IS、零   作:歩輪気

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3話目


零、雨

 ────────────────ー

 

 

 俺の名前はレイン・ミューゼル。

 

 あいつと初めて会った時、正直俺はあいつが嫌いだった。いつもオータムについて行ってばかりで弱々しかった。

 俺にまで軽々しく話しかけてきたから初めの方はウザかったぜ。

 でもあいつには力じゃなくて、心の強さがあった。弱くても諦めない、何のかんのいって困っている奴を見捨てない、あんなに当たってた俺のことも怖い男どもから守ってくれた。

 今じゃあなかなか逞しくなったけどよ。

 確かあの時からだな、俺があいつのことを…………

 

 

「センパーイ? おーい?」

「……ん? なんだよフォルテ」

「いやぁ、さっきから呼んでたんすけど……」

「あ、悪ぃ。ちょっと考え事してた」

「へー、もしかしてこの前話してた故郷に残した零君のことっすか?」

「んー、まあな。あいつ今頃どうしてっかなーって」

「ふーん、そうっすかそうっすか、先輩にとって私はセフレですか」

「おいおい拗ねんなって……てかあいつとはそういうのじゃねえよ!」

「怒った顔も可愛いっすね」

 

 あ、そうそう。俺今IS学園の生徒なんだわ。ちなみに名前はダリル・ケイシーって名乗ってる。叔母さんから潜入しろって言われたからよ。で、こいつはフォルテ・サファイア、俺の彼女だ。

 最近零のことを話したら「それ普通に好きなんじゃないすか……」とか言って拗ねたな。

 まあ、そうなのかもしれねえな……。

 

「あ、そういえば今度男子がここに入学するらしいっすよ」

「んなこと知ってるよ。確か織斑千冬の弟だろ?」

「かなりのイケメンらしいっすねー……できれば私は避けたいけど」

「あれがねぇ」

「噂では中学の時に多くの女子を虜にしてたものの鈍感さゆえに泣かすことが多かったとか」

「はん! あんなもやしに惚れるかってんだ。どうせ中身は色んな意味でやべー奴だろうよ」

「例えば?」

「姉貴関連のことで変なことにブチ切れて相手を殺しかけるとか?」

「ないない」

 

 まあ、どっちでもいい。男子だろうがイケメンだろうが知るかよ。

 にしても織斑千冬の弟か…………そういえばマドカってあいつにそっくりなんだよな、前それ言って怒られたけど、まああんま触れない方が良いみたいだ。あいつは零に拾われた時からずーっと一緒だったらしいし、今でも一緒らしいし、今頃零に添い寝とかなんかしちゃったりして…………

 

「先輩、何か怖いっす……」

 

 くそ、マドカばっかり。俺なんてここ数年あえてねえのに! 

 

「おーい、センパーイ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 とある広場

 

 

 

「来んじゃねえよ! きもちわるい!」

「え、僕別にまだ何も……」

「ついてくんなっつってんだよ! お前みたいにヒョロいやつに付きまとわれるとウザイんだよ!」

「でも礼子姉さん達が一緒にここで待ってろって」

「あーもう! 知るかそんなもん! とにかくついてくんな!」

 

 結構前に、おばさんが面倒を見てるオータムが男の子を拾ったらしい。それがこのヒョロ男だ。名前は零、オータムが名付けたらしい。俺より年下だ。

 俺はこいつが嫌いだ。ヒョロいくせにいっつもついてきやがって。この前なんてオータムの仕事場まで来て大変なことをやらかしたとか。こんな野郎男じゃねえ。だから嫌いだ。

 

「来んな!」

「あ、待って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後

 

「…………なあスコール、零とレインは?」

「いないわね……全くあの子達ったら、あれほど待てっていったのに」

「…………たく、手間のかかるガキだぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………やばい、ここ何処だよ」

 

 零から逃げた俺だったが、気づいたら知らない場所にいた。まずい、叔母さんに怒られる、叔母さん怒るとこえーからなぁ。

 てか本当にやばい、どこか分からない。

 

