とりあえず今回でフランスの件が終わります。かなり違和感というか色々と都合が良すぎると思います。すみません。
男装については、考えれば考えるほど丸く収まる方法が分からなくなりました。
────────────────3組
時は流れて、トーナメントから数日経ったその日、何とか1人で色々と出来るまで回復した俺はいつものように3組の教室に向かっていた。たった数日とはいえ、何だか数ヶ月ぶりにここを歩いているような感覚だ。トーナメントが中止になったおかげで少なからず授業も進んでいるだろうし、クラスの子にノートを見せてもらおう。
……なんかここに来てから怪我ばっかしている気が。
「あ、零君、おはよー」
「おはよう」
廊下ですれ違った生徒と挨拶を交わす。
にしても、この数日は本当に大変だった。
VTシステムの件で織斑千冬やその他教員から連日で事情聴取を受けたり、ラウラと手を繋いでいたことで何故か凄く勘違いされて(織斑千冬含む)一部の教員や見舞いに来てくれたみんなから質問攻めにあったり、楯無さんとレインが飯を食わせようとしたり、フォルテさんが巻き込まれたり……心配してくれるのは有難いんだけど、正直寝かせて欲しかった。
あと何故か怪我したことをマドカが察知して深夜にメッセージを大量に送ってきたこともあるか。レインの話だと俺のことを礼子姉さん達に伝えたのはトーナメントの次の日だ。だから、その時のマドカはまだ知らないはずだ。なんで分かったんだ? で、案の定、礼子姉さんとマドカからのメールで寝不足だ。
あと昨日は一夏が手料理を作ってきてくれたり……なんだろう、この気持ち。これが友情ってやつなのか?
いや、これはどうでもいいか。
けど、1番大変だったのは風呂だ。本当は頑張れば自分で洗えたんだけど、レインと楯無さんが『黙って背中を洗わせやがれ(洗わせなさい)』と訳の分からないことを言って半ば無理やり背中を流してきた。あくまで背中だけだ、その他は自分で洗った。
全く、俺だって年頃の男だっていうのに。大怪我をした時なら兎も角、今更背中を流されるのは正直恥ずかしい。ましてや楯無さんみたいな他人にやられるのはもっとだ。
……マドカがしてくれるのは嬉しいかもしれない。
『相手が裸なのはどうでもいいのかよ、こいつ』
『ISスーツ着てたからじゃない?』
『いや、だとしてもおかしいだろ。つーかこいつ日に日に悪化してねえか?』
『どれだけ悪化しようが、あっし達はレイもんを見守るだけでっせ』
…………なんだ今の寒気。アッシー、デッセ……何だか折角忘れかけていたものが呼び起こされそうな気がする。いけないいけない、さっさと教室に向かおう。
「あ、零君だ」
「おはよー」
「おはよう」
「怪我は大丈夫なの?」
「ああ、おかげさまで。ちょっと痛むけどね」
「またノート見せてあげるね」
「助かるよ」
教室に入るやいなや、みんなが挨拶をしてきた。ふむ、どうやらトーナメントのことで特に変わったことはなさそうだ。ラウラは……まだ来てないのか、楯無さんの話だとラウラは動けるようになった後、大破したシュヴァルツェア・レーゲンの修理で暫く整備室に篭っていたらしい。早く彼女の元気な顔がみたいよ。
「ねえねえ、今朝のニュース見た?」
「見た見た、ドイツとフランスのニュースでしょ」
「まさかあんなことがあったなんてねぇ……ボーデヴィッヒさんも災難だなぁ」
後ろの席では、女子たちが群がって今朝のニュースのことで盛り上がっていた。
それはそうだ、何せ数日前に、VTシステムの内容とあの時の映像がどっかの誰かさんの手によってネットに流出、そしてドイツのやらかしが全国レベルで知り渡ることになったんだからな。
平然と話してるけどこいつはなかなかやばい、何せあの禁止されてるVTシステムを造った挙句、貴重な代表候補生のISに無断で仕込んだことが世界中に流れたんだからな。今頃ドイツの方は大変なことになっているだろう。
あ、ちなみにラウラのことだけど多分大丈夫、ラウラはあくまでIS製造関係者の一部過激派の実験に巻き込まれた被害者という立ち位置で収まったらしい。
