IS、零   作:歩輪気

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14話目


零、襲撃、入院

 ──────────ピット

 

「…………あれは」

 

 いきなりアリーナが揺れたと思ったら、中央に何やら巨大なものが映っていた。そう、ISだ。しかもただのISじゃない、一回りでかい上にシールドを破壊する程の高威力ビーム砲を持ってやがる。オマケにクロスライザーと同じ全身装甲か……まだクロスライザーの方が味方側…………いや、どっちも同じか。

 

「一夏!」

 

 ピット内に箒の叫びが響く。

 映像では、一夏と鈴がそのISと交戦を行っていた。が、両者ともに先程の戦闘でSEは十分じゃない。あんなビーム当たったらすぐに尽きるだろうな。

 それに2人のISは武装からしてどちらも相手のISとの相性が悪い。鈴の龍咆を上手く使う以外方法はないだろう。

 

『零君、聞こえる?無事?』

「はい、聞こえます」

『良かった。今教員陣が織斑君と鈴ちゃんの救出に向かっているわ。零君は他の子と協力して観客の避難誘導をお願い』

「分かりました、楯無さんは?」

『私は避難誘導が終わり次第、教員陣と一緒に織斑君と鈴ちゃんの救出に向かうわ』

「分かりました」

 

 さて、こうしちゃ居られん。

 早く観客を避難させないとな。流石にこんな所で死人が出るなんて真っ平御免だ。それにレインやフォルテさんだっているんだ。

 

「というわけだ。行こうか、セシリアさん」

「はい!」

「箒もほら、早く避難するよ?」

「…………しかし」

「とりあえず今は一夏を信じるしかないよ。それに一夏はそう簡単にやられる奴じゃないだろ?」

「……そうだな」

 

 何処か不安そうな顔をする箒を連れながら、俺とセシリアさんは観客の避難誘導に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

 ビジュウウゥゥゥ!

 

 

 

「うわっ!?」

「おうっと!?」

 

 突如襲来したISは、一夏と鈴に容赦なく高出力ビームを放つ。

 

「一応観客席のシールドは破れてないけど……」

「俺たちは当たったら即死だな」

 

 謎のISの放つ高出力ビームは観客席に貼ったバリアを破る力はない。が、ISに当たった場合は別である、下手に当たり過ぎれば確実に死ぬだろう。

 

「喰らえやぁ!」

 

 鈴は両肩の龍咆からISに向けて衝撃砲を放つ。

 が、ISはいとも容易く衝撃砲を躱していく。掠りすらしない。

 

「当たんねえ……」

「まあそうだとは思ってたけど……」

 

 ビジュウウゥゥビジュウウゥゥビジュウウゥゥゥ!

 

「は!?3連射!?」

「んなのありかよ!」

 

 ISは一夏と鈴に向けて高出力ビームを3連続放ち、2人はなんとかギリギリ避けた。

 

『織斑!凰!無事か!』

「ち、千冬さん!」

「千冬姉!」

 

 2人の通信を入れたのは千冬だった、その声は珍しく焦っている。

 

「千冬さん、観客の方は」

『安心しろ、今専用機持ちの奴らが避難誘導を行っている。お前達の方は』

「正直避けるのがやっとです。このままだと……おわっ!?」

 

 鈴の横を高出力ビームが掠る。

 

『教員陣がそちらに向かっている。それまで耐えろ!いいな!?死ぬなよ!?』

「が、頑張ります!」

「こんな所で死ぬなんて御免よ!」

 

 ビジュウゥゥゥゥゥゥ!!!

 

 その時である、ISは千冬と通信をとるその一瞬の隙を見逃さなかった。

 

「しまっ!?」

 

 ドガァァァァァン!!

 

「きゃあァァァ!!!」

「りいぃぃぃぃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

「落ち着いて!焦らず移動してください!」

「おらそこ!押すんじゃねえ!前の奴が怪我すんだろうが!」

「順番に!こっちから逃げてくださいっす!」

「あ!そちらは出口ではございませんよ!」

 

 俺たちは今観客の避難誘導を行っている、レインとフォルテさんとも合流して何とかやれてはいるが。

 にしても凄い人数だ、一体何百人いるだ。こんな人数が出口に殺到するなんて、下手すれば死人が出るぞ。

 

「だから押すなっつってんだろうが!」

 

 レインもいつもよりイラついてるな。

 まあとりあえず順調に避難は出来てるようだし、このまま楯無さん達が来るまで一夏達がもってくれればいいが。

 

「お願いします!行かせてください!」

「ダメっす!今戻るのは危険っす!」

 

 何やらフォルテさんに掴みかかってる女子がいるが、何があったんだ?

