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「…………ん、いつの間にか寝てたか」
どうやら俺はいつの間にか寝ていたらしい。ベッドの周りには包帯やらが散乱していた。隣ではマドカが可愛い寝顔をしながら眠っている。
「…………ん…………」
「相変わらず寝顔は変わらないな」
マドカを拾ってから約10年、ガリガリだったこいつも今では男女両方が振り向きそうな美少女になった。そりゃそうだ、何せマドカは織斑千冬と瓜二つなんだからな。ま、俺には関係ないことだ。マドカが織斑千冬と姉妹だろうがクローンだろうが知らねえよ。
一時期このことで上が何やらやらかそうとしてたが、直ぐに文句を言ってやった。忠誠心がどうのこうの言うからとりあえず命令通り無理難題な任務をこなした、死にかけたけど。流石に驚かれたというか呆れられたというか、まあとりあえずマドカについては口出ししない約束を付けさせた。姉さんから殴られたけどね。
それにマドカ自身織斑千冬の話はあまりしたくないようだ。
正直今目の前にあの女がいたなら一言文句を言ってやりたい。まあレインから聞いた話ではかなりの脳筋ゴリラらしいから話し合えるか分からないけど。あんな女とマドカを一緒にすんな。
「……ん、零…………!?」
マドカが目を開いたと思ったら飛び起きた。何してんだ。
「何顔赤くしてるんだ?」
「あ、いや! 何でもないぞ! 何もやってない! 決してお前の隙を着いて寄り添おうなどと…………あ、いや! 今のは忘れてくれ!」
「さっきから何言ってんだ?」
「あ、あぅ……」
顔どころか体も熱くなってる。タンクトップ姿で何やってんだか。
「おーい、0。飯の時間だ……ぞ」
「ん? なんだ姉さんか。入るならノックぐらいs「ゼェェェロォォォォォォ! テメェェェェ!!!」
姉さんがいきなり俺の胸倉を掴んでグラグラと前後に揺らす。寝起きだからやめてくれ、余計頭が痛くなる。
「何怒ってんだよ」
「何じゃねえよ! お前って奴は! やる時はホテルとかでやれってあれほどいっただろうが!」
「いや、何の話だよ」
「オータムー? どうしたの?」
「スコール! 0の野郎がとうとうMに手ー出しやがったんだよ! あれほどここでやるなっつったのにー!」
「あらあら、それは辛いわねー(まあ多分勘違いでしょうけど)」
姉さんは途中から来たスコール姐さんに泣きつく。マドカも何かゆでダコみたいに赤くなってるし。よく分からんな。
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「今日から僕と一緒に暮らして行かない?」
「…………え?」
男児、名前は零と言ったか。零に拾われてから数日後、私は彼から突然そんなことを言われた。
「まあ正直普通の暮らしはおくれないけどね。やってる事テロだし。捕まったら即アウトだけどね」
零は笑いながらそう言うが、テロがどういう事なのか、監禁状態だった私にだってそのくらいのことは分かる。やれば確実に殺されるか良くても拷問を受けることぐらいは。
「どうかな?」
「……私なんかが行ってもいいの?」
「うん、一応姉さんには話して貰えるよう頼んであるから多分大丈夫だよ」
「…………」
私には帰る場所などもうない、もともとなかったようなものだが。
「…………私も……行きたい……」
「そっか! 良かった!」
零は純粋な笑顔を私に向ける。
私にとって初めて優しくしてくれたのは零だった。それにもともとこの命は捨てようと考えていたものだ。なら彼の傍で尽きるまで恩を返していく方がいい。
「あ、そういえば君、名前まだ聞いてなかったね。なんて言うの?」
「え……ま、マドカ……」
「マドカかぁ! これからよろしくね! マドカ!」
「う、うん……」
こうして私は亡国機業の一員になった。
それからというもの、私は零やオータム、スコール達と一緒に仕事のついでに世界を巡った。研究所では一生観れなかったであろうものを沢山観た。それに亡国機業はテロと言っても悪いことばかりやっている訳では無い、国の暗躍から売店まで様々だ。下手すればそこらの企業よりもホワイトかもしれない。まあ姉さん……織斑千冬関係で一時期危うくなったが。その時は零が身を呈して守ってくれた。
正直あの3人には感謝したくてもしきれない。まるで本当の家族のように一緒に過ごしてきた。
あの時私は自分の命などどうでも良かった、でも今は零のために生きていきたい、死にたくないと考えている。
そうして私は織斑という苗字を捨てた。もういらない、こんなもの。
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とあるBARのカウンター席、2人の女性が並んで座っている。1人はドレスに身を包み、もう1人は項垂れていた。
「スコール……」
「はいはい、どうしたの?」
「最近零の野郎、私のことを避けてやがるんだ」
「そうねぇ、最近は特に避けられてるわね」
「昔はよォ、礼子姉さん礼子姉さん言いながら私の後をウザイぐらいついてきてたのによォ、初めの頃なんて仕事場まで来るぐらいだったのによォ!」
「あぁ、あの時ね」
あの時とは零がオータム……礼子に拾われてから間もない頃のことである。
まだ幼い零は、礼子の後ろをいつも着いて来ていた。ウザがられようが、怒鳴られようがお構い無しに。
ある日礼子がとある悪い噂が流れる店にアルバイトとして潜入した際、零がいきなり店に来て大変なことになった。
何でも仲間の1人がうっかり教えてしまったとか。幸い大事にならずに済んだものの、その後スコールと礼子は上から酷く叱られたそうだ。
「あの時は大変だったわぁ、まあ大幅減給で済んだから良かったけど」
「あんなに一緒にいたのによォ、いつの間にか離れて色々やるようになって、最近だと全然甘えてくれないよぉ! 私だって心配してんのにぃ!」
「よーしよし、オータムは偉いわねぇ(まあ男の子の思春期ってそんなもんよ)」
礼子はスコールに泣きつく。
ちなみにこの光景は週3回のペースで目撃されている。
「お冷です」
「ありがとう」
見かねたバーテンダーが水を差し出す。このやり取りもしょっちゅうである。
「(でも零も零でシスコンなのよねー、本人とオータムは気づいてないけど。そういえば最近あの子からよく零のこと聞かれるけど…………まさかね)」
スコールは自分の姪であるレイン・ミューゼルの最近の言動を察しつつ、敢えて無視する。