試合は次の次を予定してます。
1度未完にしようと思ってましたが、やはり少しずつでも良いので物語を進めたいと思いました。
一応、今はトーナメント後までを目標にしています。
あと戦闘描写は下手です。すみません。
──────────────3組
時はまあまあ流れ、週明けのある日。
早くもトーナメント当日まで残り数日となった今日この頃、早速3組の教室に入ると、女子達が何やら皆ひそひそ話で盛り上がっていた。
「ねえねえ、それほんと?」
「本当らしいよ」
「今度の学年別タッグトーナメントで優勝すると織斑君と……」
どうやらタッグトーナメント関連で何かあるらしい。とりあえず挨拶しておくか。
「おはよう」
「あ、零君。おはよう」
「おはよう。一夏に何かあったのかい?」
「何かね、今度のタッグトーナメントで優勝すると織斑君と付き合えるらしいよ」
「へー」
これはまた一夏の身体がボロ雑巾になりそうな噂話だ。多分これは嘘だろう、いくらIS学園とはいえ人を景品にするなんて非人道的なことをやらかすはずがないからな。
…………いや、やっぱやりかねないか。
「ところで誰からの噂なの?」
「1組の友達だよ」
やっぱり1組かー、あのクラスってホントに男に飢えてるからなー。3組で本当によかったよかった。1組だったら今頃俺もボロ雑巾になってるだろうからね。流石にボロになるのは勘弁だ。
「零」
「あ、ラウラちゃんおはよう」
「うむ、おはよう」
なんて言ってたら教室にラウラちゃんが入ってきた。相変わらず長い銀髪は所々はねているうえに、目も半開きで眠そうだ。
「寝不足かい?」
「ん、まあな。昨夜いきなり部下から視聴をするよう指示されたものがあってだな、それで寝るのが遅くなったのだ」
「視聴?」
「何でもコンピューターの中に入り込んで戦う戦士ものらしい。途中何度も酔ってしまった」
コンピューター……あれか、多分昔レインとマドカと3人で日本に来た時に偶然レンタル屋さんで借りたアニメのことだろう。
本編でロボットが全く動かないからレインと2人で『うごけー!』って文句を垂れながら見てたっけ。マドカは気にしてなかったようだけど。
結局最後まで見ちゃったけどね。
「どうした?」
「いや、何でもないよ」
「そうか……ところでさっきから辺りが騒がしいようだが、何かあったのか?」
「なんかね、今度の学年別タッグトーナメントで優勝すると一夏と付き合えるらしいよ」
「……随分と胡散臭い噂だな」
「多分嘘だよ」
やっぱりラウラちゃんもそう思うか。まあこんな馬鹿みたいな話で盛り上がるのは精々一夏狙いの女子だけだろう。
「お前は巻き込まれてないようだな」
「まあね」
「しかし気をつけろ、噂と言うものは尾鰭をつけて変化していくそうだからな」
「尾鰭?」
「日本のことわざだ、噂が広がっていくうちにありもしない内容がくっついていくことをそのように言うらしい」
ああ、つまりこの前のラウラちゃんと付き合ってるとかいう嘘話みたいなものか。
ま、そんな気にする事はないだろう。俺3組だし。
『そうやって舐めてると今に痛い目みるぞ』
『寧ろ1回見た方がいいよ』
さて、一限目の準備をしようか。
──────────────────
「……どうして、こんなことに……」
ここはIS学園の1年1組の教室内、そこの窓側の席にて、私、篠ノ之箒は冷静を装いつつ内心頭を抱えていた。その理由……それは
「嘘じゃないでしょうね!?」
「ホントだって! 月末のタッグトーナメントで優勝すれば、織斑君と付き合えるんだって!」
「俺がなんだって?」
「「「きゃあああ!」」」
…………と、ご覧のように、私の後ろで繰り広げられているひそひそ話を聞いて貰えれば大体は察してくれただろう。
そう、何と今度のタッグトーナメントで優勝すると一夏と交際できるという噂が広まっているのだ。しかし、これは全くのデマだ……そしてその原因は……私だ。
あれは数日前のこと…………
──────数日前
『い、一夏……ほら』
その日、私は屋上で一夏に手作り弁当を振舞っていた。凰……鈴の奴は部活で今日はいない。デュノアは少し遅れてから来るらしい。
つまり、一夏に手料理を振る舞うなら今がチャンスということだ。
『ん? これって』
『お、お前が前に食べたいと言っていた炒飯だ……前よりはマシになったはずだぞ』