 

「どうしたんですか?」

「あー零君、実は」

「友達がまだ中継室にいるんです……」

「それは確かなんですか?」

「さっきから探してるけど全然姿が見えなくて……それに連絡にも出ないし」

 

 ふむ、不確定情報か。この人数なら見つけられないのは仕方ないし既に出ている可能性もあるが…………最悪の事態も想定する必要があるな。

 

「分かったよ、僕が見てこよう」

「え、零君?」

「フォルテさん、ここは任せました」

「あ、零君!」

 

 とりあえず中継室に急ごう。

 今の状況だと居るかどうかなんて分かりやしないからな。どちらにしろ居たら危ないな、それにある程度避難人数も減ってきたし、ここはレインや他の皆に任せても大丈夫だろう。

 にしてもあのIS、本当に有人なのか?見た目からして人なんて乗ってるように見えない。

 それに……なんというか、映像を見る限りだとあのIS、動きが人間じゃない。今まで任務やらで人間とやり合って来たからわかることだ。いくらISを纏っているとはいえあんなカクついた動きなんてしねえよ。初期の一夏や箒でさえもう少し動いてたからな。

 

 さて、そうこうしているうちにもう中継室まで来たわけだ。

 

 バンッ

 

「大丈夫ですか!」

「あ、ああ、あ」

 

 中継室の扉を開けた先には生徒が2人、腰を抜かして座り込んでいた。

 こりゃあダメだ、完全に怯えてる。

 でもまあ、2人ぐらいなら何とかいけるか。というよりこんな状況だ、やる以外に選択肢はない。でないとここで3人纏めてお陀仏だ。

 

「さあ、早く逃げますよ。掴まって」

「は、はい」

 

「零!無事か!」

「……箒?」

 

 扉の方を向けくと、箒が息を荒らげながら立っていた。

 おいおい何でここにいるんだよ、避難したんじゃなかったのか。

 

「おい何やってんだ!何でここに来たんだよ!」

「さっきサファイアさんからお前が取り残された者の救助に向かったことを聞いたのだ」

「だからって来んな!」

「知り合いが必死に戦っているのを黙って見過ごせるわけがなかろう!」

 

 あーもう、なんて頭の硬い。本当にあのうさぎの妹なのか?いや、正直あのうさぎが2人もいるなんて地獄絵図だが。何ていうか、良くいえば情に厚いっていうのか?

 

「……わかった、じゃあそっちの人を運んでくれるかい?」

「うむ、わかった」

 

 そう言うと箒は窓付近で腰を抜かす人を運ぼうとする。よし、このまま行けば……

 

 

 

 ドガァァァァァン!

 

 突然デカい爆発音が響き、アリーナ全体が揺れた。

 

『鈴!おい!大丈夫か!』

『や、やばいかも…………スラスターもイカれたし』

『しっかりしろ!』

 

 中継室の窓から見えたのは、右肩の龍咆と右腕の先を跡形もなく破壊された甲龍を纏う鈴と、鈴を抱えながらビームを避け続ける一夏の姿だった。

 ていうか普通にやばいじゃねえか。まさかこんな短時間で鈴があんなボロボロになるとは。一夏ももうそろそろ限界か。

 

 にしてもまずい、このままこの人達を避難させるまでの時間、一夏と鈴が持つとは思わない。かと言ってここで出れば2人どころか箒まで巻き添えを食らう羽目になる。たく、なんでこうも。

 

「一夏!」

 

 箒が窓越しに一夏の名前を叫ぶ。

 

 と同時に会場内に声が響く。

 どうやらさっきの大きな揺れで運悪くマイクがONになってしまったらしい。そんな馬鹿なことが起きてたまるかよ、せめてoffだろうが、最悪のご都合主義だよくそ。

 

 するとISが首をこちらに向けた……おいおいマジかよ!あれってどう考えてもこっち狙ってるじゃねえか!

 

 ISはビーム砲の銃口をこちらに向け、エネルギーを貯め始めた。

 

「あ、ああ…………」

「危ない!下がってろ!」

 

 俺は箒と2人を勢いよく後ろへ突き飛ばす。

 

 ビジュウゥゥゥゥ!!!

 

 と同時に、ISは高出力ビームをこちらに放つ。

 

 くそ!間に合ってくれよ!