これに関してはおそらく織斑千冬や学園側も動いたはずだ、じゃなきゃ俺も困る。処罰も悪くて降格といったところだろう。
肝心の主犯格だが、国の方はVTシステムの開発に関わっていた一部の上層部と軍幹部、あと製造責任者を吊し上げて全責任をおっ被せたようだ。全く、相変わらず責任逃れがえぐい。
まあ、とりあえず世間の目もあるから、ラウラが下手に消される心配は無くなった……いや、平気で拷問やらをやってたドイツ軍のことだ。もしかしたら、なんてこともあるから一応誘拐することも考えておこう。姉さん達に殺されるだろうにけど。
たく、一体どこの誰がこんなことを……気まぐれだな。
「ドイツもそうだけど、フランスもよ。まさかデュノア君がデュノアさんだったなんて……」
「あーあ、今頃1組の方はお通夜状態でしょうねー」
「あんだけ追っかけしてたからね」
「織斑君とのお付き合いもダメになったし」
「神は私たちを見捨てたとか言ってるでしょ」
そして今回のニュースでやばいのがもうひとつ……フランスのデュノア社の件だ。ドイツが言い訳していた裏では、デュノア社社長のアルベール・デュノアによる謝罪会見が行われていた。
凄ーく長い話だからざっくり省略させてもらうと、
①娘であるシャルロット・デュノアをシャルル・デュノアとして第三の男性操縦者としてIS学園に入学させたこと
②その理由が娘の暗殺を目論んでいた会社関係者等の輩から守るために行ったこと
③男性操縦者として入学させたのは、彼女を守るため、そしてフランス政府を納得させるため
ということらしい。もっと具体的なことも言ってたけど。いや、流石に3つ目は無理があっただろ。
それはそれとして、アルベール社長は伝手のある政府関係者と協力、シャルロットの暗殺を企んでいた輩をあぶり出して全員逮捕。ということらしい。こんな短期間でよくやったものだ、親バカってやつか。
今頃、会社にはドイツ軍に負けず劣らずクレームやらが殺到しているに違いない、社長だってその覚悟でやったはずだ。まあ、少なくともこの学園はシャルロットに関しては味方側だから、ここでの彼女の身の安全は確保されてはいるだろう。
「零君、これ、数日分のノート。良かったらボーデヴィッヒさんにも見せてあげてね」
「ああ、ありがとう」
何はともあれ、これでドイツとフランスの件は一件落着ってことか。全く、何とも無茶苦茶な案件だった。VTシステムもやるメリットなんてほとんどないだろうし、男性操縦者も無理があるだろ。どうせならそのままでハニトラさせとけば良かったのに。
……ついでにもう一度言っておく、俺は今回のデュノア社の件に関してなんにも関わってない。電話をかけた覚えも暗殺者リストを送った記憶もない。そう、そんなことはなかった。
「はーいみんなー、席に着いてー」
と、先生が来たか。
うわ、なかなか酷い隈だ。あれは例のことで大忙しだったんだろう。織斑千冬も山田先生も同じようになっているに違いない……後で何か持っていくか。
「えー、皆さんもご存知の通り、シャルル・デュノアさんはシャルロット・デュノアさんでした。それとボーデヴィッヒさんも大変な目に会いましたね、みんな変わらず仲良くしてくださいね。はい、これでこの件はおしまい。これ以上先生達に追求したら夏休みは無くなると思って、いい?」
「「「はーい……」」」
あー、これは相当疲れてるな。顔が笑っているようで笑ってない。
「……あれ」
「どうしたの?」
「いや、確か男子の大浴場って解禁されたって言ってたよね?」
「あー、そういえば織斑君とデュノアさんが使ってた……あれ」
ああ、そういえば大浴場ってもう使えるんだった。で、一夏とシャルロットが使ってた……なるほど。
1組、穴が空いてなきゃ「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!」……やっぱダメか。
「零! 助けてくれ!」
「だから! なんで俺の所に来るんだよ!」
「「「俺?」」」
しまった、つい気が緩んで「いーちーかー」……なんだ?