『ホントか?』
一夏は嬉しそうに弁当を受け取り、中の炒飯をレンゲで口へ運ぶ。
『ど、どうだ?』
『……んー! 美味い! 初めの時と全然違うぜ!』
『本当か!』
良かった……あれから何度も練習したからな、やったかいがあったというものだ。さて……
『……い、一夏』
『ん?』
『その……今度のタッグトーナメントの話だが……』
『あー、悪い。俺もうシャルルと組むことに決めたんだ』
『いや、そうじゃなくて……その……あの……』
『?』
言え、言うんだ。今なら言えるはずだ。
『こ、今度のタッグトーナメントで……わ、私が優勝したら……わ、私と……』
『私と?』
『…………わ、私と付き合ってくれ!』
私は声を上げてそう叫んだ。屋上ということもあって、その声は上空まで響いた。他に人がいなくてよかった。
『おう、いいぞ』
『本当か!?』
『買い物に付き合うんだろ?』
『………………』
……………………。
『箒?』
『……知らん!』
『?』
全く、一夏というやつは。何でこういつも変に解釈するんだ。鈴の毎日酢豚と言い私の告白と言い…………鈴の気持ちが何となくわかった気がした。
──────数日前終了
と、こんなことがあった。
どうやらあの時の叫び声が誰かには聞こえていたらしい。そしてそれが曲がりに曲がって尾鰭が付け加えられた結果『タッグトーナメントで優勝したら一夏と付き合える』という噂に変わってしまったようだ。
…………つまり私の責任だ。
はあ、どうしよう…………あの頃の約束を果たそうとしただけなのに……いや、でもあの一夏の反応だと、あの時も買い物と勘違いしていた可能性は……ありえるか。
しかし、もしこのまま一夏と付き合うことになったら学園中に……なんて、前の私なら考えていただろう。現実は非情だ。今の実力では専用機持ちの奴らとやり合えるかすら怪しい。
「……箒さん」
「……セシリア」
ふと、セシリアが私に声をかけてきた。
「……ファイト」
「……ありがとう」
どうやら色々と察してくれたようだ……彼女と一緒のクラスで本当に良かったと思う。
──────────────屋上
あっという間にお昼ご飯の時間。
あれから特に女子から追われることなく、ラウラちゃんと午後の打ち合わせを行いながら、無事昼休憩を迎えることが出来た。一夏とシャルルは何か追われてたけど。
さて、今日もレインがお弁当を作ってきてくれるらしい。レインの作る飯は普通に美味しいから特に文句はない。
ところで最近マドカや姉さん達とのやり取りがないと思ってる奴も何人かいるだろう。
ピロリンッ
言っておくがそれは違う、こうしてお昼になると毎日のようにメールが来る。毎日来るメールを一々書くのは面倒だからこうして飛ばしている。
とりあえず返信しておいて……よし。
「おう零、待ったか」
と、そこへタイミングよくレインがやってきた。手には弁当が入ったランチバックをぶら下げている。
「いいや、今来たとこ」
「またマドカとオータムか?」
「お察しの通り」
「相変わらずだなあの2人は……叔母さんも今頃板挟みで死にかけてんだろうなー」
スコール姐さん……仕事もあるっていうのに、マドカは兎も角姉さん恋人なんだから気を使ってあげてくれよ。
「お、そうそう。もうすぐフォルテも来るからよろしくな」
「珍しいな、フォルテさんも一緒だなんて」
「最近あいつに構ってやれてないからさー、拗ねちまって大変なんだ」
フォルテさんも来るのか、余分に弁当作ってこれば良かったかな。
「ていうかお前、フォルテさんはパートナーだろ? ならもっと大切にしてやれよ」
「…………」
「ん? どうした?」
「……いや、零だけには言われたくないって思っただけだ」
なんでだよ。
「…………そういえばよ」
「?」
「今度の学年別タッグトーナメントだが……優勝したらお前と付き合えるってほんとか」
「おいちょっと待て、なんだその噂は」
「フォルテがクラスメイトのやつから聞いたって言ってたんだよ。今度のタッグトーナメントで優勝したら男性操縦者のどっちかと付き合えるって」
なんだよそれ、そんな話聞いてないぞ。俺が聞いた時は『一夏と付き合える』だったはず……まさか、これがラウラちゃんが言っていた『噂に尾鰭が付く』なのか。