 

「ライザァァァッ!」

 

 俺はクロスライザーを展開し、中継室を庇うように立ち尽くす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 シュウゥゥゥ……

 

「…………おい、無事か?」

「……れ、零?」

 

 暫くして俺は意識を取り戻す。目の前には怯えた顔の箒達がいた。どうやら無事らしい。

 背中に妙な痛さを感じる。それはそうか、何せ高出力ビームを背中で受け止めたんだからな。ライザーファングで防ぐ暇なんかなかったし。

 多分俺の背中、今凄いことになってるんだろうなぁ。

 

「零!!!」

 

 振り向くと顔面蒼白で全身ボロボロの一夏と鈴がこっちを見ていた。

 後ついでにISの野郎もこっちにまたビーム砲を撃とうとしてた。全く手加減がない。

 

「れぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

 突然何処かから俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 と同時に、ISが巨大な氷に包まれ、凍りつく。

 

「先輩!今っす!」

「くたばれぇぇぇぇ!!!」

 

 そして巨大な炎が凍りついたISを包み込む。

 死んだな、あれは。

 

「零君!」

 

 楯無さんとその他大勢が入場口から姿を現す。

 

「楯無さん、遅いですよ。全く」

 

 言い切る前に俺の意識は朦朧とし始める。まあ地面に落下しているのは何となくわかる。

 

「れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」

 

 最後にレインの叫び声が聞こえた気がしたが…………まあ……返事は…………む……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

 ここは何処だろう

 

 とっても寒い…………

 

 何も食べてない……お腹空いた……

 

 でも食べるものなんてない…………

 

 でも死ぬのは嫌だ…………死ぬのだけは……

 

 

『……おい、お前』

 

 知らない女の人が僕を睨んでいる。

 

『……離せって』

 

 僕は気づかないうちに女の人の足を掴んでいたようだ。でも僕は離さなかった。

 

『……はぁ、たく。何か変なもんにまとわりつかれちまったな』

 

 そう言うと女の人は僕の頭を掴む。

 

『いいか?今から飯奢ってやるから、それ食ったらどっか行けよ?』

 

 僕が頷くと、女の人は僕の手を掴んでどこかへ連れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

「…………あれ、ここは?」

 

 目が覚めると、知らない天井が目の前に映った、天国じゃないのは確かだ。どうやら俺は生きてるようだな。手足があるのも何となくわかる。背中が少し疼いているが。

 

「零君」

 

 隣に目線を向けると、そこには俺のことを心配そうに見つめる楯無さんが座っていた。

 

「……楯無さん」

「良かった……意識もハッキリしてるようね」

「ええ、何とか。ここは?」

「医務室よ」

「そうですか……一夏達は?皆は無事ですか?」

「ええ、大丈夫よ。幸い織斑君と鈴ちゃんは思ったより酷い怪我じゃなかったし。箒ちゃんも中継室にいた2人も無傷で済んだわ。観客も被害者はゼロよ」

「そうですか」

 

 ま、とりあえず全員生きてて何よりだ。こんな所で死人なんざ見たくないからな。鈴も今頃一夏に謝ってる頃だろう。

 あ、そうだ。

 

「あの襲撃してきたISはどうなったんですか?」

「ええ、真っ黒焦げよ。ケイシーさんが燃やしたおかげでね」

「うわ…………中の奴は?」

「その件だけど……あれ、無人機だったわ」

「そうですか」

 

 やっぱりか。まあ変な動きだから何となく予想はしてたが。にしても、あんなもん作れるのは……まあ1人ぐらいか。

 

「あら、あんまり驚かないのね」

「どっちにしろあの状態で助かる見込みはないですからね。ダリルが人殺しにならなかっただけ良かったですよ」

「まあそうね。でも良かったわ。零君自身も軽い火傷で済んだようだし」

「え?そうなんですか?」

 

 おいおい、あの時確かにモロに食らったはずだろ?何で軽い火傷で済んだんだよ。

 

「零君のIS、クロスライザーの装甲が思った以上に耐熱で丈夫だったのよ」

「いや、そこはバリアを貼るとかじゃないんですか?」

「うん、まあ一応出てたっぽいけど……大半は装甲のおかげだったわ」

 

 なんというか……それはそれでいいのか?まあいい。それだけクロスライザーが頑丈に造られてるってことで良しとするか。

 とりあえず命拾いしたわけだ、一応クロスライザーには感謝しとくか。あとうさぎにも。

 

 

 

『あっし達はニュータイプですから、そう簡単には壊れませんよ』

 

 ……………………。

 

『無視すんなておい』

 

 

 

「ISの損傷の方は?」

「うーん、まああれぐらいなら数日あれば直るわよ」

「そうですか」

 

 とりあえずこの後の訓練とかにも支障がでなければそれでいいか。

 

「……でも本当に無事でよかった」

 

 楯無さんは俺の頭を撫でる。何かこの人いつも俺の頭撫でてないか?