「ハロー、どうしたんだいお嬢ちゃん?」

「迷子かな? お兄さん達が案内しようか?」

 

 若い男が2人近づいてくる。俺にはすぐ分かる、この2人は間違いなく誘拐犯だ。この前叔母さんが言ってた。ここいらはそういう輩が多いって、仕事で被害にあった子どもにあうと大体ここら辺の子どもだって。

 逃げないと。

 

「く、くんな……」

「何か震えてるねぇ、迷子だからかなぁ?」

「それは大変だ、じゃあ一緒に探さないとね」

 

 2人は悪い笑を浮かべながら俺に近づいてくる。くそ、何で足が動かねえんだよ。怖がってんのか、俺。

 

 誰か、誰か助けて……叔母さん。

 

 

 

 

「あ、あの…………」

「ん? 何だい坊や? 君も迷子かな?」

 

 横から男の子の弱々しい声が聞こえた。その声の主はあいつ……零だった。今でもチビりそうに震えてやがる。

 何で来たんだよ、お前までやられるぞ。

 

「いえ、あそこ……お巡りさんが見てます」

「「はっ?」」

 

 男がお巡りさんの言葉に反応して向こうの方を見る。

 

 無論、そんなものいない。

 

「い、いこ!」

「え?」

 

 零は俺の手をガシッと掴むと、その場から逃げるように走る。

 

「おい!」

 

 でも俺達はまだ子どもだ。大人に足の速さで勝てるわけが無い。

 男2人は直ぐに追いつき、俺達を挟み撃ちにする。

 

「このガキ!」

「い…………」

「零!」

 

 男の1人が零の頬を勢いよく叩く。

 

「おいおい、よせって。傷つけたら安くなんだろうが」

「あ、あぁ、悪い。つい感情的になっちまった」

 

 そう言いながら2人は俺達にジリジリと近づく。

 俺は怖くてその場でへたり込んだ。

 

「零……」

「…………」

 

 でも零は俺を守るように立ち塞がった。そんなことしても無駄なのに、俺達2人とも売り飛ばされるのは変わんないのに、何で。

 

「とりあえず早く済ませるか」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ビチ〇ソ野郎共。何うちのガキに手ー出してんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、だからあそこから離れんなっつっただろうが!」

「「ごめんなさい…………」」

「まあいいじゃないの。私達も悪かったわよ、ほんの少しだけなんて思ったんだから」

「……そうだけどよぉ」

 

 数分後、俺と零はオータムからこっぴどく叱られている。

 男が俺達に触れる寸前のところで、オータムと叔母さんが助けてくれた。

 ちなみに男2人は滅多打ちにした後、警察に放り投げた。なんでも警察も目をつけていた奴ららしい。

 

「ま、とりあえず無事だったから良かったわ」

「はぁ……ほら、行くぞ。アイス買ってやるから」

 

 そう言うと2人は歩いていく。俺達も離れないように後ろを着いていく。

 

「…………なぁ」

「ん?」

「痛くねえか?」

「うん、少し。でも大丈夫、直ぐに治るよ」

 

 零は腫れた頬を少し抑える。俺を助けようとして付けた傷だ。

 

「……ありがとうな……」

「?」

「俺を助けてくれてよ」

「え、うん。でも結局捕まっちゃったけど」

「それでもお前はすげぇよ。俺なんて何も出来なかった……」

 

 その場でへたり込むしか出来なかった俺なんかと比べれば零は強い。年下で俺よりも小さいのに。

 

「なぁ、俺の事、名前で呼んでいいぞ」

「え? いいの?」

「うん」

「じゃあ、レインって呼ぶね! よろしく、レイン!」

「……!? お、おう。よろしく」

 

 それから俺は何かと零の面倒を見るようになった。俺にとっては弟みたいな存在だ。飯作ってやったり一緒に寝てやったりした。

 マドカが来てからあいつは変わった、いい意味で。責任感ってのが強くなったのかな? 末っ子キャラが徐々に抜けてったぜ。

 IS学園に入学してからは会えてない。

 通信越しで話すぐらいだな。

 

 

 

 くそ、マドカばっかりずりぃよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────別の日

 