畜生、まさか俺の方にまで被害が及ぶなんて…………早くうちに帰りたい。
「そんな噂、嘘に決まってるだろ」
「やっぱりなー、そんな気はしてたぜ(良かった……)」
レインは少しほっとしたのか、ため息を吐きながら肩を下ろす。そんなに心配だったのか。
「おーい!」
と、向こうからフォルテさんが手を振りながら此方へ歩いてきた。歩く度に三つ編みが揺れている、本当に先輩なのか疑うくらい小柄だ。
色んな意味でレインとは真逆だな。だから馬が合うのだろう。
「こんにちは、フォルテさん」
「よおフォルテ、早かったな」
「男に飢えたクラスメイトから優勝賞品話を永遠と聞かされそうになりましたから、飛ばして来たっスよ」
「それってまさか、トーナメントの?」
「そう、零君が景品とかいうあれっス」
やっぱりかぁ、フォルテさんにまで被害が来ていたとは…………ごめん、フォルテさん。
「ほら、座れよ」
「んじゃ遠慮なく」
フォルテさんは俺とレインの前に座る。にしてもフォルテさん、本当に小さいなぁ。数年前のマドカぐらいの身長しかないぞこれ。
「な、なんスか零君。私に何かついてますか?」
「え、いえ、なんでもないです」
やれやれ、つい見てしまった……おっと、レインがジト目でこっちを睨んでる。とりあえず昼飯にするか。
「はい、ダリルとフォルテさんの分」
「これは?」
「弁当箱番オムライスですよ、いつもダリルには作って貰ってばかりいるんで」
いつもレインに作ってもらってるからな、たまには俺の方からお礼させて欲しいよ。
「(別に見返りなんていいのに)」
「でもこれ、零君の分じゃ」
「いいんですよ、フォルテさんには何かと迷惑かけちゃってるから。受け取ってください」
「……じゃあ、有難く受け取らせてもらうッス」
「ダリルも」
「お、おう」
フォルテさんはオムライス弁当を受け取り、一緒に渡したスプーンでそれを掬い、口の中に運ぶ。それを見たレインも同じように掬い、口へ運ぶ。
「「……あ、美味い!」」
良かった、どうやら味付けは間違ってなかったようだね。時間が経ってるから冷めて不味くなってないか心配だったけど、大丈夫そうだ。
「これ本当に美味しいッスよ零君!」
フォルテさんは目を輝かせながらオムライスをかき込んでいく。まるで美味しいものにかぶりつく子供のようだ……あ、一応ここ日本だからまだ子どもか。
「お前、腕上げたなぁ」
「まあね、料理当番は殆ど僕がやってたし」
「ちぇ、いいよなぁ。オレはたまにしか食えねのに」
「なら毎日作ってくるけど?」
「お、ホントk……や、やっぱたまにでいいぜ」
もぐもぐとしながら睨むフォルテさんからの視線にレインは言葉を止めた。
ぐうぅぅぅ…………
はぁ、腹の虫は黙っちゃくれないか。
「ほら。やるよ」
「ありがとう」
レインが持ってきた弁当箱を差し出してきた。そもそもレインが作ってきてくれるって言ってたし。ここは貰っておこう。
「私のもあげるっス。売店で買ったものですけど良かったら」
「いいんですか?」
「零君にオムライス貰いましたから、そのお返しです」
「……じゃあお言葉に甘えて」
俺はフォルテさんから売店で購入したエトセトラを受け取る。メロンパンにコロッケパンにソーセージマフィン……貰っておいてなんだが、すっごい偏り。こんなもの毎日食べてたら血液がドロドロになりそうだ。ん?
「あ、フォルテさん」
「モグッ……なんスか?」
俺はティッシュを取りだし、フォルテさんの口元に着いたケチャップを拭き取る。
俺もレインもマドカも時々ケチャップやら米粒を付ける時がある。やれやれ、俺達家族ってそういう所そっくりだよなぁ、それとも子どもだからか?
「れーいー」
なんて言ってたらレインが拳をポキポキ鳴らしながら怒った笑顔で俺に詰め寄ってきた。
「な、なんだよ」
「なんだじゃねえ、そういうのはあんま他人にやるな。フォルテを見ろよ」
ふと、もう一度フォルテさんの方を見る。
「お、おと……あわわわ…………」
フォルテさんは顔を真っ青にしながらあうあう言っていた。
「あれ」
「こういうのが苦手なやつだっているんだよ。分かったか?」
「あ、ああ、わかったよ」
やばい、つい家にいる時と同じ感覚でやってしまった。でもラウラちゃんに同じことやった時は特に何も言ってこないけどなぁ。
パシャッ!