 

 

 

 バンッ!

 

「れぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

 

 誰かが俺の名前を叫びながら医務室のドアを勢いよく開ける。何かこの叫び気絶する前も聞いた気がふっ!?

 

「こんにゃろぉ!あんなもんモロに受けるとかよぉ!阿呆かおまえはぁ!」

「ちょ……ダリル……苦し……」

「知るか!苦しんでろ!」

 

 レインは半泣きで俺を強く抱き締める。いや、これは締め上げるに近いか。ていうか本当にこれ以上はやばい……。

 

「だから先輩!それ以上は死にますって!」

「うるせぇ!こんな馬鹿はいっぺん死ねやいいんだよ!」

 

 なんてことを言うんだこいつは。

 あ……やべ……本当に意識が……。

 

「あらあら」

 

 楯無さん……笑ってないで助けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

「オータムー?ちょっといいー?」

「どうした?」

「何かさっきレインから連絡が来たんだけどね、何かIS学園に無人機が襲撃して来たらしいわよ?」

「無人機?んなもんあんのかよ」

「あるみたいよ?それで零が背中を撃たれて死にかけたらs「ちょっと行ってくる」落ち着きなさい、レインが黒焦げにしたらしいから。それに零もさっき目を覚ましたって」

「そうか……ならいいや、後で電話すっから。そういえばMにはこのこと伝えてんのか?」

「伝えてないわ。だってあの子ただでさえ零と離れて情緒不安定になってるのに、こんなの伝えたら倒れるわよ」

「……まあそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……零が死にかけた?」

「え、M」

「あらM、いつの間にいたの…………」

「………………」フラッ

「おわっと!危ねぇ、ておいM、しっかりしろー、おーい?」

「(まあこうなるとは思っていたわ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

「いやぁ、にしても零が無事で良かったぜ」

 

 暫くして俺のもとへ頭に包帯を巻いた一夏と鈴が見舞いに来た。どうやら軽い打撲と包帯で済んだらしい。

 レインと楯無さんはやることがあるからまた後で来るとか。

 

「2人も無事で何より」

「まあねー、そう簡単にくたばんないわよ」

「あんなボロボロだったのに?」

「あ、あれは隙を付かれただけよ。本当なら無傷で済んだわよ」

 

 ま、鈴の腕前ならその可能性はあったな。勝機があったかどうかは分からないが。

 

「あんたこそよくそんだけで済んだわね。モロにくらったはずでしょ?」

「まあ確かにそうらしいんだけど……クロスライザーの装甲が思った以上に丈夫だったらしい」

「え?そんだけ?」

「うん、そんだけ」

「んなアホな」

 

 まあ当然の反応だな。あんな高出力をバリアも貼らずにモロにくらったのに大火傷もせず無事でした、なんて。

 

「ま、丈夫に越したことはないよ」

「そ、そうだな……あ、そうだ。俺達これから購買に行くんだけど、何か買ってくるか?」

「んー……じゃあ何か甘い物を頼むよ」

「OK、んじゃ行ってくるわ」

 

 シュバシュバンッ!

 

「行かせるか馬鹿者、貴様達も大人しく寝ていろ」

 

 2人の後ろから聞き覚えのある女の声が聞こえた。出席簿なんぞで怪我人を叩くやつなんて1人しかいないよ。

 

「いてて……お、織斑先生……」

「お、お疲れ様です」

「全く、歩けるとはいえお前達も十分怪我人なんだ。分かったらさっさと自室で安静にしてろ。いいな?」

「は、はい……」

「そ、それじゃあ零、また明日な」

「うん、また」

 

 一夏と鈴は頭を擦りながら医務室を後にする。それにしても怪我人にも容赦なく殴りつけるとは何とも怖い女、やっぱりマドカと大違いだ。

 

「……それで、巻紙、怪我の方は大丈夫か?」

「ええ、何とか。軽い火傷で済みましたよ」

「ふむ、そうか。ならいいんだ。それと今回は助かった、おかげで中継室にいた者たちも全員無傷だ。礼を言う」

「いえ、いいんですよ」

 

 織斑千冬から礼を言われるとは…………まああの状況だとどっちにしろ俺が展開しなきゃ4人とも死んでたからな。そう言えば箒は無事なのか?

