で言うんじゃないよ。
「一夏……お前なぁ……」
「流石に今のは……」
「え?」
案の定セシリアさんと箒が引いてる。
さて、早く食べないとうどんがのびる。
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「なあ、スコール」
「はいはい」
「零は大人の女性の方が好みなのだろうか?」
「うーん……まああの子のことだからそう言う好みとかはないんじゃないの?」
「そ、そうか……ならいいんだ」
「(ふーん、もしかして零が織斑千冬に惚れると思ってるのかしら。ま、そんなことはまずないでしょうけど)」
「零の奴、今頃女を取っかえ引っ変え……くそ、そんな男に育てた覚えなんてねえのに」
「とりあえず頭冷やしなさいオータム(荒れた姿も素敵ねぇ)」
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「さてと、今日の復習でもするか」
IS学園では一つ一つの授業の内容が濃い、だから1日の復習しないと着いていけなくなる。姉さん達から扱かれたから少しはマシだけど、一夏の場合はかなり辛いだろうに。てか電話帳と間違えて捨てるってなんだよ。
「……ん?誰からだ?」
突然端末が鳴り出す。
ていうかこの番号って…………
ピッ
『ハロハロ〜♪元気かな?天才美少女束さんだよ!』
「……いきなりなんですか」
『相変わらず堅いなー君は』
「貴方から電話かかってくる時は大体やばいことが起きるって学びましたから」
『偏見も程々にしないとマドっちから嫌われるよ?』
マドっち?もしかしてマドカのことか?
「はぁ、それで、何の用ですか?」
『んーちょっとねー、今からメールで電話番号送るからさー、そこに電話してくんないかな?』
「…………」
『別にやばい所とかそういうのじゃないから』
「……断ったら?」
『零君がちーちゃんに見とれてたことをマドっちにチクる』
「おい!ちょっと待て!」
『んじゃよろしくー、あと私が絡んでること言わないでねー、いったらチクるから』
ブツッ
ざっけんなあんにゃろう、そんなこと漏らされたら確実に沈められる。てか見とれてねえよ、ふざけんなボk……おっと、姉さんの口癖がうつったのか……
ピロンッ
うさぎからメールが届き、そこには誰かの電話番号が書かれていた。
…………仕方ない、掛けるか。
────────────???
「束様、夕食です」
「ありがとー」
とある薄暗いラボ、束はクロエから差し出された真っ黒な物体を口に運ぶ。
「どうでしょうか?」
「うん、美味しいよー(でも普通の人間が食べたら腹下すねこれ)」
「よかった!ありがとうございます!」
しかし束は本当のことを言わない、折角娘が男の為に頑張って料理を勉強しているのだ、それを踏みにじる訳にはいかない。
「あれ?何で私の端末に連絡が?」
突然クロエの端末に連絡が入る。ちなみにクロエは束以外連絡を取らない。
「束様、これは一体……」
「多分出て大丈夫だと思うよー」
「?そうですか?」
ピッ
『もしもし?』
「そ、その声はれ、零さんですか!?」
『ん?もしかして……クロエさん?』
「は、はい!クロエです!そ、それよりも何で零さんがワタ私の端末に?」
『あー、それはですねー』
零が回答に困っているが、クロエはそれどころでは無い。
『クロエさん?』
「……は!いえ、大丈夫です」
『そうですか……あ、すみません。人が来たのでもう切ります』
「あ、あの」
『?』
「宜しければ……これからもこうやってお話して貰えませんか?」
『?別にいいですよ』
「あ、ありがとうございます」
プツッ
「た、束様。零さんから電話がありました……」
「おーそれは凄い偶然じゃないかー。それで、何て言ったの?」
「こ、これからは連絡しあってもいいって……」
「おー!やったねクーちゃん!1歩前進だね!(計画通り)」
「え?あ、はい!」
クロエは困惑しつつ、笑顔で答える。