……なんかどこかで聞き覚えのある音がしたような。
「いやぁ、まさかこんな写真が取れるなんて……『2人目の男性操縦者、まさかのIS学園1の人気コンビを手玉に。ご褒美は愛の手作りオムライス』…………今度こそいけるわ!」
ああなんだ、この前の新聞部の副部長さんか。確か楯無さんの友達の薫子さんだっけ? また人のプライベート勝手に隠し撮りしてるのか。
「てめーまたか!」
「またまた撮らせて貰いましたー! それじゃ!」
「待てコラ!」
「今度こそ新聞のトップに載せてみせる!」
「やらせるかよ!」
あの時と同じように笑顔で逃げる薫子さんをレインは怒った顔で追いかける。あれだけこっぴどくやられたのに諦めないなんて……マスコミ向いてるな、あの人。
「…………」
「……フォルテさん?」
「な、なんすか!?」
「いえ、さっきはすみませんでした。フォルテさんがああいうの苦手だって知らずにやっちゃって」
「あ、いいっすよそんな……私こそ折角貰ったのにあんな態度取っちゃって」
フォルテさんは緊張しながらも申し訳なさそうに謝る。なんかこっちが悪いのに向こうに謝らせちゃうのはちょっときついな。
「……行っちゃったッスね」
「はい」
「あんな先輩……いや、ダリルを見るのは珍しいッス」
「レi……ダリルはいつもあんな感じですよ」
「そうなんスか?」
フォルテさんはキョトンとした顔で首を傾げる。
「ええ、いっつもああやって怒ってます。昔ダリルの遊んでたゲームのデータを消しちゃった時もあんな感じに追いかけ回されましたよ」
「そうなんですか……ちょっと意外っス」
「こっちにいる時は違うんですか?」
「そうッスねぇ……結構男勝りでかっこいいってみんなから言われてますけど、うちらの前でああやって怒ったりするのはそうそうないっスね」
なるほど、こっちだと少し猫被ってるってことか。まあ一応スパイだからな、できるだけ自分を表に出さないようにするか。
「でも見てる限りあんまり素を隠してない気がしますけど?」
「うーん、多分零君がいるからッスよ」
「僕ですか?」
「ほら、親しい人がいるとつい気が緩んじゃうっていうか、安心してると思うんスよ」
「安心……ですか」
安心か……確かに、俺もレインがいなかったら今頃ここでの生活が息苦しかったかもしれないな。あいつの前なら下手に猫被る必要もないし。
「…………幼なじみな零君が羨ましいっス」
「? そうですか?」
「そうッスよ、いつも仲良さそうにしてて……」
「でもフォルテさんって……」
「……恋人でも互いの距離間って結構複雑なんスよ」
複雑ね……姉さん達を見ている限りじゃそんな雰囲気は感じなかったがな。
「……零君……ダリルを泣かせたら承知しないッスよ」
「……はい」
フォルテさんが複雑な瞳をこちらに向けながら言ってきたので、とりあえず俺は答えた。
泣かせるって……
『待てやー!』
……と思ってたら屋上下からレインの叫び声が響いた。
「……まだやってるッスね……あむっ」
フォルテさんは呆れた顔でそう言うと、オムライスを口の中へ運んだ。
今日の薫子さんはかなりしぶといようだ。弁当を振る舞うなんて、別にそんなおかしいことでもないのに。
『やれやれ、とんだ女たらしだ』
『ああ、違いね』
『ホント、主人に似るんだねぇ』
『え?』
──────────────第3アリーナ
「零! 動きが鈍いぞ!」
「分かってるって!」
「相手の動きをある程度予測するんだ!」
時はさらに流れて放課後の第3アリーナ、トーナメントに向けて、俺はラウラちゃんと一緒にドローンを使った訓練を行っていた。あと数日ということで、本番での連携に向けてハードモードでプレイしている。このモードになると、ビームを撃つ射撃型に加えて槍みたいなものを向けながら高速で突進して来る突進型まで現れた。
オマケにこれがまた難しい。ビームを躱すことに手一杯で攻撃の隙もありゃしないのに、それに加えていきなり高速で突進して来る奴までいると来た。
それに比べてラウラちゃんは躱して隙を見つけてはリボルバーカノンとワイヤーブレードを駆使して次々に倒していく。突進型のドローンなんてワイヤーブレードで巻き付けて別のヤツにあてている。やっぱIS使う軍人なだけあるなぁ、俺亡国だけどどちらかと言えばのんびりやってた方だし、何回か死にかけたけど。
「零!」
「あいよ!」
俺は右往左往に躱しながら身体を半回転させ、射撃型に向けて右足のワイヤーブレードを伸ばす。
ズシュッ!