 

 今日、俺はすごく気分がいい。とうとう零と再会できるからだ。何でも仕事関係でIS学園から近い場所にあるホテルに泊まるらしい。そんで叔母さんから良かったら来いって。

 

「あいつ、元気にしてっかなぁ」

 

 零とはここ数年逢えてない。通信越しでしかあいつの顔は見れなかったが、かなり逞しくなってた。あんなヒョロかった弟がいつの間にか男になってるなんて……とりあえず今は一刻も早く逢いたい、逢ってハグをしたい。どうせなら今日1日一緒に寝てもいい。

 そしてとうとうあいつが泊まってる部屋の前まで来る。とりあえず1度呼吸を整えるんだ。

 

 ガチャッ

 

「零!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ零」

「モグッ……ああ、前よりも美味くなってるよ」

「そ、そうか。ほら、どんどん食べてくれ。唐揚げは特にオススメだぞ」

「そう焦るなって、ちゃんと味わって食べるからよ」

 

 

 

 

 

 

「…………おい」

「ん? あれ、もしかしてレインか? 久しぶりだn「マドカァァァァァァ!! てめぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺はマドカの肩を掴んで前後に揺らす。揺らさないわけないだろうが! 

 

「な、なんだ! 何を叫んでいるんだ!」

「ふざけんなぁ! おめー何独り占めしてやがるんだ!」

「何を、私はただ零に手料理を食わせてただけだ。それに独り占めとは人聞きが悪いぞ、なあ零」

「モグッ……まあ結構な頻度で食わせて貰ってるかな」

「ちくしょおぉぉ……」

 

 やっぱこうだろうとは思ってたけどよぉ! そりゃあ何年も一緒にいりゃあそうなるけどよぉ! くそぉ! 

 

「おいおい、外まで叫び声が聞こえてるぞ…………て何やってんだお前」

「あらー、レインじゃないの。どうしたのよこんなところで泣いて」

 

 叔母さんとオータムが部屋に戻ってくる。2人とも相変わらず変わってない。

 おい叔母さん、何笑ってんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、いきなりマドカに掴みかかるから驚いたぞ」

「ふん、お前が鈍感すぎんだよ」

「?」

 

 暫くして俺は数年ぶりに零と2人きりになった。叔母さんとオータムが気を利かせてマドカを連れて何処かに遊びに行ってくれたおかげだ。

 

「にしても随分雰囲気変わったな」

「零だって同じだろ、てかお前話し方変わってねえか?」

「ん、そうか?」

「そうだって。前なんて一人称僕だったじゃねえか」

「あー、まあ確かになぁ」

「ま、別に気にしてねえからいいけどよ……とりあえずほら」

「?」

「数年ぶりにあったんだ。ハグぐらいさせろよ」

「いや、別にそんなことしなくてもぐふっ!」

 

 俺はごちゃごちゃ言う零を力いっぱい抱きしめる。今まで逢えてなかった分思い切りだ。

 

「(マドカといいレインといい、何でこうもハグが好きなんだか……)」

「そういえばお前、この前付けた怪我は大丈夫なのか?」

「ああ、あの強奪の時につけた奴のこと? もう殆ど完治してるよ。腕も動かせるようになったし」

「そうか、なら良かった」

「お、おい、もうそろそろ苦しぐふっ!」

 

 やだね、離してやるもんか。このまま一緒に寝てやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイン貴様ぁぁぁぁ!! 独り占めしてるのはどっちだ!」

「はぁ!? ふざけんな! こちとら何年あってねえと思ってんだ! こんぐらいやる権利はあるに決まってんだろ!」

「お、おい。流石に苦……ちょ……ギブ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────ー

 

 

 

 

「なあスコール」

「はいはい」

「弟が彼女複数連れてきたらよぉ、どうすればいいと思う?」

「一夫多妻制の国に送り付けるとか?」

「ちくしょう、やっぱ認めるしかねえのか……くそぉ! こうなったらとことん飲んでやる!」

「明日仕事だから今日はこれ以上ダメよ」

 

 

 

 

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