 

「…………それと巻紙、1つ聞いてもいいか?」

「え?あ、はい。何ですか?」

「お前のIS、クロスライザーのことだが……あれは本当にアメリカ企業が製造したものなのか?」

「……ええ、そうですよ。ダリルのヘル・ハウンドを造った企業と同じです」

「そうか……いや、済まなかった。少し気になることがあったのでな。私の思い過ごしのようだ」

 

 ああ、これは多分うさぎについて察してるな。まあクロスライザーはもともとうさぎから貰ったものだからな。

 それにしても何と察しがいいことか。これも人類最強故の勘か、それとも単にうさぎがバレやすいのか。

 

「それでは私はこれで戻る」

「はい、お疲れ様でした」

 

 織斑千冬は医務室を去っていく。

 最近織斑千冬を見る度にマドカに会いたくなる衝動に駆られる気がする。何てこと、マドカには言えないな。

 

『ほら、お前も隠れていないでさっさと行ってこい』

『あ、その。はい』

 

 何やら外から織斑千冬と誰かが話しているようだ。

 なんて思ってたら医務室の扉を開けて誰かが入ってきた。

 

「箒?」

「れ、零」

 

 まあ何となくそうだろうとは思ったが。それにしても何やら暗い顔だな。

 

「どうしたんだい?随分と暗い顔じゃないか」

「あ、いやな……その……あの時はすまなかった。私が叫んだせいでISの奴に目をつけられて」

「あれは箒のせいじゃないよ。あんなハプニング誰だって予想出来ないよ」

「しかし……」

「自分をあまり責めない方がいい。それにあそこで駆けつけてくれただけでも箒は凄いよ」

「……そうか」

 

 どうやら少しは楽になったようだ。にしても本当にうさぎと似てないな。見た目といい性格といい、似ているとすれば変な所で融通が利かないところか?いや、うさぎに関しては融通が利かないというより相手に融通を利かせることを強要してくる方か。

 ま、あそこで一夏に喝を入れるだの変な行動を取らなかっただけ良かった良かった。

 

「とりあえず、一夏の所へ行ったら?もう部屋に戻ってると思うよ」

「う、うむ、そうだな。では失礼する」

 

 箒は医務室を後にする。

 

 やれやれ、今日は疲れた。

 そう言えばレインはこのことを姉さん達に伝えたのかな?いや、伝えてるか。でもマドカにだけは知られたくないな。ただでさえ離れてるのにこれ以上あいつに心配はかけたくないし。

 とりあえず今日は1日眠ろう。返事はまた明日すればいいし。

 

 

 

 ピロンッ

 

 

 

 

 

 ピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッピロンッ

 

 …………やっぱり眠れないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

「…………私は…………」

 

 私はただ見ていることしか出来なかった。

 

 知り合いと幼なじみがボロボロになっているのをただ見守ることしかできなかった。

 

 私も、何か役に立てれば……力が欲しい。

 

 …………いや、しかし姉さんには頼らないと1度は決めたのだ。もし頼ってしまえば私はその力に慢心するかもしれない。

 

 ならやることは1つ。姉さんの手を借りずに自らを鍛え上げていくしかない。

 

 …………よし、明日から頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ーとあるラボ

 

 

「いやぁ、束さんとしたことがうっかり無人機のレベルを間違えちゃったよ。あんなんじゃいっくんが勝てるわけないよねー」

 

 とある薄暗いラボ、束は何やら端末を弄っていた。

 

「ま、クロスライザーのデータも少しは取れたし。いっくんも無事みたいだし、結果オーライかな……さて」

 

 束は今、とある人物にラボの端まで追い詰められている。

 

「…………束様」

「許しておくれクーちゃん、これは事故だったんだよ。束さんがうっかりレベルを間違えちゃってね。まさか零君があんな目に会うとは思わなかったよ。だからその禍々しいオーラをどうか収めておくれ」

「……………………」

 

 クロエは禍々しいオーラを放ちながら束にジリジリと迫っていく。どうやら今回の件で零が怪我をおったことに関して、クロエがキレてしまったらしい。

 

「ちょ、クーちゃん怖いよ?いつものクーちゃんじゃないよ?てか何か背中から変なの出てない?あれ、何で体が動かないの?」

「……………………」ガシッ

「え、クーちゃん頭掴……ちょ!それ以上はホントにダメだって!頭潰れるから!いくら束さんのオーバースペックな骨格でもそれ以上はやばいって!あ、何か今ミシッて音ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 束の断末魔がラボ内に響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

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