「おらあ!」
射撃型にブレードを突き刺したと同時にそのまま旋回しながらビームを避けつつそれを振り回し、ラウラちゃんとちゃんを追いかけている突撃型と衝突させる。
この爆発が命取りだ。
「はぁ!」
『!?!?』
爆発で起きた煙に紛れて一気に瞬時加速をかけ、数十メートル先にいた射撃型をクロスマッシャーで一気に切り裂く。
ビシュンッ! ビシュンッ! ビシュンッ! ビシュンッ! ビシュンッ! ビシュンッ!
死角からビームの嵐が槍のように俺に向かってくるが、俺はすかざずライザーファングを射出展開し、合わせて巨大な盾へと変換させてビームの雨を防ぐ。
「狙えよ!」
そして素早くクロスマッシャーをガンモードに切り替え、シールドの上からドローン共に連射を浴びせた。
ドガァァァァンッ!
「ふう、何とか終わった」
「ふむ、上出来だ。しかし最後の無駄弾は頂けないな」
「これでも結構当ててる方なんだよ」
「下手に無駄弾を撃つとな、煙が上がって」
ビジュウゥゥ!
「……ああいう攻撃が来る」
ラウラちゃんが突然リボルバーカノンを地面の砂煙に向けて撃つ。
煙が晴れると、そこには穴がぽっかり空いたドローンの残骸が落ちていた。どうやら砂煙に紛れて狙ってきた奴がいたようだ。AIなのにずる賢さが人間並みだ。
「ごめん、気をつけるよ」
「うむ」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
なんて話してたら数十メートル先から叫び声と大きな墜落音が響いた。目を向けると、一夏が背中から地面にめり込んでいた。どうやらビームの嵐にやられたらしい。
今日のシュミレーションは一夏達も合同でやっている。偶然同じ時間帯に第3アリーナを借りたせいでバッタリ遭遇してしまった、で、その流れで一緒にシュミレーションのドローンをシェアすることになった。あんまり一緒にやるとトーナメントで当たった時に戦法を読まれそうで怖いが……まああの様子なら心配はいらないか。
「いってー……」
「だ、大丈夫一夏?」
上空からシャルロットが心配そうに一夏のもとへ降りていく。あれは確かラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡだったか、第2世代のラファールを改造して武器を詰め込んだ武器庫みたいなものだって楯無さんが言ってたな。
流石というか、一夏と違ってシャルロットの方は普通にこなしている。代表候補生ともなると当たり前ってことか。
「ああ、なんとか……にしてもこれがシュミレーションかぁ。零っていっつもこんな訓練やってるのか?」
「まあね、作ってくれた人が僕を徹底的に鍛え上げるって言ってたから」
「はは、随分と鬼畜だなぁ」
オープン・チャネル越しに一夏は乾いた笑い声をあげる。まさかこれを作ったのが知り合いの博士だなんて夢にも思わないだろうに。
「一夏って銃とか後付しないの? いくら何でも剣1本じゃムリがない?」
「ああ、本当は持ちたいけどさぁ、なんか拡張領域が空いてないらしいんだよ」
「そうなの、シャルル?」
「うん、確認したけど白式の容量の殆どがワンオフ・アビリティーに使われていたよ」
「それって零落白夜?」
「そう、だから装備出来ないらしい」
なんという欠陥品……いや、流石にISに悪いか。にしても、確かワンオフ・アビリティーって2次移行した第二形態のときに発動するもんじゃなかったか? こんなんならワンオフなんてなくして武装を詰め込んだ方がいいだろう。
……そういえばクロスライザーの容量はどうなってたっけ……ふむ、まあまあ空いてるな。隠し武器に何か追加しておくか。
「でもまぁ、武装の使用許諾をすれば一応撃つことはできるからまだマシか」
「いざとなったら相手に雪片をぶん投げるのもいいんじゃない?」
「あ、あはは……」
「はあぁぁぁぁ!」
ふと、別の方角から威勢のいい声が聞こえてきた。
「すげー、躱してるよ」
声のする方に顔を向けると、打鉄を纏った箒が射撃型の猛攻を躱しながら葵で一体一体を落としていた。