「ひっ!?」
一夏の女々しい叫びと共に教室の扉からゆっくりと現れたのは、どす黒い龍のオーラを背に纏い、甲龍を部分展開させた鈴だった。まるで何かに憑依されたヒロインのようだ。
「鈴……」
「そっかー……アンタ、あの時シャルルと一緒にお風呂入ってたのねー。アタシ達がすっごく心配して疲れてた時にアンタは混浴かー。へーそっかー」
「あ、いや、これは流れでそうなっただけで」
「流れかー、流れで混浴かー、あははっ」
顔は笑ってるけど目は笑ってないうえに光がない。これはダメだな。
「あ、あのな鈴。これには深いわけが」
「あるの?」
「……ないかも」
「死ぃねぇよぉやぁぁぁぁぁぁっ!」
興奮した鈴は叫びながら、右肩に展開した龍咆で衝撃砲を一夏に向けて発射した…………普通にやばいじゃねえか! このままだと周りの子も死ぬぞ!
「ちょっとは場所考え……!」
俺はすぐさまクロスライザーを展開しようと待機状態のこいつを掲げた。
ズドンッ!
が、その前に何かが割って入ってきて、鈴の衝撃砲を受け止めた。
「ラウラ?」
「無事か、零」
衝撃砲を受け止めたのは、シュヴァルツェア・レーゲンを部分展開させてAICを発動させたラウラだった。危機一髪って所か。眼帯は新しいものをつけているようだ。
「久しぶり、危うく死ぬところだったから助かったよ」
「礼は良いんだ……それよりも凰」
「な、なによ」
「お前はもう少し場所を考えろ。危うく他の者まで巻き込むところだったぞ」
「うっ……ごめん」
「一夏も頭を下げろ」
「え? 俺も? ……と、とりあえずごめん」
ラウラから言われた通りに謝る鈴と一夏。なるほど、昔礼子姉さんから教わったあれと同じか。一夏と箒が喧嘩した時もやったっけ。
「……さて」
そう言うと、ラウラは俺の方を振り向いて、胸ぐらを優しく掴んで少し引き寄せてから、つま先立ちで俺の口元に自分の唇をぐむっ……。
「えっ!?」
「え……えっ!?」
「ハレンチー……」
突然の口付けに、教室内にいたみんなが声を漏らした。俺だって口を塞がれていなかったら声を漏らしたかった。
「んっ……あっ」
意外と長い間キスをした後、顔を離したラウラは笑顔を浮かべていた。
「……ラウラ? これは一体」
「あの時助けてもらった礼だ」
「なんでキスなの?」
「特別な気持ちを持った相手への礼はキスが1番だと考えたからだ」
「特別な……気持ち?」
「ああ、まあ……うん」
俺の言葉に、何故か恥ずかしそうに頬を染めるラウラ。
「え……これって、そういうこと?」
「ドイツ人って大胆だぁ」
そんな彼女を見てざわめき始めたクラスと先生とその他2人。
「あ、あんたねぇ! あんたの方がよっぽど場所選んでないじゃない! だったらアタシだって……何言ってんのよ!」
「こ、ここは恋愛禁止……あ、そんな規則なかったわ」
鈴と榊原先生が動揺して訳の分からないことを言い始めた。どうやらこういうことには……いや、そんなことはどっちでもいい。それよりもこの状況は非常にまずい。
ピロンッ
突然、俺の端末に通知が来た。音からしてマドカだ。
「まさか……」
俺は恐る恐る端末を開き、マドカからのメッセージを確認した。
そこに書かれていたのは……
『零なんか嫌いだ』
ズドォォォォォォンッ!!
その一文を読んだ瞬間、俺の心臓部がシャルロットのパイルバンカーを受けたような……いや、それ以上の衝撃に襲われた。
昔レインと派手にやり合った時にスコール姐さんから仲良く受けた絞め技と同じように、辺りが揺らぎ、少しずつ暗闇に包まれていく。周りの子の声が雑音に変わっていき、まるで夢に落ちるかのように体の力が抜けて、硬い床に倒れた。
ああ、流石にダメかもしれない。
「お、おい零。しっかりしろ、れーい!」
一夏の叫びとともに、またもや俺は暗闇の中へ意識を落とした。
……暫くここから抜け出したくない。
リ○○=カーネイション→リヴァイヴとコ○モスに分離可能。
そんなのありかよ、と思いました。