…………見ない間に随分腕を上げているようだ。初めて会った時とは纏っているものが違う、まるで別人のようだ。
「やる気だね、箒」
「ああ」
一夏とシャルルは箒の姿に感心の声を漏らした。
「(……箒の奴、なんか前よりも……)」
「いちかー? どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないぞ。よし、続きやろうぜ! ほら、銃の撃ち方とかもう少し詳しくおしえてくれよ!」
「う、うん」
シャルロットの声掛けに、一夏は少し顔を赤くして誤魔化した。一夏の話だと最近の箒はご飯が美味くなったそうで、それが楽しみの一つだとか。
んー、これはもしかして……ま、関係ないから放っておくか。
さて、頑張る箒を見て一夏もやる気になった事だし、さっさとラウラちゃんとの訓練に戻るか。
「…………」
「どうしたの、ラウラちゃん」
「ああ、ちょっとな……なあ零」
「ん?」
「デュノアのことだが……奴は本当に男なのか?」
「……さあ、僕には分からないなぁ。どうしていきなり?」
「いや、いいんだ。少し気になっただけだ」
やっぱりバレるよなぁ。そりゃあラウラちゃん軍人だし、バレないわけないか。
さてと、トーナメントまで残り数日、最後の足掻きといくか。
──────────────第4アリーナ
「ほら! 簪ちゃん! もっと!」
「くっ……!」
場所は変わって第4アリーナ、そこでは、ミステリアス・レイディを纏った楯無が、打鉄弐式を纏った簪に向かって蒼流旋の弾丸を放っていた。簪は打鉄弐式を受け取ってからまだ日が浅いため、ある程度の訓練が必要になると判断した彼女が、自ら姉である楯無に指導を申し込んだのだ。
「結構ギリギリ…………」
飛び交う弾丸を簪はスラスターを噴かせながら縦横無尽に躱し続ける。しかし弾丸は確実に簪を狙っており、これには簪も苦顔を浮かべながら避けていた。
「逃げてばかりじゃだめよ!」
「逃げてなんか……」
というものの、実際は逃げていることに変わりはない。姉のISの特性上、そして楯無の操縦技術を踏まえれば、近接攻撃はまず不可能。実際に先程、彼女は夢現による近距離からの攻撃を試しみたものの、危うく全身の装甲を削ぎ落とされそうになった。
となると、こうして躱しながら春雷を放ち、遠距離から攻撃する他ないのだ。
「…………!! そこ!」
隙を見つけた簪は瞬時に後退し、山嵐を一斉に発射。
ズドドドドッ!
簪に操られたミサイルは楯無に全弾命中し、空中に大きな煙繭を作った。
「…………やった?」
白い煙繭が広がる中、簪は息を飲む。
「………………」
ビーッ! ビーッ!
警告音が鳴ったと同時に、後ろから首に鋭い突起物が突きつけられる。簪の背後には、いつの間にか移動した楯無が笑みを浮かべながら槍先を突き付けていた。
「…………ふふ」
「…………参りました」
このままいけば普通に負けていたと判断した簪は、 潔く降参する。
「はーい、おつかれー」
楯無は蒼流旋を粒子化させると、そのまま勢いにまかさて簪に抱きつく。
「ちょっとお姉ちゃん……人前でやめてよ……」
「んもう、いいじゃない。姉妹なんだから。ハグも大切なスキンシップの1つよ」
「……巻紙君に抱きつく理由もそれ?」
「んー…………それは秘密」
ジト目で睨む簪からの視線に、楯無はウインクで誤魔化した。
「はぁ……なかなか上手くいかない……」
「大丈夫、まだ時間はあるんだから。本音ちゃん達と一緒に少しづつ調整すればいいのよ」
「……うん」
楯無の言葉に簪は恥ずかしそうに微笑んだ。
『美しい姉妹愛……素敵ねぇ』
『…………』カタカタカタッ
『にーしーきーちゃ『それ以上近付いたら初期化させるから』……酷い、私たち姉妹なのに』
『こんな姉を持った記憶はない』
『そう言わずにー』
『半径1mに入ったら一生口聞かない』
『ひ、酷い……水のように冷たい』
「ん? 何か言った?」
「? 何も言ってないけど」